挿絵注意です。
「エミヤさぁぁぁん! アイズ・ヴァレンシュタインさんについて何か知っていますかぁああああっ?」
PVを初めて流した日の翌日。
ダンジョンにいたはずのベルがこう叫んで帰ってきた。何やら髪が湿っている。
「どうしたんだ?」
「……実は……」
ベルから聞いた話を纏めると、
ベル五階層に潜る→ミノタウロスに追いかけ回される→【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに助けられる→ベル、恋をする。
ということだったらしい。
ちなみに髪が湿っているのは助けてもらう時に血まみれになってしまったため、シャワーを浴びてきたかららしい。
原作開始は今日だったのか、と思うが、それもそうかと思う。先程買い物に出た時に、ロキ・ファミリアの遠征が終わったということを街で聞いていたからだ。
「……で、その……アイズ・ヴァレンシュタイン氏について何か知っていませんか?」
「うーん。知っていることといえば【剣姫】で、割と天然と聞いたことがあったかな?」
ベルの目線に負け、なんとか思い出しつつ答える。だけど……。
「そんなに聞きたいなら、本人に聞けばいいんじゃないか」
「ええっ! む、無理ですよ! ロキ・ファミリアですよ? 行くのなんてとても無理ですよ!そして話しかけるなんてもっと無理ですううううううううううううううううううううっ!」
そのベルの慌てようを見て、対照的に物凄く冷静になる俺は、先程のロキ・ファミリアが遠征から帰ってきたということを聞いたときのことを思い出して、とある事実をベルにいう。
「無理無理連発してるけど、無理も何も、もうすぐここにくるぞ」
「……へ?」
呆けたような顔で間抜けな声を出すベル。何やら口をパクパクさせてはいるが、その言葉を脳が拒んでいるらしい。
そしてベルが完全に再起動する前に、教会のドアがコンコン、となった。
俺はドアまで歩いて行き、そのドアを開けて歓迎の言葉を述べる。
「お邪魔します」
そう言って入ってきたのは、金髪金眼の美しい少女だった。まるで神様たちの整った美貌に匹敵……いや、並のそれすらも超越する様な神秘的美貌。
その名はーー
「ーーあ、アイズ・ヴァレンシュタインさんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ⁉︎」
「……あっ」
ベルは、気絶した。
◾︎
後に、アイズ・ヴァレンシュタインは、自らにとってその少年は幸運の兎だったと語る。そうはいってもその出会いははっきりいって、微妙だった。
始まりは遠征の帰り道、自分たちの失態で逃げられてしまったミノタウロスに殺されかけたその少年を助けたことだ。
「……大丈夫?」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
あろうことか、その少年は、助けた自分の姿を見て、逃げ出したのだ!
それはもう、一目散に。虚をつかれたためか、少年の足が予想外の速度だったためか、あっという間に見失ってしまったアイズ。
(私、そんなに怖かったかな……)
そんなことがあったためか、割とショックを受け、心持ち暗い表情で(もっとも、アイズ自身無表情なので気付く人は少なかったが)オラリオを歩いていたアイズ。
好物のじゃが丸くんを買って気持ちを立て直そうと許可をもらって本拠地を出て、売り場に着いたところで、二度目の出会いがあった。
「ヘスティア神。とりあえず、CMの方は作り終わりました。後で放送しに行きます」
「そうかい。いまバイト中だから、見には行けないけど、頑張っておくれよ!」
と、会話する2人ではなく、男のほうに背負われているカバンに着く『縫いぐるみ』が、二度目の出会いだった。
その縫いぐるみの色は真っ白く、リスの様な、ウサギの様なよくわからない姿に、スカーフを巻いている格好をしていた。その姿が先程の少年を思い出させたため、目に止まったのだろう。しかし、それはきっかけに過ぎない。ただ、アイズが1つだけ思うのは。
(……かわいい)
その一言だけだった。
近づいてじーっと見る。しっかりとどんなものなのかを覚えて、後で買うために。だが、少し近づき過ぎた様で、男が振り向く。
「アイズ・ヴァレンシュタインっ⁉︎」
「……それ」
「……フォウくんがどうかしましたか?」
「……どこで売っているの?」
「ええと、すみません。まだ、発売前なんです。だからどこにも……ごめんなさい」
本日二度目の撃沈。
二度目と言うことで、ショックが大きく、顔にいつもよりも出たのか、その女神が察しが良かったのかはわからないが、暗い顔をしているアイズに、こういった。
「そんなに欲しいのなら、発売まで誰にも言わないと約束するかい?そうしたらクエスト報酬にして、渡すって言うのはどうだい?」
それに対するアイズの反応は即決だった。
「……遠征終わりだし、難易度によるけど、たいていのものならすぐやるし、約束もする」
そんな訳で。アイズ・ヴァレンシュタインは教会へと来る運びになったのだった。
そしてそこで、三度目の出会いがあった。先程助けた男の子がいたのだ!その助けた男の子は、自分を見るなり気絶してしまったが。
そこで、エミヤという男が、「謝りたいなら膝枕をするといい。そうすればトラウマも和らぐ」と言ったので、その通りにするアイズ。
その兎の子はすぐには起きそうもないので、そのままの状態で依頼のあらましを聞くこととなった。
膝の男の子(ベルというらしい)の頭は、少しだけフサフサでチクチクしたが、あまり気にはならなかった。
そして、依頼はというと。
ドン、と音を立てて、紙の束がアイズの目の前の机に置かれる。あわや、その一枚一枚が依頼かと思ったが、どうやら違う様だ。
「……ここに書いてある台詞を読み上げて欲しい」
「……そんなことでいいの?」
実際、アイズは、三十階層くらいまでなら行ってもいいという気持ちにすらなっていたために、些か拍子抜けだった。
「あぁ、読み上げた内容を、放送まで秘密にすれば問題ない……」
「……放送?」
そこで、やろうとしていることの説明を受けたアイズ。それを聞いてアイズは。
「……やる」
その運命となる『マシュ』という役に出会うのだった。
ちなみにベルはというと。
「えっ……アイズさんが僕に膝枕?これは夢…………………」
「……大丈夫?……気絶しちゃった」
「気絶するまでの時間が伸びてただろ? トラウマは薄れてきてる」
「……そっか」
◾︎
その2日後。
アイズは、自室で落ち込んでいた。
ベッドにうつ伏せに寝転がりつつ、2日前に台本とともにもらったフォウくんの縫いぐるみ(まくら大)に顔を押し当てる。
昨日の夜。宴会でのことだ。偶然居合わせたベルは、ベートの言葉を聞いて、店を飛び出していった。
無論、知らない顔でもないベルに、何か言わなくてはならないと思い、店を抜け出したが、一緒にいたと思われるエミヤに腕を掴まれ、止められた。
『あれは、男としてベルが乗り越えないといけない壁だ。アンタは行かないでやってくれ』
そうして躊躇しているうちに、ロキに掴まれ、追いかけることができなかった。
(傷つけちゃった、よね……?)
そんなアイズの脳裏に、昨日噛んだりして詰まらない様にと、渡された台本の一節を見る。それは、マシュが、とある英雄からかけられる言葉だった。
『人は、守りたいものがあるとき、本当の意味で強くなれるものだ』
昨日、あのことが起きるまでは、自らの守りたいものとはなんだろうと思うだけだった。
だが、その言葉は心のしこりのように、心のどこかに残っていたのだろう。心のどこか片隅で考えて続けていた言葉が、今はそれだけが脳内で反響する。
アイズの頭にあるのは、こんな思いだった。
「……わたし、守るどころか、傷つけちゃってるよ……」
その白い毛が、アイズの頬をチクリと刺した。
◾︎
2神(ふたり)は、昨日もいた道で呆けていた。間抜け面を晒している、と言っても過言ではない。
というのも、2神を襲っているのは耐え難い虚無感だった。それも無理はなかった。昨日みたトレーラーはそれほど興奮したのだ。
故に、今襲っているのは、虚脱感というものだった。一回知ってしまった興奮はそう簡単に忘れられるものでもないのだ。
何度か見返すことができたら、その興奮の状態は今も続いていたことだろう。だが実際、それは再びバベルに映し出されることはなく、金曜の怪物祭が終わったら、みにくるかなーくらいの気持ちにまで虚無っていたそのときだった。
再びあの青い絵画がバベルに映し出されたのだ!そして再び、あの画像が映し出されたのだった!
ただ、それは昨日と全く同じ、ということではなかった……。
その、ロゴが映し出されたとき、終わりを理解したその神は、消えていく光を見て、視線を下に向け、止めていた息を吐いた。
そうして余韻に浸っていると、周りの者達がまだ、バベルを見ていることに気がついた。
白い吹雪が舞う、楽園のごとき場所。
真っ白。まるで夢のかけらの様なそこにいるのか、不明。いわばそれは夢幻。そんな夢幻の如き場所に、白いローブを被った男の姿が映し出されていた。
『ふん、昨日と、全く同じということでは、退屈だろう。故に、僕から少しだけ情報開示といこう』(CVミアハ)
その、輪郭がぼやけて正体がはっきりしない男は語る。
『ーー聖杯戦争。それは7人の魔術師と、英霊による血塗られた戦い。その勝利者に与えられる聖杯を巡って、過去の英雄達が、しのぎを削るーーっていうのが本来なんだけどね。ほら、今回は違う様だ』
そこに映し出されるのは、炎上する都市。その中には、巨大な塔が見られる。
「オラ……リオ……?」
1人の神がそう呟くが、それを聴くものなど誰もいない。映像に噛み付く様に皆見ていた。
『ここで、今回、この物語に登場する、英雄について放送まで、毎日1人づつ紹介して行こうじゃないか。……最後の1人が紹介されたとき、物語は始まるよ。さぁ、記念すべき、1人目だ!』
そうして、ブツン、と音を立てて画面が切り替わる。
映し出された画面に映るのは、石に描かれた、全体として丸い紋様。ただ、その周りには草の様なものが巻きついている。
そして、そこに『新たなる英雄、参戦!』と出た瞬間、気弱そうな少年の声が聞こえた。
声の主であると目される少年が映し出される。
白い癖毛に、赤色の瞳。雰囲気としては声の通り、気弱そうであるが、それでも、剣を握る腕と、その瞳だけはしっかりとしていた。
同時に、切なげな歌。
それでいて芯は固まっている様な、そんな声色の歌が流れ始める。
『……そうか。後の世で僕は最弱の英雄と……。ならばこそ、私は! 再び綴ろう、英雄日誌!』
servant class:Saber
そうして、再びロゴとそれを読み上げる声が終わると、バベルには静寂が戻った。
そして、その静寂を破るものが出た途端、一気に騒めきが伝播した。
「なん……だと?」
「おい、最後の誰だ!」
「クソッタレ。粋なことしやがる!」
「7日連続だと言ってたよな!明日は誰なんだ!」
「〜〜♫」
「おい明日は誰なんだ!今日は誰だったんだ!」
「英雄アルバートじゃないか?」
「いや、違うね。俺はこう思う……」
「……というか、今の歌なんだ!あんな曲調の曲なんて聞いたことないぞ!」
「確かに吟遊詩人の曲とは全然違う!」
「妙に心に残る旋律だったな!」
「「「金曜日はまだなのか!!」」」
次の日映し出されたのは、ドワーフのごとき
彼もまた、歌とともに語る。
『余は征服王、イスカンダルなるぞ! 彼方にこそ栄あり! 征服せよーーっ!』
servant class:Rider
「イスカンダルだって?」
「彼は、我々ドワーフすらも認めた豪傑と伝わっているが」
「確か、どっか古代の王だったよな!」
「おれ、ちょっと図書館行ってくる」
「俺も!」
「私もよ!」
「「俺もだ!」」
「「「「「「「「「「俺らもだ!」」」」」」」」」」
その日、図書館職員は思い知った。神様達に取り囲まれる恐怖を。包囲網の中に囚われる屈辱を……。
そして、その次の日はというと。
曲とともに映し出されたのは、頬に傷のある女の獣人だった。その女が握るのは曲刀か。そして、自信満々という表情で、宣言する。
『………怪物殺しなら任せるといいさね……一瞬でその命……刈り取ってやるからさぁ』
servant class:Assassin
「おい、今度は誰だ!」
「……盗賊っぽいな。お前はどう思う?」
「♫」
「歌ってんじゃねえよ!」
「いや、つい印象に残るだろう?」
「それはそうだが」
「……みんないなくなったが、明日からは考察班を立てるのもいいのではないか?」
そうして帰った神々は、口々に想いを馳せる。冒険者は期待を膨らませ、それを聞いた他のものも観に行こうという気になる。そして、図書館職員は今日もまた屍と化すのであった。
●おまけ
「あーいずたん!遊びましょ!」
「ロキ……静かにしといてやれ」
「むう、あの縫いぐるみなんだか聞きそびれちゃったよう」
「う、うむ。私の声がな、流れるというのは誇らしくもあるが、恥ずかしいな」
「いや、とてもかっこよかったですよ!ミアハ様!」
「うおおおおおおおっ!カッコいいぞ!」
「落ち着け、ヴェルフ」
「そうよ。確かに面白そうではあるけどね」
「このガネーシャ、怪物祭主催として、負けてはおれんな!」
「オッタル、あれについてどう思う?」
「英雄か。私には、関係ない……」
「おい、サポーター、行くぞ!」
「……何やら上が騒がしいな」
「タケミカヅチさま、こんど、あれを観に行きませんか?」
「そうだな。
「……」
●おまけのおまけ
バイト中のヘスティア
「ロキのところの子とは言え、有名人だ!それを殆ど元手なしで声優やらせられるのはデカイ!」
ステイタス更新後のヘスティア
「……なんてこったい!敵に塩を送ってしまった! あぁ、あぁ、数時間前のボクはなんであんなフォローをしてしまったんだ……ッ!」
エミヤ「適当に前世の名言混ぜてくスタイルなら、より一層ウケるのでは」{アイズに精神負荷をかけていくスタンス)
ちなみに今回は、1/3がFate鯖(丸わかり)。
最後の英雄は……ダンまち外伝読めば、なんとなくこれじゃねというのはわかるかも。
短編ランキング一位になったから、嬉しくて投稿したってわけじゃないんだからね!そこ勘違いしないこと!いい?期待しちゃダメなんだからね?感想欄が悪いのよ!あなた達のためなんかじゃないんだからね!……連載に変更したのもあなた達のためなんかじゃないんだからね!