BLEACH The Magical Girls Site 作:未来跳躍
ENTER.3 Deathberry meet the magical girl (3)
「すごい。本当に止まっている」
「そう。私のステッキの能力は“時間停止”これで信じてもらえたかしら」
今彩達は学校を出て、街中を歩いている。それだけならただの下校風景なのだが、違うのは彩と奴村を除く全てが停止している事だ。人は云うまでもなく、動植物も風も水も全てが停止している。
だが、ここで一つの疑問が生まれる。
「でも、どうして私は?」
「動かしたい相手の名前を入力すると、私と共に行動できる」
「そうなんだ…」
「朝霧さん、あなたのステッキも便利な能力ね。“瞬間移動”。対象物を瞬時に別の場所に飛ばす能力」
「どうして、それを――?」
「昨日の事全部見せてもらったわ」
急に胃を締めつけられる感じがした。見られていた。昨日の事を。
「ち、違うの。あれは――」
「気に病む事はないわ。言ったでしょう。ステッキを手にしたなら、生ゴミはどんどん排除すればいいって」
何を言っているのだろうか、生ゴミっていったい何ことだろうと考えていると奴村は言葉を続けた。
「ムカつく奴、嫌味な奴、嫌いな奴、五月蝿い奴、調子に乗ってる奴、モラルの欠片も無い奴、他人に迷惑を掛ける奴、罵声を浴びせる奴、暴力を振るう奴、脅しを掛けて来る奴、法を犯す奴、欲望の為に他人を傷付ける奴。自分に実害があると認識すれば皆消してしまえば良い
これが不幸な人生に血塗られた私達のような人間の特権」
奴村の瞳に渦巻くドス黒い感情に彩は恐怖する。
彼女に一体何があればあんな眼が出来るのだろうか、彩はそれが気になっていた。
「さて、ここまで来れば十分ね」
奴村はステッキを取り出して、画面にある再生ボタンをタップする。すると、先程まで止まっていた世界が一斉に動き始めた。
それはもちろん彼女も含めて――。
「ギ、ギャアァァァァァァアアッ!!!」
「キャアアア!!」
さりなは何が起こったのか理解できなかった。先程まで彩の口に入れていた筈のカッターがなぜか自分の首を切っているのだから。
混乱する思考もすぐに首から流れ出る大量の出血に奪われていく。
やがて意識も失いさりなはその場で倒れ落ちた。残された愛は大声で救助を呼んだのだった。
場所は変わり、奴村はステッキの画面を切るとポケットにしまうと、彩の方に向き直り口を開いた。
「安心して、あいつはクズだけど殺してはいないわ。それじゃ、そうね。とりあえず近くの公園で話でもしましょうか」
あれからとりあえず場所を移した二人は今、近くの公園のベンチに座っている。この公園は大分古く遊具も錆びれている為に、この時間でも子供はいない。
とりあえず彩は何を話したらいいのか分からず、少しそわそわしていると
「ハイ、これ。とりあえず飲んで落ち着きましょう」
奴村はカバンから小さいペットボトルに入ったお茶を差し出した。
「あ、ありがとうございます……」
受け渡されたペットボトルの蓋を開け、とりあえずお茶を口に運んだ。
飲み物を飲むと少し、気持ちが落ち着いてきた。
「私、どうなるのかな?」
「どうなるって?」
「だって、私のステッキの所為で死人が出たし、雫芽さんもさっき――」
「『魔法を使って人を殺した』なんていって警察が信じてくれると思う?」
彼女の問いかけに反論できない。仮に彩がステッキを持って自首しても警察からは頭が悪い子供と追い返されるのがオチだろう。
そう確かに、これはまさしく魔法のステッキだ。
「魔法を物理的に証明できない以上、警察は手が出せない。だから私達はこの力を使って生ゴミを排除していくのよ」
奴村の言う事を理解はできる。だが、彩は納得もできなかった。いくら自分達が傷つけられた人間だったとしても、それで人を傷つけたり殺したりするのはいい事だと思えなかった。
「まあ、ステッキをどう使うかはあなたの自由よ。人を傷つける凶器として使おうが便利な道具として使おうが好きにするといいわ。ただし、使いすぎには要注意だけどね」
「え、それってどういう?」
「教えてあげるわ。魔法少女サイトについてね。と言っても、あくまで私の経験則から導き出されたルールの様なものだけどね。昨日このステッキを使用した時、何か異変は起こらなかった?」
そう尋ねられて彩は思い出す。昨日の身体に起きた異変を。
「ハイ。ありました」
「ステッキを使用すると“身体のどこかから出血する”、“髪の色が変化する”、そして“手首に紋様が現れる”この三つがどの魔法少女でも共通するルールよ。そして、この紋様が一番大事なルールよ」
「大事、ですか?」
「そう。この紋様は魔法少女のライフポイント。つまり、寿命よ。魔法使用する度に、この紋様は少しずつ減っていき全部無くなった魔法少女は死ぬ」
「し、死ぬ…!?」
奴村の「使いすぎには要注意」という言葉はこの事だったのかと納得してしまう。
だが、まさか『死ぬ』なんては思わなかった。
「魔法少女サイトが何のために存在するのか?誰が運営しているのかは一切不明。ただ一つ分かっているのは、一度このステッキを手にした以上、私達は魔法少女サイトのルールに縛られる。たとえ、それがどんな理不尽なモノであったとしてもね」
あのサイトに、このステッキにそんな秘密があったとは知らなかった。もし奴村が教えていなかったら、どうなっていたのだろうと彩は想像しえない恐怖に身震いをする。それと同時にある一つの疑問も生まれた。訊こうか一瞬戸惑ったが、今は効くべきだと勇気を出して尋ねてみる。
「あの、どうして奴村さんはどうしてそんな大事な事を私に教えてくれるの?同じ魔法少女だからなの?」
「まあ、そんな所ね。朝霧さんは無害だし。手を結んで置いて互いにメリットのある話だからね」
「メリット?」
「えぇ、それは――「オォォォォォォッ!!」…っ!?」
突如奴村の言葉をかき消す獣の方向。ここは公園だが、この公園には今は彩と奴村を除いて、人はもちろん犬や猫、鳩や烏と言った鳥獣の類は存在しない。
だが、二人には確かに聞こえた。
「なに、今の声!?」
「わからない……っ!?朝霧さん、避けて!!」
「キャッ!!」
突如、上空から彩の立っていた場所へと何かが落ちてきた。ドスゥンと響く思い地響き、舞い上がる土煙。
「朝霧さん、大丈夫!?」
「だ、大丈夫。ありがとう奴村さん」
彩も奴村に突き飛ばされていたおかげ何とか無事でいた。
奴村も無事で彩が大事ないことを確認取れた事でひとまず安堵した。
「いったいなにが?まさか
「何なの……」
舞い上がった土煙の中から現れた物を見て二人は絶句する。
「オォォオォォォォォッ!!」
5mはありそうな巨大な体躯、丸太の様に太い6本の蹄の着いた足、胸に空いた大きな穴、そして白言う髑髏の様な手工で作られた牛と鹿の仮面を被った二つの首。
一言で言うなら、まさしく怪物。
これが生者、死者問わず魂を求めて喰らう悪霊“虚”である事はもちろん今の彼女達は知らない。
「奴村さん…、これも…魔法なの…?」
「そうね、率直に言うと私もこんなのは知らない」
「オオォォオォォォォォッ!!」
「あ、…あぁ……」
初めて見る虚の咆哮に彩は恐怖で足に力が入らず、その場でへたり込んでしまう。
奴村はステッキを取り出してとにかく時を止めようとするが、ここで致命的なミスに気づいてしまう。
(しまった!私のステッキはカバンの中!)
奴村は先程ステッキを使い終わった後、ステッキをカバンの中に入れていた。
しかもそのカバンは虚の後ろ。取りに行ける余裕なんかない。
虚の二つの口が開いた時、彩が奴村の前に立ち、銃型ステッキを虚に向けていた。
「朝霧さん!!」
しかし、足はガクガクと震え、腰は逃げ腰、目からは涙が止まらない。
その姿だけを見れば実に情けないものに映るだろう。だが、彼女は虚を前に立ち塞がった。
引き金を引こうとした次の瞬間、彼女の脳内を過ぎったのは昨日の惨状。あの時の記憶がフラッシュバックを起こして、引き金を引く指に力が入らなかった。
トラウマと恐怖が彩の身体を硬直させる。
「逃げてッ!」と叫ぶ奴村の声も虚の方向に掻き消されて聞こえなくなり、自分は死ぬんだと、死を悟ったその瞬間、
斬ッ!!
「「ッ!?」」
突如、牛の顔が真っ二つに斬られ、虚は後ろへと倒れ込んだ。
何が起こったの。二人がそう思い始めたその瞬間、二人の後ろから一人の男が現れた。
「全く、危ねえな。ギリギリだったぜ」
彼らはまだ知らない。この出会いが二人の、いや多くの少女達の運命を大きく変える出会いになるとは――。
その男の名は、黒崎一護。
今話でようやく第一編が終わりました。
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