…ドサリと肉の地に落ちる音が響いた。己がマスターの頭が飛んだのを把握する。対面しているのはバーサーカー。狂戦士のクラス。
「チッ。嫌に紳士的だと思っていたが所詮は狂戦士か。作戦だったのかは知らねえが、まさかいきなり裏切ってくるなんてなぁ」
「聖杯戦争で、他のサーヴァントと手を結ぶのは阿呆のすることですよ。…貴方のマスターはとてもとても阿呆なようですね」
「ようし、よく言ったバーサーカー。…かかってきな」
しかしまあ、あまり、マスターの好きにやらせておくのは下策だったな。これなら、一人の人間としてではなく、ただの魔力タンクとして扱った方がよかったか…?
「えぇ。では行きますよ。キャスター」
相対するは狂人となっても英霊であり、英雄であった男だ。…正面切って戦ったとして、どれくらい拮抗するだろうか。『もてなし』はランサーに奪われたし、『ねらった金庫』もライダーに壊された。さあて、いつ、切り札を使うべきか…。
バーサーカーがその漆黒に包まれた呪文を吐き出す。 疾風が吹きすさび、彼の虹色のマントを芳しくはためかせる。ソレは夜だというのに自らの力だけで発光し、その存在を主張する。黄金の冠はこのサーヴァントが王であることを証明するかのように、威光を穿つ。
――見たことのない容貌であり、どこにでもあるかのような邪悪さを孕んでいたソレは狂気を吐き出し、暴走する。魔力が集まり、極光は神々への門を開帳する
耐久する術は存在せず、援軍もない。更に己のみが生き残っても後に消滅は免れない。何より、その狂気の所為で正常な思考はロックされている。今、手持ちの
「…厄介なモンを、引っ張り出してきやがったな。神、と形容するには余りにも冒涜的だ」
「嘆くならご自由にどうぞ。結末はどうせ変わりませんので。えぇ、えぇ!貴方がどんな英雄であったとしても、いや、物書きに何かできるとは到底思っておりませんが。あがくのも興が醒めない程度にお願いしますよ」
門から触手が投げ出され、タコのような怪物は己を喰らい、ゼリー状の、いや、ヨーグルト状に変形していく。色んなモノを見てきたつもりだったが、コレはヤバイ。ハッキリとわかる。人が触れてはならないモノ。ソレに当たって跳ね返ってきた光さえ目に入れてはならない。人類には必要ないモノだ。昭義が先に倒れてくれてて幸いだった、というべきなのだろう。
先方が何かする前に蹴りを付ける。それが…最善策!!
「『ボッコちゃん』!頼んだぜ!」
彼女はボッコちゃん。そう名付けられているロボットだ。毒殺に使うが、彼女は無垢で決められた言葉しか吐かなかった。宝具の一部として昇華されてから、微妙に性能が向上し、会話や戦闘もこなせるようになった。もっとも、あまり信用できる性能ではないのだが。だが、この状況において彼の狂気に中てられないぶん、最も頼りになる。
「はい。命令をどうぞ。マスター」
「アイツの正体を探せ。…アレは何だ?」
ボッコちゃんには未来のコンピュータがインストールされている。何かを見ただけで、ソレが宇宙の何であろうとも、見つけることが出来る。…本当はもっと砕けた話し方をするのだが、未来のシステムは青少年育成における有害物として許してくれなかった。
「…検索完了。インストールされたデータを基に噛み砕きます。言語翻訳完了。拡大解釈開始…終了。表現がレーティングに引っかかりました。優和表現適応…終了。」
「アレは、神です。異星の神と表現するのが正しいでしょう。沢山の人格を内包しています」
真名の特定に関しては、最高峰のソースを用意してくれる。…コレでハッキリした。奴の真名は…。
「破壊しろ。******」
急にヨーグルトが飛んできた。
「ッマスター!!」
刹那、ボッコちゃんの首が飛ぶ。いや、首から下が消滅した。当たり前だが血は出ない。血液を毒にするとかいう魔改造をしていなくてよかった…。
「…ハハッ。融解性のある、ヨーグルトとはなぁ。腐らせすぎだと思うぜ」
「御冗談を。貴方はヨーグルトはお嫌いで?」
「冗談でも言ってねえとやってられないってことだよ。ったく、決死の覚悟で特攻でもしてやろうか?」
「ふふ、ならやってみてはどうです?貴方が命を捨てて、願いを捨てられるなら、どうぞ」
「なら、手前はないのか?死ぬほど大事なキョージってやつをよぉ。持ってないのか?救う未来も見つけられないか?」
「生憎、私は自分が楽しめればそれでいい質ですので」
とことんまで気が合わない奴だ。…やることは三つ。そういや昭義はまだ一画も令呪を使っていない。まさか、マスターより早く切ることになるとはな。やっぱり俺にはマスターを裏切ることは出来ない。
覚悟を決めろ。誰かの前にアイツを出させるな。
「じゃあ、そろそろ決着を付けようぜ」
前に出る。自分にできることは決まっている。後は通用するかどうか。…自分の世界を信用しなくてどうする。俺の物語はいつだってハッピーエンドではないが、人を否定するものではない。
人の可能性を模索する。
「いつでもどうぞ」
…楽しもうとして居やがる。ならやってやろうか。どうせ誰かがやらなきゃ斃せない相手なのだろう。
マイブレイン…もう少し、理解を拒んでくれ。
「…『ゲーム』を開始する」
「へぇ、ゲームですか。楽しませてくださいよ?」