女魔術師と解毒剤の水薬   作:ダラ毛虫

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女神官可愛い


今回、地味ぃ~な原作改変を含みます



昇級と幕間と合戦準備

「ゴブリンスレイヤーさん!」

 オーガとの戦いを終え、一晩馬車に揺られ、それから3日。

 ギルドのロビーに彼が姿を見せた途端、今にも飛び跳ねそうな様子で、女神官が駆け寄って行く。

 黒曜石に変わった認識票を見せ、心の底から嬉しそうに。

「……子犬かしら」

 その様子を、元々彼の定位置で、最近は『彼ら』の定位置となっている椅子に腰掛け、紅茶を飲みながら、女魔術師は見守っていた。

 

 別れ際、大きく手を振る女神官に合わせて、女魔術師も軽く手を振り、彼を見送る。

 ついでとばかりに、自分の黒曜等級の認識票を手に持って見せて。

 

 

 

 

 女神官と女魔術師の昇級から半月後。

 

「あの……もう動いて大丈夫なんですか?」

「問題ない」

「今回、前衛はあなただけなんだから、無理してゴブリンに不意打ちされた、なんてことにはならないでよ。

 自己管理はしているでしょうけど」

 

 今日も今日とてゴブリン退治。

 妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶の3人は別の依頼を受けているため、久しぶりの只人(ヒューム)3人一党(パーティー)だ。

 

 彼らを加えた6人で組んだのは、前回の1度だけのはずなのだが、何故だか随分と馴染んでしまい、3人というのが、やけに少なく感じる。

 

 とはいえ、1ヶ月間ゴブリン退治を繰り返した面子。

 油断や慢心さえしなければ、連携も充分。

 

 そんな風に考えていた女魔術師は、まだゴブリンの巣穴に向かう途中ではあるが、前を歩くゴブリンスレイヤーが、珍しく振り向いてこちらを見ていることに気付いた。

「どうかしたの?」

「……いや……」

 更に珍しいことに、いつもは淡々と受け答えする彼が、何やら言い淀んでいる。

 疑問に思いつつ、言葉を待つ。

 

「あの時、お前が《稲妻(ライトニング)》で……奴の攻撃を止めていなければ、致命傷(クリティカル)を受けていた。

 助かった」

「ふ、ふふん! 別に、一党なんだから、助け合いくらい当たり前でしょ! そんな気にすることでもないわよ! でもまあ、気持ちは受け取っておいてあげるわ!」

 やや早口にまくし立てる女魔術師に、ゴブリンスレイヤーは、そうか、とだけ応えた。

 ふふんふんふん、と女魔術師は、鼻を鳴らしていたのがいつの間にか鼻歌になっていた。

 

 

 両者ともに、仕方ない人たちだなぁ、と言いたげな女神官の表情には、気が付かなかった。

 

 

 

「数が多い。頼む」

「任せて」

 踏み入れた洞穴の奥から響く足音から、単独の前衛では止めきれないと即座に判断したゴブリンスレイヤーは、女魔術師に声をかけ壁際に寄る。

 本来、この規模の巣穴であれば、崩して埋めるなり水で沈めるなり毒気で(いぶ)り出すなりしたいところだが、ここに来る途中に、旅人らしき者が拐われた真新しい痕跡を見つけた以上、仕方あるまい。

 まだ生きている可能性があるのなら、できる限りの努力をしよう。巣穴ごと潰すのはお預けだ。

 

「真っ直ぐ前から来るのが分かっていれば、細かく狙いをつける必要もないわ」

 

 加えて言えば、今の彼らには、『多数を正面から相手取る』手札があるのだから。

 

「《サジタ()……サジタ()……ラディウス(射出)》!」

 

 女魔術師が作り出した大量の魔力の矢が、ゴブリンの喉の高さを保ち、洞穴の奥へ、ゴブリン目掛けて殺到する。

 頭や胴を狙うよりも1匹に複数の《矢》が刺さる可能性を抑え、より複数を仕留めるための工夫だ。

 高さの調整は、ゴブリンスレイヤーが身体を休めていた半月間で、徹底的に練習した。

「これで18」

 《矢》のすぐ後を追うようにゴブリンの群れへと襲い掛かったゴブリンスレイヤーにより、女魔術師の魔術を生き残ったゴブリンも危なげなく壊滅。

 血の海と化した洞穴で、女神官がぽつりと呟く。

「やっぱり、多い、ですね……」

「《聖壁(プロテクション)》で足止めを頼むかもしれん。いつでも使えるようにしておけ」

「はい!」

「私の呪文も、あと2回は使えるわ。4回目は厳しいけど」

「分かった」

 口を動かしながらも、まだ息があるゴブリンが居ないか、慎重に確認していく。

 

 

 今日も今日とて、油断なく、冷静に、淡々とゴブリン退治だ。

 

 

 

 

 

 そうして、更に半月後。

 

 史上10人目の白金等級冒険者に認定された、聖剣に導かれた年若い少女が、魔神王を討ち果たしたとかで、辺境でも祭りが催された。

 

 

 だが、ゴブリンが滅びたわけではない。

 

 

 

「ゴブリンの群れが来る。街外れの牧場にだ。時期は恐らく今夜。数は分からん」

 

 混沌との戦いに赴いていた者たちが帰ってきて、活気ついていた冒険者ギルドに、ゴブリンスレイヤーの声が響く。

 

「手伝って欲しい。頼む」

 

 敵はゴブリンロード、統率力に特化した変異種に率いられた、百匹を超えるゴブリンの軍。

 ざわめきの中、すべてを差し出すと静かに告げるゴブリンスレイヤー。

 

「……この野郎、後で1杯奢れ」

「今度の冒険、一緒に来なさい!」

「わしゃあ1杯とはいかんぞ、かみきり丸よ。酒樽をよこせ」

「悪鬼共を許す道理はなしよ!!」

「フフ。にぎやかに、なって、きたわ、ね」

「ゴブリン1匹につき、金貨1枚の懸賞金を出します! チャンスですよ、冒険者さん!」

「小鬼殺して金貨1枚ってな旨い話だろ」

「助けを求められれば否やはない」

 

 次々に立ち上がる、銀等級の冒険者。

 更にはギルドからの懸賞金。

 

 もう躊躇う理由はない。

「俺たちゃ仲間でも友達でもないけど、冒険者だからな!」

 新米も、古強者(ベテラン)も、職業も種族も関係なく、剣を杖を斧を弓を拳を突き出し、口々に叫び、床を踏み鳴らす。

 

 

 ゴブリンスレイヤーは、ゆっくりと周囲を見渡し、依頼書を配る受付嬢に頭を下げた。

 

 

「……良かったですね?」

 ゴブリンスレイヤーに寄り添う、女神官。

「戦術とか策とかはよろしくね」

 そして、その隣には、女魔術師。

「……ああ」

 最初からついて来る気でいた彼女たちに、彼は、頷く。

 




前書きに書いた原作改変ですが、「本来ならオーガの戦鎚クリティカルで1ヶ月休養だったゴブスレが、女魔術師の《稲妻》のおかげで半月で復帰」です

………………地味ぃっ!!



そして女神官可愛い

あ、女魔術師の呪文回数が『無理をしなくても3回』に成長(レベルアップ)しました


それにしても、受付嬢や牛飼娘の出番がないなぁ、これ
女魔術師メインだから仕方ないにしても……ちくせう
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