女魔術師と解毒剤の水薬   作:ダラ毛虫

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そしてその次のゴブリン退治へ



次のその次のまた次のゴブリン退治へ

 ゴブリンスレイヤーがゴブリンを殺し、2人の少女が命を救われてから1ヶ月。

 

 

「何を拗ねているのよ」

「拗ねてません!」

 ふてくされた子供のような女神官に、女魔術師がくすりと微笑む。

「……もしかして、防具の件?」

「…………神官長様から、地母神に仕える者が鎧を着るとは何事だって……」

「ふぅん」

 言ったきり女神官は、不機嫌そうに頬を膨らませて黙ってしまう。

「自分の命を守るものなんだから、自分で決めたことに文句を言われてもねぇ」

「……」

 呆れたように女魔術師が言っても、女神官は黙ったまま。

 だからだろうか。少しだけ、悪戯心が湧いてきた。

「それとも、『あの人』に教わったことに口を挟まれたから、機嫌が悪いのかしら」

「!? そんなことありませんよ!?」

「どうかしら」

「ありませんってば!」

 わたわたと顔を真っ赤にして反論する女神官と、楽し気に笑う女魔術師。

 

 

 ゴブリンに村が襲われることも、冒険者が全滅することも、日常茶飯事なよくある話のこの世でも、少女たちは笑えている。

 

「ほら。あの人ももう来ているわよ」

「あ! ゴブリンスレイヤーさん! ど、どうも……!」

「ああ」

 

 生きて、冒険者を続けて、笑えている。

 

「あの……今日も……」

「ゴブリンかしら」

「ゴブリンだ」

 

 内容は、他の冒険者と、ほんの少し、違うけれど。

 

「来るのか?」

「はい!」

「ええ」

 

 それでも今日に、続いている。

 

「……あっ! せ、先日の、一件、ですけどっ!

 やっぱり火の秘薬で洞窟を崩す、というのは、やり過ぎだと思うんです!」

「それがどうした」

「火の秘薬は勿体ないけれど、私の魔術じゃ洞窟を崩すのはまだ無理よ」

「そうじゃなくて……山だって、崩れてしまうかも、ですし……」

「ゴブリンを放置するよりは遥かにマシだ」

「ですからっ!」

 

 今日が続けば、また明日へ。

 

「それで、襲撃の時間は覚えたか」

「う……と……早朝か、夕方、です」

「ゴブリンにとっての『夕方』が早朝。真昼、つまり『真夜中』は却って警戒が強い、だったわね」

「そうだ。

 次だ。突入する際の手順」

「えと……」

 

 続く限りは、続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北の山奥の砦……棲みついたか」

「すでに被害も出ています。

 善意で救助を請け負った冒険者も未だ……」

 

 かつて森人(エルフ)が古木で築いた山砦。

 ゴブリンに拐われた村娘。

 義憤に駆られた、第八位、鋼鉄等級冒険者の女一党(パーティー)

 

「……手遅れだな」

 もはや生きてはいない、と、ゴブリンスレイヤーは断じた。

「だが放置はできん。今潰せば、これ以上にはなるまい」

 それでも、そこにゴブリンが居るのなら、彼はゴブリンを殺しに行く。

 

 女神官と女魔術師。

 この1ヶ月で、随分と見慣れてきた、2人の少女を伴って。

 

 

 

 

 

「《サジタ()……サイヌス(歪曲)……オッフェーロ(付与)》!」

 《矢避(ディフレクト・ミサイル)》の魔術、女魔術師が修得したばかりの呪文が、3人を守る。

 鉄兜を装備したゴブリンスレイヤーならまだしも、後衛である女神官と女魔術師には、投石紐(スリング)による石弾のまぐれ当たりも致命傷だ。

 

 死んでから「呪文の使用を躊躇わなければ」と悔やんでも意味はない。

 これも、ゴブリンスレイヤーから、そして今日までの冒険から、少女たちが学んだことだ。

 

「5。……そろそろ来るぞ」

 火攻めで山砦を燃やし、弓矢でゴブリンを射殺していたゴブリンスレイヤーが、女神官へ告げる。

 

 その言葉通り、燃え盛る山砦から逃れようと入口に駆けていたゴブリンたちはーー……。

「《聖壁(プロテクション)》……!」

 ーー不可視の壁に阻まれ、砦の中へと転がり戻る。

 

 

「新たな呪文も奇跡も、有効だな」

 狭間から逃れんとするゴブリンを無造作に射貫きながら、ゴブリンスレイヤーが言う。

「……《聖壁》の奇跡を、こんな風に使うなんて……」

「私は、燃やす方もやりたかったんだけど……最近、全然《火矢(ファイアボルト)》が撃てていないし……」

 残念ながら、今回のゴブリン退治には、2人とも不満が残るようだが。

 もっとも、そんなことを気にするゴブリンスレイヤーではないが。

 

「裏手、あるいは脱出路があるかもしれん。気を抜くな」

「……よくそんな事、考えられますね」

「想像力は武器だ。

 それがない奴から死ぬ」

「だから呪的資源(リソース)は温存。

 帰り道にもう1件、はぐれのゴブリンの退治もあるから、なおさら。

 分かっているわよ」

「なら良い」

 

 

 

 山砦が、燃える。

 

 だが、うまく逃げ出したゴブリンがいるかもしれない。

 砦から飛び下りてなお生きている可能性。

 死に物狂いで穴を掘って逃れる可能性。

 逃げ回るうち偶然脱出路を見つける可能性。

 

 

 想像し、対策し、そして、ゴブリンを皆殺しにしていく。

 

 淡々と、事務的に、無感情に。

 

 

 

 

「……やはり、銀等級らしく振る舞うのは、難しいな」

 

 炎の熱と煙が転じた、空を埋める暗雲から、黒い雨が降りだす。

 

 焼け落ちた山砦を消火した雨粒が、ゴブリンスレイヤーを、女神官を、女魔術師を、濡らしていく。

 雨粒に混じった煤で、黒く染めていく。

 

 

 女神官は、全身を雨で打たれながら、祈り続けた。

 女魔術師は、何も言わず、彼と彼女を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、彼らが拠点とする西の辺境の街から、2、3日ほどの場所。

 

 吟遊詩人の爪弾く英雄譚を聞いた、森人(エルフ)の冒険者。

 

「……オルク、ボルグ」

 

 次の(シナリオ)が、幕を開く。

 




急募:ゴブスレ世界における、只人・魔術師・女の装備内容

鎖帷子着せたいけど「鎧を着ると魔力が乱れる」かも知れないという……
銀等級の魔女さんも防御薄そうだしなぁ……マジックアイテムかもだけど……

ぬわー!


よし描写しない!←逃避
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