黒山羊さんの日常   作:赤紫蘇 紫

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転移直後のウルベルトさんとギルメンの話。
捏造設定あり、閲覧注意。

時事系列がぐちゃぐちゃで申し訳ありません……書きたい所から書いてるせいです。

ウルベルトさんが悪魔になるまで、が書けたら良いなぁと思ってます。
(それで、最初のお話に続く感じです)


狭間の住人【ウルベルト&ギルメン】

 ……本来なら、俺たち37人はここに居る筈が無かった。何故なら、モモンガさんとその他の三人と違って、俺たちは最終日にユグドラシルへログインする事が出来なかったのだから。

 

 モモンガさんからは、サービス終了を知らせるメールが来ていた。だが、それに俺が気付いたのは当日で。どうしても外せない用事があった事と、当日だったこともあって俺はメールに返信もせず過ごしていた。

 ……そして。その翌日、目が覚めたらここに居たのだ。目覚めたのは、円卓の間で。周りを見回すと、37人が全員円卓にうつ伏せになって眠っている状態だった。その異様さに、俺は目眩を感じ……ふと、視界に違和感を覚えたのだ。そして、コンソールが開かないことに気付いた時点でモモンガさんが現れた。

「ウルベルトさんっ!あなたもこっちに来たんですね!」

「……え?モモンガさん?えっと、こっち、とは?これ、俺の夢じゃないんですか?」

 表情アイコンも無いのに、モモンガさんが嬉しそうにしてるのがわかる。そして、何より。

(……感触が、ある……?)

 俺の手は、ダークブラウンのレザーグローブで覆われているのだが、モモンガさんにギュッと手を握られた感触がきちんとあった。

「……モモンガさん、ちょっと触ってみても?」

「ええ、勿論です!俺も同じ事アルベドにして、ヘロヘロさんにムッツリスケベとか言われちゃいましたよー!」

 やたらとテンションの高いモモンガさんにちょっと驚きつつも、俺はグローブを外す。……グローブの中は、普通の人間の手だった。爪だけは、何故か真っ黒なマニュキュアに塗られていたけれど。

(……昔のビジュアル系バンドのメンバーかよ。てか、俺爪まで作り込んだ記憶が無いんだが。悪魔ってこんな爪してるのか?デミウルゴスもこんな爪なのか?)

 などと脳内で突っ込みを入れつつ、直接モモンガさんに触れる。当たり前だが、アンデッドのモモンガさんには体温は無い。ただ、ひたすらに滑らかな骨の感触があるだけだ。

「モモンガさんの骨って、滅茶苦茶ツルツルですね。滑らかで触ってて気持ちが良いです」

「あぁ、それは良かったです。ウルベルトさんの手も、温かくて気持ちいいですよ」

 ……触れられているモモンガさんにも、触れられているという感じはあるのか。

「色々訊きたいことはあるかと思うんですが、皆が目覚めてからにしませんか?流石に、37回も同じ説明するのはキツイですし」

 モモンガさんはそう言うと、俺をロイヤルスィートの俺の部屋へ連れて行く。

「皆が目覚めるまで、自室で寛いでて下さいね。今、お茶を運ばせますから」

「は、はぁ……」

 見慣れた俺の部屋ではあるけれど、それはあくまでゲーム内でだ。こんな、リアルになった豪華な部屋で寛ぐも何も無いのだが……他にやることも無いので、俺はソファに腰掛けて待つ。

(……本当に、上質のソファだな。マジで本革か……リアルだと上層階級のヤツの家にだってもう無いだろ、これ)

 動物自体が減少している今、上層階級の人間だっておいそれとは本革なんて入手が出来ない。それこそ、上層階級の更に上、支配者階級でもないと使うのは無理な素材の一つだ。ゲーム内では簡単に入手出来るが。……これは、何の本革だっただろうか。

 優雅な大悪魔にしてはだらしない格好で、ソファに凭れる。天を仰ぐと、やたらと高い天井に豪華なシャンデリアがぶら下がってるのが見える。

(あぁ……大悪魔としての私室、ってことで貴族の私室を参考に作ったんだっけか)

 成金趣味に見えないように、極上の素材を使って優雅に仕上げた自室。今の俺の外見には、とても相応しいように思える。煌めくシャンデリアは、水晶製。窓に掛かっているカーテンは重厚な臙脂色の天鵞絨。窓枠は上品なアンティークゴールドだ。床に敷いたカーペットは、臙脂色に金で俺の紋章が入っている。壁にも、俺の紋章が入った旗が飾ってある。

「……やっぱり俺、センス良いよな」

 思わず、自画自賛していた。厨二病だ何だと言われるが、やっぱり格好いい物は格好いい、と俺は思う。自室を見回し、俺は満足して頷く。すると、その瞬間扉がノックされた。

「誰だ?」

「ウルベルト様、お茶をお持ちしました」

 初めて聞く声だ。張りがあって美しい、男性の声。ずっと聞いていたくなるようなそれに、何処か懐かしさを感じる。

「あぁ、入れ」

 自然とロールを回していた。この部屋の主、ウルベルト・アレイン・オードルならそうするだろう、と思ったからだ。

 俺の答えを聞いてから、扉が開かれた。優雅に尻尾を揺らしティーワゴンを押す男は、俺がよく知っている人物だった。(コイツを人、と言って良いのなら、だが)

「……デミウルゴス。お前、給仕も出来たのか?」

「はい、ウルベルト様。ウルベルト様がこちらにお戻りになったと言うことで、モモンガ様のご厚意により暫くは私がウルベルト様のお世話を致します」

 恭しく俺に一礼すると、最上位悪魔(アーチデヴィル)は俺に紅茶を淹れてくれた。その手付きは危なげの無い物で、俺はコイツに執事としてのスキルを与えたか?と一瞬悩んだほどだった。

「こちらは、夏詰みのダージリンのセカンドフラッシュを使用しております。色々召し上がって頂けるよう、本日はアフタヌーンティー形式でご用意させていただきました」

「そうか。今日の紅茶はストレートが美味いか?それともミルクがお勧めか?」

「本日の茶葉ならストレートがお勧めだと料理長が話しておりました」

 そう言いながら、デミウルゴスはケーキスタンドからサンドウィッチを取り俺に給仕する。

「本日は第六階層の採れたて野菜を使用したサンドウィッチに、ローストビーフのサンドウィッチ、新鮮な魚を軽くソテーした物を挟んだサンドウィッチの三種になります」

「あぁ、いただこうか。ありがとう、デミウルゴス」

 そう礼を言うと、デミウルゴスは頬を紅潮させ一礼する。

「勿体ないお言葉です、ウルベルト様。私は貴方様のために存在する(しもべ)。如何様にもお好きに使って下されば幸いです」

「……そうか」

 何だか過剰に反応されて、庶民としては本当に居心地が悪い。が、腹が減っているのは確かで。俺は素直に出されたサンドウィッチと紅茶を口にした。

「……!」

 美味い。食べ物がこんなに美味いと思ったのは、産まれて初めてだった。あっという間に三種類のサンドウィッチを食べ尽くしてしまうと、デミウルゴスは嬉しそうな顔で俺を見つめていた。

「ウルベルト様のお口に合いましたでしょうか?」

「あぁ、美味い。料理長を褒めてやらねばなるまいな」

「そのお言葉を聞いたなら、料理長も感涙に咽ぶことでしょう。ウルベルト様、スコーンもいかがでしょうか?まだ熱々の焼きたてですので、クロテッドクリームとジャムがお勧めです」

「では貰おうか」

 そんなやり取りを経て、スコーン、ケーキと食べ尽くし。流石に適度に腹が満ちてきた頃……全員が目覚めたのか、モモンガさんからの<伝言>(メッセージ)が入った。

「デミウルゴス、お前も一緒に来い。モモンガさんが呼んでるから円卓の間に行くぞ」

 そう命令すると、デミウルゴスは穏やかに微笑みながら俺に恭しく礼をした。俺に仕えることが幸せで仕方ない……そんな表情で。

 

 

 

 

 モモンガさんから受けた説明は、簡単に言うと「どうやらここはユグドラシルとは別の異世界のようで、ユグドラシルと同じアバター、能力のままアインズ・ウール・ゴウンはギルド拠点ごと転移してきたようだ」というザックリとした物だった。そして、NPCたちが命を持ち、一個の生命体として活動している、ということも説明された。だが、俺のようにNPCを作った人間ならその事は既に知っている。……何せ、他の皆の元へも創造したNPCが向かって世話をしていたのだから。ペロロンチーノさんなんかは、シャルティアという理想の嫁が三次元に出て来た!と大喜びしていたが、凝りすぎた設定に頭を抱えている面子も居た。

(俺はまぁ……俺の理想を注ぎ込んだ最高の悪魔だから何の文句も無いけどな)

 などと思いつつ、隣に控えているデミウルゴスを見る。自分で言うのも何だが、ユグドラシルで創った造型そのままで、更にはイケボまで搭載されて……無敵としか言い様のない、完璧な悪魔として仕上がっている。

(デミウルゴスを連れて、色々と遊んでみたい)

 モモンガさんに、NPCも外に出られる、と聞いて真っ先に思ったのがそれで。俺は愕然とした。

(……待て。遊んでみたい、って。デミウルゴスは最上位悪魔だぞ?そんなのを外に出したら……)

 間違いなく、現地住民は玩具になる。即死出来たら幸せ、そんな凄惨な地獄が待っている事は、想像に難くない。それなのに、俺は。

(種族と……カルマ値に引きずられてるのか?)

 そう気付いたら、一気に躯から血の気が引いたような気がした。このギルドは、異形種のみで構成されている。それこそ、人間種に害をなす種族も多数所属しているのだ。タブラさんなんかは脳食い(ブレインイーター)だし、多分彼の種族にとっては人間は食糧だろう。他の面子だって、そういった種族特性を抱えた者は多いのだ。

(ゲーム中は気にもならなかったが……これ、思ったよりヤバイんじゃないのか?)

 俺はまだしも、あっちでは善人だったヤツほど危ない気がする。……あの糞野郎とか。アレも、種族が蟲系だ。肉食の蟲も多いし、その系統だったとしたら今まで自分が掲げていた正義と、今の自分の感情などで錯乱するんじゃないだろうか。

(そう考えると、俺は悪魔で良かった、としか言えないな。飲食は不要の指輪があるにしろ……本能レベルで人間を食わないと生きていけない、と刻まれてる訳じゃないんだからな。精々、嗜好品、ってとこか)

 人間で例えるなら、本能レベルに刻まれてるのが食事なら、嗜好品は酒や煙草だ。そう置き換えると分かり易いが、幾ら飲食不要の指輪で抑えていても生き物にとっては食事は本能だ。美味い物を目の前にして、飲食不要だから食わないなんてずっと続けられるヤツがどれくらい居るだろう?……少なくとも、俺では無理だ。

(……あの糞野郎が欲望に負けてあっちのモラルをこっちで犯して苦しむのを見るのも愉しそうだけどな。他の面子がそうなったら流石に哀れには思うかもしれないが)

 元々アイツには良い感情は無いから、アイツの不幸は俺の蜜の味だ。

(あっちに居た時には、流石にこんなに露骨には考えなかったけどな。種族特性ってのは随分と厄介だ)

 他者の不幸、苦しみが心地良いなんて。愉悦の余り笑い出しそうになるのを、必死に堪える。俺と同じ、カルマ値がマイナスの連中なら同意してくれそうではあるが……中立や善の面子もここには居る。

(……まぁ、多分そいつらも帰れなかったら変わってくんだろうけどな……。変わるまでは、揉め事は起こさない方がいい)

 そう思い、俺は口を開く。

「聞いて欲しいことがあるんです。皆さん、どうか俺の提案を受け入れて貰えませんか?」

 右手を挙げてそう言うと、皆の視線が一斉に俺を向く。

「……その、俺たちは今、異形種じゃないですか?それで、皆さんもこの外見やカルマ値に色々影響を受けることが予想されるので……トラブルを避けるためにも、相手の事を否定しないようにしませんか?」

「……ウルベルトさん。それは、どういう意味です?」

 ……やっぱり、真っ先にあの糞野郎が俺に難癖を付けやがった。内心舌打ちをしながらも、俺は笑顔で続ける。

「例えばですね、異形種には主食が人間の者も居る訳ですよ。このギルドには居ませんけど、ミノタウロスとかね。それを頭ごなしに否定したら、ギルド内が分裂する恐れがあります。……ですので、それを防ぐ意味でも相手を否定しないようにしようと提案する訳ですよ」

 俺の発言に、一斉にざわつく場。たっちさんは、苦々しげな顔で俺を見ている。

「幾ら飲食不要の指輪をしていても……本能に根ざした食事を、何年も禁じるなんて出来ると本当に思ってます?」

 そう言って、俺はさっき脳内で考えてた人間にとっての嗜好品などの話をする。

「要するに、最低限譲歩しよう、って話です。別に俺は、無駄に人間を殺したい訳じゃありません。娯楽のために殺すのは勿論ギルメン全員で止めるとして。食事は止めない。……まぁ、種族やカルマ値の関係でそれを許容出来ない人はせめて見て見ぬ振りをする、って事で。……如何ですか?」

 ニッコリ、と。俺はわざとらしいくらいの笑顔でそう提案する。我ながら悪魔らしいロールが出来たと思う。本当はデミウルゴスも居るし「私」と言いたい所だが、今それをやったらこの提案は通らないだろうと何となく感じていた。

(俺が今、ロールをしてるってのはバレるとヤバイしな)

「……確か、ウルベルトさんは悪魔でしたよね?種族」

「えぇ。見ての通り、立派な悪魔で……悪の大魔法使いですよ?」

 まるで舞台役者のように両手を広げ、マントを靡かせる。そして、そのまま慇懃無礼な態度でたっちさんに向けて一礼する。すると、たっちさんが小さく舌打ちするのが聞こえた。

(……随分と、隠せなくなったモンだな。聖騎士ってのは腹芸も出来ないのかよ?)

 そう思いつつも笑顔のままたっちさんを見ると、真剣に考え込んでるようだった。

「ウルベルトさんは、こっちでは嘘は吐けない訳ですよね?」

「えぇ。何せ、種族がコレですのでね。酷く不便ではありますけど……だからこそ、俺が提案したんですよ。俺以外の誰かが提案しても……疑っちゃうでしょう?皆さん」

 ニイッと、大きく口を開いて嗤う。お前たちの心の中は見えているぞ、とでも言うように。

「……まぁ、俺はあっちに帰るつもりはありませんし……こっちでモモンガさんやヘロヘロさんと愉しくやりますから、元々誰かを否定するつもりなんて無いんですよ。否定するような人は……こっちで異形種として暮らすつもりのない人だけだろうと思ってますしね」

 そう、爆弾を落として。俺は彼らに背を向けた。

「デミウルゴス。部屋へ戻る、付き従え」

「はい、ウルベルト様」

 俺の言葉に、デミウルゴスは幸せそうな表情で従った。

 

sideギルメン

「……俺としては、悪くない提案だと思うんですよね。ウルベルトさんの提案」

 そう、ギルドマスターのモモンガが言う。彼のカルマ値はウルベルトと同じマイナス500だ。……そして、彼も現実世界へと帰ろうとはしない一人でもある。

「モモンガさん!そんな、それじゃあ……」

 たっち・みーがそう声を上げるが、モモンガは軽く手を振りたっち・みーの言葉を制止すると更に続ける。

「この転移は、どうして起きたのかもわかりません。また、どうやったら戻れるのかも、元の姿に戻れるのかもわかりません。ですから、どっちにしろ暫くはナザリックで全員暮らすことになります。つまり、共同生活になる訳です。……だからこそ、最低限の配慮は必要だと……俺は考えています」

「モモンガさんは、人間を殺すことを認めるって言うんですか!?」

 モモンガの意見を聞き終わった直後、たっち・みーが叫ぶ。それを、悲しそうにモモンガは見つめる。

「……もう、俺の手は血で汚れていますから。例え罪の無い少女を守るためでも……人を殺したことには変わりありません。ねぇ、たっちさん。正義って、法って何なんでしょうね?この世界では、一般人はレベル1くらいです。兵士がレベル10くらい。そして、レベル10の兵士が笑いながら村人を殺して……それを止めるためとはいえ、人を殺した俺は罪人なんでしょうか?」

「モモンガさん……」

 たっち・みーは、モモンガのその告白に言葉を失う。あの優しいギルマスが、既に人を殺めていた。その事実に、ただ驚愕していた。

 勿論、元の世界なら殺人者だ。だが、この世界は理が違う。弱肉強食に限りなく近い、文明レベルも低い世界だ。魔法や武技などはあるが、それでも水は井戸を掘ったりして得ているし、馬や馬車が交通手段なのだ。そんな世界で、誰かを守るために人を殺すことは罪になるのだろうか……?

「……すみません。えぇと、皆さんまだこの世界について詳しくないと思いますし、俺だって昨日転移してすぐ近くの村を見ただけですから、明日にでも直接現地の住人や暮らしを見て……それで、判断して貰えませんか?」

「……わかりました」

「うん、モモンガさんがそう言うなら」

「そうだよね、結論を急ぐ必要も無いよね?」

 たっち・みーがそう答えると、ぷにっと萌えやぶくぶく茶釜などもそう声を上げる。カルマ値が善や中立の者たちがそう言ったことで、他のギルメンも納得したのかそれぞれ自室に帰っていった。

 

sideモモンガ

 

 ウルベルトさんが、残るって言ってくれてすごく嬉しかった。まだ俺は何も言ってないのに、帰るって言わなかった。他の皆は帰っちゃう人が殆どだと思ってたから、俺やヘロヘロさんが帰るつもりが無いって知らないうちに残るって決意してくれたウルベルトさんの言葉が、とっても嬉しかったんだ。

 そして、俺が言い出しにくい提案までしてくれて。悪の大魔法使いらしく格好良く悪役を買って出てくれた。

「……血の臭いは、しないと思ってたんだけどな」

 ウルベルトさんは、気付いてたんだろうか。俺の手が、既に血で汚れてしまっていた事に。だから、あんな提案をしてくれたんだろうか。嘘を吐けないという、悪魔の種族特性を皆に公言してまで。

 

sideウルベルト

 

 俺はデミウルゴスを従えて自室に戻る。ソファに腰掛けてデミウルゴスを見ると、デミウルゴスは薄く笑みを浮かべながら口を開く。

「影の悪魔も、直戻るかと」

「……あぁ、そうだな。全く、モモンガさんは本当に優しくて抜けているから……私がしっかりしないとな。なぁ、そう思うだろう?デミウルゴス」

 そう言って笑うと、デミウルゴスはまた紅茶を淹れてくれる。良い香りのそれは俺の精神を落ち着かせてくれる。

「はい、ウルベルト様。ウルベルト様がモモンガ様を補佐して下さるのなら、ナザリックは安泰かと」

「まぁ、お前にも私の手足となって働いて貰うつもりでいるがな。……あぁ、戻ったのか」

 扉の外に気配を感じそう言うと、デミウルゴスはすぐに扉を開ける。すると、影の悪魔はスルリ、と俺の前にやって来て跪く。

「……ウルベルト様。ご命令通り、あの後の事も全て見て参りました」

「あぁ、ご苦労。では報告してくれ」

 俺がそう促すと、シャドウデーモンはあの後の僅かな時間に起こったことを全て話してくれた。どうやら、概ね俺が思った通りに事は進んでいるようだ。そして、同士討ちの解禁についても皆には話したようだ。

「……私はその場に居なかったし、聞いてないふりをして大災厄をあの糞野郎にぶっ放すってのも有りか。いや、あれは絶対に当てられる状態じゃ無いと勿体ない。魔法の矢くらいで勘弁してやるべきか……」

 と、思わず本音をダダ漏れにしてそう言うと、デミウルゴスはそれはそれは愉しそうに口を開く。

「ウルベルト様の魔法がまた見られるのでしょうか。とても楽しみです」

「……本音を言うと本当にやりたいが……モモンガさんを悲しませるつもりは無いしな。戯れ言だ、流せ。で、影の悪魔。他の奴らについてる同族とは意思疎通は可能か?」

「はい、勿論ですウルベルト様」

 影の悪魔のその言葉に、口元が歪む。それは、つまり。……この俺が、全てのギルメンの言動を把握出来ると言うことに他ならないからだ。

 モモンガさんがアンデッドの種族特性で他のアンデッドを感知出来るように、俺も悪魔を感知出来る。だから、モモンガさんが警護として付けていた影の悪魔の存在にも気付け……利用出来たのだ。ここの悪魔はほぼ全てが俺の配下だから、モモンガさんの命令に反しない範囲であれば問題無く利用出来る。他のギルメンは、恐らく自分に警護のためとはいえ影の悪魔が付けられている事になんか気付いていないだろう。

「では、24時間交代で警護の任を交代し、俺の元に来て全てを報告するように。……出来るな?」

「はい、他の者にもそう伝えます」

「では、お前も任務に戻れ」

 そう言うと、影の悪魔はシュルリ、と俺の影に入った。

「……デミウルゴスが居るから、私の警護は必要無いと思うのだがな」

「そう仰って頂けて光栄です、ウルベルト様」

 冷めた紅茶を替えながら、デミウルゴスは嬉しそうな表情でそう答える。

「お前は私自らが創造した悪魔だからな。其処いらの雑魚には負けないだろう?勝てないような強者相手でも、逃げることくらいは出来る能力だと思っているしな」

「勿論です!ウルベルト様の僕として恥ずかしくないよう、常に精進したいと思います」

 俺の言葉が余程嬉しかったのか、デミウルゴスは長い尻尾をブンブンと派手に揺らしていた。……イケメン紳士な俺の悪魔は、随分と感情的なようだ。

(俺、デミウルゴスは知者のつもりで創った筈なんだが……感情豊かな知者ってアリなのか?こう、知将ってのはクールなモンだってイメージがあったんだが)

 そんな事を思いつつ、俺はふと思った事を口にする。それで、デミウルゴスがどう反応するのかが見たくて。

「デミウルゴス。お前は私が強いから従っているのか?」

「!いいえ!違います。私は、ウルベルト様がウルベルト様だから、お仕えしているのです」

 俺の言葉に、デミウルゴスが必死になってそう答える。急に不安げな顔になったデミウルゴスに不思議な物を感じたが、俺は気にせず更に続ける。

「では、私が力を失っても……この姿でなくなったとしても……お前は私に仕えると言うのか?強さに惹かれる悪魔のお前が」

「勿論です。私の忠誠は、貴方様に捧げるためにあるのですから。それが私の生き甲斐であり、幸せでもあります、ウルベルト様」

 俺の横に跪き、そう言い切る俺の最上位悪魔。悪魔は嘘は吐けないから、デミウルゴスも本気でそう言っているのだろう。……だが、それを簡単に信用出来るほど、俺はおめでたくない。

「そうか。なら、いい。デミウルゴス、食事の準備をしてくれ。さっき食べたばかりだが……妙に腹が減ってな。メインは、肉が良い。そうだな……ブルーレアかレアくらいで食べて、一番美味く感じる赤身肉がいい。料理長にそう伝えて作らせろ。メニューの組み立ては任せる。合わせる酒もな」

「かしこまりました。急ぎ、伝えて参ります」

 そう言って、デミウルゴスは俺に一礼してから部屋を出る。俺はそんなデミウルゴスを見送りながら、これからの事に考えを巡らせるのだった。

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