【ネタ】転生特典はFateの投影だった   作:機巧

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トレーディングカードゲーム化
主人公はモルドさんです


激闘クラス別鯖戦「初イベントってのはメンテが必須だよな」

 

モルド・ラトローにとって、その相手は初め、取るに足らないものだった。

 

ダンジョンのある建物の前の広場で時々、冒険者を探しているサポーター。フリーなのだから、せいぜいレベル1のはじめ程度かつ弱小ファミリア。みすぼらしいなりもそれを表しているようだった。

35歳にしてレベル2で燻っているモルドよりはるかに下の、底辺。その日その日を暮らしていくのも大変な、惨めな生活を送っていることくらいは簡単に想像がつく。

 

結局、どれだけの幸運が訪れたとしても、あのサポーターはせいぜい自分か、それ以下にしかなれないであろう。

そんな程度の、雑魚。

そんな雑魚に、モルドは今追い詰められていた。

 

(どうして、ここまで食らいつく……なぜ、ここまで――)

 

そうして、その目を見た。

 

――あぁ、こいつは俺だ。届かないと知って、それでもまだどこかで希望を持っていた、俺だ。

 

失敗ばかりの人生だった。

15歳で冒険者に憧れて街を飛び出し、オラリオへとたどり着いた。そこでファミリアに入ったものの、レベル2に上がったまま停滞。

自分よりあとに冒険者になったものたちがどんどんレベルアップする姿を見る毎日。

 

【剣姫】などが良い例だろう。

そんな日々を過ごすうちに、幼い頃に憧れたものなど何処かに忘れてきてしまった。

今や、出会いなどなく、稼いだ金はギャンブルで使い果たす。

 

そんな日々に変化があった。

Fate/grand order。突如始まったそれは、モルドにとある思いをもたらした。

すなわち、まだやれるのではないかという思い。

だが、そんなものは幻想だとすぐに気づいた。自分は英雄ではないということなんていうことは、ここ20年で自分がよくわかっていたからだ。

あの登場人物などにはなれない。確かに主人公は一般人であるが、自分にはあのような状況はない。

本当に失敗だらけだ。

 

――どこで、俺は間違えてしまったのだろう。

 

そんな気持ちの中、参加したカードゲーム大会。そこで対戦した相手は、自分のような奴だった。だが、そいつは自分と同じ。そのはずなのに、諦めていなかった。まるで、かつての自分のように。

 

「勝者、リリルカっ!」

 

――ああ。

 

なにかを掴みかけたモルドは負けたにもかかわらず、なぜか懐かしく、少しだけ晴れやかな気持ちになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

FGOトレーディングカードゲーム。

 

ガチャで手に入れたサーヴァントや概念礼装と言ったカードとコマンドカードというものを組み合わせて行うカードゲーム。

 

組み合わせ次第で色々なデッキを組めると言ったところで、「世界にひとつだけの君だけの英雄デッキを作ろう」というキャッチコピーが受けて、また、本家の人気も相まってすぐにオラリオでメジャーとなったものである。

 

エミヤが、アスフィに作ってもらった細かい文字を印刷できる魔道具で、カードを作り、さらにアスフィの魔道具で色々な細工をしつつ、カードゲームを作り上げたものである。

アスフィ酷使しすぎと思われるかもしれないが、本人が喜んでやっていたのでよしとしよう。(右手にホロウチラつかせながら)

また、今までの引いたイラストカードの袋(普段は銀だが、虹、金もある)に同封されていた交換券を見せることで、カードゲームの方のカードをもらえるようにした。

ちなみにこれからはイラストカードとゲームカードは同封されるようになる予定である。

 

そんなこんなで始まったカードゲームであるが、知名度を高めるため、放送が終わった後にゲームのやり方を映像で紹介したところ、売り上げがかなり伸びた。

これもあって、“激闘クラス別鯖戦”と題して大会を開いたのである。ちなみに運営側に強制的に回されたベルは「恨みますよ」と言っていたが、試作品stay nightで60時間耐久しているうちに忘れたようだ。ちなみに部屋から出たベルの耐久値は上昇値400オーバーだった。

 

ちなみにクラス別と言いつつも、全然クラス別に分かれていないのはその場のノリという奴である。

 

 

 

 

 

そして、その決勝戦。

決勝に進出したのはどこぞの神と、リリルカという少女だった。

そして、リリルカ・アーデは絶体絶命のピンチに追いやられていた。

 

(……私は、ここで終わるのか)

 

そんな思いがリリの胸に去来する。その俯いた顔を見て、相手の神はほくそ笑む。

 

「お前はよくやったよ。だが、お前のサーヴァントはジークフリートを除いて全部NP20以下……ジークフリートも宝具以外の攻撃は単体で、お前のジークフリートは宝具は打てない。しかもこちらは全てNP100がずらっといるため、マスターに直接攻撃しても意味はない……さぁ、降参するんだな」

 

確かにそうだ。

サーヴァントを無視してマスターに攻撃するという手もあるが、今の手持ちでは削りきれない。そして次のターン、終わりだろう。

だからこれはいつ死ぬかの問題だ。

今死ぬか、1ターン後に死ぬか。

 

(――もういいや。私はきっと――)

 

諦めかけた、そんな時。リリルカの耳に声が聞こえた。

 

「おい、リリルカっ!俺に勝ったんだから、負けるなんてゆるさねぇぞ!そんなもん、なんでもないだろーが!」

 

なんでもないということはないだろう、とリリは思う。正真正銘、絶体絶命のピンチだ。

だが、その声が、ある言葉を思い出した。

あれは、バベルの前で聞いた言葉。主人公の口癖。

 

『なんでもないよ、マシュ』

(そうだ、こんな程度、なんでもない)

 

そうして、リリは山札へと手を伸ばす、

 

「――諦める、もんか!」

 

叫びとともに、奇跡が、起きた。

いや、引き寄せた。

相手の神は笑いを顔に貼り付けたまま、嘲る。

 

「はっ!サポーターのクズが。なにを引いたが知らないが、笑わせるなよ」

 

だが、その余裕も、そこまでだった。リリがカードをバトルゾーンに出した瞬間、驚愕する。顎が外れたまま、その神は叫ぶ。

 

 

「――カレイド、スコープだとぉ!ど、どこでそんなもの!」

 

 

それにリリは小声で答える。

 

「……カードは拾った(キリ」(小声)

 

そして、リリはそれを孔明へとつける。

 

「1ターンスタン、NP減少だと……そんなバカな。これでは防御宝具が……」

 

そして、この後稼いだ1ターンで、黄金律によってNPを稼いだジークフリートの幻想大剣にて試合は決着した。

 

 

 

 

『――優勝者は、リリルカさんっ!!』

 

 

 

「優勝者には新たなシナリオ優先プレイ権が与えられます」

 

そんな声が遠く聞こえる夢見心地でリリはその後の時間を過ごしたのだった。

それは、人生初の体験であったからか、今までの緊張からか、それとも他のものであるのかは今のリリには分からなかった。

 

そして、ある男は何も言わずにその場を去ったのだった。

 

 

 

 

 

◾︎

 

 

 

 

 

 

「ドゥーーーチィーーービィーーーーっ!」

「なんだいロキ。今日は来ないのかい? やっぱりね。君はボクに負けを認めたということだね!」

「なんじゃとオラ!」

 

 

どこかの神様の喧嘩を背景(バックサウンド)に今日もまた、バベルに絵画が映し出された。

 

襲撃してきた黒い聖女を撃退し、なんとか悪竜殺しの英雄を助ける主人公たち。

王妃と音楽家というなんとも戦闘向きではない仲間だが、なんとか小次郎と聖女のおかげで撤退することに成功するがしかし、そこに巨大な邪竜が現れる。それを、その英雄、ジークフリートは呪いを受けていながら、宝具を解放。なんとか逃げおおすのだった。

 

「くそ、呪いかよ!」

「使えねーな!」

「なんとか逃げ切れたようだな」

「竜って黒龍だよな……どんだけなんだよ。三大クエストのと何か関係があるのか?」

「もはや小次郎の方がドラゴンスレイヤー」

「竜殺し、小次郎っ!」

 

 

 

 

 

そして、キャンプ中。

人間観について、アマデウスはマシュに語る。人間とは汚いものであると。でも、同時に言うのだ。汚いもの?好きだよ、と。汚い事と好き嫌いは関係ないと。

 

『僕が残したものは多くの人々に愛されたけど、僕の人生はどうでもいいものだった。でも、それでいいんだ。人間は醜くて汚い。僕の結論は変わらない。輝くような悪人も、吐き気をもよおす聖人もいる。だから君も、自分の未来を恐れる必要はない。君は世界によって作られ、君は世界を拡張し、成長させる』

 

そう。

 

『人間になる、とはそういうコトだ』

 

 

「――っ、」

「ソーマ様?どうしました」

「なんでもない」

「いいこと言うじゃん。その前の発言クズだけど」

「まあその通りかもな、クズだけど」

 

 

 

 

 

そんなところで、敵に襲われる。

 

『……すまない。君たちがいま素晴らしい話をしているのは理解できる。できるのだが……。敵がやってきたようだ。すまない……空気を読めない男で、本当にすまない……』

 

 

「すまない連呼するな」

「謙虚すぎるだろこの大英雄」

「というか、呪いで動けないのにな……」

「すまないだな」

「もはやすまない」

「すまないさん」

「「それだ」」

 

 

 

 

 

そして、相手のステゴロ聖女が襲ってくる。

 

「聖女って、なんだっけ」

「拳握る人じゃない?」

「脳筋一択だろ常考」

「いや、それ凄女じゃん」

 

 

 

 

そんなこんなでステゴロを倒した主人公たち。なんとか、その情報を頼りに聖人を探す。ジークフリートの呪いを解くために。

 

「やられてないだろうな」

「……聖人は死んでいた!」

「おいバカ」

「人でなしだなお前」

「神ですから」

 

 

 

 

そして謎の娘2人も仲間となり、聖人と出会う。そうして、オルレアンへと向かうことになるのであった。

 

 

「次が決戦か!」

「楽しみだな!」

「ようやくすまないの復活」

「というかヤンデレ怖い」

「大音量であの歌流すとか何考えてんだ」

「おい、ピックアップ2がきてるぞ!」

「「おい、行くぞ!」」

 

「「来週早く来い!」」

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ

 

「ドラゴンスレイヤー爆誕」

「そういえば最近オラリオで燕見ないよな」

「なんでだろうな」

 

「エイナー。最近旗持ってダンジョン潜っている人多いのだけど……」

「怪我する人増えそうで、止めないとね」

「それがさぁ、なぜか回復魔法習得した人が増えて負傷者は多いけど死者は減ってるのよね」

「(なんともいえなそうな顔)」

 

「優勝者のstay nightってなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「知りたい」

「やりたい」

「見たい」

「「探せぇ」」

 

「せいっ」

「アイズー、なにティオネみたいに、拳固めてるの?」

「失礼ね!私はそんなんじゃないわよ」

「シュシュ(拳を振る音)」

「団長が拳を……し、失礼しました!」

 

「借金、返せちゃいました。ミアハ様」

「ヘスティアたちに感謝をせねばな」

 

「なあランサー、別にこの港の魚を釣りつくしても構わんのだろう?」

「きゃあああああああああ(テンション増しまし)」

「当たり前の幸せは、何より当たり前であるあたりが最高だ」

「…………ひっく、……ぅ(感無量)」

「――さあ、終わりの続きを見に行こう」

「ぁ……ぅ……(放心)」

 

「ヘラクレス3893体も間違えて印刷してしまったんですが、どうしましょう……」

「ベルくんのバカァあああああああああっ!」

「……まぁ、刷ってしまったもんは仕方ないし、プレゼント企画はどうだ?」

 

 

 

 

 

●おまけのおまけ

 

 

カードゲーム大会から数日後のことだ。

カードゲームのボードが置いてある(提携したらしい)とある店にて、2人は再会し、徐々に交友を深めていくことになる。

 

「ふんっ」

「あーーっ!勝手に選択肢を選ばないでください!」

「別に勝手に選んでしまっても構わんのだろう?」

「……それって、死んでるじゃないですか……」

 

モルドには子供がいない。だが、いたとするならば、こんなバカを一緒にやったのかな、とモルドは思う。

そして、少し前のゲームのルートを思い出し、また自分の失敗だらけの人生も回顧する。

 

本当に失敗だらけだ。

 

だが。

その積み重ねで。これまでの選択で。

こいつと出会えたとするならば。

 

モルドは思うのだ。

 

 

 

 

 

『俺は間違ってなどいなかった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【悲報】モルド34歳未婚さん、子持ちになる




今週のおすすめFate曲「This illusion」
言わずもがな。説明は不要かと思われます。「disillusion」とは違うので注意。(歌詞は同じですが)
モルドさんは、きっと、求めるもの(本当の自分)を取り戻せるとおもいます。ちなみにアスフィさんはこの曲を口ずさみながら魔道具を作っているとか。

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