BLEACH The Magical Girls Site   作:未来跳躍

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今回はオリジナル要素が強くなったので、少し長くなりました。
感想や評価もよろしくお願いします。


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一護が虚と交戦を始めた公園、そこから少し離れたビルの屋上から彼らの様子を眺める二つ(・・)の影があった。

 

「ねえ、あれってさ」

 

「うん。黒崎一護、例の死神代行だね」

 

「あれ?彼ってさ、空座町の担当じゃないの?」

 

「別に彼が空座町の担当ではないよ。空座町には車谷善之助という人が担当の筈だから」

 

「ふ~ん…。でもさ、どうするの?せっかくあの子の魔銃の力を確かめようと、あの子に恨みのある二人を虚にしたのに邪魔が入っちゃったけど」

 

「どうもこうもないさ。彼らじゃ物足りないと思うけど、とりあえず見せてもらおうよ。“アイツ”を倒した死神代行の力をね」

 

「オッケー!」

 

二人の会話は誰にも聞かれることなく、町の喧騒に飲まれて消えた。

 

 

 

突然の事に頭が追い付かない。彩は言うまでもなく、魔法少女として経験のある奴村でさえ、今の状況に混乱していた。

 

今、斬り飛ばされた虚は言うまでもなく、その怪物を切った一護。オレンジの髪に全身を黒い着物という奇怪な格好もそうだが、それよりも目に着くのは彼の右手に持つ刀。普通に背の高い彼の背丈にも匹敵するほど巨大さに柄も鍔もない出刃包丁の様なむき出しの刀身。それを軽く振るう彼の膂力。

自分達の力も常識外れだが、この男はその範疇を超えている。

 

「な、何が起こっているの?」

 

「まさか、彼も…魔法を…?」

 

「ブルァァァァァァァァァッ!!」

 

すると、虚が起きあがりより大きな咆哮を挙げる。その声は先程の咆哮とは明らかに怒気が含まれていた。

 

「まあ。顔が二つもあるんなら一つ潰しただけじゃ死なねえか」

 

「ブルァァァァァァァァァァァア!!」

 

虚は叫び声をあげながら一護に向かって突進する。その巨体でただ走ってくるだけという単純明快な攻撃だが、早さのある突進ほど怖いものはない。実際にアフリカスイギュウはあの百獣の王ライオンでさえ突き飛ばすこともあるのだ。

しかも虚はそのアフリカスイギュウの倍以上の体格もある。

突き飛ばされれば命の保証はまずできない。

しかし、一護は逃げない。ただ悠然と虚の突進に刀を構えて立っていた。

 

「何してるの!?逃げなさい!」

 

「キャアアッ!!」

 

奴村は焦燥の顔で叫び、彩は怖くて手で目を覆って顔を伏せてしまった。

だが――、

 

「どうりゃあ!!」

 

一護の叫びと共に振り下ろされた刃は突進する虚の鹿の仮面の眉間にぶつかり、そのまま真っ二つに斬り裂かれた。

切り裂かれた虚は倒れると、そのまま消滅した。

 

「さて、これで終わったな」

 

虚を退治した一護は帰宅する準備を始める。

 

(どうしよう。ここは声を掛けるべきなのかしら?でも、もし彼が敵だったらその時は――)

 

だが、敵か味方か分からない上に、実力が上の相手。もし、自分たちに牙をむいたらどうする?そんな思考を巡らせていると――。

 

「よっと。「あ、あの…。ちょっと待って下さい!」――へ?って、あべしっ!!」

 

虚を退治し終えこの場を去ろうとした一護が地面を蹴りあげ、飛び跳ねたその瞬間に、彩が一護の袴の裾を掴んだ。

突然、掴まれた事でバランスを崩した一護はそのまま前方へ大きな弧を描いて顔から地面に衝突した。うちどころが悪かったのか、頭に大きなコブを作ってそのまま気を失った。

 

「ひゃあっ!ご、ごめんなさい…」

 

「朝霧さん…、あなた以外と無茶するわね…」

 

「奴村さん、どうしよう?」

 

「どうもこうも、とりあえず彼が起きるのを待つしかないわね。とりあえずそこのベンチにでも運ぶから朝霧さん手伝ってちょうだい」

 

「あ、はい」

 

二人は転がっている一護担いで先程座っていたベンチへと運んだ。

 

 

10分後

 

「ち、ちくわぶ!なんだ、夢か…」

 

「おはよう。ずいぶんユニークな夢を見てた様ね」

 

目を覚ました一護の目の前に現れたのは二人の少女達だった。

 

「…って、うわっ!?」

 

小さいベンチに横になっていた上に、目の前にいきなり現れたので、驚いてそのまま転げ落ちてしまった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あぁ、大丈夫。ちょっと驚いただけだ」

 

慌てて彩が一護に手を差し伸ばして、一護も彼女の手を取って(・・・・・)起きあがった。

 

「さて。起きた所を悪いけど、一つ訊かせてもらえるかしら?」

 

「あぁ、さっきの虚の事だろ。お前らも見えていたんだな」

 

聞かれるだろうと予測していた。駆け付けた時の二人の感じを見る限り、二人は明らかに虚の方を見て驚いていたから自分の事も見えているだろうし、いきなりこんな戦いを見せられて説明を求めるのは当たり前だからである。

一護自身も初めてルキアと出会った時は色々聞いた。一番驚いたのは、ルキアの下手糞な画才だったが…。

 

「虚?さっきの怪物の事かしら。それもだけど、まずはあなたの事よ」

 

「俺か?」

 

「えぇ。貴方、“魔法少女”なの?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

三人に静寂が訪れる。奴村は完全に失敗してしまい恥ずかしいのか少し顔が赤くなっており、彩もどう対応しようか迷っている。一護は奴村を生温かい目で見守っていた。

 

「あの、奴村さん。その聞き方は…」

 

「うん。ごめんなさい。今のは完全に私の質問が間違っていたわ」

 

「なぁ。まさかだと思うけど、お前達ってその“魔法少女”なのか?」

 

一護の質問に二人は首を縦に振る。

 

「そうね。あなたの事を聞く前にまずは此方側の事を教えるべきよね。私達は血塗られた不幸な人生を歩んできた為に選ばれた“魔法少女”よ」

 

「“魔法少女”ってアレだろ。なんか機械っぽい杖を持って変身してビームをぶっ放すアレだろ」

 

感心する一護の頭の中には、白い衣服を着て特大のビームをぶっパする魔法少女が過ぎった。

ちなみに何故そんなイメージかというと、前に浅野がその魔法少女の出る漫画をしつこく勧めてきたので、仕方なく読んだからである。

 

「あなたの中の魔法少女イメージが若干気になるけど、残念ながら私達はそんな機械っぽい杖も持ってないし、変身もしないしビームも撃てないわよ」

 

「じゃあ、何ができんだ?」

 

一護の問いに奴村はカバンからスマホ型のステッキを取り出す。

 

「あなた、名前は?」

 

「え?」

 

突然の問いに思わず間抜けな声が出る一護。話の流れを断つこの質問の意味が理解できなかった。

 

「名前は?」

 

「一護だ。黒崎一護」

 

「苺さんですか…」

 

「あら、ずいぶん可愛い名前なのね」

 

発音だけを聞くとどうしても果物の一護を思い浮かべる二人に、一護は声を少し荒げて反論する。

 

「ちげーよ。苺じゃねえ、一護だ!一等賞の一に守護神の護!あと、発音も『越後』と同じ発音なんだよ」

 

「そう。分かったわ。とりあえず見てちょうだい。これが私の魔法よ」

 

名前を入力してステッキの停止ボタンを押す。すると、世界が停止した。

公園の落ち葉も、飛び立とうとする鳩も、公園の外では帰宅ラッシュで歩いている人たちも皆が停止していた。

一護は何が起きたのか理解できないで辺りを見渡す。

 

「え…?何だ!?どうしたんだ!?」

 

「“時間停止”。自分と私が入力した者たち以外の時間を止める。それが私の魔法よ」

 

「魔法…」

 

一護は目の前の止まった世界の光景を見て驚きしか出なかった。

魔法と言われても最初は信じられなかったが、この光景を見せられたら信じざるを得ない。

 

「という事は、お前も魔法が使えるか?」

 

「そ、それは…」

 

一護は彩の方へ首を向けて尋ねる。だが、彩は顔を伏せて喋らなかった。

 

「彼女の魔法は“瞬間移動”。彼女の持つ銃型のステッキに撃たれた相手を別場所へ飛ばす魔法よ」

 

喋らない彩に変わり奴村が彼女の魔法を説明する。

彩がなぜ喋らないのかは一護には分からない。かといってそれを無理やり聞くほど、無礼な人間でもない。今は語らずとも、いつかは語る時が来る。その時まで待てばいい。かつて、ルキアが自分に言ってくれた言葉を思い出した。

 

「そうか…。分かった」

 

「さて、私達の紹介はこれで以上ね。次に教えてくれないかしら。黒崎一護、あなたは何者なの?」

 

「そうだな。俺もお前たちと同じ人間だ。ただ、俺は死神代行でもあるんだ」

 

「死神…」

 

「代行…?」

 

「いきなり言われても分かんねえよな…。最初から説明するから、落ち着いて聞いてくれ」

 

一護の言葉を信じられない二人に彼は一から説明をした。

生まれついて霊力が高くて幽霊が見えていた事、朽木ルキアと出会って死後の世界である尸魂界とそこで現世と尸魂界の均衡を守る死神について教えてもらった事、先程の怪物“虚”とは現世で未練を残した霊魂が悪霊へと変化したものだという事、そして、虚に襲われた家族を護る為に彼女から死神の力を譲渡してもらい死神代行となった事、とりあえず自分がどうして死神代行となったのか、どうしてあの虚と戦っているのかを一護は説明した。

 

「――とまあ、こんな訳だ」

 

「普通なら信じられないって言いそうだけど、目の前でその虚というのも見てしまったから信じるしかないわね」

 

「私の知る死神とはちょっと違いますけど…」

 

確かに普通死神と聞けば、彩の思い描く黒いフードを被って大きな鎌を持った髑髏というイメージが強いだろう。実際にそれが普通なので、否定はできない。死神代行になり始めた頃、自分もそのイメージをルキアに伝えた時は「なんだそのイメージは!このたわけっ!!」と怒られた事もあった。

 

「さて、俺の話はこれで終わりだけど…。まだ何かあるか?」

 

「そうね。あなたになら話してもいいでしょう。先程朝霧さんに話そうとしていた話の続きなんだけど、すでに暗くなってきてるから場所を変えましょうか?」

 

確かに、もう時刻は6時40分過ぎ。夏とはいえ、東の空は暗くなり始めていた。

 

「場所ってどこにだ?」

 

「それは、もちろん――」

 

 

 

「――って、俺の家かよ!?」

 

奴村が移動してきたのは、一護の家『クロサキ医院』前。今日出会ったばかりの女子の部屋に霊体とは言え男子が入るのは色々と問題がありそうなどと理由はあるが、一番の理由がここから一番近かったからである。

 

「一護さんの家ってお医者さんなんですか?」

 

「医者っても、客の少ねえ小さい町医者だがな」

 

「あら。いいじゃない。お医者さんにとって客が少ないのは町の人が健康である証拠なんだから」

 

「あぁ、そうだな。そう言えばお前らいいのか。家族には連絡したのか?」

 

奴村の皮肉交じりの言葉を適当に相槌を打ったところで、一護は二人に確認する。時刻はもうすでに7時を回ろうとしている。普通の中学生なら、帰宅していないと両親も心配するだろう。

 

「私は、今日は友達の家に泊まると伝えておきました」

 

「私は別に問題ないわ。家に連絡しても意味ないし…」

 

「そうか…。ちょっと外で待っててくれ。体取ってくるから」

 

そう言ってドアを開けようとしたその瞬間――。

 

「お帰りなさい。ネエさ~~~んっ!!!」

 

ドアが行きよく開かれ、コンが勢いよく一護目掛けて飛んできた。

 

「何やってんだ?コン」

 

「ゲッ!一護じゃねえか。気色悪いな」

 

コンは慌てて一護から離れて、埃を取り払う様に体を叩いた。

 

「い、一護さんがもう一人…!?」

 

「今日だけで、一体何回驚かせられるのかしら?」

 

今のコンは一護の身体に入っているから、二人から見れば一護が二人いるように見える。

 

「ルキアはいねえのか?」

 

「ネエさんなら、とりあえず報告と調べたい事があるからって尸魂界に帰ったんだよ。

ところでよ、一護。このガキンチョどもは一体誰なんだ?」

 

「後で説明するから、とりあえずお前は俺の身体を返せ」

 

額に代行証を押し当てて、一護の身体からコンの本体を吐き出させる。

中身を失った身体に一護はすかさず入りこんで元の肉体へと戻った。

 

「さて、後は――」

 

地面に落ちたコンを制服のズボンのポケットにしまいこんで、一護は考える。

 

(遊子達になんて説明しようか…)

 

彩達を家に上げる上手い言い訳を。

 

 

 

「わ~、どうもこんばんは!」

 

「友達の妹を預かる事になった?怪しい」

 

「……(ガタガタ)」

 

一護は家に入り、家族には彩達の事は友達が急遽遠出する事になったが、妹達は行けないので家に預からせてほしいとだけ伝えた。

家族の反応は様々で遊子は突然の女子の客に困惑はしているようだが、何も疑いはせず笑顔で出迎えてくれた。

夏梨は一護の説明に信じ切れず少し怪訝な目で一護を睨むが、とりあえず迎えてくれる事に内心安心した。

父、一心は息子が二人も女子を連れてきた事を信じられない顔でさっきから無言のままガタガタと震えているだけだった。

 

「そういう訳だから、今日一晩だけ家に泊まらせてくれねえか?」

 

「奴村露乃です」

 

「あの、朝霧彩です…」

 

「こんばんは。私は黒崎遊子です。いらっしゃいませ」

 

「黒崎夏梨です。よろしく」

 

「とりあえず今日はお前らの部屋に布団を敷いてくれ。後、風呂も頼むな」

 

一護は二人を連れて自室へと移動する。

そんな三人の後をこっそりつけようとする一心と遊子だったが――、

 

「あっ!分かってるとは思うが、お前ら客の前でバカな事をするなよ。特に親父」

 

「も、もちろん分かっているさ。ねえ、遊子?」

 

「う、うん。そうだよ。ご飯はもう少しで出来るから」

 

一護に釘を刺されて、顔に冷や汗を垂らした二人はそそくさとリビングへと戻っていった。

 

「お、お邪魔します…」

 

「男の人の部屋って初めて入ったけど、意外と殺風景ね」

 

「ほっとけ」

 

一護の部屋に入った二人はとりあえずベッドに腰掛けた。一護も机の前の椅子を引っ張り出して座る。

 

「さて、話の続きと行きましょうか」

 

「お前らの話の続きって何だ?」

 

「そうね。まずは此方の事情を一から説明する必要があるわね」

 

奴村は一護に再び“魔法少女”とそれを生みだす“魔法少女サイト”について話した。

魔法少女がどのように誕生するのか、魔法少女のルールについてを――。

説明を終えたところで、話が始まる。

 

「そして、ここからが本題よ。朝霧さん、私はあなたに警告をしに来たの。魔法少女サイトからステッキを貰ったのは私達だけじゃない」

 

「なんだと…?」

 

「魔法少女はもっと多く存在するわ。それも私達の想像以上にね。彼女もその一人だった」

 

そう言って奴村はステッキとは別の普通のスマホを取り出して、一護たちにある写真を見せた。そこに映っていたのは一人の女の子。黒髪のショートヘアーに少し内気そうな顔立ちだった。

 

「コイツは?」

 

「名前は潮井梨ナ。ネットで知り合って以来、一緒にサイトの謎を追い求めていた仲間よ。彼女は所謂情報屋で、ネットを通じて他の魔法少女から情報を探らせていたの。ただ――」

 

奴村の言葉が途切れる。一呼吸を置いてまた続けた。

 

「それと同時に他の魔法少女が次々と惨殺される事件が多発した。被害者から金品などは盗まれず、ステッキだけがなくなっていた」

 

「それって…」

 

「そう。魔法少女が魔法少女を殺しているという事。私と梨ナは犯人を“”と名付けて調査していたの。そして、潮井梨ナとの連絡も途絶えた」

 

「「っ!!」」

 

魔法少女のステッキを狙う殺人鬼。それを調査していた潮井梨ナの失踪。一護と彩の脳裏に過ぎったのは一つの可能性。その可能性を一護は口にした。

 

「…殺されたのか?」

 

「さぁ。死体はまだ見つかってない。ただ…、失踪する直前に彼女から一通のメールが送られてきたわ。魔法少女狩りの素顔をね」

 

再びスマホを操作して、潮井梨ナの写真とはまた別の写真。そこに映し出されていたのは、返り血を浴びて狂気に満ちた笑みを浮かべる少女の写真。写真は咄嗟に撮られたものだからか、多少のブレがあるがそれでも分かる彼女の危険さが窺える。

 

「コイツが」

 

「“魔法少女狩り”…」

 

「そうね。今のところ負ける気はしないけど、もしコイツが私のステッキよりスペックの高いステッキを持っていたら――。だから、あなた達に協力を頼みたいの」

 

「わ、私は…」

 

「いきなり言われても困るわよね。そうね、協力してくれる代わりに私があなたを護る。それでどうかしら?」

 

「その…私は…」

 

彩は返事に困っていた。もちろん魔法少女狩りを見逃すわけではない。自分が狙われるのは怖いが、彩が本当に怖いのはそれではない。だが、彼女は言葉に出来なかった。

 

「そうね。すぐに答えを出せとは言わないわ。今晩ゆっくり考えてちょうだい」

 

優しく語りかける奴村に言いたい。「手伝う」とだが、それを拒む彼女のある恐怖がその言葉を喉で止めてしまっていた。

 

「さて、次は一護だけど「いいぜ」……即決ね…ふつうは考えるものじゃないの?」

 

言葉を終える間もなく軽い口調で了解する一護を信じられない様子で呆然とする奴村。

 

「なに言ってんだ。そっちが持ちかけてきた話だろ。それにそんな危ねえ奴ほっとけるかよ。俺がお前たちを護ってやるよ」

 

「そう。それじゃ「ダメだよ!!」朝霧さん!?」

 

一護の返答で話がつこうとした時、それを止めたのは彩だった。

 

「どうしたの、朝霧さん。彼は強い。味方になれば心強いわ」

 

「うん。それは分かってるの…。でも…、私は嫌なの」

 

「どうして?」

 

「今日、私は学校で奴村さんに助けられた。公園でも一護さんに助けられた。私は何も出来なかった。こんな弱い私なんか守られる価値なんかないよ」

 

彩には我慢できなかった。今日、彩は二度も命の危機に陥った。奴村がさりなから助けてくれた。一護が虚を退治してくれた。二人は自分を護ってくれた。自分なんかを護ってくれた。二人は強い人間だ。だからこそ、そんな二人が何の取り柄もなく学校や自宅で虐められる弱い自分を護る価値などあるのだろうか。

彩の中に合った恐怖。それは自分が命を狙われる恐怖ではなく、自分の為に他人が犠牲になる恐怖だった。

彼女の恐怖が鎖となって彼女を縛り始めた。

 

「それに一護さんは魔法少女とは何も関係のない人だもん。巻き込む訳にはいかないの」

 

彩の眼から涙が零れ落ちる。彼女はとても優しい女の子だ。だが、その優しさを持つゆえに他人が自分の為に命の危険を曝す事になることを許せなかった。

奴村も彩の心情を聞いて、どうしようか悩み始めた。

暗くなり始める空気の中動いたのは一護だった。

 

「彩、お前が何言っても俺はここで降りたりはしねえよ」

 

「でも、もしそれで一護さんが――」

 

一護は彩の言葉を遮るように彼女の額に軽くデコピンをする。

 

「確かに、俺はお前たち魔法少女の問題に無関係だ。だけどな、無関係だからって目の前で人が殺されたり死んでいくのを黙って見過ごせるほどクズでもねえ」

 

一護は彩に向かって手を差し伸べる。

 

「これは“お前たち”の我儘じゃねえ“俺”の我が儘なんだ。俺が協力したいから協力する。俺がお前たちを護りたいから護るんだ」

 

涙を流す彩の頭を優しく撫でる。

 

「それにな、お前は自分の事を低く見ているようだけどな。お前はすげえよ。初めて会った俺にもこんなに優しく出来るなんてお前は強いぜ」

 

「私が…強い…?」

 

「お前あの時、虚に襲われる奴村を助けようと前に出ただろ。それが意識していなかったとしても、お前は前へ進んだ。それはお前の中に勇気がなければできない事だと俺は思うぜ」

 

「そうよ、朝霧さん。あなたは自分が思っているほど弱い人なんかじゃない。あの時、あなたが前に飛び出した時は驚いたけど、それ以上に嬉しかったの。だから、泣かないでちょうだい」

 

その言葉を聞いた瞬間に彩の心の奥底の鎖がちぎれる音がした。

自分の価値なんてないものだと思っていた。

自分をいじめるさりなも、兄も彼らは口を揃えて自分を「クズ」だと言った。

先生もいじめを見て見ぬふりして彩の事など見ていない。両親も優しいがいつも兄の事を褒め称えて、自分の事を正面から見てくれた事はない。

そう、今まで彩の周りで彼女の味方をする者は誰一人としていなかった。

でも、今は違う。自分の事を見てくれる人が二人も出来た。

それがとても嬉しかった。嬉しくて泣いたのは初めてだった。

 

「お兄ちゃん、朝霧さん、奴村さん。ご飯が出来たよ~!」

 

下から遊子の呼び声が聞こえてきた。

 

「さて、飯にするか。ホラ、行こうぜ」

 

「うん」

 

今日という日を彩は決して忘れない。

 

 

 

同刻

 

「ふっはははははは!!すごいぞ!このステッキさえあれば私は神になれる!」

 

ステッキを手にした一人の少女がビルの屋上で悦に浸っていた。これまで苦悩した毎日だったが、これからは違う。

自分を苦しめてきた連中に復讐が出来る。いや、自分の野望はそれだけではない。このステッキを使って多くの人々を恐怖で支配する。自分こそが世界の頂点に立つ。

少女の野望は始まったばかりだ。そしてその為の協力者もいる。

 

ガチャッとドアが開き一人の少女が屋上にやって来た。

 

「あぁ。やっと来たか」

 

ゆっくりと歩いて来る少女に笑みを浮かべる。

彼女のおかげで自分は魔法少女という物を知った。そして、これからの良き相棒に敬意を込めて手を差し出した。

その瞬間、ゴンっと鈍い音と共に彼女の意識は途絶えた。

彼女は自分が殺された事に気付く間もなく、頭が石榴の様に弾け飛んだ。

 

「さて、ステッキの回収完了~。思った以上にチョロかったな」

 

金槌の様なステッキで屋上にいた少女を殺したもう一人の少女は倒れた死体の傍に落ちたステッキをカバンにしまうと、そのカバンからノート取り出して開く。

そのノートにはたくさんの女の子の写真が張ってあり、多くの写真の上にはマジックでバツが書かれていた。ノートのページを開いて行き先程殺した少女の写真を見つけるとその上にバツを書いた。

 

「さて、次はどいつにしようかな?」

 

鼻歌交じりの陽気な声でノートを開いて写真を漁る。そして――、

 

「よし!次はこいつだな」

 

彼女は新たな獲物を見つけるのだ。その獲物は朝霧彩だった。




死神図鑑ゴールデン

食事後

露乃「さて、これからの為に私達の連絡先を交換しましょうか」

一護「そうだな」

露乃「とりあえずLINEでも交換しましょうか」

交換中

一護「よし、これで良いな。…って、奴村。お前のこのアイコンは何だ?」

露乃「あら、知らないの。『漢パンダ』」

彩「えっ!?そんなキャラいたっけ?」

露乃「えぇ、いるわ。………私が作ったコラ画像だけど」

一護「分かるか!!」


もう一つ死神図鑑ゴールデン

一護「さて、明日からまた忙しくなるしもう寝るか」

一護(そう言えば、なんか忘れているような…。何だっけ…?)

一護「やべえ!コンをズボンのポケットに入れてたの忘れてた!」

コン(丸薬)『お~い。だしてくれ~』
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