この世界に来てから数日が経っていた。
それにしてもおかしい、体が勝手に動いて普通は言わない事まで口にでる。この姿になってからなんだか開放的で積極的になっているような・・・でも心は変わらないのよね~モモンガさんみたいに光らないだけましか~あっそういえばデミウルゴスから香水の匂いしなかった!!嫌い匂いだったかな~それともあのプレゼント重かったかな~
そんな事を考えながらモモンガさんのいる部屋に向かう。
部屋に入るとモモンガさんが大きな鏡に向かって手を動かしていた。
この世界に転移してから数日、モモンガは色んな装備やアイテムの動作確認に時間を費やしていた。
さすがモモンガさんギルド長の鏡、私なんて作った物でもなんだったか忘れるのに・・・
黙々と続けるモモンガに感心しながら声を掛ける。
「お疲れ様ですモモンガさん」
「あっアレキサンドライトさん、ちょうどいいところに」
鏡の前に手招きされて鏡を覗き込む。
「今、やっと使い方が分かったところなんですよ!」
「すごいですね!」
「これで近くの森や村の様子が見れますよ」
そういうとモモンガは鏡に村を映しだし村全体が見れるくらいに拡大して見せてくれた。
麦畑と牛や羊が放牧されているのが見える。その風景の中に違和感を覚える者達がいた。
「これは祭りか・・・」
「いえ、これは・・・殺戮」
アレキサンドライトはその光景をじっと冷静に見えたままを答えた。
「助ける意味を感じない、必要はない」
モモンガさんは何も感じていないような声でそう言った。その声に背筋が凍ったようにアレキサンドライトは感じた。
転生者である私は種族の精神的影響はないと思っていた・・・でもこれはどういう事
自分の心の動きに混乱している視界にセバスが映った。
ー誰かが困っていたら助けるのは当たり前ー
「村を助けましょうモモンガさん!」
アレキサンドライトは後ろに控えているセバスを見る。モモンガもセバスを見てアレキサンドライトの言葉に頷いた。私と同じたっちさんの幻影を見ているのだろう、41人の仲間達はもしかしたら私達の人間の心を守る最後の砦なのかもしれない・・・それを忘れたらなんのプライドもない紛い物に、無視され気味悪がれた者達を助けた至高なる悪の華では無くなるのだろう。
「正直この姿になってから他人の死に何も感じませんがそれでもたっちさんの事を思い出してしまうんです。理由なんて何でもいいんですよ。私、友人の思いを無駄にしたくないです。」
「・・・そうですね。セバス、ナザリックの警戒レベルを最大限に引き上げろ。隣の部屋に控えているアルベドに完全武装で来るように伝えよ私は先に行く」
「もちろん私も一緒に行きます。」
「ええ、共に行きましょう。」
今にも切り殺されそうな少女達の元へ急ぐ、モモンガに続いてアレキサンドライトも人間に姿を変え
ちなみにアレキサンドライトの人間の姿は銀髪で腰まで髪をのばしている。瞳はライトグリーンで儚げ美人だ。
姉と思われる少女は背中を切られ血を流しながら小さい幼女抱え込み蹲っている。切り殺されると思われたその瞬間、殺戮を行った騎士は倒れた。顔を上げて少女が見たものは生きている者ではない白磁の骸骨が血が滴る心臓を握り潰すところだった。
「きゃああーお姉ちゃん!!」
「ネム!静かにして・・・お願いします!!妹だけは!!!」
「大丈夫、何も怖がる事はありません。」
モモンガさんの後ろから表れたアレキサンドライトに少女達は驚いて動きを止めた。
「大丈夫まずは傷を癒しましょう。
少女の傷がなかったかのように消えた。傷が消えたことが信じられないのか背中を触ったりひねったりしている。モモンガはその姿を見ながらなるべく怖がらせないように声を掛ける。
「痛みはなくなったな?」
「は、はい」
「私は
モモンガが次々と守りの魔法を掛けていく、その間にアルベドが表れた。
「準備に時間がかかり、申し訳ございませんでした。」
「いい、気にするな。それでは行こうか殺戮者を殺しに」
「あ、あの助けて下さって、ありがとうございます!お願いします!母や父を村を助けて!!お願いします!!」
アレキサンドライトはモモンガを見るとモモンガさんは二人の少女に振り向いた。
「待っていろ、助けてやろう命があるのならばな。」
そう言って颯爽と歩くモモンガさんの後ろ姿を見ながらアレキサンドライトは笑みを浮かべたのだった。
続く