「聞いて下さいよモモンガさんー!」
「どうしたんですか?ウルベルトさん。随分と上機嫌じゃないですか?」
モモンガの部屋にいきなり転移でやってきたウルベルトは、いつものように警護の八肢刀の暗殺蟲とモモンガ当番のメイドを外にやると、プライベートモード全開で話し始めた。鼻歌でも歌いそうな彼に、モモンガも思わず笑顔になる。(と、いっても骨なので表情としては表れないが)
「うちのデミウルゴス、本当に万能なんですよー!この間風呂で躯を洗って貰ったんですけどね、滅茶苦茶気持ちいいんですよ!洗髪もプロの理容師か!?ってくらい上手くてですね」
「って、ウルベルトさん階層守護者にナニやらせてんです!?そういうのこそ、メイドの仕事なんじゃ……」
レベル100のキャラクターの無駄遣いだ、と言うモモンガに、それでも嬉しそうにウルベルトは言葉を続ける。
「いやー、モモンガさんもだと思うんですけどね?今の躯になってから、風呂が面倒で面倒で。俺の場合全身毛皮ですからねー、洗うのも乾かすのも時間がすっごく掛かるんですよ」
「……まぁ、確かにソレは同意出来ますけどね?だからってデミウルゴスをそんな……」
自分の躯を洗う為の時間と手間を思い出し、モモンガは渋々とそう言うが……やっぱりまだ納得はしていないようだった。
「いいじゃないですか。デミウルゴスが俺の警護をしたいって立候補したんですし。俺の創った子を俺が傍仕えにして何が悪いんです?そんなに言うなら、モモンガさんもパンドラズ・アクターを傍に置けば良いじゃないですか?」
「……ウルベルトさん、うちのパンドラズ・アクターとデミウルゴスを同じ感覚で言わないで下さい……。確かにヤツは優秀ですよ?でもですね!色々と俺の心に刺さるんですよ、言動が……!」
執務用の机に突っ伏して、わっ、と泣き出した(ように見える)モモンガに、ウルベルトは慌てて口を開く。
「あぁ!す、すみませんモモンガさん!うちはうち、余所は余所、ですよね!?え、えーと。そうそう、うちのデミウルゴスなんですけど、この世界の0位階魔法ってのの巻物を入手してましてね。風呂上がりに使ってくれたんですよ!おかげでほら、モフモフですよ!」
嬉しそうにそう言うと、ウルベルトはその場でくるり、と一回転する。いつも以上に綺麗になった毛並みに、モモンガは目を見張る。
「おぉ!確かにすごいふわふわ感ですね。ひょっとして、ブラッシングもデミウルゴスですか?」
「あぁ、わかります?自分でやるの本当に面倒で。でも、やらないと毛玉になりそうですしね……」
ウルベルトは、一瞬遠い目をする。ひょっとして、ちょっとサボって毛玉になったりしたんだろうか?とモモンガは思う。
(……毛玉になってからデミウルゴスに任せたっぽいな……ウルベルトさんらしいというか)
「……ウルベルトさん、随分デミウルゴスに甘えてますよね?何か意外です。ウルベルトさん結構自分で何でもやっちゃいそうなイメージだったから」
小首を傾げてそう問うモモンガに、ウルベルトは笑顔で答える。
「……あぁ、実は実験中なんですよ。悪魔の生態を知るためのね」
そう言うウルベルトは、先程までのうちの子自慢をしていた馬鹿親とは違った表情でニヤリ、と笑った。その表情は、山羊頭の悪魔に相応しい邪悪なもので。モモンガは、一瞬自分の背筋を這い回った悪寒に身を震わせる。
「ウルベルト、さん……?」
「すみません、変な話をして。暫くデミウルゴスは俺の専属にしますので、とりあえずその報告だったんですよ。では、また」
ウルベルトは優雅に一礼すると、静かにその場を立ち去った。