女魔術師と解毒剤の水薬   作:ダラ毛虫

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ゴブリンスレイヤーと遭遇したのでゴブリンをスレイします(既知

女魔術師が《火矢》以外の魔術も使える、というのは独自設定です
原作には書いていないけど、多分《火球》と《力矢》くらい使えるだろう、と



小鬼を殺す者は小鬼を殺す

 淡々と2匹のゴブリンを殺し、女神官の矢傷を手当てをした鉄兜の男は、ゴブリンスレイヤーと名乗った。

 

「そちらは……毒か」

「ええ……解毒剤(アンチドーテ)があったおかげで、助かったけど……」

「運が良い」

 どうにか上体を起こして話せるまで回復した女魔術師に、やはり淡々と返答するゴブリンスレイヤー。

 自分の肩口、鎖帷子に食い込んだ短剣を引き抜き、ゴブリンの扱う毒について解説する時も、声には何の感情もこもっていない。

「全身に毒が巡っていれば、解毒剤があっても間に合わん」

 あと僅かでも処置が遅れていたなら、女魔術師が死んでいた可能性について語る時も、変わらない。

 

「…………そう……」

 

 平素なら、その冷血さに激昂しただろう。

 この洞穴に入ったばかりの頃でも、同じだ。

 

 しかし、ゴブリンに殺されかけ、そしてゴブリンを殺す男を見た女魔術師には、その冷たさが、何よりも頼もしく感じられた。

 

 

 この男なら。

 ゴブリンスレイヤーなら。

 

 きっとあいつらを、皆殺しにできる。

 

 

 

「お前たちはどうする。戻るか、ここで待つか」

「わたし……は……っ!」

 答えようとして、はっと女魔術師を振り返る女神官。

 行くと言おうとして、毒から回復したばかりの彼女を置いていって良いのか、と考えたのだろう。

 その、甘さとも言える優しさに、女神官を苦手に思っていた女魔術師も、僅かに頬を緩める。

「私たちも、行くわ」

 あんなに怯えていた女神官が勇気を奮おうとしているのに、足手まといでなんて、いられない。

 

「動けるか」

「ええ」

「はい!」

 戦士、魔術師、神官。

 鉄兜の男と、少女が2人。等級も銀等級と白磁等級というアンバランスさに目をつぶれば、それはまるで、1つの一党(パーティー)のようだった。

 

 

「何ができる?」

「《小癒(ヒール)》と《聖光(ホーリーライト)》の奇跡を授かっています」

「《火矢(ファイアボルト)》よ。あとは、《火球(ファイアボール)》と《力矢(マジックミサイル)》」

「回数は?」

「全部で3回。……残り、2回……です」

「…………全部で2回、残り1回……」

「……わかった」

 

 どうにもちぐはぐで、

 

「まず、臭いを消す必要がある」

「え?」

「臭い?」

 

 コミュニケーションにも、難がある組み合わせではあったが。

 

 

 

 

 その日、2人の少女は、ゴブリンの内臓を浴びる感触を知った。

 

 

 知りたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 そして、ゴブリン退治は進んでいく。

 

 女神官は《聖光》を2度使ったが、女魔術師の残り1回は温存したまま。

 魔術は使う機会もなく、「振り下ろすだけならできるだろう」と渡された棍棒で、足元に張ったロープで転倒した1匹のゴブリンの頭蓋を砕いただけ。

 

 呆気なく、女魔術師に毒の短剣を突き刺し、剣士を殺し、女武闘家を辱しめたゴブリンは、皆殺しになった。

 

「もう……もう大丈夫ですから……」

 

 女神官に抱き締められる、茫然自失となった女武闘家を、女魔術師は見つめる。

 

 

 女魔術師の手には、へし折られた杖。

 学院を卒業した証だったもの。

 彼女の誇りそのもの、だったもの。

 

 

「お前たちは、運が良かった」

 ゴブリンシャーマンを仕留め、その玉座に隠された倉庫を、ゴブリンスレイヤーが暴く。

 潜んでいたのは、ゴブリンの子供が4匹。

 

「……子供も、殺すんですか?」

 

「当たり前、でしょう」

 女神官にゴブリンスレイヤーが答える前に、女魔術師は呟いていた。

「生かしておく理由なんて1つもない」

「そうだ」

 女魔術師に、ゴブリンスレイヤーが応じる。

呪的資源(リソース)の温存は、まだ必要?」

「……好きにしろ」

 ゴブリンスレイヤーが数歩下がり、射線を開けた。

 へし折られた杖の先を、怯えた顔をして見せるゴブリンどもに向ける。

 

 ちらりと、女神官を見る。

 ほんの一瞬だけ。

 一瞥だけで、もう1度、ゴブリンを睨み付けた。

 

「《カリス(火石)……クレスクント(成長)……ヤクタ(投射)》」

 選んだのは、女魔術師が得意とする《火矢》ではなく、《火球》の魔術。

 単体ではなく、複数を攻撃する呪文。

 

 とは言え、まだ彼女の実力では、周囲を巻き込む爆発など起こせないのだが。

 

「これで、22」

 

 それでも、通常のゴブリンよりも更に小さく弱い4匹を焼き払うには、過剰なほどの熱量だった。

 

 




ゴブスレ「ゴブリンゴブリンゴブリンゴブリン」
女魔術師「燃やしてやる燃やしてやる燃やしてやる燃やしてやる」
女神官 「…………」←あかんこれ、って顔
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