女魔術師と解毒剤の水薬   作:ダラ毛虫

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守り守られ見守られ

「休んでいろ」

 妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶の3人ともに、ゴブリンスレイヤーは2階の応接室へ向かう。

 返事も待たず、去って行く。

 

 

「はぁ……」

「何を溜め息なんて吐いているのよ」

 女神官と女魔術師は、ロビーの壁際、隅の方、彼の定位置となっている椅子で2人、彼を待つ。

 2人の手には、受付嬢が淹れてくれた紅茶のカップ。

 強壮の水薬(スタミナポーション)を垂らしてくれているそれは、身体中にじんわりとした熱を広げ、心地良い。

「わたし……足手まとい、なんでしょうか……」

「……等級が違うし、話し合いに置いていかれたから?」

「はい……」

 女神官の声は、疲労と眠気でぼんやりとしたもの。

 だからこそ、こうして弱音が顔を出しているのか。

 まったくもう、と、女魔術師は、女神官よりも些か以上に力強い溜め息を吐き出した。

 

 何か言ってやろうかとも思ったが、今は良い。

 その理屈だと、女魔術師も彼の足手まといだと言っているようなものだが、女神官に限って、他意はないだろう。

 少し疲れているだけだ。

 だから今は、寝かせておこう。

 話し合いが終わった時に、起こせば良い。

 

 

 じろり、と、女魔術師は2人の様子を伺っていた新米戦士を睨む。

 

 この子を起こすな。

 燃やすわよ。

 

 女魔術師の両目には、それぞれそう書いてあったと、新米戦士はパートナーである見習聖女に語ったらしい。

 無論、少年は藪をつついて《火矢(ファイアボルト)》を出す真似はせず、戦略的に撤退した。

 

 

 

「お姉さんは、大変、ね……」

 くすりと声を漏らして、魔女が微笑んだ。

「……どうも、初めまして」

「ええ。初めまして、かしら、ね……?」

 事実上の在野最上位である銀等級の冒険者の1人。

 辺境最強と呼ばれる槍使いのパートナー。

 つまり、この魔女こそ、冒険者においては、辺境最高峰の魔術師。

 女魔術師にとっては、自分の歩む道の、遥か先にいる相手だ。

 

「彼なら来客中で、この子は少し疲れているみたいなんですが、私に御用事ですか?」

「そう、ね。少し話して、みたくって、ね」

 女魔術師の対面に座り、どこからか取り出した長煙管に、優美な手付きで刻み煙草を詰める魔女。

「……《インフラマラエ(点火)》」

 人差し指で煙管の先を叩き、魔女の呪文が煙草に火を点ける。

 ほの甘く香る桃色の煙を漂わせ、魔女はまた、くすりと笑った。

 どこか挑発的で蠱惑的。同性である女魔術師でも、くらりとしてしまいそうな笑みだ。

「真に力ある言葉の無駄遣い、なんて言いませんよ。

 私も、雨の日に焚き火を点ける時に使ったことがありますし」

「そう、ね」

 くすりくすりと、魔女は笑う。

 誘うように。甘やかに。

「どんな呪文も、使い方、次第、ね」

 そして、幼子を見守る慈母のように。

「…………もしかして、気遣ってくれていました?」

「いい、え」

 首を横に振り、席を立ちながら、魔女は言う。

「彼、色々大変、だけ、ど……『迷惑』、なら、言う人、よ」

 

 どうするか決めるのは、自分の意思で、ね。

 

 そう言い残して、魔女が去る。

 

「……やっぱり、気を遣っていたんじゃないの……」

 ふぅ、と溜め息を吐いて、女魔術師は温くなった紅茶を飲み干した。

 




魔女さんcv.日笠さん(アニメ情報より
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