女魔術師と解毒剤の水薬   作:ダラ毛虫

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今回のタイトルで「ああ、あの話か」と瞬時に分かる人は、筋金入りだと思います

原作では数行で済まされた内容を、妄想し、膨らませ、空想し、肉付けし、夢想し、炸裂させる

それもまた、二次創作の悦び




第3部前半:小説版3巻
金剛石の瞳が照らす真実


 ゴブリンスレイヤーと女神官が、鉱山でゴブリン15匹を皆殺しにしている頃。

 

 いつもの一党からゴブリン退治組を除き、槍使いと魔女を加えた6人が、臨時の一党(パーティー)を組んでいた。

 依頼は、小さいながらも至高神の神殿がある、とある街に蔓延する新興宗教を調べ、失われた神器を奪還すること。

 ゴブリンスレイヤーは当然、「ゴブリンはいるのか?」「ゴブリン退治ではないのか」「ならゴブリン退治に行く」であり、女神官はすみませんと頭を下げて彼について行った。

 

 

「てっきり、あなたもオルクボルグたちと一緒に行くかと思ったわ」

「私は、あの人みたいにゴブリンばかりにこだわっている訳じゃないんだけど……」

「そうなの!?」

 依頼の現場である街に向かう道中。

 妖精弓手にとって予想外だった返答に驚きの声をあげると、女魔術師はやや不機嫌そうな顔をした。

「白磁や黒曜等級だと、どうせゴブリン退治か巨大鼠(ジャイアント・ラット)狩り、あとは簡単な探索くらいしか受けられないもの。

 それなら、同じ駆け出しだけよりも銀等級冒険者と組んだ方が成功率は高いし、勉強にもなるでしょう」

 単独(ソロ)は厳しいしね、と続ける女魔術師。

 まあ、その『勉強』内容は、妖精弓手としてはちょっとどうかと思うところも多々あるのだが。

「だから今回は私たちと一緒に来た、ってことね」

「至高神の(やしろ)から盗まれた神具の奪還なんて、なかなか巡り会えない『冒険』よね」

 くすりと微笑む女魔術師に、その通り、と大きく頷いた妖精弓手は、調子がついたのか、話し込んでいるうちに少し距離が空いた、前を歩く他の4人へ駆け寄っていく。

 いつものように鉱人道士とやいのやいのとじゃれあい、蜥蜴僧侶にたしなめられ、普段は交流のない槍使いや魔女にも積極的に話し掛ける妖精弓手。

 

 その様子を、女魔術師は数歩後ろから眺めて、またくすりと笑う。

「もしかしたら、これ(・・)の出番もあるかもしれないし、ね」

 鞄に収めた新作(・・)を、布越しに軽く撫でながら。

 

 

 

 

「おうおう、出るわ出るわ。人攫いに麻薬の密売、窃盗恐喝、と、何でもありだのぅ」

「少し調べただけで、これほど証拠が見つかるとは……まだまだ他にも出てきそうですなあ」

「悪人っていつの時代にもいるものよねぇ」

「2000歳超えの上の森人(ハイエルフ)が言うと、どうにも笑えねぇ台詞だなあ、そりゃあ」

「神器、も、盗まれたのは、間違い、なさそう、ね」

「そうなると、次は……」

 街を調査した成果を並べて、会議を行う臨時の一党6人。

 ここまで特に戦闘は無かったが、ここから先は、そうもいかない。

「教団本部に乗り込むか、こっそり目的の品だけ奪い返すか、だけど。

 どちらにするかしら、先輩方?」

 分かりきったことを悪戯っぽく聞いてくる女魔術師(後輩)に、銀等級5人は、牙を剥く獣のような笑みを返した。

 

 ちなみに、蜥蜴僧侶と槍使いの笑顔は、獣じみた、というか、獣そのものだった。

 

 

 

 

 

『UUUUUUU……! AKAATERRRAAAABBBBB!!!!』

「……マジか、こりゃあ」

悪魔(デーモン)……!」

 怪しげな儀式を執り行う教団本部に踏み込んで、教祖を捕らえたのも束の間、神器である、瞳を模した青い金剛石に照らされた副教祖が、本性を現した。

 人に化けていた、首魁たる悪魔が、冒険者たちに襲い掛かる。

 その異形の身体、特に無数に蠢く触手は、魔力によりバチバチと帯電している。

 《稲妻(ライトニング)》か《雷矢(サンダーボルト)》か、と女魔術師が身構えると同時に、幾つもの電撃が一党に放たれる。

 

「《マグナ(魔術)……レモラ(阻害)……レスティンギトゥル(消失)》……ね」

 

 しかし、それらが命中するよりも早く魔女が唱えていた《抗魔(カウンターマジック)》により、負傷者は無し。

 その判断の早さ、そして、悪魔の魔術をも無効化する魔女の技量に、女魔術師は舌を巻く。彼女も《抗魔》の呪文は扱えるが、あの電撃が相手では、多少減衰させるのが精々だ。

「流石は銀等級、ってところかしら、ね!」

「ん? ちょっと口調真似した?」

「してない」

「えー? そんなこと言って、最後の『ね』とか……」

「嬢ちゃんと耳長ぁ! 口より手を動かさんかぁ!」

「動かしているわよ、っと!」

投石紐(スリング)も弓矢も、あのうねうねした触手に防がれちゃうわね……」

 前衛の蜥蜴僧侶と竜牙兵、槍使いも、なかなか近付けていない。

 オーガや小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)、大目玉とはまた違う、厄介な敵だ。

 

「それならそれで、やり方を変えるだけよ」

「……その壺……また?」

「ちょっとした『新作』よ」

 鞄から取り出した丸い陶器に、投石紐を巻き付ける。

 準備は良し。

「触手の隙間から目とかを狙って、隙を作れない?」

「簡単に言ってくれちゃって……!」

「簡単ではないけれど、あなたの腕前ならできるでしょう?」

 真っ直ぐな瞳で見つめられた妖精弓手が、うぐっと言葉に詰まる。

「あーもうッ!! やってやろうじゃないの!」

 そんな彼女に対し、女魔術師が「チョロいなぁ」と思ったかどうかは、定かでない。

 

 妖精弓手が、大きく息を吸って、吐く。

 矢を(つが)え、構え、引き絞る。

 普段は活発にあちらこちらへ動く視線が、きん、と標的を見通すように狙う。

 

「…………行くわ」

「前衛! 下がって!」

 空気を切り裂き矢が駆ける。吸い込まれるように触手の隙間を抜け、悪魔の左目を穿った。

 突然の激痛に、触手を振り回し暴れる悪魔。

 身に纏う電撃も強まっており、近接戦闘は危険と、前衛組が距離を取る。

「喰らいなさい」

 まさに、女魔術師が待っていた状況。

 思いきり投石紐を振りかざし、丸い陶器を投げつける。

 狙い(たが)わず、悪魔の胸に命中。

 

「それだけ電気を帯びていれば、起爆には充分よ」

 

 そして、爆発が起こった。

 

 

 

 怪しげな儀式が行われていた広間が、びりびりと震える。

 爆音の余韻と悪魔の絶叫が、空気を震わせている。

「隙あり、ってなあ! 《石弾(ストーンブラスト)》!」

 鉱人道士が時間をかけて練り上げた呪文が、たちまち大岩を悪魔の頭上に形成し、落下する。

 咄嗟に身をかわした悪魔だが、右半分の触手は大岩に押し潰され、ごっそりと持っていかれた。

「っしゃあ! 行くぜ!」

「攻め時ですなあ!」

 厄介な触手が半減したのをこれ幸いと、前衛2人が、竜牙兵を伴い悪魔の懐に飛び込む。

「「《サジタ()……ケルタ(必中)……ラディウス(射出)》」」

 彼らを迎撃しようとした触手は、魔女と女魔術師による必中の《力矢(マジックミサイル)》に撃ち落とされ、用を成さない。

 度重なる損傷(ダメージ)で、最早、身体に電撃を帯びることもできない。

 

 

 槍使いの槍が、蜥蜴僧侶の刃が牙が尾が、妖精弓手の矢が、術師3人の魔術が投石紐の石弾が、悪魔を傷付け、追い詰める。

 

 

 最期は、妖精弓手の放った矢が、悪魔の口内から後頭部までを貫き、とどめを刺した。

 

 

 

 

 

 

「で? あれは何?」

「あれじゃわからな……わかった。わかったから。

 そんなにぐいぐい来ないでよ。顔が近いってば」

「ふむ……水の街で使った物と同じかと思いましたが、随分と威力が上がっていたようですな」

「儂の見立てじゃ……ふぅむ……火の秘薬でも混ぜおったか」

「うん。正解。メディアの油(ペトロレウム)と火の秘薬を一緒に使えばどうなるか、比率とかを色々試しているの。

 これまで試した中だと、今回使ったのが1番よく燃えるわ」

「燃えるわ、じゃっ、なーい!

 あーもー! すっかりオルクボルグみたいになっちゃって……!」

「今さらじゃろ」

「はっはっはっはっ! 野伏殿は苦労されますな」

 

 

「なんつーか……あいつらがゴブリンスレイヤーの野郎とやっていけてる理由が、わかった気がするわ」

「ふふ……賑やか、よ……ね?」

 

 

 

 何はともあれ、依頼達成(クエストクリア)だ。

 

 




金剛石の瞳という心くすぐられるアイテム
しかも青色
こいつはキーアイテムに間違いねぇ……!(なお本編には無関係


悪魔さんは描写が殆んどないので、原作者様ご本人の二次創作()の『デーモンの尖兵』を拝借して強化しようかとも思いましたが、疫病持ちとか強化したら街滅んじゃーう

仕方が無いので、触手うねうねで強くて固くて雷撒き散らすシンプル構成


女魔術師の『新作』については、着発信管付き指向性てつはう、とか、可燃性ゼリーのナパーム弾風、とかも考えたのですが、まだまだ研究が足りないため、現状はこの程度です
なんちゃってアンホ爆薬ですね
次は金属片でも混ぜますか

…………どう足掻いても爆弾?
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