黒山羊さんの日常   作:赤紫蘇 紫

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黒山羊さんの世界でも、モモンガさんはアインズ・ウール・ゴウンなのですが、その理由を書きました。大体転移後一ヶ月以内くらいの頃です。単にギルメンとモモンガさんの会話が書きたかっただけです。ほのぼの。自分得なお話です。


アインズ・ウール・ゴウンになった理由

「……対外的に名乗る名前、どうしましょうねー……」

 モモンガはそう言うと、大きく溜息を吐く。肺も無いのに。

「え?モモンガさん、そのまんまじゃ駄目なんですか?」

 と、ウルベルトがそう訊けば、ぷにっと萌えが答える。

「周辺諸国、大体貴族は長い名前ですしね。モモンガ、だけだと侮られる可能性があるんですよ」

 ぷにっと萌えのその言葉に、タブラも頷く。

「だったら、タブラさんが代表になるのがいいんじゃないですか?」

 モモンガがそう言うが、タブラは大きく首を振る。

「駄目でしょ、どう考えても。人間種からしたら、モモンガさんより私やぷにっと萌えさんの見た目の方が忌避感強いと思いますよ?一応は人の形をしていますが……明らかに異形ですし。……それに、私、今、人間が美味しそうに見えちゃうので……冷静に交渉出来るか分からないんですよね」

 サラリ、とそう怖いことを言うタブラに、モモンガは眼窩の炎を大きく揺らす。

「えっ……。それは……確かに、色々マズイですね」

「タブラさんよりは見た目はマシですけど、俺も人間は美味しそうに見えちゃいますし、名字無いので交渉には向いてませんね。だから、ギルマスなモモンガさんに代表になって貰うのが一番だと思うんですけど」

 ぷにっと萌えのその言葉に、他のギルメンも大きく頷いている。……面倒ごとを押し付ける気満々に思えるのは、モモンガの考えすぎなのか……。

「じゃ、じゃあ、ウルベルトさんはどうですか?名前長いし、山羊で親しみやすい見た目じゃないですか?」

「……名前は兎も角。山羊頭だからって親しみやすいは無いと思いますけどね。だって、こっちバフォルクって言う種族が居るんでしょう?逆に侮られそうなんですよねー。あんまり文化的な生活送ってない種族みたいだし」

「うーん……じゃあ、やっぱり俺がやるしか無いんですかね?代表。偽名、どうしましょうか?」

 円卓の間で皆して悩んでると、ペロロンチーノがシュバッと手を挙げる。

「はいはーい!!俺、クーゲルシュライバーがいいと思いまーす!響き、格好良くないです?モモンガ・クーゲルシュライバーとか!」

「ボールペンじゃねぇか!」

 その言葉に、すかさず目一杯素が出たウルベルトから突っ込みが入る。

「あー、やっぱり厨二病患者はドイツ語でもすぐ分かるんですね!」

「当たり前ですよ。ドイツ語にラテン語は必修科目ですからね」

 ペロロンチーノのその言葉に、ドヤ顔で答える重度の厨二病患者。そして、嘗て自分もドイツ語格好いい!と思ってパンドラズ・アクターにまでドイツ語設定を付けてしまっていたモモンガは、羞恥に身を焦がしていた。色々といたたまれなくて。

「まぁ、ラテン語は厨二病患者じゃなくても履修しといた方がいいですけどね。神話を読み解くのにも使えますし」

 と、擁護なのかフォローなのかよく分からない言葉を出したのはタブラだ。

「……じゃあ、ラテン語の名前?俺、ラテン語の単語は全然分かんないんですよねー。だからその辺は分かる人にお任せします!」

 そう言うと、ペロロンチーノはアイテムボックスから果物を出して囓り始める。本当にもう意見を出す気は無いらしい。

「そうですねぇ……。けど、モモンガ、と合わせるとなると結構難しくないです?響き」

 ヘロヘロがそう言えば、ウルベルトは首を傾げる。

「ん?前提がおかしくないです?だって、人間種如きに本名教える必要無いんですから……モモンガさんの名前、そもそも出さなくてもいいですよね?」

 ウルベルトのその言葉に、その場の全員がハッとする。今までウルベルト以外の全員は、どうやらモモンガの名字に当たる部分を考えるつもりだったようだ。

「……つまり、完全偽名を考えるってこと?」

 ぶくぶく茶釜がそう訊くと、ウルベルトは頷く。

「俺は最初からそのつもりで考えてたんですけど……皆さんはどうやら違ったみたいですね。だって、この世界の理が分からないのに、無防備に本名晒すとか……怖すぎませんか?」

 その言葉に、当事者であるモモンガが何かを思い出したかのように口を開いた。

「あ。俺、そういえば、初日に村人に偽名使ってました……」

「「「え!?」」」

 モモンガのその言葉に、全員が驚きの声を上げる。

「ちょっ、そんなの俺聞いてませんよ!?」

 ヘロヘロがそう言えば、モモンガは暢気に答える。

「いや、だってこんなに大事になるとか思ってませんし……。よかったー、あの時モモンガって名乗って無くて」

 そう答えるモモンガに、皆は微妙な視線を向けている。……モモンガのネーミングセンスが皆無だと、全員が知っているから。

「えっと……モモンガさん。何て名乗ったんですか?」

 恐る恐る武人建御雷がそう訊くと、モモンガはサラリと答える。

「アインズ・ウール・ゴウンですよ。咄嗟に浮かんだのがギルド名だったので。人名っぽくも聞こえませんか?」

 その言葉に、ギルメン全員がホッとする。クランからギルドになった時のようなネーミングだったらどうしよう、と思っていたからだ。

「あー、確かにそれなら偉い人っぽいですよね。長いし」

「……ウルベルトさんがソレ言います?もっと長い名前持ちのくせに」

 ウルベルトのその言葉にモモンガは笑いながらそう突っ込む。

「まぁ、確かに文字数は長いですけど……。アインズ・ウール・ゴウン程威厳がある響きではないですからね、俺の名前。優雅な響きではありますけど」

 と、自分の名前を自画自賛するウルベルトに、大半のギルメンは呆れ顔だ。厨二病患者なだけでなく、更にナルシストまで患っているのか、と。

「うーん。村の救世主と、異形種の代表が同じ名前ってマズくないですか?」

 ぷにっと萌えがそう言うと、タブラが口を開く。

「普通に考えればそうですけど、モモンガさん村を救ったとき素顔を晒してた訳じゃないんでしょう?なら問題無いんじゃないですか?」

「……そうですかねぇ……。この世界、異形種に対する忌避感結構強いんでしょ?大丈夫でしょうか?」

 二人の会話に、他のギルメンも不安を感じたのか考えを口にし出す。収拾がつかなくなりかけた所で、パンパン!と手を叩く者が出た。前クラン長のたっち・みーだ。

「皆さん、落ち着いて下さい。タブラさんとぷにっと萌えさんの話、両方理解は出来ますが……皆さんの意見が別れたままでは困ります。意見を纏めませんか?」

「えーと、簡単に言うと、俺が村で使った偽名をそのまま使うと危ないって考えの人と、問題無いって思ってる人が居るって事ですよね?」

 たっちの言葉に続けてのんびりとモモンガがそう言うと、ウルベルトが頷く。

「そうですね。村で使ったのと違う偽名を使う場合でもリスクはありますから、あとはモモンガさんの考え次第でいいんじゃないですか?」

「リスク?」

 ウルベルトの言葉に、モモンガがそう訊くとすぐに答えが返って来る。

「えぇ。別名なのに同一人物バレした場合に色々と問題が、ね……」

 そう言われて、モモンガは頷く。

「なるほど!……うーん。じゃあ、俺、最初の偽名……ギルド名を対外的な本名にしますよ。別人としてですけど、ただでさえモモンっていう偽名も使ってるんですし、余計に名前を増やすとミスりそうで怖いので」

 軽い調子でそう言うモモンガに、皆納得したように頷く。

「じゃあ、モモンガさんの偽名はアインズ・ウール・ゴウンって事で決まりー!簡単で良かったですね!!」

 と、暢気にペロロンチーノがそう言えば、皆苦笑しつつ頷いていた。

「まぁ、忘れようも無い名前ですしね」

 と、笑いながらヘロヘロはそう言う。

「一番問題無い名前ですよね。……ボールペンよりはよっぽど」

 ペロロンチーノの失言を忘れていなかったウルベルトはサラッと嫌味を言うが、当のペロロンチーノは全く気にしていない。

「えー?ちょっと必殺技っぽくもあって格好いいのに!」

「愚弟。それ以上言うな。恥の上塗りしたいのか?あぁ?」

 脳天気なペロロンチーノの言葉に、ドスの利いた声でぶくぶく茶釜がそう口にする。と、途端に硬直するバードマン。

「他のヒトも一応、偽名考えておいて下さいねー。外に出るつもりがあるのなら」

 そんな二人を余所に、モモンガは皆にそう声を掛けると場を収め始める。

「じゃ、今日は解散ってことで!あとはまた何かあったら決めましょう」

 モモンガのその言葉に、皆散り散りになりつつも好き勝手に自分の偽名を口にしていた。その様子を、モモンガは幸せそうに眺めていたのだった。

 

END

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