この時空では41人全員転移済み、全員がお互いを尊重しているのでナザリックは平和って前提でのモモンガ様とウルベルトさんとデミウルゴスのお話。
※ウルベルトさんは悪魔ロールの時は私、ギルメンだけの時(素の時)は俺、っていう捏造してます。
今回はデミウルゴスが居るので「私」です。
「……ってな訳でですね、モモンガさん。私も悪魔らしくレザークラフトでもしようと思うんですよ」
「はぁ。レザークラフト、ですか?」
昼下がりのティータイム。モモンガは飲食が出来ないが、仲間と過ごすこの時間は好きで。出来るだけ誰かとお茶をする事にしていたのだ。
本日のお相手は、ワールド・ディザスターことウルベルト・アレイン・オードルだ。お供として、デミウルゴスも連れて来ている。メイドや八肢刀の暗殺蟲も部屋の外に出し、今は完全に三人だけ。ウルベルトは深い色の紅茶の香りを楽しみつつ、そう歌うように口にする。デミウルゴスは、ウルベルトの傍に控え給仕をしている。
「えーと。すみません、俺、悪魔とレザークラフトの関係が理解出来ないんですが。レザークラフトって、悪魔っぽいんですか?」
僅かに小首を傾げてそう尋ねるモモンガに、ウルベルトは目を細める。
「えぇ、悪魔にとっては必須科目と言って良いでしょうね。……何せ、悪魔が作ったとされる書物の表紙は、人間の皮を使用していますから」
「!!」
ウルベルトのその言葉に、モモンガは一瞬激しく動揺するが、すぐに沈静化される。
「えっ、その、つまりウルベルトさんは、その……」
「あぁ、誤解させてすみません、モモンガさん。こちらでは人間ではなく……うちのデミウルゴスの牧場の聖王国両脚羊……アベリオンシープの革で練習をしようかと」
穏やかに微笑みながらウルベルトがそう言うと、モモンガはホッとしたような仕草をする。
(……やっぱり、モモンガさん気付いてないみたいだなぁ。デミウルゴスにも気をつけるように言わないと)
内心そんなことを思いながらも、ウルベルトは微笑みを絶やさず言葉を続ける。
「まぁ、そういう訳でしてね。悪魔の基本スキルみたいなものです、レザークラフトは。悪魔の場合は本格的にやりますから、素材集めや鞣しまで自分でやりましてね。一から自分で作り上げた極上の革を使って色々作るんですよ。魔道書なんかだと魔力が溢れて最高なんですよ」
「は、はぁ……そうなんですか。まぁ、素材が人間って言うとちょっとギョッとしちゃいますけど、牛革とか鹿革とかメジャーでしたしね。で、何を作るつもりなんですか?」
真っ直ぐに視線をウルベルトに向けてそう尋ねるモモンガ。聞き上手なモモンガに、ウルベルトの機嫌はますます上向きになる。
「そうですねぇ……魔道書は確定なんですけど、あとは自室に飾るランプシェードなんかを予定しています。……ただ、その場合両脚羊ではランク的に劣りますから。手に入る最高級の革を使いたいと思ってるんですよ」
「へぇ。じゃあドラゴンハイドですか?こっちでもドラゴンは数が少ないみたいですけど……狩りに行きます?」
ウキウキとそう言うモモンガに、ウルベルトは軽く頭を振る。
「いえ、残念ですが、それはまた次回ということで。今回はですね……より魔力が強い革が欲しいと思ってまして。何せ、私の部屋を飾るモノですから。最上級の悪魔の革がいいな、って思ってるんですよ」
そう言うと、ウルベルトはチラリ、と視線を隣のデミウルゴスに向ける。
「デミウルゴス」
ただ、名前を呼ぶ。すると、デミウルゴスは歓喜に満ちた表情で答える。
「かしこまりました。喜んでこの身を御身に捧げさせていただきます」
「って、えええええええええ!?ちょ、ウルベルトさん!?」
ウルベルトの目の前では、モモンガが何度も沈静化されているが、それでも驚きは収まらないようだった。
「ん?どうかしましたか、モモンガさん?」
心底不思議、といった表情で僅かに首を傾けてモモンガにそう問うウルベルトに、モモンガはワタワタと両手を動かしながら答える。
「ど、どうかしましたか、じゃないですよ!!何考えてるんです!?」
「何、とは?普段デミウルゴスはナザリックのために頑張ってくれていますし……ご褒美をあげても良いだろうと判断したのですが……」
きょとん、とした顔でそう言われて。モモンガは頭を抱えた。
「……ウルベルトさん、デミウルゴスの革を剥ぐんですよね?」
「えぇ。この私手ずから。丁寧にゆっくりと剥いであげようと思っていますよ」
「それのドコがご褒美なんですか!?いくら耐性があったとしても拷問じゃないですか!!」
絶叫したモモンガに、ウルベルトもデミウルゴスも不思議そうにしている。
「ご褒美じゃないですか。最も心酔している創造主に手ずから革を剥がれ……その革は永久に部屋に飾って貰えるんですよ?」
「はい!ウルベルト様の仰る通りです。我が身には過ぎたご褒美かと!」
「……あー……デミウルゴスにはそれがご褒美になっちゃうんだ……悪魔の常識って一体……」
頭を抱えたまま小声でそう言うモモンガに、伝言が入って来る。
(?誰だこんな時に……)
『モモンガさん。えー、混乱させて申し訳ないです。とりあえず、返事はしないで伝言聞いといて下さいね』
その声に、モモンガは小さく頷いてウルベルトを見る。ウルベルトは相変わらず微笑んだまま話を続けているが、一瞬その口元がニヤリ、と歪んだ。
(ちょ、ウルベルトさん何か伝言発展させてる!?念話になってないか、コレ!)
そう思いながらも、モモンガは脳内に伝わってくる伝言に意識を集中させる。
『モモンガさんも、支配者ロールしてるじゃないですか?俺のもそれですよ。デミウルゴスよりも上位の悪魔ですからね、ちゃんと悪魔らしく振る舞って部下を労ってあげないといけないですし』
その脳内の声に重なるように、ウルベルトの声も発せられる。
「あぁ、デミウルゴス。忘れていたよ。今の褐色の肌も良いが、完全な悪魔形態になった時の革も欲しい。だからトータルは二枚だな。勿論、耐性を切っておくんだ」
(ちょ、ウルベルトさん何か怖いこと言ってる!!)
鈴木悟のままだったらガクガクと震えていただろう会話だが、アンデッドの今なら一見平静に聞いていられるのが救いだった。
「勿論です。ウルベルト様の貴重なお時間を割いて頂くのですから、ウルベルト様にも存分にお楽しみ頂けるように努めさせていただきます」
(楽しむって何を!?)
心の中でそう突っ込むモモンガに、更に伝言が続く。
『えーとですね、悪魔って人間の苦痛や悲鳴が大好きなんですよね。だからまぁ、デミウルゴスの発言はそういう……』
(うわあああああ!!!知りたくなかったよ!そんな悪魔豆知識!!)
『だからですね、俺たちの今までの常識とは違いますから……その辺をですね、考慮して褒美を与えないといけない訳ですよ』
「……ウルベルトさんは、本当にデミウルゴスの事を理解してるんですね」
少々引き攣りながらそう言うと、ウルベルトは紅茶を美味しそうに飲みながら頷く。
「まぁ、一応デミウルゴスの造りの親ですからね」
『モモンガさんも色々部下に褒美を与えないといけないと思うんですが……種族特性とかも鑑みて、内心どう思おうと笑顔で褒美を与えられるようにして下さいね。俺も頑張りますので。では』
(ちょ!!ウルベルトさん酷い!一方的に言って切るとか!てか、フラグになりそうな事言わないで欲しかったよ!!)
内心焦っているせいで何度も沈静化されているモモンガを尻目に、ウルベルトは穏やかな笑みのまま口を開く。
「あぁ、そういえば。今日の分の褒美を与えてなかったな。……デミウルゴス、確かお前は前にシャルティアの話をしてくれたな?」
にこやかに笑いながらそう言われただけでデミウルゴスは何かを察したのか、すぐさまウルベルトの足元に跪く。
「今日は椅子ではなくて……私のオットマンになって貰おうか。どうだ?お前にとって、私の足をその身で受け止めるのは褒美になっているか?」
「この上ない幸福を感じます。お情けを掛けて頂きありがとうございます、ウルベルト様」
そう言いながら、デミウルゴスは四つん這いになってその背中にウルベルトの蹄を受け止めた。その顔は歓喜に満ちていて。本心からデミウルゴスが喜んでいるのだと、モモンガにも理解出来た。
「……ウルベルトさん」
「何ですか?モモンガさん」
茶菓子のスコーンにクロテッドクリームを塗りつつ、ウルベルトが優雅に答える。その瞳は、あくまでも穏やかで優しい。
「……悪魔って、Mなんですかね?」
モモンガの素直な疑問に、ウルベルトは楽しげに笑う。
「違いますよ。むしろ、逆です。Sですよ。ですが、ね」
その言葉と同時に、ウルベルトは蹄でデミウルゴスの背中に圧力を加える。増えた重みにすら、デミウルゴスは幸せそうにしている。その証拠に、デミウルゴスの尻尾は喜びを表現するかのようにブンブンと振られていた。
「我々のような、彼らよりも上位者には蹂躙され、踏みにじられ……支配されることを悦ぶ。それが、悪魔というものですよ。つまりはまぁ、強い者に惹かれる、ってヤツです」
ニッコリ、と。それはそれは艶やかな笑みを浮かべて、ウルベルトはそう言い切った。
「ですからね、モモンガさん。もし悪魔たちへの褒美で悩んだら、是非私に相談して下さいね。ナザリックに居る者たちは種族も多いですし褒美にも悩むかと思いますが……悪魔関係なら私が何とかしますから」
「ありがとうございます!ではその時はお願いしますね、ウルベルトさん」
(やっぱりウルベルトさんは優しいなぁ……俺じゃまだ悪魔の気持ちってわからないし、ここはお言葉に甘えてウルベルトさんに丸投げさせて貰おう、うん!)
ウルベルトのその申し出に感謝しつつ、モモンガは暫しウルベルトと楽しい時間を過ごしたのだった。
その後。夕食の時間になり、モモンガが自室に帰る。その間もずっと、デミウルゴスはウルベルトのオットマンになったままだった。