見知らぬ誰かと行く、夢の世界 作:からしたん
※序盤は原作無しのオリジナルストーリー
※原作開始はシャボンディ諸島から
※シャボンディ諸島~頂上戦争で完結予定
第三者視点で拙い部分もあるかと思われます。ご了承ください。
磯の香りがする。自室にしては何とも似つかわしい匂いで目を覚ました彼は、視界に広がる真っ白な砂に声も出さずに静かに驚いた。じゃり、と彼が少し手な力を加えれば、爪の間に砂が詰まっていく。
少しだけ重たい体を、無理矢理腕をついて起こした彼は、辺りを見渡した。真っ白に広がる砂だけでなく、彼の眼前には茂茂と森林が生えており、また彼の背後には、澄み渡るような青色の海が、波を立てていた。
「………………ん?」
おかしい、と彼は首を捻る。そうして彼は、自身の記憶を少しだけ遡った。
確かあの日は、上司に残業を頼まれて、全ての仕事を終わらせた疲れからか、家に帰って早々ベッドに倒れ込んで眠ったはずである。自分の記憶に何ら問題ない事を再確認した彼はーーーそれでも、首を傾げた。
(なら、俺が目を覚ます場所は自室のはずだが……)
明らかに、自室とは言い難い。こんな自室が世界に存在するのかという程に有り得ない光景である。
なら、彼が次に考察し、そして確信する事例はーーー。
「これは、夢か」
腑に落ちたように浅く笑う。
そうだ、これは夢なのだ。考えてもみろ。普通、自室から砂浜にワープする事など有り得ない。だからこれは夢なのだと断定するしかないのだ。妙にリアルな夢だと思い込めば、慌てふためいていた心も落ち着きを取り戻す。
さて、と彼は一度一息吐く。どうして夢の中で砂浜にいるのか定かではないが、折角の夢の中だ。この無人島を探索しようではないか。と彼は意気揚々と森の方へーーー行く前に、顔についている砂を洗い落とすために海へ近づく。
こんなにも綺麗で真っ青な海は見た事がなく、柄にもなく見蕩れてしまった。思わず感嘆の声を上げるがーーその時に気づいた。自身の顔のある変化に。
病弱ではないかと疑われそうな雪のように真っ白な肌。それとは逆に真っ黒で、もみあげ部分が半端に白く染められている髪。人一人殺せそうな鋭い目付き。そしてこれまたブラックホールのような漆黒の瞳。
「………………」
水面に映った自身の顔に、彼は一度動きを止めた。そういえば服にも違和感がある気がする、と体を見下ろせば、黒の外套が目に入った。成程、こんな着慣れないものを着ているから違和感があったのだ。しかも首にはスカーフのような真っ白いものが巻かれている。なるほど、少々息苦しいと思ったのはこれのせいか。
うんうん、と分かったように頷いた彼だったが、暫くすると頭を抑え、うわ言のようにこう零した。
「ーーーーー誰、だ……?」
*****
ーーー目が覚めたら、見知らぬ誰かになっていた。
恐らくほぼ九割の人間が「何言っているんだ」と彼に言うであろう。しかしこれは紛れもない事実なのである。水面に映る自身の顔面を何度見ても、そこに映るのは自分とは異なる、綺麗に整ったイケメンの顔。まるで二次元から飛び出してきたかのような美顔であった。
勿論、彼はこんな顔していない。彼の顔は普通にそこら中に群がっている普通の人間と同じである。唯一違うとすれば、切ろう切ろうと思ってすっかり忘れている、肩あたりまで伸びてしまった髪であろうか。兎に角そんな容姿なのだ。
ーーーそれがこんな、ひっくり返したかのような姿になるなんて。しかも、服まで変わっているではないか。これが落ち着かずにして何になる。自分は夢の中で否定されているのか?と思い始める始末。
「……さて、此奴は誰だ……?」
顔についた砂を洗い落とした彼は、早速この見知らぬ誰かについて思案した。
確かに顔はイケメンの部類に入るであろう。しかしーーー如何せん、肌が白すぎる。それに体が軽く、結構な細身だ。胃の中も空っぽで普通ならお腹が空いているはずなのに、この体は空腹を訴えていない。(ただ単に夢の中だからという可能性もある)
(この体の持ち主に、何があったんだろうな……)
そんな事が容易に察する事が出来てしまう。この見知らぬ誰かが何にあったのかは知らないが、成る可く傷つけないようにしようと心に誓った彼であった。ーーー夢で見知らぬ誰かと体が入れ替わる(?)のもあれだが。
「……今は、この現状をどうするか」
夢であろうと、さすがにこのままはダメであろうと彼は判断する。まずは自分の安息の地を探さなければならない。
その為には、あの生い茂る森を探索しなければ。もしかしたら何か収穫があるかもしれない。否、収穫がなければ生きていけない。
立ち上がり、服についた砂を払う。そして彼は、真っ直ぐに森の方へと歩き出した。
明らかに弱そうな体だと言うのに、体が軽い。腰ほどまでのでかい根っこを軽々と飛び越えるこの見知らぬ誰かの体に、彼は驚愕を隠せない。息も上がらないから尚更だ。
人知れず体を鍛えていたのかもしれない、と真実かどうかも分からない推測を述べた後、彼は一度立ち止まって辺りを見渡した。
結構な距離を歩いた気がする。もうあの砂浜が見えなくなる程に。だがそれは別にいい。問題は別にあった。
(この島……静か過ぎないか……?)
彼が奇妙だと思っていることは、この島があまりにも
この島は異常だと、彼は断定した。例え夢の中でだとしても、身の毛もよだつ。何とも夢見の悪そうな現状なのだろう。
そんな事を気にしながら、彼はまた歩き出した。いくらこの島が異常だからといって、この島を出ることは出来ない。夢から覚めるまで暫くこの島で衣食住を共にしなければならないのだ。その為には、身を守る住居や食を確保しなければならない。
幸いにも食に関しては森の内部で実る果物を幾つか見つけたので困らない。問題は住居である。さすがにこの森のど真ん中で眠るのは、夢だからといっても遠慮したい。
(洞窟とかないのか……?)
生い茂る木々を掻き分け、せめて洞窟でも、と彼が懇願したーーーその時であった。急に道が開けたのは。
最後にガサリと草木を掻き分けるとーーーー彼の視界に、
「……何?」
そこは確かに街であった。古風な家が立ち並び、お洒落な店も連なっている。普通に考えるならば人々で栄え、声が飛び交っているであろう。だから街として機能しているはずの所であった。ーーー全てが過去形な理由は、ただ一つ。
彼は呆然とその街並みを見て、零す。
「ーーーー人が、誰もいない?」
その街には、人間という生き物が何一つ存在しなかった。女も、男も、子供も、果ては動物さえも、全てが存在していなかった。
まるでごっそりと、人間だけが消えたかのように、その街は静寂を保っている。
恐る恐る、彼は街に近づく。やはり人の気配も、動物の気配も何もしなかった。さらに街にへと入っていく。屋台には美味しそうな果物や野菜が陳列されている。そのどれもが
「……どういう事だ?」
失礼だと弁えながらも堂々と民家に入り、中を漁る。ここで住民に見つかれば彼は即刻豚箱行きであるが、彼を咎める者など存在しない。
民家を漁って分かったことだが、衣服も家具も全て置き去りにされていた。さらに奇妙なことに、テーブルの上に置かれているスープや白米などは、
(夢の中なのにホラーなのはやめてほしい)
それは彼の切実な思いであった。
まるで住民全てがごっそりと消えた光景。しかもそれがついさっき起こったように読み取れる。一体この街に何があったのか、彼が知る由もない。
取り敢えず民家にあった金をくすねて、暫くこの街に住むことにした。こんな奇妙な街であるが、彼は民間人のように消えないという絶対的な確信がある。
それは何故か?簡単な事だ。
(ここは、夢の中だからな)
いつだって自分の夢は、自分を守ってくれることを、彼は信じて疑わなかった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。本作の注意事項をさせていただきます。
序盤は原作から少し逸れたオリジナルストーリーを予定しております。そこから原作に入っていこうと思っております。
また、本作は頂上戦争後で完結予定としています。ご了承ください。
原作キャラ生存タグを付けさせていただいた理由は概ねお察しの通りでございます。ご都合主義になるかと思われます。ご了承ください。
最後に、この第一話はお試し投稿でございます。次からは本格的なプロットを組み、ある程度書き溜めをしてから投稿することになります。
次からは第三者視点ではなく、彼視点で進んでいくことになります。
ここまでお読み頂きありがとうございました。次の投稿を気長にお待ちください。