BLEACH The Magical Girls Site 作:未来跳躍
ENTER.2 Deathberry meet the magical girl (2)
一人の少女がいた。彼女の名前は朝霧彩。東京西部、武蔵野市に住む普通の女子中学生だ。いや、彼女の事を普通と呼んでいいのだろうか。
彼女の家は父と母、そして兄を含む世間から見るとごく一般的な家庭に見えるだろう。
だが、彼女は毎日“死ぬ”事ばかり考えて生きている。
今日も重い足取りで学校へ行く。本当は行きたくない。だが、父は厳格な性格でさぼりは許さないので休む事は出来ない。
通学路の橋の下、そこに捨てられている猫に毎日餌を持っていく事だけが彼女の唯一の生き甲斐だった。
学校に着いて上履きを取り出そうとげた箱開けた瞬間、手に痛みが奔る。見てみると、上履きや下駄箱の扉に大量の画鋲や剃刀が入れられていたのだ。
彼女は切れないように慎重に画鋲や剃刀を取り出して、ボロボロになった上履きに履き替えた。
教室に入り、自分の机に向かっていくと、彼女椅子には大量のボンドが巻き散らかせてあり机はマジックや彫刻刀などで罵声が書かれていた。
明らかにいじめの現場であるが、担任も見て見ぬふりをする。彼も保身の為に何も無かった事にしたいのだ。そんな様子を雫芽さりな、貝島えりか、川野愛の三人の女子が醜悪な笑みを浮かべて、彩を嘲笑っていた。
もちろん彼女へのいじめはここで終わらない。
放課後になれば三人で彼女を女子トイレに連れて行き、まるでサンドバックの様に彼女をなぶり、便器に顔を突っ込んで窒息寸前までもがくのを楽しんで見ていた。
飽きた三人が帰った後、ようやく解放された彩の携帯のLINEにある通知が入る。
送信したのは彼女の兄、朝霧要。内容は短く纏められた一文『はやく帰って来い』だった。
そう、彼女に安堵する場所はない。自分の家にさえ――。
「うっひょ~!彩、お前はやっぱ最高だ!最高のサンドバックだよ」
――朝霧要。表向きは成績優秀、スポーツ万能で学校や家でも皆が褒め称える優等生だが、彼の裏の顔は実の妹を嬲ることが趣味の鬼畜である。
「お兄ちゃん…、もう…やめて…。これ以上すると…、女の子の日が来なくなっちゃう」
彩が涙を流して懇願すると、先程まで笑顔だった彼は鬼の様な怒りをあらわにして彩の髪を乱暴に掴み上げて口を開く。
「黙れ!てめえの身体がどうなろうが知った事じゃねえんだよ!!僕はあのバカ親父の期待に応えようと必死なんだよ。のうのうと生きているお前は僕の精神緩衝剤として、身体張って貢献しろやクズ!」
机の上に時計を見やると、そろそろ彩をいたぶって三十分が経とうとしていた。これ以上すると、流石に親の目に入ってしまう。要は忌々しそうに舌打ちをすると、最後に一発彼女の腹に拳を入れて部屋を後にした。
部屋に残された彼女は絶望していた。もうこれ以上、この地獄で生きていくのに耐えられなかった。
すると、彼女の部屋のパソコンの電源が勝手に付いた。
突然の事に驚くが、何なのか確かめる為に痛む身体を起こしてパソコンの画面に近づく。
そこには――
『不幸だねー不幸だねー』
おさげの髪型をした不気味な仮面のような顔の少女が映っていた。
『そんなキミに魔法の力を与えよー』
「魔法の…力…?」
『当サイトから魔法のステッキをお送りします。使うも使わないもキミ次第。それでは良き魔法少女ライフを』
そう言うと画面は消えてしまった。
彩は気味悪く思ったので、そのまま着替えて眠った。だが、腹の痛みと先程の変なサイトの気味悪さがずっと頭に残ってあまり眠れなかった。
次の日、通学路の踏切で駅員が集まってある物を拾い上げていた。
最初は何をしているのか気になった彩は、すぐ様にその思いに後悔した。
駅員たちが拾い上げているのは、彼女が毎日餌を与えていたあの猫だったのだ。
ネコが死んだショックからいまだ立ち直れない彩は涙を流しながら下駄箱の扉を開ける。そこにはいつものいじめはなかったが、代わりにある物が置かれていた。
「何…これ?」
手に取って見ると、玩具の拳銃のようだった。真っ白なカラーにハートの形をした銃身、そして天使の羽根の装飾がまさしく女の子向けの玩具の様だった。
下駄箱の奥には一枚の折り畳まれた紙が入っており、中を見てみると――
『ステッキのつかいかた
引き金を引くだけ。以上』
と書かれており、分の下には昨日のサイトに映っていたあの不気味なおさげの顔が描かれており、その横には噴き出しに『これでキミも魔法少女だっ』と書かれていた。
何の事か分からないままでいると予鈴のチャイムが鳴ったので、彩は慌ててその拳銃をカバンにしまって教室に向かった。
放課後、いつもの三人に体育倉庫に連れ出された彩は何時ものように、嬲られていた。
「つまんねー。コイツ今日、全然元気がねえじゃん」
「もしかして、飼いネコでも死んじゃったのかなー?」
さりなの言葉に彩は反応する。それを見るとさりなは歪んだ笑みを浮かべて口を開く。
「最高だったな。一瞬で挽肉になっちまうんだからな」
さりなの言葉に怒りと悲しみの叫びを挙げる彩を嘲笑うさりな。
「あんな小汚いネコと遊ぶよりもさ。大人の遊びで楽しもうぜ。彩ちゃん」
「オイオイ、いいのか?こんな可愛い子の初モノ頂いちゃってもよ」
「いいよ。ヤッちゃて、翔太先輩」
体育倉庫に張って来たのはガタイのいい男、さりなたちの知り合いだろう。
いきなり入って来た男に一瞬混乱するが、すぐに状況が理解できた。
このまま彼女を犯させようとしている事に。
男は笑みを浮かべて彩に近づき襲いかかろうとしたその時――
「い、いやあああああああ!!」
渾身の力で男を突き飛ばした彩はカバンを手に、全力で体育倉庫から逃げだした。
「チッ!逃げやがった!早く捕まえろ」
「あたしが追うよ」
逃げた彩をえりかと翔太の二人が追い掛ける。
そんな三人の逃走劇を遠くから眺める一人の少女がいた事を彼女らは知らない。
彩が逃げ込んだの駅の近くの立体駐車場。その隅で息を殺して蹲っていた。
近くでまだ二人が探している。
「くっそ~。アイツどこ行きやがった」
「仕方ねえな。もういいや、なんか萎えちまったし。今日は帰るわ」
「えっ!?ちょっと待ってよ、先輩」
遠くから二人の会話が聞こえてくる。ようやく諦めてくれたのかと、安堵した。
「バア―――――」
「――ひッ!キャアアア!!」
慌てて逃げようとするが翔太に足を押さえつけられる。
なぜなんだろう。どうして私がこんな目に遭わなければならないの?
そんな絶望の中で脳に過ぎったのは昨日のサイトの言葉。
『魔法の力を与えよー』
すぐにカバンから朝の拳銃を取り出して二人に向けて構える。
「………ぷっ。なんだよそのおもちゃは。アッハハハッハ」
「マジウケるわ~!!」
(私はこの地獄を終わらせたい!)
彩はそう強く念じて、笑う二人に向かって引き金を引いた。
ポンと軽い音が鳴ったと同時に、ハートの形をした煙を残して二人はいなくなっていた。
突然、姿を消した二人の事で混乱していると、近くで大きな悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴が聞こえた方へ向かって彩が見たものは――。
「…嘘…そんな…」
電車にひかれ、見るも無残な姿に成り下がったえりかと翔太の二人だった。
「ハイ。どいてください。皆さん、どいてください!」
踏切にはすでに駅員が他の人達に近づかないように呼び掛けていたが、やじ馬が大勢押し寄せていた。
「えりか…?翔太先輩………」
「嘘…でしょう…」
さりなと愛も騒ぎを聞きつけ現場に到着していた。目の前で変わり果てた親友と先輩の姿に困惑し、頭が回らずただただ二人の死体を呆然と見ていることしかできなかった。
彩は逃げた。この現場にいられなかった。
ただただ踏切とは真逆の方へと走った。
とりあえず、人目から避けようと角を曲がった瞬間、彼女は男子高校生とぶつかって互いに尻もちをついた。
「いてて。悪い、大丈夫か?」
ぶつかった高校生が手を差し伸べるが、今はそんな事を気にしていられない。彩は急いで立ち上がると無我夢中で走り去った。
どれだけ走っただろうか。息が続かなくなりその場でへたり込んだ瞬間に思考が戻って来た。
(私が、私が殺したの?ちがう、私のせいじゃない。私はただおもちゃの拳銃を向けただけ。こんなもので人を殺せる筈がない。違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う)
混乱する思考を止めたのは、突然の頭痛。頭を押さえようとした瞬間に気が付いた。自分の身体の異変に。痛むのは頭なのに、目から血が流れている事。髪が伸びて先端が赤く染まっている事。左手首にハートの紋様が現れている事。
頭が混乱でいっぱいだが、すでに日は沈みかけて暗くなり始めている。とりあえず家に帰ろうと彩は再び歩き始めた。
身体の異変は帰り道の途中で元に戻っていた。
「ただいま」
家に着いた時にはすっかり夜になっていた。
「あら、おかえり。今日はずいぶん遅かったわね。どこに――って彩?」
母が出迎えてくれたが、会話する気にもなれずそのまま自分の部屋へ向かっていく。
部屋に入って鍵を掛けると布団に包まった。
「おーい。彩ー。どうしたんだ?母さんが心配していたぞ。兄ちゃんも心配なんだ。頼むからここを開けてくれー」
扉の外で兄が呼び掛けている。しかし、要に彩を心配する心などこれっぽちもない。彼の心中は何時まで経っても扉を開けない妹に対して激しい怒りだけだった。もっとも今の彩には周りの声などは全く聞こえていない。
(私が…殺した?だとしたら、私は警察に捕まっちゃうの?知らなかった。こんなことになるなんて。私はただ引き金を引いただけ。私は殺してない。殺してなんかない)
不安と恐怖が彩の心を押しつぶそうとする。
恐怖に震えている内に夜はあっという間に明けてしまった。
学校の通学する途中にあの踏切へ行くと、昨日のことがまだ噂になっていた。
彩はそこから逃げるかのように走り抜けていくと、すぐ近くの花屋に寄った。
そこで小さな花束を買うと、いつもの橋の下へ行って空になった段ボールの中へ供えた。
すると、あの子ネコとの今まで思い出が頭の中に過ぎり彼女はまた泣いた。
学校ではすでに亡くなったえりかと翔太とのことで学校中が噂になっていた。
「オイ、聞いたかよ?2Bの貝島が亡くなったってよ」
「マジか?」
「マジマジ。3年の荒井って人と一緒に電車に轢かれたんだとよ」
「何それ、怖」
「まあ、でもあいつらDQNだったからどっちも死んでよかったんじゃね?」
「あぁ――って、おい!後ろ!」
「え?って、ひぃっ!?」
生徒達が噂する中を雫芽さりなが殺気を撒き散らして歩いて行く。あまりの気迫に生徒達はモーゼの十戒の様にさりなが歩く道を開けていく。
朝のHRに入ると担任が重苦しい顔で口を開いた。
「大変残念なお知らせがあります。すでに知っている人もいると思うが昨日の夕方、同じクラスの貝島えりかさんが事故で亡くなりました。突然の事で皆も驚いていると思うが、同じクラスで過ごしてきた彼女の為に黙祷を捧げたいと思います。それではみなさん…黙祷」
クラスに静寂が訪れる。殆どのクラスメイトは先生の言われた通り黙祷と言われて目をつぶって黙っているが、彩はこの状況に耐えるのに必死だった。吐き気と目眩が彼女を苦しめる。
そんな中、黙祷していない生徒が彩以外にも二人いた。一人は机に携帯を隠してこっそりとパズルゲームで遊んでいる一人の女子。もう一人は鬼の形相で彩を睨みつけるさりな。
その殺気に気付いた彩はただ目を伏せることしかできなかった。
黙とうが終わると先生はHRを終了し、一時間目の授業の準備に入っていった。
放課後
彩は急いで帰ろうとしたが、さりなに呼び止められて女子トイレに連れて行かれた。女子トイレに入った途端、彩はさりなに首を締めあげられて壁に叩きつけられた。
「説明しろ!昨日、あの後何があった?見てたんだろ。お前を追い掛けていた二人が死んだところをよォッ!!」
「知らな…い……私…何も…見て…な…」
擦れる様な声で否定するが、さりなは彩の顎を掴んで彼女の口を無理やり開かせると、スカートからカッターナイフを取り出して口にねじ込んだ。
「あたしはな、朝霧。お前があの二人を殺したんじゃないかと思っている。お前があの二人を線路へ誘い込み、突き飛ばして殺したんだ!!」
「ちょっと、さりな!それはさすがにマズイって!」
慌てて愛がさりなの腕を掴んで彼女を止めようとするが、今のさりなは愛の言葉など耳には聞こえず「邪魔すんな!」と叫んで突き飛ばした。
「コイツがあたしの親友を殺したんだ。だから、お前にはこれで口を裂いて一生残る傷を作ってやる!!」
(ヤダ…誰か助けて…)
あまりの恐怖に彩はただ目を瞑って助けを請うことしかできずにいた。
しかし、一向に痛みは襲ってこない。というか、急に静かになった。
恐る恐る目を開けると、その目に映っていたのはまるでビデオの一時停止を押したようにぴたりと止まっているさりなと愛の姿だった。
「何・・これ…?動いてない…?」
「全く、世話を焼かせるね」
突如聞こえる声。その方へ顔を向けると――。
「あなたは――、奴村さん…?」
朝の黙祷でパズルゲームをしていた奴村露乃がさりなからカッターナイフを取り上げて立っていた。
「なんでって言いたそうだから答えるわね。私が時を止めた」
「時を…?」
「そう。それが私の魔法」
魔法。その言葉に彩は反応する。だが、反応してもそれ以外の状況に着いて行けず茫然としている彩を余所に奴村は言葉を続ける。
「せっかくステッキを手に入れたんだから、こんな人間生ゴミ早々に殺せばいいのに」
「えっ?殺すって…――」
すると、奴村はさりなから奪い取ったカッターでさりなの首を切りつけた。
「ハイ、これで不慮の事故の出来上がり。それじゃあ、行くわよ」
「い、行くってどこに?」
「教えてあげるわ。魔法少女サイトについて」
今作はほとんどが原作のままなのであまり面白みはないです。
しかし、次回から物語が大きく動いて行きます。