BLEACH The Magical Girls Site 作:未来跳躍
その分、いつもより多めになっています。
P.S.
ブレソルで千年血戦篇ガチャで一護×2と夜一が出たのは嬉しいのですが、もっと千年血戦ガチャをやって欲しい。
まだまだ出て欲しいキャラのリクエストが山の様にあるんです…。
ENTER.8
男の話をしよう。男の名前は直戸圭介。年齢25歳、職業コンビニのアルバイト。
勤務態度はいいわけでもない。むしろ、最近はよく店長に怒られる事が多い。
それに金銭感覚もよい訳ではない。彼は表向きの金融業者だけでなく、サラ金いわゆる闇金からも借金を重ねている。闇金からは利子も含めて300万、取り立ての為にバイト先のコンビニに顔を出したり、住んでいるアパートの部屋の扉にはとりたての紙がびっしりと張られたりすることなどしょっちゅうだ。
そんな借金もあるのでアパートの家賃は払えず、もう数ヶ月分は滞納している。
彼がそんな借金をする理由はたった一つ。
それは大人気アイドル『いぬあそび。』のにじみんの為だ。
彼も元からこんな人間だった訳ではない。
昔は付き合っていた彼女と共に狭いアパートで同棲しながら、必死に働いて結婚とその後の新居に引っ越す為の資金をコツコツと貯めていた真面目な好青年だった。
しかし、ある出来事が彼の運命を大きく変えた。
事の発端は友達からの『いぬあそび。』のライブの誘いだった。元々は別の人と一緒に遊びに行く予定だったが、その人が急用で行けなくなったために、直戸に声を掛けた事が始まりだった。
最初はアイドルに興味もなかったが、その日は特に用もなかったので、軽く付いて行ってあげようと思っていた。
一緒にホールに入りライブが始まった瞬間、彼は衝撃を受けた。
ライブが始まった瞬間の観客の興奮、ステージを彩る照明やスモークなどの演出、そして、そのステージに現れた自分よりも一回りほど年下の少女達。
中でも彼の目を奪ったのは、その多数の少女達の中でもセンターを陣取る少し小さな女の子。――穴沢虹海。
そこで彼の人生は、価値観は大きく動いた。
そこから直戸圭介は穴沢虹海に全てを捧げた。
ライブには最前列のチケットを取り、握手会、サイン会などのイベントにも絶対に参加し、CDやグッズなどは余すことなく全て購入した。
ただ、その為に金が必要だった。バイトだけでは到底足りず、貯金していた結婚費からも削り、友達や親戚から金を借り、それでも足りないので金融業者からも借り、そして、最後にはサラ金からも借金をした。
そんな彼について行けなくなった彼女は彼の元から去っていき、彼には部屋を覆い尽くさんばかりのにじみん関係のグッズと大量の借金だけが残った。
真面目だったバイトもにじみんのことしか頭にないので精が出ない上に、にじみんのブログが更新されると、たとえ客がどれだけ並んでいようともブログのチェックを欠かさず行っている。
そんな生活を続けている内に、付き合っていた彼女も彼について行けないと言って別れ、にじみんの追っ掛けの為にどんどん増え続ける借金、サラ金の連中の取り立ても日増しにどんどん激しくなっていき、ついに最終期限を申しつけられた。
傍から見れば彼の人生は不幸のどん底に落ちて行っているように見えるだろう。
しかし、彼は自分が不幸とは全く思っていなかった。
彼はにじみんに恋して、にじみんを愛して、にじみんに人生を捧げている。それだけで彼は幸せの絶頂なのだ。
握手会当日。
『いぬあそび。』の握手会はチケット1枚につき、約30秒アイドルたちと触れ合える。
チケットは『いぬあそび。』の新曲CDに稀に入っている。
その確率はおよそ10%。つまりCD10枚にチケットが1枚入っている計算なのだ。
そのチケット一枚でアイドルと触れ合える時間は20秒。
直戸はこの握手会のチケットを20枚も用意していた。もちろん、この20枚のチケットの為に、彼はまた多額の借金を重ねていたが、今の彼にとって借金などどうでもいい些事だった。
「今日は何を話そうかな…」
もうじき会えるにじみんとの時間に期待で胸が膨らむ。
この日の為に自宅でずっとにじみんとの会話を想像し練習してきた。チケットが20枚もあるとはいえ、それでも時間は限られている。彼ほどのファンになると限られた時間の中で綺麗に会話が収まるように、時間管理もバッチリなのだ。
フフフ、と直戸の口から笑みがこぼれる。そこで気がついたのだ。目の前のグループの異才に――。
中学生くらいの女子二人と高校生の男子の三人組。後ろから見ているので、背中しか見えないが、三人の二人はオレンジの髪と金髪といった派手な見た目だった。
――珍しいな、女子のファンなんて――
直戸はそう思った。『いぬあそび。』は女性アイドルグループなので、ファンの層は男性が圧倒的に多い。だが、男性が多いだけで女子のファンが全くいない訳ではない。この握手会に並んでいる女子は目の前の二人以外にも数人は目に見えて確認は出来るし、今日は来ていないが、彼の盟友には中学生の女の子もいる。
彼女以外にも中学生
「やあ、こんにちは。君の様な女の子のファンは珍しいね。推しメンは誰かな?」
笑顔で女子の一人に声を掛けると、その女子は後ろを振り返ることなくただ冷たく一言を言い放った。
「別に、ファンじゃないから…」
それを聞いた瞬間に直戸の心に怒りが湧きあがった。
――なんだ、コイツ。ファンじゃないなら、こんなトコに来んなよ。にじみんが可哀想だろうが!
彼女に対する怒りを向けている内に順番は回ってきて、遂に直戸の前の三人組の番へとなった。
「こんにちわん!来てくれてありがとうね!」
キラキラと輝きを放つ笑顔で三人を迎える虹海。
「穴沢虹海。魔法少女であるあなたに話がある」
奴村がそう言うと、虹海は可愛く首を傾げる。そして、奴村はポケットからスマホステッキを取り出す。
「ちょっと、君!スマホでの撮影は禁止――」
近くにいた係員が奴村を注意しようと手を伸ばしたその時、奴村のステッキによって、彼女たち三人以外の時間は停止した。
「さて、これで準備はOKよ。お願いね、朝霧さん」
奴村は彩に振り返って、声を掛ける。
彩は頷いて、カバンから自分のステッキを取り出し、穴沢虹海に銃口を向ける。そのまま、飛ばしたい場所をイメージする。
だが、まだ自身のトラウマが少し残っているためなのか、銃を持つ手が少し震える。もし、失敗したらという余計な考えが邪魔をして飛ばしたい場所が上手くイメージできなかった。
彩の心をじわりじわりと恐怖が包み込もうとする。震える彩の肩を一護がポンと手を置く。
「落ち着け。大丈夫だからな」
優しく声を掛けられたその瞬間、彩の震えは止まった。
彼女の心を侵食しようとしていた恐怖が消えていく。
彩はステッキの銃口を虹海に向け直し、飛ばしたい場所をイメージすると、そのまま引き金を引いた。
「あれ、ここは…?」
穴沢虹海は気がつくと、目の前の光景が変わっている事に気付く。先程はドームの仲の握手会会場にいた筈なのに、外に出ていたのだ。
突然の事にびっくりして呆けていると、後ろから気配を感じたので振り返ると、そこには先程握手会でいた一護たち三人が立っていた。
そして、奴村が口元を手で軽く拭って口を開いた。
「穴沢虹海――。単刀直入に聞くけど、あなた…魔法少女よね」
辺りの空気が静寂に包まれる。ピンと張った空気が三人を包みこむ。
普通は魔法少女である事は隠すのが定石だ。誰も自分から魔法少女だと言いふらす者はいない。
奴村の虹海への質問は大胆で直球すぎるが、一護たちも悠長に彼女と一から仲良くなっている余裕もない。
虹海が自分の秘密を知っている一護たちに攻撃する可能性もある上に、相手の魔法が何なのかも分からない。
つまり、一護たちは相手の出方を窺い、その出方によってとる行動が決まってくる。何時でも戦闘態勢になれるように、奴村はポケットの中のステッキに手を伸ばし、一護も代行証を隠すように持っている。そして、穴沢虹海が動き出す。
「えぇ~~!!あなた達も魔法少女なんですか~~!?」
「「「え?」」」
予想外の反応に三人とも目が点になる。
虹海はそんなこと気にせず、とても嬉しそうに奴村の手を握り腕を大きく上下に振る。
「嬉しいなぁ。他の魔法少女に会えるなんて、ラッキーッ!!」
その場で可愛く飛び跳ねる虹海に奴村と一護は困惑していた。
虹海があっさりと魔法少女だと認めた事、自分以外の魔法少女に出会ってとても無邪気に喜ぶ事が疑問に思っていた。
確かに、自分達も無駄な争いはしたくないから、素直に魔法少女だと言ってくれることを期待していた。だが、彼女の反応はいくらなんでも警戒心が無さ過ぎる。
「これはもう運命を感じちゃいますね!あっ!もしかして、私をここに連れて来たのも二人のステッキの力なんですか!?ねえねえ!どんなの!?どんなの!?見せて見せて「ちょ、ちょっと待って!!」」
目をキラキラと輝かせてグイグイと近づきながら喋り続ける虹海に、奴村が両手で壁を張るように前に突き出して大きな声で彼女のマシンガンの様な喋りを止める。
このまま喋り続けられていたら、此方の話が一向に進まない。
虹海がようやく落ち着いてくれると、奴村は軽く咳払いをして再び口を開いた。
「まずは自己紹介から、私は奴村露乃」
「あ、朝霧彩…です」
「俺は黒崎一護」
三人が自己紹介を終えると、奴村が虹海に自分たちの目的の説明を開始した。
「私達は今、ある理由で魔法少女を探しているの」
「ある理由?」
「俺達の知りたい情報を持つ魔法少女がステッキの使い過ぎで倒れてな。今、そいつを治せるのを探してんだ」
「穴沢虹海、あなたのステッキの能力教えてもらえないかしら?」
奴村が尋ねると虹海は語り出す。
「私のステッキの能力は――」
一護たちが穴沢虹海と接触したその同刻。
潮井梨ナが入院する病院で、ある一人の少女がフルーツが入ったバスケットを持って病院に来ていた。
その少女を見かけた看護師の女性が声を掛ける。
「あら、お身体良くなったんですか?」
「いえ。私は妹のお見舞いに来ただけです」
看護士の少女への質問は奇妙なものである。フルーツを持ってきている女性はどう見ても、入院患者へのお見舞いに来ているようにしか見えないだろう。
普通ならこんな質問はしない。だが、そのお見舞いに来ていた女性がこの病院に
お見舞いに来た少女は現在意識不明のまま入院している身元不明の少女と瓜二つなのだから――。
お見舞いに来た少女は目的の病室にたどり着くと、ドアを軽くノックして中へと入り、その部屋の中にいる少女に声を掛ける。
「具合はどう?――さりな」
「なんだ、姉ちゃんか」
そこにいたのは雫芽さりな。彩のクラスメイトにして、彼女を苛めていた主犯の少女。
先日、女子トイレに手持っていたカッターナイフで自分の首を切るという事故によって病院へ搬送。出血が酷く、丸二日以上生死の境を彷徨ったものの何とか意識を取り戻した。
体力は大分戻って来たが、今は傷の様子を見る為にもう少し入院をするようにと言われたので、現在は病室のベッドにて漫画を読み漁っている状態である。
「なんだとは失礼ね。私は姉ちゃんだぞ」
さりなの姉は可愛らしく怒る仕草を見せるが、すぐに笑顔に戻りさりなに優しく語りかける。
「だいぶ元気になったわね」
「まあな」
「でも、まだ思い出せないの?事故が起きる前の事――」
「……あぁ」
ベッドの横に座って、持ってきたリンゴを果物ナイフで皮をむきながら尋ねる姉の言葉に、さりなは小さな声で頷いた。
事故の起きる前、さりなは確かにカッターを持っていた。だが、覚えている限りでは彼女はそのカッターを彩の口入れていたのだ。
しかし、突然その口に入れていたカッターは自分の首を深く切りつけていた。
「それに、大変だったそうじゃない。あなたの意識が戻った時、かなり錯乱して暴れたって聞いたから、もうさりなは帰って来ないんじゃないかって本当に心配したんだから」
「……」
さりなに起きた異変はあの時の傷だけではない。
話は数日前、さりなが手術を終えて、深い眠りから覚めた時にさかのぼる。
「――ここは…?」
眼を覚まして視界に映ったのは、真っ白い天井だった。
自室ではないという事はすぐに理解した。辺りを見渡そうと首を回そうとすると、激しい痛みが彼女を襲った。
痛みで頭がさえ出したのか、徐々に意識を失うまでの出来事を思い出してきた。
えりかを殺した朝霧彩を女子トイレに連れ出し、カッターで彼女の口を裂いて傷を残すという制裁をしようとした瞬間に、その手に持っていたカッターで自分の首を切ってしまっていた。その後は激しい痛みと大量の出血で意識が朦朧として、やがてそのまま意識を手放してしまった。
「そうだ…。私は――」
そこに扉を開けて看護師が部屋に入って来た。看護師はさりなが目を覚ましているのを見ると、「ちょっと、先生を呼んでくるからね」とさりなに言ってそのまますぐに部屋を後にした。
その直後だった。さりなの身体に起こった異変に気付くのは――。
首の痛みが酷く、ろくに体も動かせないさりなはただベッドで横になって医師が来るのを待つだけだったが、ふと視線を窓に向けた時に見てしまった。
血まみれで自分の横に佇む少年がいる事に――。
「う、うわあァァッ!!」
喉から出せる限りの声で叫んだ。首に痛みが奔るが、そんなものなど気にならなかった。
「どうしたんだい!?」
騒ぎを聞きつけて慌てて駆けつけた医師と看護師が暴れる彼女を押さえて彼女に尋ねる。さりなは血まみれの少年を指さして震える声で
「そ、そ、そこに…血まみれの子供が…」
医師と看護師は指差した方へ首を向けるが、そこには何もなかった。
「大丈夫だ。なにもいないよ。突然の事でパニックを起こしているんだろう。落ち着きなさい」
医師が落ち着かせようと声を掛けるが、さりなは暴れ続けた。やがて看護師がさりなに鎮静剤を注射して事を収めた。
それから、再び目を覚ました時には、横にいた少年はいなくなっていたが、代わりに他の人には見えない人たちが見えるようになった。
普通に地面を歩く者もいれば、ふわふわと浮かんでいる者と言ったり、多種多様の者が見えた。
ただ、共通しているのは全員の胸から鎖が伸びている事だけだった。
――……何が起きたんだ。あの一瞬に。朝霧、あいつが何かしたのか?それに、私にだけ見えるあの変な奴らは一体…?
どれだけ考えても分からない。だが、彼女はその答えを得る。その時はゆっくりと近づいて来ている。
場面は、奴村が虹海のステッキについて尋ねたところへ戻る。
「私のステッキの能力は――」
虹海が言おうとしたその瞬間、
「「あぁッ!!いた~~!!にじみん!!」」
虹海の言葉を遮るほど大きな声を上げたのは、握手会のスタッフだった。
二人とも走り回ったのか大量の汗でシャツが完全に濡れている上に、息も大きく荒げながらこちらへ近づいてきた。
「何してるんだよ。にじみん!」
「会場は大パニックだよ!」
「あっ!そうだった、今は握手会の途中だった。ごめんね、私行かなきゃ」
スタッフに虹海が発見された以上、もう話は出来ない。仕方ないと諦める三人の気持ちを察したのか、虹海は三人の元へと近づいて小声で三人だけに聞こえる囁く。
「今夜9時サンレゾナンスタワーマンションに来て。話の続きはそ・こ・で♡」
「「――っ!」」
「もう何してるの!」
「早く行くよ!」
待ちきれなくなったスタッフは虹海を担ぎあげて猛ダッシュで会場へと戻っていった。
担ぎあげられながらも、笑顔で「またね~!!」と手を振る虹海がどんどんと小さくなっていき、やがて一護たちから見えなくなった。
「なんか、思っていた以上に友好的な奴だったな。ちょっとノリについて行けないけど…」
一護がそう呟いた所で、ふと二人の方へ振り向くと二人ともボーっとしたまま動かなかった。
「オイ、オイッて!!」
「ふあっ!ど、どうしました?」
「どうしたじゃねえよ。いきなりボーっとして突っ立ってんだからよ」
「ごめんなさい。別に何もないわ」
本当に大丈夫なのかもう一度聞いてみるが、二人は何の異常もないと答えるので、それ以上の追及を一護はしなかった。
とりあえず、夜9時までまだ4時間以上もある。それまでどうしようかと三人は考えるのであった。
~病院~
さりなは喉が渇いたので、病室を抜け休憩室の自販機まで足を延ばす事にした。
自販機までの道にも自分しか見えない者達を目にするが、無視すれば何の問題がない事を分かったので、見ないふりをしてそのまま素通りをした。
自販機から大好きな炭酸飲料を買うと、その場で開けて飲みながら帰っていった。
飲みながら歩いていると、近くの病室から医師と看護師の二人が話しているのが聞こえた。
さりなにとって赤の他人の事などどうでも良いのだが、どうも重苦しく話している雰囲気に少し好奇心が疼いてしまったので、ドアの横の壁に背を預けてジュースを飲むふりをしながら聞き耳を立てる事にした。
「未だに目を覚まさないか。このまま植物状態になる事も視野に入れないとな。それと、この子の身元はまだ分からないのか?」
「ハイ。まだ見つかっていません。身元不明ってこの子何かの事件に巻き込まれているんじゃ」
「そういう事は云うもんじゃない」
身元不明の意識不明の患者、どんな奴なのかその顔を拝もうこっそりとドアから覗きこんで見る。
その時、さりなの目には信じられない者が映った。
「なっ――!?」
その病室で眠っていたのは、
「姉ちゃんッ!?」
さりなの姉なのだから。
突然の声に驚く医師と看護師の二人だが、さりなはその二人を押しのけて患者へと駆け寄った。
「なんでだよ!?なんで、姉ちゃんが!?さっきまで普通に元気だったじゃねえか!!」
近づいて見て確認するが、顔も髪も背丈も全部自分の姉と同じ。間違えるはずがない。
「オイ。何があった!?あたしの姉ちゃんに何があったんだよ!さっきまであたしの見舞いに来ていたんだぞ!!」
隣にいた医師の胸ぐらを掴み上げて、声を荒げて訊く。
「お、落ち着いて。キミはこの子の家族なのかい?」
「あぁ!あたしの姉ちゃんだ!今日もあたしの見舞いに来てくれたんだ!!」
さりながそう叫んだ時、医師の眉が動く。
「今日も来ていただって?それはおかしいよ。この患者がここに運び込まれたのは、数日前の上に、今までずっと寝たきりで意識不敬状態だったのだから」
「なん…だと…?」
さりなは慌てて携帯を取り出し、さりなの姉へと電話を掛ける。
コール音が二回ほどなった後、通話がつながる。
『どうしたの、さりな?』
電話から流れる声はさりながよく知る姉の声。
だが、それが彼女の心は大きく動揺した。
後ろの音から今姉がいるのは彼女の自宅だろう。それなら、今目の前にいる少女は誰なのか。
確かめる為に、さりなは震える声で電話越しの姉に尋ねる。
「ね…姉ちゃん…だよな…?」
『何言ってんのよ。当たり前でしょう。どうしたの?さては姉に甘えたいお年頃なのかな~?』
携帯から姉のからかう声が聞こえてくるが、今のさりなにはそのまま通り過ぎてしまい全く頭に入ってない。
電話越しにいる姉と目の前にいる姉と瓜二つのした少女。
この二人の存在が、さりなの心中をより大きな混乱へと招く。
9時前、サンレゾナンスタワーマンション前――。
「―――…い…」
声が聞こえる。
「―――…お……い」
誰だろう。声がかすかに聞こえるが頭が上手く働かない。
「――…オイ…」
声がどんどん大きくなっている。声が大きくなっているのか、私の耳が聞こえるようになっているのかはよく分からない。
でも、どんどん大きくなってくるこの声を聞くたびに安心感が出てくる。何故だろう、と考える様とするがまだ頭が上手く回らない。
ただ、どんどん声が近づいてやがて、その声の主を思い出す。
「一護ッ!――「あっ!」うぎゅっ」
意識が完全に覚醒したのと同時に襲ったのは脳天への鈍い痛み。奴村へ振り下ろされた手刀、それはモノの見事に彼女の脳天に直撃した。
そして、呆然とした表情で彼女の前に佇むのは黒崎一護。
その右手は奴村の頭上に置かれていた。
静寂な空気が包み込む。辺りに人がいないのもあるが、
「よ…よう…。おはよう…」
「えぇ、おはよう。素晴らしいモーニングサービスね」
彼の右腕を折らんばかりの握り、とても素敵な笑みで挨拶する。
その直後、世界の時間は停止し、その止まった世界の中で一人の男の悲鳴が響いた。余談だが、彩は気がついた時にはすでに事切れた骸が転がっていて、それを見て驚き、また気を失った。
それから間もなく、高級車が停車し、そこから穴沢虹海が降り立った。彼女が降りると、彼女のマネージャーが明日の予定を確認するために彼女に話しかけた。
「それでは明日の朝は5時にここでお願いしますね」
「りょ!」
ビシッと敬礼ポーズで返事をすると、マネージャーは車に乗り、その場から去っていった。
「ごめんね~。待たせたかな?って、どうしたの!?」
虹海はマンション前にいる一護たちの元に笑顔で駆け寄ったが、一護が傷だらけなのを見て驚愕する。
「別に…。ちょっとやんちゃな雌ライオンに襲われただけだ」
そう返事すると奴村が一護をギロッと睨みつけるが、一護はその視線を無視して虹海に尋ねた。
「さてと、とりあえず昼間の続きだけど「ちょっと待って!」――?」
一護が尋ねようとするが虹海は右手を前に突き出して話を止めようとする。一護が何だと思っていると、そのまま話を進める。
「とりあえず、話は私の家でしよう!」
「あの、家ってまさか…」
「そう!ここのいっちばん上が私の家なの!!」
このサンレゾナンスタワーマンションは東京でも有数の高級マンションであり、普通の人には中に入る事すら縁がないだろう。
その最上階ともなれば本当に選ばれた者しか住めないだろう。
空を指さす虹海を見て、三人は改めて目の前にいるのはトップアイドルだという事を感じた。
「それじゃあ、行こっか。あやっぴ、つゆゆ、いっちん!」
「あ、あやっぴ…?」
突如つけられた謎のアダ名に困惑する彩に、虹海は彼女の手を取り、キラキラした瞳を輝かす。
「だって、私達もう魔法少女同士のお友達でしょ!ねっ、つ~ゆゆ?いっちん?」
「その名は止めて」
「俺に至っては魔法少女じゃねえんだけどな…」
虹海のつけた名に不快な顔を示す奴村。一護も奴村と同じく名前に不服を示していた。
奴村はともかく一護に至ってはさすがに高校生の男子が『いっちん』なんて呼ばれるのは、色々ときつい。
そんな二人の反応を無視するかのように虹海はマンションへと走って行った。
虹海の部屋のある最上階に向かうエレベーターの中で、奴村はある事を悩んでいた。
虹海の警戒心の無さ、いくら自分たちに危害がないとしても、最初のコンタクトで三人は虹海を握手会会場から攫ったも同じの事をした。
そんな相手を前にしても、虹海は最初から警戒などしていなかった。まるで自分達の事などまるで恐れていないように――。
それにこのマンションに来るまでに二回も起こった突然の意識の消滅。
もしこれが彼女のステッキの能力だとしたら――。
そう考えている間に、エレベーターは最上階に到着した。
部屋の前に到着し、虹海はカバンから取り出したカードキーで部屋を開ける。
「さぁ、着いたよ~。ようこそ、我が家へ~!!」
部屋に上がり廊下の先の扉を開けた先の光景を見て、三人は驚愕する。
「「「「おかえりなさい、にじみん!!」」」」
「「「――ッ!?」」」
そこには鍵のかかっていた筈の家に、見知らぬ男たちがいた。
突然の事で足が止まる三人の前を、虹海は何事もないようにリビングへと入っていく。すると、男の一人が彼女からカバンと帽子と上着を預かると、丁寧な手つきで運んで行った。
「にじみん、掃除完了しました」
「うん、ありがとう!」
「にじみん、ご飯は出来ております」
「うわ~、美味しそう!!」
「にじみん、お風呂の準備は出来ております」
「後で入るね~!!」
男たちは仕事の報告をすると、部屋の隅にピシっと並んで立ち、そのまま微動だにせず止まっていた。
まるで機械の様に――。
――何だ、これは…。
三人は目の前の異様な光景に同じことを思った。戸惑って身体が硬直していたが、最初に口を開いたのは一護だった。
「オイ…。虹海、…こいつらは…」
「あぁ。この人たちは私のファンだよ!」
「ファン…?」
今目の前にいる男たちは彼女のファンだという虹海だが、一護たちにはファンなんて優しいものには見えない。
「まあ、いきなりの事でびっくりしているんだね。実はね~、私のステッキはね~。“パンツ”なのっ!!」
少し恥ずかしそうな仕草でベルトを緩め、ホットパンツを膝上まで下ろし、ノースリーブのシャツを手でめくり上げて、彼女は自分の“パンツ”を三人に見せる。
――は…?
突然の出来事に奴村は思考停止する。
「ぐわああああ!!目が、目がァァアァ!!」
だがその直後、彼女の横で一護の悲鳴が木霊する。
「はわわ…。ご、ごめんなさい!」
何故こんな事になったかというと、虹海がパンツを見せた瞬間、彩も一瞬戸惑ったが、すぐ横にいた一護に気付き、彼の目を塞ごうと両手を突き出したのだが、勢いが強すぎたその手は彼の目を塞ぐどころか、彼の目を潰すほど前に出し過ぎたのだった。
3分後――。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「いや、もう気にしてねえから――大丈夫だ」
落ち着きを取り戻した一護は必死に謝り続ける彩を宥めると、虹海と話をする為に御茶の準備をする彼女の前のソファに腰掛ける。彩と奴村が彼の左右に腰掛けると、虹海は目の前のテーブルに置いてあるケーキやマカロンなどのお茶菓子を皿に盛り付けると、三人に配り始める。
「――要するにこのステッキを履いて命令すると、み~んな言う通りに動いちゃうの」
ステッキの能力を説明する虹海に、一護が口を開き重い声で彼女に尋ねる。
「なぁ。一つ訊きてえんだけど、アイツらはお前が無理やり言う事を聞かせてるのか?」
「ちがうよ~。さっきも言った通り、あの人たちはあたしのファンの人達で。自分からそうなりたいって言ってきた人たちだから」
笑顔で答える虹海に、一護は「そうか」と小さく呟く。
虹海の能力が素晴らしい事は分かった。だが、正直に言って、一護は虹海の答えに納得が出来なかった。
いくら彼女言った通りに、この男たちが自分からなると言ったとしても、今の彼等を見て本当に幸せなのかと考えてしまう。
感情もなく、ただただ虹海の命令を従うだけの彼等はまさしくロボットだ。人間ではない。
人間でなくなったとしても彼等は本当に幸せなのか、そう考えるのは一護だけではない。彩も奴村も同じことを考えていた。
「全く、本当の飼い主はどっちなのかしらね」
「?」
奴村の皮肉を交えた言葉も虹海は可愛く小首を傾げる。
これ以上この話をしても無駄だと悟った奴村は、自分のスマホを取り出して、本題に入る。
「昼の話の続きだけど、覚えているかしら?」
「うん。確か、つゆゆたちが欲しい情報を持っている魔法少女が倒れたから、その人を治せるステッキを持つ人を探しているんだったよね」
「つゆゆ言うな。えぇ、その通りよ。これがその魔法少女なんだけど――」
そう言うと、倒れた潮井梨ナの写真を虹海に見せる。
「ああ~~~っ!!」
写真を見た瞬間、虹海は大きな声で立ち上がった。
突然の事で彩と奴村は体を震わす。
「にじみん、知ってるの?」
彩が尋ねると、虹海は震える唇をわななかせ、先程までとはまるで別人の様に怒りの表情を見せる。
「知ってるも何も、コイツは…コイツは絶対に、あたしが殺すって決めてるの!!」
死神図鑑ゴールデン
さりな「最近、変なものが見えるようになった」
少年A「ねえねえ、おねえちゃん。一緒に遊ぼうよ」
さりな「余所に行け。あたしは暇じゃねえんだよ」
少年A「横になっているだけじゃん」
さりな「うるせえ」
少年B「バカ、あまりしつこくするなよ。困ってるだろ」
少年A「でも…」
さりな(どうやら、もう一人は物分かりが良いようだな)
少年B「あの人も歳なんだから、もっと労わってあげないと」
少年A「そうか!あの人も歳だからか!」
さりな「ヨゥシ、お前らぶっ殺す!」
その後、病院の廊下を叫びながら走るさりなは看護師に滅茶苦茶怒られた。