カルデアSG   作:PRD2

3 / 3
 取り敢えず出来上がったので投稿。
 お待たせしました。読んでやって下さい。


 スカサハ・スカディ、無事爆死。
 アンメアとニトクリスしかでない……辛み。
 諦めて水着に備えるとしましょう。


Chapter 1-2 ブリーフィング

 

 

 保健室を出ると、夕焼けが目を焼いた。

 チカチカする目を何度か瞬きすると、そこは思っていた通りの木造の校舎だった。

 レトロな雰囲気の(かも)される廊下と、窓から見える校庭はオレンジ色に染まっていて、一際大きな桜の木が一本生えている。

 ──綺麗だ、と気付けば口に出していた。

「はい、特にあの桜の木はとても綺麗だと思います。羅生門に訪れたときも桜は見ましたが、あの時よりも大きくて力強くて……それなのに、どこか儚さを感じます。これが小次郎さんの言っていた『()()び』というものでしょうか?」

 それは……どうだろう。

 桜を見るのは初めてではないとはいえ、一介の高校生が侘び寂びを理解するのは難しいと思うが……。

 それにしても今が夕焼けということは、また中途半端な時間に目が覚めたようだ。自分達がここに来てから、どれくらい時間が経ったのだろうか。

「気絶していた時間を除けば四時間程でしょうか。私としては先輩だけ遅れて目覚めたのが気になりますが、精密検査はダヴィンチちゃんに頼みましょう。

 それと先輩。この夕焼けは恐らくは、日没を表しているのではないと思います」

 ん? どう言うことだろうか?

 この哀愁(あいしゅう)漂う夕日が、光の散乱現象の一端でなくてなんだと言うのだろうか。もしかして朝焼けだったのだろうか。

「いえ、違うんです。ここはずっと夕焼けに見えるんですよ先輩。少なくとも私達がここにいる四時間、この夕焼けが変化したことはありません」

 なるほど。そうだったのか。

 そういえば新宿はずっと夜だったことを思い出す。となるとこれも特異点の影響だろうか。

 そう思うと、この夕日が少し陳腐(ちんぷ)な物に映ってしまう。綺麗なのは見れば分かるが、これが四六時中続くなら少し飽きてしまいそうだ。

 そんな事を考えながら廊下を歩くと──男がいた。

 漆黒の神父服(カソック)に、堀は深いがどことなくアジア系の顔つき。

 そして何より──とても胡散臭い笑みを浮かべた男──。

「──いらっしゃいませお客様。何かお求めかな?」

 ……………。

 何故だろうか。見た瞬間、「この特異点コイツのせいじゃね?」とか「コイツ絶対ラスボスだろ」とか、そういう考えが脳裏を過るというか。

 ていうかこの先出会う予定が……具体的に言えば二部くらいで敵になりそうな予感が──。

「少年、君が何を言っているのか分からないが、私はただのしがない購買店員だ。そして君が顧客である以上、君達とは対等な関係を築いていきたいと思っている。勿論敵になるなんて事は無いとも」

 人を食った笑みのままでそういった。

 全くもって信用できない笑みだった。

「さて、まずは自己紹介をしよう。

 私は言峰、ムーンセルからこの校舎の購買部の店員に配置された運営NPCだ。購買店員の役割を与えられた以上、最強の店員を目指すつもりだ。ぜひご贔屓(ひいき)に、お客様」

 ムーンセル? 運営NPC?

 ムーンセルという言葉には確かに聞き覚えがある。以前にセラフィックスにおいてメルトリリスが話してくれた……月にあるコンピューター、だった筈だ。正直話の流れは覚えているものの詳しく教えてくれた訳ではないのであまり思えていない。それが今回の、この特異点において重要なキーワードなのだろうか。

 ……そう言えばこの校舎もどことなく見覚えがある。セラフィックスでの決戦、その少し前にBBちゃんによって転移させられた空間に似ているような……。

「それを説明するのは私ではない、私の役割は監督役では無くなったのでね。上の階にいる君たちの仲間にでも聞くと良い。既にこの状況程度は掴んでいることだろう」

 そういった言峰には話す気が無いように見えた。

 彼から話が聞ければ楽だったが仕方がない。上の階にいるダヴィンチちゃん達から話を聞くことにしよう──。

 

 階段を上がり二階の踊り場に出てすぐ横の生徒会室に向かう。マシュによるとここで会議をするらしい。一度マシュと顔を合わせた後、引きの扉を力強く開ける。

 ガラッ! という思いの外大きな音と共に目に飛び込んで来たのは大きな長机だった。椅子が机の回りを囲み、すぐ目の前から黒板の前まで延びていた。

「──おはよう六花くん、待っていたよ」

 すぐ右に顔を向ければそこにいたのは見慣れた顔ぶれが二つあった。

 壁側の席に座りこちらに声をかけてきたのまさにモナリザ。

 オリエンタルな色彩の服に身を包み、赤いキーボードから手を離して眼鏡を直す所作は完成された美の象徴。

 自分を万能の天才といって(はばか)らない、我らが頼れるダヴィエモン──改めダヴィンチちゃん!

「おっと、いつになくテンションが高めだね。寝てる間もモニタリングはしていたものの特に異常はなかったけど……何か良い夢でも見たのかい? それとダヴィエモンは止してくれ、それでは何処かのロクデナシの羊飼いみたいじゃないか」

 そう言われれば確かにそうだ。ダヴィエモンでは名前被りになってしまう。今度何か新しいのを考えておこう。

 それで、夢だったか。……どうだろう、見ていた気もするが……何故だか思い出そうとする気になれない。それくらいしょうもない夢だった……気がする。

 何だったか……アゾ顔トワイスピースマン? とかザビエルがどうとか。

「ふむ……興味深い話ではあるが、夢の事はひとまず置いておこう。私達が今すべき事は、マスターと情報を共有することだ」

 黒板前──上座から落ち着いた声があがる。

 (すそ)の割れた特徴的な紳士服を着込み、愛用の杖を机にかけ、キセルを優雅に持ってこちらを見ている鼻の高い男。

 見間違えるまでもなく、シャーロック・ホームズその人だった。

「さて、まずは座ってくれたまえ。そこの使い魔よりも使えない男は無視してくれて良い、喋るインテリアだと思ってくれれば何よりだ」

 し、辛辣(しんらつ)だ。いつになくダヴィンチちゃんがホームズに対して辛辣だ。

「何でも分かっているような口振りで、いざ聞かれれば勿体ぶるような奴だからね。君が寝ている間も、捜査に協力する素振りさえ無かったんだよ?」

「校舎は一通り見て回ったとも。残念ながら君達が調べられる以上の物はなかったから、話さなかっただけだよ」

 なんと言うか……ホームズはホームズだったらしい。気にしない方が良いだろう、何時もの事だ。

 下座の席に座る。後ろにいたマシュがダヴィンチちゃんの隣に座ると、いよいよ会議が始まった。

 

「──まずは状況の確認といこうか。長々とした話を省いて、端的な事実だけを述べよう。

 六花くん。ここは電脳空間なのさ。まさにSFとかで良くある、あれだよ。

 正確には月面に存在する、ムーンセル・オートマトンと呼ばれるスーパーコンピューターの作り出した霊子虚構世界──『SE.RA.PH』と呼ばれる場所だ。

 ……やっぱり聞き覚えがあるようだね、セラフィックスにレイシフトしたという話は以前に聞いたとも。君の言うことだから冗談の類いだとは思ってはいなかったが、いざ自分が巻き込まれると中々どうして困ったものだ。どうやらBBちゃんは本当にタダ者ではなかったらしい。

 私達がいるのは、君がレイシフトしたとされる時代から二年先の西暦2032年、それも今回は月面だ。どうやって君だけでなく私達スタッフの存在を意味消失させずにここまで連れてきたのかは全く分かっていない。今はスタッフにこの学校について調べて貰っているが……ここに来た原因も方法も恐らくは分からないだろう。万能の天才が保証する、これは私達の文明では理解の出来ない事態であり、我々が理解できない文明でもある。

 いつかたどり着く未来の文明という意味ではないよ。この時代の、この世界の文明は、決して私達が通る未来ではない、あり得ないのさ。それほどまでにこの世界と私達の世界では文明の根幹が違うんだ。恐らくは……いや、ほぼ確実に、ここは私達のいた世界ではない、いわゆる平行世界というやつだ。

 なにせ月がフォトニック結晶で出来たスーパーコンピューターで、しかも世界から神秘が消えて久しいときた。剪定事象とも異なる物のようだし、ここまで来るとパラレルワールドと言われた方が納得できる。過去のある時点において未来が分岐し、そのまま続いた世界……実際には剪定される筈の世界だけど、ここではそれが正しい歴史のようだ。

 ん、ああ、この情報はここのネットワークにアクセスして手に入れた情報だよ。この赤いキーボード、あり得ないくらい高性能なパソコン機能付いててね、ちょっと中身を覗かせて貰ったんだ。前の使用者は随分と几帳面だったみたいだ、ここでの記録やこの世界についての予備情報がキチンと纏めてあったよ。まるでゲーム初心者にチュートリアルで優しく教えるように、ね。

 ……話を戻そうか。この学校はSE.RA.PH内にある電脳世界、電子の海の中の安全地帯のような物だ。不正なデータを粛清(デリート)するエネミーやAIのいない空間で、取り敢えずここにいれば概ね安全だろう。ここに来た経緯を考えれば、何が起きても可笑しくないから全く安心できないが……考えてもしょうがない、ここを拠点として私達は動き出すことに決定した。

 まあ、結局は異常事態(いつも通り)ということさ。状況は全くもって楽観できないけど、今すぐどうこうなるくらいに切羽詰まってる訳でもなし。私達が出来ることを地道にやっていくしかないってことだ。幸運なことに、手がかりはこのキーボード(落とし物)の中にあるようだ。今は回収作業(サルベージ)がまだ残っているから、君が動くのはもう少し先になるだろうけどね」

 

 

 話は一通り終わったようで、ダヴィンチちゃんは一息つくと、手元の画面(ウィンドウ)を閉じてこちらを見る。

「ここまでで何か質問はあるかな。この世界についての詳しい話やSE.RA.PHのことに関しては後で資料を作るから、出来ればそれ以外で」

 ふむ、そうだな。

 ここまでの話で分からないことは大体がこちらの世界での事情だ。セラフィックスにレイシフトしたときにメルトから幾つか聞いていた話もあるし、特別聞きたいことはない。あとは……

 

 →なんでダヴィンチちゃんやホームズがいるの?

  二人以外のサーヴァントは?

  今後はどう動くの?

  

 そういえばダヴィンチちゃんやホームズは何故いるのだろうか。

 いや、別にいて欲しく無いわけなく、寧ろこの異常事態において彼らほど頼れる人材は他にいない。けれど二人はサーヴァント、それも特殊な事情でカルデアに現界していた筈だ。この月の世界でも、その契約は続いているのだろうか。

「うん、いい質問だ。流石はマスターだ。疑問の着眼点が的確だ。

 現在私達は君をマスターとしてこの月に現界している。理由はさっぱりだが、魔力供給もちゃんと通っているようだ。今は節約のために、この校舎からバックアップとして魔力を負担してもらっているから、君は安心してマシュに魔力を回してあげてくれ」

 そうかそれならば問題は……ん? 

 ちょっと、待って欲しい。確かにマシュとのパスは途絶えていないが、まさか魔力を回すほど負担のかかることがこの先あるのだろうか。

「それなんだけどね……どうやらマシュ、サーヴァント化出来るようになったみたい」

 え?

 出島(デジマ)? 転じてマジで?

 ……いけない。あまりの衝撃に鈴鹿御前みたいなノリになってしまった。

 いや、それにしてもさらっとし過ぎではなかろうか。確かにこの状況でマシュが戦えるなら、この上無いくらいに喜ばし事なのだが……もっとこう感動的な変身シーンとか、或いはピンチな状況で覚醒して、みたいな展開が必要だったりするのではなかろうか。

 マスターの窮地をそれで乗り越えたりとか。

 ちょっと弱体化した宝具になったりとか。

「……ご期待に沿えないようで申し訳ないのですが、特にありません、先輩。私もちょっとどうかと思うくらい簡単に変身できて困っていると言いますか……今までの私の苦悩は何の意味も無かったのでしょうか。ギャラハッドさんの意識は感じられませんが、シールドもキチンと使えそうです」

「SE.RA.PHに来たことでデミ・サーヴァントとしての存在を補強された、というのが現実的だと思うけど、あんまりいい加減なことは言えないかな。まあラッキーくらいに思っておけばいいんじゃないかな。カルデアに戻ったらまた変身できなくなるかもしれないからね」

 

 →二人以外のサーヴァントは?

  今後はどう動くの?

 

「今のところ私達以外のサーヴァントはデミ・サーヴァントのマシュ以外は確認されていないね。召喚のシステム自体はSE.RA.PH式に対応できると思うけど、出来て一人を短時間で召喚するのが限度かな。長居させ過ぎると、SE.RA.PHからの横槍が入りそうだからね」

 ということは、お助けキャラ的な立ち位置になるわけか。いままでの特異点でのサーヴァントの影よりは助かるかもしれないけど、使いどころが難しそうだ。

 短時間とはいえサーヴァントは心強い味方だ。一部の反英霊を除けば皆頼れる仲間となってくれるだろう。

 

 →今後はどう動くの?

 

「恐らくこの校舎だけでは、カルデアに帰還するための情報を得ることは難しいだろう。よって君にはまた冒険に出てもらう必要がある。この端末の情報によれば、校舎前の桜の樹に接続することでこの空間から『サクラ迷宮』と呼ばれる場所に出ていけるらしい。記録を流し見ると、前の使用者達はそこでここから脱出する方法を模索していたようだから、それにならうとしよう。前回の捜査の痕跡、もしくはこの世界に対する詳しい情報を手に入れるのがベストだ。

 ……気がかりなのは、彼女等の脱出を邪魔していたのがBBちゃんということなんだけど……なにせ自称とはいえラスボス系後輩だ、私達の脱出を邪魔しても可笑しくは無いかもしれない。彼女がここにいるかどうかはさておきね」

 BBちゃん……そんなことしていたのか。

 彼女のことだ、きっと彼女の言う先輩を行く先々でおちょくっては理不尽な試練を与えていたに違いない。満面の笑みで妨害してくる彼女の様子が目に浮かぶ。

「さて、質問は以上のようだね。それでは私達は作業に戻るから、君達二人は体力を温存しておいて欲しい。サクラ迷宮攻略のためにも、二人には状況の整理と同時に休息を取って貰わないといけないからね。生徒会室を出て左に進んで奥の部屋を取っておいた。二人で一部屋になってしまうが、そこは若いお二人で何とかしてくれ。私達からの通信も一時的に切っておくから、存分に休んでくれたまえ」

 それを聞き、マシュと共に席を立つ。まあ二人で一部屋なのは別に構わない、特異点での夜営でマシュが隣で寝ていたのは良くあったことだ。マシュはどうだろうか。

「は、はい。私も構いません。今は緊急事態ですので、休めるときに休むべきです」

 そんなことを考えながら、二人で生徒会室を後にした。

 

 

 

「さて二人も行ったようだし……そろそろ説明してもらおうか、ホームズ。一体何を考えている」

「特別なことではないとも。今私が考えているのは、マスター達の身の安全を確保するための方法くらいな物だ」

「君が? あり得ないよ。

 シャーロック・ホームズともあろう者が、目の前に事件をぶら下げられて無反応でいられる訳がない。君は周りの都合を二の次にして、自分の謎解きを優先するような英霊の筈だ」

「否定はしないよ、私は探偵だからね。目の前に謎があるなら、解かずにはいられないのが私だ。……それでも今回は話が別でね、どうにも私の霊基がこの事件に対して反応しないのだよ。端的に言えば心が引かれない、と言ってもいい」

「はぁ?」

「ここに来た弊害(へいがい)か、或いは何らかの干渉によってか今の私は万全とは言い難い。今の私は戦闘はおろか、謎解きに関してもあまり活躍出来ないだろう。やれと言われれば分析くらいなら片手間で出切るが、意欲の無い探偵に解ける謎は無い。そして謎の解けない探偵は役立たずも同然だ」

「……君がそこまで言うのなら、まあ構わない。出来ればマシュと一緒にサクラ迷宮に入って欲しかったんだが、今の君では足を引っ張るだけのようだからね……それにしても、どうやらこれは本腰を入れていかないといけないらしいね。サクラ迷宮についても気になるし……それにしても、何で記録が進んでいく度にバグが増えてるんだ? この技術力で文字化けなんてあり得ないはずなのになあ」

 

 

 指定された部屋に入ると、そこは教室とは違う空間だった。窓際に寝台が一台、壁際にはタンスが置かれ、段ボールも積んである。電脳空間だからか不快感は無いが、きっと現実なら埃っぽいに違いない。

 窓を見れば先程まで夕焼けが見えていたそこは夜になっている。明かりはタンスの上の年代物のランプだけだが、不思議と周りの様子が良く見える。これも電脳空間だからだろうか。

「ダヴィンチちゃんによれば、ここは完全なプライベートルームのようです。今は生徒会室とも通信を切っているので、外は夜のように見えるんだとか」

 それを聞くと、現実の世界じゃないことを改めて認識させられる。今までの環境とは、同じようで所々齟齬(そご)があるようだ。

 なんというか……現実味がない。いや自分の存在もキチンと認識できるし、異常があるわけではない。だがむしろ現実とほぼ遜色(そんしょく)の無いせいか、漠然とした不安を感じている、というべきか。なんだか今までの価値観が根底から覆される感覚が徐々に押し寄せてきているというか……。

「それは無理も無いことだと思います。電脳空間に入るなんてSFのような現象は、少なくとも私達の世界ではあり得ませんでしたから。ここは今までの特異点の中でも群を抜いて異常な場所ですし、我々の常識が通用しないかもしれません。

 でも……不謹慎かもしれませんが、少し興奮している自分がいます。このような体験はどの特異点を探してもあり得ないでしょうし……その……」

 マシュはそういうと少し顔を赤らめて恥ずかしげに、

「せ、先輩と一緒にまた冒険が出来ると思うと……とても嬉しくて……胸が、高鳴ります」

 マシュ……。

 そうだ。自分には頼れる相棒がいるのだ。確かに謎は多く、大きな障害があるかもしれないが彼女と一緒ならきっと何だって出来る。

 顔を手のひらで叩いて意識を切り替える。物珍しい物は多いが、物見遊山では無いのだ。気合い入れて望もう。

「勿論です、先輩。

 さしあたっては休息です。確かに先輩はずっと眠られてましたが、気絶と睡眠は別の物です。体と一緒に心も休めるのが良いと思うのですが……その」

 そう口ごもった彼女は、少し躊躇いがちに口を開いた。

「べ、ベットが一つしかないようなのですが……い、いえ、なにか他意があって発言したわけでは無くてですね!? 今は緊急時ですし我が儘を言うべきではないと分かってはいるのですが……ど、どうしましょう?」

 そう上目遣いで遠慮がちに見てくる後輩。

 あざとい、実にあざとい。

 まあベットが一つしかないのなら仕方がない、贅沢を言ってられる余裕はないのだから、ここは──。

 

 

 →オレが床で寝るよ

  半分こずつ……とか?

  お互いに抱き合えば良く寝れると思うよ

 

 

 ここはオレが引くべきだ。そもそも可愛い後輩を床に寝させる選択肢はないし、かといって二人で寝るのも問題があるだろう。確かに特異点では床で並んで寝るのは良くあったことだが、その必要が無いのなら無理をする必要はないのだから。なに、さっきまで休息は取っていたんだ、何とかなるさ。

「だ、ダメです! 先輩は先程まで気絶されていましたし、体に異常が無いとは限りません。ダヴィンチちゃんの話ではバイタルは正常とのことですが、ここは電脳空間です。我々の知らない人体への影響があっても可笑しくありません。ここは私が床に──」

 論外である。

 オレの可愛い後輩を差し置いてベットで寝るとか、そんな事は考える余地すらない。二度も言わせないで欲しい。

「か、かわっ!? うぅぅぅぅ……何故今日に限って先輩はこんなに情熱的に私を……こ、これも特異点の影響なのでしょうか……」

 ともかく、マシュがベッドで寝るのは確定事項だ。オレは……そうだな、ちょうど段ボールがあることだし適当に拝借(はいしゃく)してハウスでも作ろう。段ボールの保温性と快適感は割と洒落にならないと聞いたことが、

「わ、分かりました! い、一緒に、一緒に寝ましょう! ベッドで二人一緒に寝るのがこの場における最適解だと思います! 今こそジャパニーズ・カワノジを実践すべきです!」

 川の字……一人分足りない気もするが、それは兎も角良いのだろうか。マシュが内心嫌がってるなら無理にすることはないが。

「か、構いません。先輩と寝る状況は良くあることですし……その方が私も落ち着きます。わ…………私の先輩を床に寝させるとか、ろ、論外ですし……」

 ……これは一本とられてしまったか。

 女の子にここまで言わせて断るのは忍びない。マシュの意見に賛成する。

 一緒に寝よう、マシュ。

「…………はい」

 

 

 




 後輩を言葉巧みにベットに誘う男、藤丸立花。こいつはできる主人公の臭いがするぜぇ。
 一応分岐では、  
  →半分こずつ……とか?
 を選ぶと色々話した後に、普通に一緒に寝てくれます。

  →お互いに抱き合えば良く寝れると思うよ
 を選ぶとあたふたするマシュが見れた後にベッドで
「……………………あっちむいてください」
 の台詞のあと背中から手を回して寝てくれます。

 ラストが少し走っちゃってるのは許してください。マシュが赤面してる表現が割とむつかしかったんです。
 ダヴィンチちゃんの説明も分かりにくいのは許してください。見切り発車作品なので設定と展開が手探りなんですたい。
 BBちゃんどうしよ……やっぱ出すべきか……一応一人目の流れは大方決めてるので、ちょっと考えます。

 さて今回はこんな感じで、大体説明回です。
 次回はいよいよサクラ迷宮突入。そこで出会ったのは意外な人物だった。赤い服とコートをはためかせ、両手に銃を構えこちらを睨む冷たい眼光。話によると医療に携わる人のようだが……いったい何ーレンス・何々ゲールなんだ!!

 不定期更新、気長に待ってて下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。