BLEACH The Magical Girls Site   作:未来跳躍

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ENTER.9 Princess is Poison Apple (4)

ENTER.9 

 

「こ、殺す…?」

 

突然の虹海の豹変に彩は恐怖の混じった声が漏れる。

 

「お前、コイツと会った事あんのか?」

 

「私にはね…おともだちの魔法少女のみかどちゃんって女の子がいたんだけどね。…殺されたの。その女に、数週間前に」

 

 

 

数週間前、虹海はみかどと一緒に遊びに出掛けていた。

人気アイドルである虹海のスケジュールはとてもハードである。自分のプライベートに割ける時間なんてごくわずかで貴重なものだ。

だからこそ、この短い時間で出来るだけ遊んだ。

ゲームセンターでレースゲームで白熱したり、シューティングゲームで一緒にゾンビを倒したり、プリクラで記念撮影したりして、最後にカラオケでその日は終える筈だった。

二人でいっぱい歌った後、トイレに部屋を離れていたわずかな時間に、彼女は現れた。

 

「みかどちゃんごめーん!トイレが………ッ!!」

 

虹海は言葉を失った。友の待つボックスの中には頭をぺしゃんこに潰された親友の無残な姿だった。

 

「い、いやあああああああああああああっ!!」

 

突然の光景に脳が現実を受け入れらなかった。叫び出す虹海の背後から声が聞こえた。

「いやー、ごめんねえー。ちょっとグロすぎたかな?」

 

虹海の後ろにはみかどの返り血を浴びた潮井梨ナが軽い口ぶりで立っていた。

 

「ッ!?」

 

「でも、まあいいか。あんたもすぐに逝かせてあげるからっ!」

 

笑顔でハンマーを振り下ろす潮井に反応して、虹海もステッキを発動し、彼女に向かって叫ぶ。

 

「【やめろっ】」

 

その途端に潮井の右腕はぴたりと動きを止めた。

もちろん、潮井自身が止めた訳ではない。彼女の右腕はビデオの停止ボタンを押したかのように、その場で固定されていた。

右腕の急な停止に反応した潮井は空いた左手でポケットから新たなステッキを取り出す。

虹海も息を大きく吸って、一気に命令を吐き出す。

 

「お前なんか【全身バラバラになっちゃえ】」

 

しかし、虹海のステッキの命令は届かなかった。いな、正確には命令を防がれたとでも言うべきか。

一呼吸の差で潮井は先程手にしたボールペン型ステッキを発動していた。

一護たちと戦った時にも最初に使用したどんな物理攻撃も魔法も弾くステッキを――。

もちろん、ステッキの能力は事前にサーチしていたので、咄嗟に反応できた。

そして、今の虹海の行動を見て、潮井は虹海のステッキの能力も理解した。

 

――コイツのステッキ…、まさか発した言葉通りに実行させる能力か!?

――危っぶねぇ~~~~!!このバリア能力がなかったら、あたしおっ死んでたな…。

 

とても危険な能力であると同時に、とても魅力的な能力である事を確認した潮井は笑みをこぼす。

 

「そのステッキ超欲しいな~~!」

 

今すぐ殺して奪いたい気持ちを押さえて、潮井は虹海に軽くウインクをして背を向ける。

 

「でも、今はあんたを殺せないから、ここらで御暇するね。また、あんたのステッキを奪いに行くからね」

 

「待てッ!」

 

虹海は捕まえようと駆け寄った瞬間、潮井は右手のハンマーを一気に地面に向かって振り下ろす。

地面は大きく穴をあけると、潮井はその穴へと落ちて行き、あっという間に暗闇に呑まれて姿を消した。

 

「うがあああああっ!」

 

残された虹海はただただ獣の様な慟哭を上げるしか出来なかった。

 

 

 

「わたしのせいなの。わたしといっしょにいたからみかどちゃんは殺されたの…。今でもあいつが笑って過ごしているのかと考えると、殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて仕方なくなるの…!!」

 

涙を流し、息を荒げて、心の奥底から溢れ出る殺意を剥き出しにする虹海だったが、間もなくその顔は消えて、いつもの可愛らしい顔に戻る。

 

「ごめんねぇー!急に暗いおはなしになっちゃって。私の中の毒りんごがでちゃった」

 

「「「……」」」

 

虹海はまた笑顔に戻ったが、一護たち三人は言葉が出なかった。

虹海の友達の事もそうだが、もっとも最悪な展開に話が転がっているからである。

潮井がすでに虹海と接触していた事、さらにそこで虹海の親友を殺している事、そして、虹海が潮井を殺そうとしている事。

今、潮井は病院で意識不明の状態であり、一護たちはそれを治そうとする為に虹海と接触した。

だが、虹海が潮井を殺したいほど憎んでいるのは彼らの想定外であった。

 

「…そう言えば、あんた何でステッキを使用しているのに、身体に変化ないわけ?」

 

三人の中で無言を破ったのは奴村だった。

 

「あぁ、それはね…。目の紋章はカラコンで、髪の色は染めて、腕の紋章はコンシーラーで隠しているの。あと、血が出る場所は…ひみちゅー♡」

 

最後にあざといポーズをとる虹海に少しイラッとする奴村は質問を続けた。

 

「何で隠すの?」

 

「一応、私アイドルだしさ。ファンの皆をびっくりさせたら困ると思ってね…へへ」

 

この言葉で奴村は納得した。このステッキの能力があれば虹海が順風満帆に行く事に合点がいく。これが計算なのか、あるいは…。それは虹海のみぞ知ることであり、奴村が知ることではない。

とにかく、用を済ませた三人はソファから立ち上がり、カバンを手にして、帰宅しようとする。

 

「ありがとう…。今日の所はここら辺で帰らせてもらうわね」

 

「え~!もう帰っちゃうの~!?」

 

「悪いな。今日はありがとな」

 

残念がる虹海に一護が礼を言うと、虹海がある事を質問する。

 

「そうだ。つゆゆー!いちりん!「「その名前で呼ぶな」」オゥ、息ぴったり…」

 

「そういえばさ…何でみかどちゃんを殺したあの女の写真を持っているの?」

 

また先程の狂気を宿した目で声も少し低くして訊く虹海に一護と奴村が黙っていると、彩が横から助け船を入れた。

 

「私達もこの子を探しているの。また何か分かったら、連絡するね」

 

彩の言葉に納得したのか、元の可愛さに戻ると彩達に口を開く。

 

「そっかー!ありがとねー!!それから3人のLINEもおしえてー!!」

 

「ふえぇ~、いいの…?」

 

「いいの、いいのー!」

 

そうして、三人は虹海と連絡交換をして、彼女のマンションを去った。

 

 

 

一護たちは、虹海のマンションを出た後、潮井のいる病院にいた。一応、潮井が起きているかもしれないという期待を込めて向かったのだが、残念ながら潮井に変化はなく、今も病院のベッドで呼吸器や色々なチューブに繋がれて眠っていた。

 

「まさか、虹海がコイツを憎んでたとはな」

 

「最悪ね。とりあえず、穴沢と潮井を接触させるのは避けるべきね」

 

「そうだな」

 

「にじみんのステッキならこの眠った潮井さんから情報を聞き出せたかもしれないのに…」

 

三人は悔しさを隠しきれなかった。

確かに虹海の能力を使って、眠った塩井に向かって【テンペストについて知っている情報を全て話せ】と命令すれば、たとえ潮井が眠っていようとも情報を聞き出す可能性はあっただろう。

しかし、潮井が虹海の親友を殺している事で、虹海はその復讐をすることを誓っている。その為に潮井と会わせたその瞬間に、潮井を殺すだろう。

そうなっては元も子もない。

また振り出しに戻ってしまった。悩む一護と奴村に、彩が少し浮かない顔をして口を開いた。

 

「あのね…奴村さん…本当に…その……言いづらいんだけど…」

 

「何?」

 

「その……時を止めてる間ににじみんのパンツを脱がせて、あの能力を使うのって……どうかな…って…?」

 

「つまりなに…時を止めて、あいつのパンツを履けって事…?」

 

「あの…その………うん」

 

弱々しく頷く彩に対して、奴村の返事はとてもシンプルだった。

 

「ぜっっっったいヤダ!!」

 

声を強めて否定する。一護は奴村がこんな露骨に嫌そうな顔を見せるのかと内心で思う。

 

「なんで寿命を減らしてまで他人のパンツを履かなきゃいけないのよ!バカなの?死ぬの?

てか、ステッキの使用を必要最低限にしようと言い出したのは朝霧さんじゃない…!

そんなこと言うなら。朝霧さんが履けばいいじゃない。あたしは絶対嫌だから」

 

奴村の言葉にどんどん押しつぶされそうになる彩だが、それを跳ね除けるかのように言い返すのだった。

 

「そ…そんな…。国民的アイドルの履いたパンツなんて私には履けません。…おそれおおい…」

 

「タイヘンダナー。オレガオトコデザンネンダー」

 

「あんたは何他人事だと思って適当な事言ってんじゃないわよ!」

 

ここまでの茶番をしたところで、三人は一斉に重い溜息を吐いた。

 

「真剣に考えましょう…」

 

「えぇ、そうね…」

 

「また別の魔法少女を探すか、それとも、井上達が帰ってくるのを待つか、どっちにするかだな」

 

「そういえばその友達はまだ帰って来ないの?」

 

「なんか予定が伸びてもう少しかかるらしいって聞いたぜ」

 

また、振り出しに戻った三人は潮井の病室を後にして、帰路につこうとしたその時――。

 

「……」

 

奴村の足が止まり、左手で頭を押さえて動かなくなった。

 

「どうした、奴村?」

 

「大丈夫…?」

 

一護と彩が心配そうに声を掛ける。奴村も二人に心配を掛けさせないように、いつものように静かに口を開いた。

 

「大丈夫。ちょっと目眩がしただけ…。今日は帰りましょう」

 

「そうだな」

 

奴村に無理をさせないために、三人はそのまま病院を抜けてそれぞれの自宅へ帰って行った。

 

そんな三人が病室を出て行くのを離れたところで、観ていた者が一人いた。

 

――朝霧、どうして…?

 

この病院に入院している雫芽さりなだった。

本当に偶然。偶然、病室を抜け出した所に、彩を見つけたさりなは彼女たちにばれないように、こっそりと後を尾けていた。

正直に言うと、分からない事だらけだった。

なぜ、彩が同じクラスの奴村はともかく見知らぬ男と一緒にいるのか?

なぜ、この自分の姉と同じよう死をした女の病室に来ていたのか?

なぜ、彼女たちの話の中で人気アイドルの名前が出てくるのか?

潮井、魔法少女、ステッキ、時を止める、気になる単語もいっぱいでてきて何の事かよく分からない。

 

――もし、それらの話が本当なら…。あいつらが…!!?

 

あいつらがえりかと翔太先輩を殺し、自分の首に傷を付けたのかもしれない。

先の見えない靄の中に光を見出し始めたさりなは、何かあるかもしれないと思い、周囲に誰もいないことを確認すると、潮井のいる病室に向かった。

扉を開けた

 

「ん――。この子にお願いしたのは間違いだったかな?」

 

「ッ!?」

 

さりなは驚愕した。病室には先程彩達が出て行ったあと、誰も入っていない筈の病室に先客がいたのだ。

 

「不幸だねー。不幸だねー」

 

その先客は潮井の眠るベッドのわきに立ち、ただただその場で潮井を見下ろしていた。

 

「困ったねー」

 

「あんた、誰…?」

 

それは質問というよりは呟きに近かった。背中を向け、立ちつくしたまま「困ったねー」と独り言を言い続ける先客の不気味さから出た言葉だった。

さりなの声が聞こえたのか、先客は口を止めると、そのまま後ろへ振り向いた。

その不気味な仮面の顔を見た瞬間、さりなは一瞬叫びだ所そうになったがグッと堪える。

 

「おやおや。君は確か、雫芽さりな」

 

「あんた…何で、私の名を…」

 

さりなの問いを無視して、言葉を続ける。

 

「そうだ。もしよかったらさ。この子の代わりにキミ、魔法少女になってみない?」

 




死神図鑑ゴールデン

さりな(昨日は糞ガキどもの所為で怒られた。これからは何が来ても無視してやる)

老人A「ちょっとすまんね。お譲ちゃん」

さりな(ジジイか。無視無視…)

老人A「って、儂らの事なんか見えてないか。まあ、ええわい。ほれこっちじゃ」

老人B「いやあ、すまんね」

老人C「ここかのう」

老人D「おじゃまするぞい」

老人E~Z『おじゃましま~す』

さりな「人の病室で老人会を始めるんじゃねえ!!とっとと、帰れ!!」

老人´s『えっ、何か言ったかの?』

さりな「帰れ~~!!」

この後、看護士長に滅茶苦茶怒られた。

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