描写はカットしていますが、内臓臭い消しや要救助者保護は、原作通り進行しています
なお、作中の《矢》の魔術に関しては独自解釈ですので、ご了承ください
「…………」
ふう、と息を吐き、汗を拭うが、音は立たない。
女神官の《
そんな中、鉱人道士の《
単調に作業的に屠殺を繰り返しながら、女魔術師は、もし自分が《
普通に使えるのは2回、無理をして3回。
4、5回使えるという鉱人道士から
そうなると、この
予備の
思考する。思考する。思考する。
どんな呪文も使い方次第。
魔女の言葉を思い出し、更に深く思考する。
血脂にまみれた槍を捨て、次を拾い、体重をかけて、ゴブリンの喉を突く。
こういった単純な作業の繰り返しは、考え事をするには、都合が良い。
「……
妖精弓手の呟きが、音の戻った世界に木霊する。
予想もしていなかった強敵の出現に、一党の顔に緊張が色濃く滲む中、唯一、ゴブリンスレイヤーだけは、心底面倒臭そうな態度を崩さない。
憤怒と共にオーガが巨大な《
一党が連携し反撃を開始するが、戦況はじり貧。
オーガの足の腱を狙ったゴブリンスレイヤーの一撃も、岩のように硬い皮膚に弾かれる。
姿勢を崩した戦士目掛けて、オーガが戦鎚を振りかざしーー……。
「《
女魔術師が咄嗟に放った《
「ちょこざいなぁっ!!」
「が……ッ!?」
「オルクボルグ!?」
「ゴブリンスレイヤーさんッ!?」
それでも、回避する隙を生むまでには至らない。
強引に振り抜かれた掬い上げるような一撃で、ゴブリンスレイヤーの身体は宙を舞い、石の柱に叩き付けられた。
足元の石を拾い、
敵の
並行して、思考を高速で巡らせる。
今、自分が何をすべきか。
考えろ。
思考を止めるな。
発想を狭めるな。
想像力は武器だ。
考えなければ、死ぬだけだ。
女魔術師が得意とする《
2つ目の呪文に、《
現在の状況。
敵の情報。
考えろ。
考えろ。
自分の《稲妻》も、鉱人道士の《
妖精弓手の矢や、前衛組の刃が与えた傷も、すぐに再生している。
潰れたはずの眼球が瞬く間に癒える、呆れた治癒力だ。
鉱人道士ならともかく、女魔術師の魔力では、《火矢》でも決定打には届かない。
《力矢》の威力では、『必ず
自分の魔術では、この敵は倒せない。
そして、『自分がこいつを倒す』必要なんて、無い。
時間を稼ぐ。
次で呪文は2回目。
更にもう1度使おうと思ったら、それこそ、《聖壁》を
それでも、迷うな。
視界の隅で、ゴブリンスレイヤーが身を起こしたのが見えた。
盾と革鎧は大きくひしゃげ、鉄兜はへこみ、明らかに満身創痍。
だが、彼が立って、何かをしようとしている。
呪文や奇跡の使用は節約して、必要な時は躊躇わない。
この瞬間の時間稼ぎこそが『必要』なタイミングだ。
これで自分が役立たずになっても、稼いだ時間で、あの男が『きっと何かやらかす』のだから。
「《
属性は要らない。
必中であっても今は意味がない。
《
「《
敵がいる方向へと、解き放つ。
一斉に飛び立つ魔力の矢は、しかし、オーガの強靭な肉体に弾かれる。
「鬱陶しいわ! 小娘がぁ!
この程度で我を殺せるとでもーー」
「思っていないわよ。当たり前でしょう?」
それでも、女魔術師は、オーガの威圧に対してすら、不敵に笑った。
「あなたを倒すのは、あの人の仕事だもの」
あの男なら、『この程度』のこと、きっとどうにかしてしまうのだから。
そしてオーガは、深海の水圧で《
疲れきって、遺跡の入口まで迎えに来ていた馬車に乗り込み、各々が身体を休める。
「彼、いつもあんなコトばかりやってるの?」
妖精弓手が、女神官と女魔術師に問う。
2人の少女は顔を見合わせて、互いに困ったような表情を浮かべ、答える。
「いっつも、こんな感じです」
「そうじゃない時がないくらい、ね」
「……でも、ああ見えて、結構、周り見てるんですよ。この人」
「…………疲れている時に
「惚気てないです」
「はいはいごちそうさまごちそうさま」
「まったくもう……」
眠っている面々を気遣い、小さな声で、囁くように笑い合う少女たち。
妖精弓手は、そっか、と呟いて、いつか必ず、彼と、この2人の少女も一緒に、『冒険』をさせてやろうと、心に決めた。
女魔術師が放った、術者の能力に応じて本数を増やす《力矢》の魔術の、更に倍の弾幕。
横殴りの矢雨が如し、つい先ほど生まれた名もなき魔術は、今回のような『大型の難敵の足止め』や、或いは、『大量の雑兵の制圧』に、極めて有効だった。
彼女が、変幻自在に《矢》の魔術を操る『射手』と呼ばれるようになるのは、まだまだ何年も、
いくつもの『冒険』の、後のお話。
話の展開的に、「この呪文アレンジのために書き始めたんじゃ?」と思われそうですが、違います
このシーン思い付いたの、魔女さんの回を書いた後です←安定の行き当たりばったり
ついでに、ここまで書いてきて思ったのは、うちの女魔術師にとってゴブリン退治は、「非常に悪質な害獣駆除」とかそんな認識かな、と
ゴブリン相手に「戦争」しているゴブスレさんとは、またスタンス違いますね