「……デミウルゴス」
「何でしょうか、ウルベルト様」
嬉しそうな声で、オットマンになったままのデミウルゴスがそう答える。その声を聞いて、ウルベルトは口元を歪ませる。
「お前の褒美の革剥ぎだがな。初めての革剥ぎで失敗するかもしれないが、それでもお前は私の初めての革剥ぎを褒美として受け入れたいと思っているか?」
デミウルゴスがどう答えようとも美味しい、などとウルベルトが思っている事を知ってか知らずか。デミウルゴスは、ウルベルトを見上げて上気した頬のまま答える。
「勿論です!もしウルベルト様が失敗なさったとしても、また剥げば良いのですから」
「ふふっ……それでは二枚という約束を違えてしまうぞ?」
象牙よりも深みのある色の美しい蹄が、上質の素材で出来た真紅のスーツを踏みにじる。そして、背中の革の張りを服の上から確かめるかのようにゆっくりと動く。その微かな動きですら、デミウルゴスにとってはご褒美で。満面の笑みでウルベルトを見つめると口を開く。
「構いません。”完成品”が二枚になれば良いのでは無いかと」
ウルベルトは、デミウルゴスのその答えに満足げに微笑む。
「そうか。お前の悪魔形態は久しぶりに見るから楽しみだな。私を楽しませるために、心地良い悲鳴を存分に響かせるがいい。……勿論、お前への褒美なのだから、今回のように人払いをしてやろう」
「何と……!ウルベルト様にそのようなお慈悲をいただけるとは……!今後は今まで以上に更なる忠義を尽くさせていただく所存です!!」
ウルベルトは、ナザリックの者にとって人前での椅子は罰になるらしい、とデミウルゴスに聞いたので、人払いをするという配慮をしたのだが……どうやら大正解だったようだ。テンションの上がりきったデミウルゴス、というある意味レアな物を見たウルベルトは、デミウルゴスの背中の筋肉を蹄で感じつつ、上機嫌で口を開く。
「なぁ、デミウルゴス。お前はこの褒美の意味を本当に理解しているか?」
「え……?」
戸惑ったような表情のデミウルゴスに、ウルベルトは口元に笑みを浮かべながら続ける。
「……つまりな、お前に体の一部を預けてもよいくらい信頼している、って事だ。今日は足だけだが……次は椅子にしてやろう」
そう言って、蹄の角で軽く腰の辺りを叩いてやると、デミウルゴスの体が歓喜に震えた。感極まった様子のデミウルゴスは、思わず瞳を開いてしまっていた。うっすらと涙で濡れた、宝石の瞳。
「……あぁ、何という……!」
言葉もなく喜びに震えているデミウルゴスを見下ろして、ウルベルトは笑う。優しく、残酷に。その金の瞳の煌めきは、人外のそれ。
「今まで淋しい思いもさせたしな。埋め合わせと言っては何だが。これでもまだ足りないと私は考えているのだが……まぁ、とりあえず最初の褒美の革剥ぎをしてからだな。いつなら予定が空く?」
「私ならいつでも!何なら明日でも問題ありません!!」
食い気味にそう答えるデミウルゴスに、ウルベルトは思わず苦笑する。
「そうか。じゃあ、モモンガさんに出掛けることを伝えて、明日出掛けよう。その前に、今日は一緒に夕食をとろう。より状態の良い革にする為に、協力してくれるだろう?なぁ、デミウルゴス」
椅子から立ち上がり、ウルベルトはデミウルゴスに手を差し伸べる。すると、デミウルゴスは一瞬信じられない、といったような表情で固まっていたが。
「どうした?俺の手は取れないのかデミウルゴス?」
からかうようにウルベルトにそう言われて。デミウルゴスは慌ててウルベルトの手を取ると立ち上がる。
「ウルベルト様……御手が、汚れてしまいます。こちらでお拭き下さい」
「あぁ、何だ。そんなことを気にしていたのか。じゃあお前が拭いてくれ、デミウルゴス」
毛皮と同じ漆黒の美しい手。その手を恭しく捧げ持つと、デミウルゴスはテーブルの上から取った未使用のナプキンで丹念にウルベルトの手を清めてゆく。
「ありがとう。では、夕飯を運ぶよう伝えてくれ。そうだな、赤ワインも一本持ってくるように、と。食事をしながら、また色々お前の話を聞かせて欲しい」
笑顔を絶やさぬ穏やかな創造主に強い敬愛の念を抱きつつ、デミウルゴスは主のために最高の食事を用意するように、直接シェフへ告げに行ったのだった。
続きは革剥ぎなので、R18Gになります……。
なので、投稿するかどうかまだ悩んでます。
これで一応完結にしようかな、と。
まだ本編に第三の形態って描写されてないですしね、デミウルゴス。
皮膚何色なんだろうか。
一度書きたかったんだ、悪魔らしい悪魔のウルベルトさん……!