【ネタ】転生特典はFateの投影だった   作:機巧

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続きじゃい!


蛇足という名の愛と希望と周回の物語
事前トレーラー「アニメは事前評価が割と重要」


「ヘスティア神っ!」

 

そう叫ぶように勢いをつけて教会の地下室へと俺は飛び込んだ。この時間、ベルはダンジョンに潜っているため、呼び間違う心配はない。(ちなみに俺はエイナさんの講習を受けていたため、ダンジョンには潜っていない)

 

そして部屋の中にいたヘスティア神は、よほど驚いたようで、椅子から転げ落ちた。

 

「うわっ、びっくりした! 役に立たないスキルであったそうだから気持ちは察するけど、ドアを勢いよく開けないでおくれ……オンボロで……壊すとほら、借金も嵩んでいくんだよ……」

 

昨日、「Fateの投影」というスキルが、「Fateのアニメを投影する」能力であると理解した俺は、落ち込んだ。それはもう、ものすごく。その落ち込みようが半端でなかったせいで、俺のテンションがおかしくなってしまったとでも考えたのだろう。

 

しかし、そういうことではない。

 

「すみません! でもそういうことじゃないんです。物凄いお金儲けの方法を思いついたんですよ! これなら借金もすぐに無くなります!」

 

その言葉を聞いた神様(内職中)は、今度は自分が転げ落ちるのではなく、ガバッと立った勢いで椅子を後ろへと倒した。

 

 

「な、なんだってーーーーーーっ!」

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

団長(昨日話し合いで決まった)ベルが帰ってきたところで、詳しい説明をするため、俺はこう切り出した。

 

「では第一回、円卓会議を始める」

「おーっ!」

 

ベルがノリよく反応してくれる。こういうのは雰囲気が大事なのだ。しかしヘスティア神はというと、

 

「なんかこのネーミングセンス、あいつらに通づるものを感じて、ボクはちょっと……」

「えっ?かっこいいじゃないですか、神様っ!」

「……むぅ」

 

何かしら不満があったようだが、それはすぐにベルによって鎮火された。

そこで、早速ベルが本題に入る。

 

「で、お金儲けの方法を思いついたそうですけど、どんな方法なんですか、エミヤさん」

「ふふっ、それはだなベル君」

「はいっ」

 

(かっこつけるため)わざわざタメを入れて、俺は言う。

 

 

「……アニメだ!」

 

 

言った後の2人の反応とはいうと。

 

「おおっ!アニメですか! …………って、何ですか? ……神様はわかりますか?」

とベル。

 

「ボクにも分からない」

と神様。

 

その様子を見て、ベルがこう言った。

 

「もう少しわかりやすい言葉でお願いします」

 

……ベルくんさぁ、さっきのいかにも分かってますっていうノリなんだったの? まぁ、アニメがこの世界にないことくらいは予想していたけど、このベルの反応が一番予想外だったよ……

さすが、歯磨きであれだけ踊れる主人公だ(一期Op)

 

まぁ、それはともかく。俺は用意しておいた(回りくどい)説明に入る。

 

「……こう言えばいいかな、ほら、オラリオでも流行ってるだろ? 誰それが書いたラブロマンス(恋物語)とかが」

「そうですね……僕は読んだことないですけど、神様達と人間の恋愛ものとかありますね」

 

と、ベル。……ベルのことだから、太古の英雄達の恋愛事情には詳しいのだろうが、オラリオの本は読んでいないようだ。

何やら思考がトリップしていそうなヘスティア神を置いて、話を続ける。

 

「あれは、大体は創作だろ。作者の頭の中でストーリーを作ってる」

「そう……ですね」

「でも、それが何と関係あるんだい?」

 

ようやく戻ってきたヘスティアが、そう聞いてきた。お帰りなさい、ヘスティア神。

そこでまたタメを作って、言う。

 

「おほん、つまりはですね! 自分達で新しい英雄譚を作ろうという話ですよ!」

 

なんだか、無理そうな流れ(口下手)だったけど、言いたいことは言えた。

それに対する2人の反応とは言うと。

 

 

「「……な、な」」

 

「「何だってーーーーーーっ!」」

 

 

仲がいいな、この2人……。

 

 

 

 

 

「……つ、つまり、君は新しい英雄譚の本を出して、その稼ぎで儲けようというのかい?」

「そうなります」

「っ!エミヤさん、それとてもいいと思います!」

 

と、とても興奮した様子で賛同してくれるベル。なんだかとても嬉しそうだ。

だが、ヘスティア神はとても難しい顔をして。

 

「……無理だよ……」

 

と言い放った。

難しい顔をしたままのヘスティア神にベルは尋ねる。

 

「……っ、何でですか?神様。僕は結構いいと思ったんですけど」

「そもそも本を作ったとして、その本を作るお金はどこからくるんだい? それに、無名の作者の本なんて、面白くても買ってもらえないよ……」

「あっ……確かにそうですね……」

 

つらつらと正論を述べるヘスティア。こういうところはしっかりと神様していると思う。だが、そもそも前提が違う。俺の例えが悪かったせいだろうが……。訂正を試みる。

 

「諦めたらそこで試合終了だ! それに、ちゃんとそこも考えてある」

「どうするんだい?」

 

と、ヘスティア神。

それに、俺は、その理由を答える。

 

「そもそも俺は本といったか? ここに紙の束がある。このように素早くめくって見てくれ」

「……? 分かりました」

 

あらかじめ作ってあった紙の束をヘスティア達2人に渡す。ようは、パラパラ漫画(棒人間に武器を付け足したもの)だ。

なにがなんだかわからないよという表情で受け取るベル。それをベルはパラパラとめくる。ヘスティア神は後ろからそれを覗き込む。

 

「「うわっ!」」

「人が、動いてる?」

「すごい! かっこいいですよ、エミヤさんっ!」

 

そして、パラパラ漫画を見ていた間に光を展開しておいたアニメを見せる。

 

「次にこれに音声をつけたい。そこで、俺のスキルの出番だ」

 

 

 

 

 

 

剣戟。

空(くう)に舞う火花。それは、その戦闘が、知覚すらままならない速度で金属が打ち合っているという証左だ。

 

──向かい合うは2人の戦士。

1人は中性的な容姿の騎士のようだ。得物はよくわからない。だが、その振りからして恐らくは剣であろう。

1人は野生的な容姿の槍使い。真紅の槍を携え、圧倒的速さで騎士へと突きを繰り出す。

 

『抜かせ!』

 

そして、2人は向き合い、しばし言葉を交わす。

 

『己の得物を隠すとは何事だ!』

 

そうして、高まる緊張感。

その闘いの決着は間も無くつこうとしていた。張り詰めた空気が、破裂する。

 

……。

最初に動いたのは、槍使いの方であった。

その引き締まった身体を弓のように引き絞り、しなやかな筋肉による反動によって、その槍を放つ。

 

赤色の凄まじいまでの闘気。その全てを乗せた槍が騎士へと迫るーー

 

 

『ゲイーーーー』

 

『ーーーーボルク!!』

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁあああああああああああああああっ!これかっこいいです。やばいです。続きみたいです!」

 

 

別の世界へと文字通りトリップしてしまったベルを放っておき、俺はヘスティア神に向き直る。

 

「このように、バベルにでも映してしまえば否が応でも目に入ります。あとは肝心要のストーリーさえ良ければ、どうとでもなると思います。例え通りバベルに映すなら、お金を払わない人の視聴を制限するのは現実的ではないので、いっそ見るのは誰でも無料として、関連グッズを売り出せば、きっと儲かると思います。グッズは人気が出るにつれて徐々に作っていけばいいし、見るのに良い場所があるなら特等席として、そこでは場所代を取るのもいいかと。映すのはスキルで元手はタダですし、儲けを出す勝算はあります」

 

それを聞いたヘスティア神は暫く考えた上で。

 

「……むぅ、よし、ならやろう!」

 

と言った。それに伴い、和気あいあいとした雰囲気に戻る。

 

「ありがとうございます、ヘスティア神!」

「やりましたね、エミヤさん!」

 

そうして、みんなでアニメを作ることになったところで。

俺は食器を片付ける間にベルへと話しかけた。

 

「あぁ、ベル。そういえば英雄に詳しいのだったな」

「はい。おじいちゃんが英雄譚の絵本書きでしたから。でも新しい英雄なんて、そう簡単には思いつきませんよ」

「それでもいい。聞きたいことがある」

「……新しい英雄譚じゃないんですか?」

「あぁ、そうだ。だが、同時に古くもある……聞いてくれ、設定はこうだ――」

 

そして、説明する。

英霊という概念。過去の英雄たちの幽霊のようなものを呼び出すという設定を。

 

 

「ヤバイです、それ! 面白いです! 自分もお手伝いさせていただきます!」

 

 

そしてベルに太鼓判を貰うレベルにまで各キャラをこの世界のものに変えたプロットを仕上げた。

 

 

 

 

◾︎

 

 

数日後。あの翌日は少し話し込んでしまい、寝不足気味の俺とベルであったが、今日は加減を覚えたので、割とましだ。

 

「では、ダンジョン行ってきます!」

「あぁ、俺はその間に完成したPVを流してくるよ」

「はい!」

 

ちなみにPVはベルと俺、そしてヘスティア神にも協力してもらって仕上げた。

そんな気力満タンの俺らにヘスティア神は、勇気付けるようにいう。

 

「さあ頑張ってきておくれ! ヘスティア・ファミリア、新事業の門出だ! ボクはこのちみキャラのぬいぐるみを縫っておくからさ」

「「お願いします」」

「さぁ、行っておいで!」

 

……本当にいい神様だな、と俺は思った。

 

 

 

バベルと、迷宮の入り口は同じ方向(言わずもがな)なので、ベルとともに歩き出す。俺はエイナさんの講習の後、PVを流す予定だ。

そこで、ベルが何やら忘れ物に気づいたようで。

 

「あ、魔石袋……すみません取りに戻ります」

「わかった、教会の上までは俺も戻るよ。あと、声優探しお願いな」

 

声優探しというのは、ベルと俺で迷宮神聖譚からピックアップした英雄の声にふさわしい人探しだ。

融通を利かせて、世界観が浮かないように作画は変えられたが、さすがにセリフまでは変えられなかったので、演じてくれる声優が必要なのだ。ちなみに声優探しの過程において、一度記録した音声なら投影に登録することもベル達の協力で判明した。要は、画像は随時いじれるけど、それに合わせるための声は録音したファイルの中から選択しなければならないのである――無限の剣声かな?

 

そんなことを考えていると、教会の地下室から、こんな声が聞こえてきた。

 

 

『ああっ神様、ヒモがぬいぐるみに縫い付けられてますよ!』

『うわっ……取れない……どうしようベルくん』

 

 

……大丈夫かこの門出。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、突然だった。

バベルへ向かう通りの中でも、特に人通りの多い大通り――そこにいた二神の男神が最初の目撃者だった。

 

「……なんだあれ」

「……? どうしたよ」

「いや、あれ……」

 

何やら、青い四角い光が、バベルの横壁で光っているのだ。

それは徐々に像を映し出し、それが完全に黒一色になる頃には辺りの者の半数がそれに気づいていた。

 

そして、黒いところに巻物が開かれていく 。

 

「うわっ! 何だ!」

「何が!」

 

「ギルドは何してる!」

「いや、ギルド職員は慌ててない! これは危険じゃないそうだ!」

 

そして、文字が映し出される。まだあどけなさの残る男の声と、何処か神秘的な音楽とともに。

 

 

『ーー英雄の時代は終わり、神々の降臨を経て様々な種族を含む人類は地上でもっとも栄えた種となった』(CVベル)

 

 

いつもは喧騒の酷い大通りが。何処だろうと構わず話す男神が。今はまるで教会の中にいるように、静まり返っていた。

 

 

『我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの。人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させる為の理――人類の航海図』

 

 

静寂。

その中で、ただその声だけが、その場を支配していた。

 

 

 

 

『ーーそれを、【人理】と呼ぶ』

 

 

 

 

巻物が、文字通り燃え尽きた。それと同時に、大きく息を吸い込む音が、喉をゴクリと唾を飲む音が、そこらかしらで聞こえる。

 

そして、音楽が切り替わる。何処か心踊る曲へと。

聞こえるのは女の声。何処か神秘的な雰囲気だ。

 

 

『主よ。今一度、この旗を救国の―――いえ、救世の為に振るいます』(CVヘスティア)

 

 

そして映し出されるは炎の中に燃ゆる文字。

 

 

第一の聖杯 救国の聖処女

AD.1431 **百年戦争オルレアン

人理定礎値 C+

 

 

『秩序は燃え尽きた。多くの意味が消失した。わたしたちの未来は、たった一秒で奪われた』

 

第二の聖杯 薔薇の皇帝

AD.0060 永続***国 セプテム

人理定礎値 B+

 

 

『聞け、この領域に集いし一騎当千、万夫不当の英雄たちよ!本来相容れぬ敵同士、本来交わらぬ時代の者であっても、今は互いに背中を預けよ!我は紅蓮の聖女。主の御名のもとに、貴公らの盾となろう!』

 

 

第三の聖杯 嵐の航海者

AD.1573 封鎖終局四海 オケアノス

人理定礎値 A

 

 

『貴方の戦いは、人類史を遡る長い旅路。

ですが、悲観する事はありません。貴方には無数の出会いが待っている』

 

 

第四の聖杯 ロンディニウムの騎士

AD.1888 ********

人理定礎値 A-

 

 

『この惑星(ほし)のすべてが、聖杯戦争という戦場になっていても』

 

 

第五の聖杯 **の白衣

AD.1783 ******イ・プルーリバス・ウナム

人理定礎値 A+

 

 

『この地上のすべてが、とうに失われた廃墟になっていても』

 

 

第六の聖杯 輝けるアガートラム

AD.1273 ******

人理定礎値 EX

 

 

『その行く末に、無数の強敵が立ちはだかっても』

 

 

第七の聖杯 とある英雄の手記

BC.****   絶対魔獣戦線****

人理定礎値 □

 

 

『結末はまだ、誰の手にも渡っていない』

 

 

そして、神秘的な白の草原を駆け抜ける。

 

 

『さあ―――戦いを始めましょう、マスター』

 

 

何処だかもわからない場所。何処か様子のおかしい青空のもと。誰ともしれない3人が立っている。だが、一目でわかる。その者たちは英雄と呼ばれる者であるのだと。

 

 

 

『それは、未来を取り戻す物語』

 

 

 

そして、ロゴが映し出される。

 

 

 

『Fate/Grand Order』

 

『ーー毎週金曜17:00より最も新しい英雄譚がはじまるーー(この物語はフィクションです(小文字))』

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」

 

 

大喧騒。

 

先程の静寂もあってか、爆音とも呼べる音量の神様の咆哮。

煩いや、けたたましいという言葉すら生温く思えるほどのはしゃぎっぷり。

 

聞こえてくるは、今見たものへの会話。

 

「人理……だと……」

 

「ヤベェよヤベェよ、マジやばい」

 

「かっこよすぎだろ!」

 

「センスあり過ぎィ」

 

「おい、見たかよ、あのふぇいと……何ちゃらってやつ」

 

「あぁ、あぁ、楽しみだな!」

 

「「聞け!この領域に集いし一騎当千、万夫不当の英雄たちよ!」」

 

 

ちなみに、この日の神様たちの集会で、議論が進んだものなど1つもなかったという。

そして、常日頃からエンタメを求めている神様たちの間で金曜まで噂が止まることはなかった。

そして、金曜にさらなる衝撃があることを神たちは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「なんやアレ……アイズたんたちは明日帰ってくるし、一緒に誘ってみるとええんちゃう? なんかデートのいい口実出来た気ィするわ」

 

「フム、私が声優を?」

「はい」

「ミアハさま、喋るだけで後払いとはいえ、お金もらえるんですから、やっておいて損はないですよ!」

 

「……っ」

「どうした?アイズ?」

「なんか嫌な予感がして」

 

「エイナさんには悪いけど、明日は5階層くらいまで降りてみようかな……1回だけ」

 

「君たちの物語は終わっていない!」

「ディオニュソス様! きゅ、急に声を上げないでください。びっくりします」

 

「聖女、ですか」

「アミッド様、急患です」

「今行きます」

 

「ウラノス……」

「ふん、外壁くらいは自由に使わせても良かろう」

 

 

「「金曜が楽しみだ!」」

 

 

 

●おまけのおまけ

 

さる日のベル

「やっぱハーレムがいいですよね」

数日後

「ヒロインはマシュだけでいいと思います」

 

 

 

 

 

 

 




予想外に高評価だったもので、勢いに乗せて書いてしまいました。文字数も6000…
か、勘違いしないでよ。今回は特別。か、感想欄がいけないのよ!おだててくるから、少し、少しだけ書きたい気分になっちゃったの!も、もう続きなんて書いて上げないんだからね!

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