尚、このSSはpixivにも掲載しておりますが多少加筆しておりますのでご周知の程を。
<新宿 東京都庁前>
6月某日、私ローレン・バレルは近日中に開催される「ガミラス星物産展」打ち合わせの為東京都庁に出張していた。
都知事の反応も良好でかなり時間をかけて準備した甲斐があった。現場視察も恙無く終わり後は愈々本番に向け人員の手配や物品の調達を残すだけだ。地球ガミラス間友好関係確立の為にも是非成功させなければ。
気が付けば丁度お昼時、都の職員やサラリーマン達がそれぞれ昼食を摂るべく思い思いの店へと足を運んでいく。
うっ、ブルータス …じゃなかった! 我が胃袋よ、お前もか ……
……
…… 腹が、減った ……
…………
……
…
店を探そう。
さて、何処に行こうか ……
取り敢えず新宿駅の方へ行ってみよう。
<西新宿1丁目界隈>
流石都内有数の歓楽街だけあってあらゆる飲食店が正に百花繚乱の如く軒を連ねている。油断してると食の迷宮に迷い込んでしまいそうだ。
それはそうと私は今何を腹に入れるべきなのか?
私は今何腹なんだ?
狼狽えるな、私はただ腹が減っているだけなんだ。
考えるな、私自身が感じた物に従うのだ。テレサも言っていた、自らの心が感じた物に従え、と。
……
暑い …… そう言えば今は6月、ここ日本では正に初夏、日差しがより強くなる。その日差しや暑さに負けない様にスタミナが付く物を、パンチが効いた物を食いたい。
すると私の視界に飛び込んでくる“とんかつ”の文字。大通りから一歩離れた小道、如何にも古くから営業している感全開の佇まい。しかも結構な繁盛店らしい、人がひっきりなしにやって来る。
…… !
刹那私の脳内に閃光の如く天啓が示された。
そうか、私は今“肉腹”なんだ!
どうやら私の腹は“とんかつ”を欲しているらしい、斯くして私も引き寄せられる様にその店へ足を向けた。
店の名前 ……『豚珍館』? ……どうやらトンチンカンと読むらしい。ほほう、色んな写真が階段の壁に貼ってある。どうやらこれがメニューの様だ、これなら待ち時間も有効に使える。何気に嬉しいサービスだ。
「何名様ですか?」
「あ、二人です」
「ご注文はお決まりですか?」
「じゃあ上ロースカツ定食2つ」
「上ロース2つですね?では暫くお待ち下さい」
ほほう、この店は入店前に客の人数確認と注文を取るのか …… 多分混み合う時間帯限定なのだろうがこのサービスも何気にポイント高い。
「次のお客様、何名様ですか?」
どうやら私の番の様だ、ここは焦らず落ち着いて行こう。
「一人です」
「お一人様ですね、ではご注文はお決まりでしょうか?」
その言葉を聞いた瞬間、私の視界に侵入して来たのは1枚の写真だった。“ジャンボメンチカツ”?ジャンボって一体何処がジャンボなんだろう?これは気になるメニューですよ。
「ジ、ジャンボメンチカツ定食を……」
「はい、ジャンボメンチで宜しいですね?」
「ええ、それでお願いします」
思わず注文してしまった …… しかし何処と無く一抹の不安が頭を過るのは気の所為だろうか?
だが最早賽は投げられ、ルビコン川を渡ったのだ。ここまで来たらジタバタ狼狽えず石の狸の様に待とうじゃないか。
「お客様、お待たせいたしました。あちらのカウンター席へどうぞ」
待つこと暫し、店員さんの声を聞くや私は指定された席に着くべく店内に入る。
ほほう、古き良き日本を思わせる店内じゃないか。私にとっては下手な高級レストランよりもグッと来る。これはかなり期待できますよ。逸る気持ちを抑え、カウンターの席に座るや厨房に居る店員さんが声をかけてきた。
「ジャンボメンチのお客様、どうぞ」
なんと! もう出来たと云うのか?これは驚いた、しかしお昼休みが限られたサラリーマン達にとっては非常に大助かりだろう。
【ジャンボメンチカツ定食】
*100%豚ミンチ肉のジャンボメンチカツに平伏せ!*
おお、これが噂のジャンボメンチカツですか ……
これは確かにジャンボだ。普通メンチカツと云えば精々コロッケよりも一回り程度大きい位なんだがこれはちょっとしたロースカツ並の大きさだ。よし、では早速 ……
「いただきます」
さてソースだが、ここは甘口と辛口があるのか。それではまず辛口だ。取り敢えず一切れにちょっとかけて、と。
サクッ
むっ、噛んだ途端肉汁が溢れてくるじゃないか!しかも100%豚ミンチ肉だ。普通メンチカツと云えば繋ぎにパン粉や卵を使い、更に店によっては玉葱等を入れてあるのだが、ここのメンチはその様な小細工が一切為されていない。文字通りコースど真ん中の剛速球を投げ込まれた感覚を覚える。中々良い仕事してるじゃないか。
更に其処へ白い飯で追いかける。う~ん、これぞ至福。やはりテロン食文化の極みだな。ここ日本はテロンの中で最も食文化が発展している所と聞く。私は今正にその真髄に触れているのだ。
次は豚汁だ、どれ一口 ……
!!
な、なんだこの肉々しさは! まるで液体化した肉を飲んでる様だ。豚肉その物を出汁にしていると云うのか! これなら何杯でも行けそうだ。
次は甘口ソースを一切れにかけてみる。ほう、こう来ましたか ……さっきの辛口は切れ味鮮やかな日本刀を思わせる味だったがこちらは濃厚なコクが堪らない。私的には甲乙付け難い物がある。
そろそろキャベツで口をさっぱりさせよう。この調味料は …… 何?チ↴リソ↱ォスぅ?ど、どうやらキャベツ用らしい …… 取り敢えずかけてみた。ぬ、これは未体験の味だ。しかし悪くない、甘さと辛味が絶妙なバランスで食欲を煽ってくる。こうなればキャベツも立派な一品料理だ、いいぞいいぞぉ……。
と、そうこうしている内にご飯と豚汁が綺麗サッパリ胃袋に収まったではないか。ふと目の前の張り紙を見ると“ご飯と豚汁のおかわり自由”と書いてある。ならば遠慮なくお言葉に甘えさせて頂こう。
「すいません、ご飯と豚汁のおかわりお願いします」
「はい、少々お待ちください」
取り敢えず一段落したので店内を見回してみる。昼休み中のサラリーマンや東京都職員、それに営業中のビジネスマンが皆満面の笑みでとんかつを堪能しているではないか。ここで午後の業務に備え英気を養う訳だ。テロンの復興は皆さんの献身にかかってます、しっかり食べて頑張ってください。
「お待たせしました、ご飯と豚汁です」
「あ、どうも有難うございます」
さあ、ピッチを上げますよ。肉々しいメンチカツを頬張って白い飯を口に放り込み、これまた肉々しい豚汁で流し込む。そしてキャベツで口直し、箸休めのお新香でリフレッシュ。然る後またメンチを頬張る、まるで蒸気機関車の火室に石炭をくべている様だ。うぉん! そうだ、今私はテロンとガミラスを結ぶ架け橋を進む機関車なのだ!
気車気車しゅっぽしゅっぽ、しゅっぽぽぽ~のしゅっぽっぽぉ~。
そして最後の一切れを名残惜しく噛み締めながら私はまた機会があれば再びこの店を訪れようと心に誓う。
「ごちそうさまでした …… あっお勘定お願いします」
「ありがとうございました ~円になります」
「美味しかったです」
言葉とともに支払いを済ませ店を出る。昼飯時長居は無用、それが粋というものだ。
階段を下り外へ出ると初夏の日差しが眩しい。しかし、気の所為か何とか午後も乗り切れそうだ ……
さて、今日は仕事も終わったから行きつけの猫カフェへでも行こうか。
多分気が向いたらまたやります。