女魔術師と解毒剤の水薬   作:ダラ毛虫

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初期パーティーの壊滅について

女魔術師は解毒剤でどうにかなった(した)

なら、新人剣士と女武闘家は……?



※ 読後感の悪さは保証します



単発番外:天上遊戯(リトライ)

 ころころと。

 

 ころころと。

 

 

 ここではないどこか、ずっと遠くて、すごく近い場所で、《幻想》と呼ばれる女神が、サイコロを転がしていました。

 

 ころころと。

 

 ころころと。

 

 新たな冒険者を作り出(キャラメイク)します。

 

 

 まずは剣士の男の子。

 

 次に武闘家の女の子。

 

 そして魔術師の女の子。

 

 

 みんな能力的には平均以上ですが、回復役も欲しいかな、ともう一人。

 

 奇跡を3回も使える、神官の女の子です。

 

 

 随分華やかで、将来の成長に期待できる一党(パーティー)が完成しました。

 

 

 彼らはどんな冒険を見せてくれるだろう、とご機嫌な《幻想》は、早速舞台(シナリオ)を決めようとサイコロを振りーー……。

 

 

 

 

 あっ、と息を洩らしてしまいました。

 

 

 なんだなんだと寄ってきた神、白い人影に歯を剥き出しにした口だけが開く《真実》は、《幻想》の手元を覗き込んで、けらけらと笑い始めます。

 

 

 ゴブリンの巣。

 

 シャーマン1。

 ホブ1。

 ゴブリン16。

 子供4。

 

 

 お優しい《幻想》らしからぬ、殺意満載な舞台(シナリオ)に、《真実》は大喜びで手を加えます。

 

 指導者(シャーマン)がいるなら横穴から奇襲くらいするよな!

 剣士の装備は長剣か! ちゃんと周りを見て振れるかねぇ!

 おいおい、解毒剤も持ってないのかよ! ゴブリンだって毒は使うんだぜ!?

 へー、入口にトーテム? 誰か気付けると良いな!

 横穴の反対側にもトーテム置こうぜ! 斥候いないのが悪い!

 

 冒険者に「乗り越えてみろ!」と試練を叩き付けるのが大好きな《真実》はご満悦です。

 ありったけの困難を用意して「依頼を請けたことが失敗だった」などとのたまうのも日常茶飯事です。

 

 

 一方の《幻想》は、あっという間に出来上がった初見殺しに、しょんぼりと肩を落とします。

 

 盤面に新たに現れた『彼』次第で、助かる者もいるかも知れませんが、果たして何人生き残れるか……。

 

 

 全員が生き残る道筋なんて、あるのでしょうか。

 

 

 そんな意味合いの《幻想》の呟きに、《真実》は、珍しく口を閉じて考えた後、いつも通り、にんまり笑って言いました。

 

 

 

 

 試してみるか?

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

「入り口のところにもあったわよね」

 

 肉を裂き、刺し、潰す音と、自分の悲鳴。

 それらで埋め尽くされていたはずの聴覚が、少女の声を拾う。

 

 赤に染まっていた視界に、色が戻る。

 目の前には、何か獣の頭蓋骨を使った悪趣味な飾り。

 

 

「え?」

 呆然と、剣士は自分の身体を見下ろす。

 両手を目の前にかざし、確かめる。

 

「なん……だ……?」

 

 傷ひとつない、まだ生きている、自分の身体。

 

 

 死んだはず、殺されたはず、切り刻まれたはず、ぐちゃぐちゃにずたずたに刃物で棍棒で何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もーー……。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 びくりっ、と振り返れば、気遣わしげな表情をした神官の少女。

 

「もしかして緊張してる?」

「まったく……しっかりしてよね」

「少し休憩すべきでしょうか?」

 からかうように、呆れまじりに、心配そうに、それぞれ言う、仲間たち。

 

 

「い、いや! 大丈夫! ちょっとぼうっとしてた!」

 大丈夫。大丈夫。大丈夫だ。

 自分は生きている。死んでいない。だから、だから大丈夫。

 

 

「……念のため、呪文遣い二人の後ろについてくれるか?

 万が一、外に出ていたゴブリンがいたら、危ないからさ」

「それもそうね。じゃ、二人はあたしがしっかり守ってあげる!」

 なかなか豊満な胸を張る女武闘家に、女神官がお願いしますと微笑み、女魔術師が会釈する。

 

 

 

 ーーーーこれで、背後から襲われても、どうにかーー……。

 

 

 

 

 次の死は、巨大なゴブリンに、掌に突き刺した剣をそのまま握られ、全身を壁に叩きつけられた。

 意識が飛ぶ寸前、女魔術師の《火矢(ファイアボルト)》が巨体の顔面を貫き、女武闘家が群がるゴブリンを蹴り飛ばしているのが見えた。

 

 

 

 ああ。あの調子なら、きっと彼女たちは生き残れる。

 

 

 

 その思考を最後に、ぷつりと意識が途切れてーー……。

 

 

 

 

 

 

「入り口のところにもあったわよね」

 

 

 ーー途切れた意識が、視界が、音が、戻ってくる。

 

 

 

 

 

 繰り返した。

 

 狭い場所では剣を振りかぶれない。

 深く突き刺すと、次の行動が遅れるし、反撃されるかもしれない。

 小刻みに、喉や心臓などの急所を狙って、素早く突く。

 

 繰り返した。

 

 巨大なゴブリンを剣で殺すのは自分だと難しい。

 回避を優先しつつ、足を狙い、魔術を撃ち込む隙を作る。

 

 繰り返した。

 

 逃げ出したゴブリンを追いかけた先の、広間の奥にいる奴は魔術を使う。

 松明を持ったまま入ったら狙い撃ちされる。

 

 

 入り口の手前から松明を投げ込んで、一気に近付く。

 他のゴブリンに足止めされて魔術を食らい失敗。

 

 剣を投げる。

 なかなか当たらなくて失敗。

 当たったけれど、武器を失ったところをゴブリンに襲われて失敗。

 

 先に倒したゴブリンの武器を拾っておき、それを投げてみる。

 当たったけれど浅い。まだ生きている。魔術を食らい失敗。

 

 

 当たらない。失敗。

 肩に当たった。死んでいない。失敗。

 先のことに気を取られて巨大ゴブリンに殺された。失敗。

 

 魔術とゴブリンを避けながら近付いてみる。

 遠すぎて自分だと難しい。失敗。

 

 

 繰り返す。

 失敗。

 繰り返す。

 失敗。

 繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗繰り返す失敗。

 

 

 

 

「……《聖光(ホーリーライト)》……?」

「は、はい……! 光の奇跡、です……」

 知らなかった……。

 いや、この洞窟に入った時に、言っていただろうか。

 もう随分と、朧気なくらい前の記憶で、良く分からない。

 

 仲間が何をできて何ができないか。

 自分が何をできて何ができないか。

 

 しっかり把握しないと、一党(パーティー)頭目(リーダー)は務まらないんだな、と、今更になって知った。

 

 

 

「…………それって、目潰しにも使えるかな……?」

 

 

 

 

 女神官が広間の入り口手前から《聖光》を使い、自分が斬り込み、術遣いのゴブリンに棍棒を2本投げつける。

 怯んだ隙に距離を詰めて、目が眩んだゴブリンたちを無視して、術遣いを脳天から唐竹割り。

 確実に仕留めて、広間のゴブリンと戦っている仲間たちの援護に駆ける。

 

 そして斬って。

 斬って。

 斬って。

 

 

「………………終わり……か……?」

 

 いいやまだだ。

 何度も失敗した。

 何度も見落とした。

 ならきっと、今回も何か見落としているに違いない。

 きっと、何かを見落としているはずだ。

 

 

 探す。

 探す。

 何かを探す。

 

「……見つけた……!」

 

 骨を組み上げた悪趣味な玉座の裏。

 隠し部屋の奥に、ゴブリンの子供が4つ。

 

 

「子供も……殺すんですか……?」

 

 優しいな、と、皮肉抜きで自然に思えた。

 

 こんな血塗れの空間で、それでも彼女は優しくあれる。

 

「こいつらが大きくなって、あのデカイやつや、この術遣いみたいになったら、大変だからね」

 

 本当に大変だ。

 何度も何度も殺されたくらい、大変だった。

 だからちゃんと、殺しておかないと。

 

 刺して。

 刺して。

 刺して。

 刺して。

 

 小さな死体が4つ。

 

 これで、この洞窟にいたゴブリンは全滅だ。

 見落としはないはず。

 

 拐われた女の子たちも、まだ生きている。

 

 とても辛い目にあっただろうけど、生きている。

 

 仲間たちは、全員無事だ。

 

 

 ああ……よかった……。

 

 

 

「……冒険……成功だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 やっぱり回数かかるもんだな。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

「あ"あ"あ"あ"!!!!」

 

 酷い悲鳴だ、と思ったら、自分のだった。

 

 

 ザグズチッザクグチッザグッゴヂッズグ。

 

 酷い音だ、と思ったら、自分の身体が刻まれ刺され潰される音だった。

 

 

 視界を染める赤一色。

 

 

 こうなったら助からないと、何度も経験したから、知っている。

 

 

 

 

 

 死ぬのか。

 

 そうか。

 

 そうだよな。

 

 何度も死んだし、そもそも、とっくに死んでいた。

 

 

 ならきっと、あれは長い長い走馬灯みたいなものだったのだろう。

 

 

 

「……ぁ"…………」

 

 最後の声が、喉を震わす。

 

 もう、悲鳴も出ない。

 

 

 

 

 

 それでも。

 

 あの走馬灯に、何の意味もなかったとしても。

 

 それでも。

 

 だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちだって、勝てたんだ。

 




実は「試してみるか?」の時点で死に際の剣士君の走馬灯を加速して《真実》さんが遊んでいただけというクソムナクソなオチ

剣士君が「ホブを倒したら撤退」と選択できなかったのも《真実》さんの思考誘導


彼に救いがあったと思うかは、読み手の受け取り方次第です

彼の「勝てたんだ」を単なる負け犬の遠吠えと嘲るのも自由です


なお、筆者はハッピーエンド(主観)が大好きです!






生存条件

女武闘家:ホブ遭遇時に女魔術師が呪文を残しているor孕み袋(死んではいない)
女魔術師:女武闘家が後方警戒に残って奇襲対処or解毒剤準備
女神官:殺戮者(ゴブスレさん)のエントリーだ! まで耐える

新人剣士:突き主体の剣術にしてホブ撃破したら撤退を判断orTASさん化

その他:オリ主参入or女神官が寝坊




いやー剣士君、やっぱ難易度高いっす
状況に合わない初期武器のままでアイテムなしでガンガン先行って、RTA走者か何か?
チャート作り直そ? 剣売って買い物しよ?
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