魔導王と魔王   作:波美

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アインズ様の悩みの種は尽きない……。


●2-7 深まる謎

シャドウデーモンからの報告を挟みながらも、街をあちこち見て回っていたーー本当に観光目的だったのかと、アインズは思いかけたーー例の3人組は、遂に冒険者組合にもやってきた。

どうやらモモンに会いに来たようだ。現在モモンとして影武者を頼んでいるパンドラズ・アクターの方にもその旨が届き、どうするか〈伝言(メッセージ)〉で聞いてきた。

 

「まだ会うのは時期尚早だ。もう少し相手の情報が手に入ってからだな。組合には何か理由をつけて断りを入れろ」

 

わかっている現段階でも、デミウルゴスに匹敵する悪魔が一体と、プレイヤーの可能性がある人間が一人。またまだ情報不足だ。

自分が出向くのは勿論のこと、パンドラズ・アクターにモモンの代理をさせて会わせるのも危険だ。そう判断したアインズは会うことに待ったをかけ、逸早く情報を集めるよう再度下僕に連絡した。

そうして、監視と情報収集に徹底するもあまり良い収穫はなく、例の3人組は特に問題も起こすことなくエ・ランテルから去っていった。その事に歯痒さと安堵の息を漏らしたーー肺もなければ息もないだろというツッコミは受けないーーアインズに今度はルプスレギナから〈伝言(メッセージ)〉が届いた。

 

「(ん?)ルプスレギナか。どうかしたか?」

〈アインズ様、面白いゴブリン…いえ、ホブゴブリンがカルネ村に来ました〉

「ホブゴブリン?以前保護された奴とは別の個体か?」

 

他にホブゴブリンなんて森にいたか?とアウラの報告を思い出す前に、ルプスレギナの肯定が返ってきた。

 

〈見た目も強さも、アレとは全然違います。そこそこ楽しめました〉

 

クスクスと笑う声が響き、アインズは眼窩に灯る赤を細めた。

 

「ほう。続きを報告してくれ」

〈はい。以前アインズ様が下賜されたアイテムから召喚されたゴブリン…ゴブリンリーダーと対戦しましたが、戦いはホブゴブリンの勝利でした。レベルや魔法道具も近衛隊の十三レッドキャップと同等かそれ以上かと〉

 

最初期のゴブリンはレベルこそ12レベルと弱いもののオーガやトロール、低ランクの冒険者にも負けない実力はある。それに、2回目の笛で召喚されたレッドキャップは確か40レベル以上のモンスターだったはず。それらを上回る程、か。保護されたホブゴブリンはまだ子供で、そこまでではなかった筈だから、これは……この世界で発見した中でもそこそこの連中だ。

 

「そのホブゴブリンは1体だけか?」

〈村に訪れたホブゴブリンは報告したホブゴブリンをリーダーに全員で5体、ゴブリンからの報告では彼らの村はホブゴブリンの集団みたいですね。リーダー以外はそこまでレベルは到達していないように見えました。しかし、身に着けている魔法装備は低位ながらもこちらの世界では上に分類される物でした〉

 

力と装備がこの世界の”普通"から越している。そんなモンスターなんて今まで見たことも聞いた事無い。これは、少し気になるな。

 

〈面白そうだったので、軽く遊んだのですが……あれは上位のモンスターとも互角に戦えるだけの経験と実力を持った者です。武器に仕込んだ技は使うのに奥の手は何故か使わずに負けを認めて退いたのは不満ですが、まぁその程度のモンスターでした〉

 

ゴブリンとの一戦も見応えはあったが、実際に手合わせしてみると中々に強かった。

お遊びのつもりだったが、自身の攻撃を易々と躱し、時々ヒヤリとさせられる一撃も繰り出された。あの武器の性能も良い。予め付与されていたのだろう氷の魔法を放ってきたり、まさか鞘から電磁砲が繰り出されるとは思わなかった。

追い詰めた時の悔しそうな表情は見ものだったし、更なる絶望に落とそうとした時……負けてたまるかと顔をした後何か仕掛けようとしたのに、それを繰り出す事はしなかった。

あんな顔をしておいて、負けを認めて諦めたのだ。何か理由があったのかもしれないが、ルプスレギナはその時点で興醒めして一気に興味を失った。特に脅威を感じる程の強さでもなかったし、その程度という認識で終わった。

それでも周囲とは一線を越していた為、以前の叱責を活かしてアインズに報告したという訳だ。

 

「(なんでそこで手を引くんだ!そこはもう少し相手の手の内を引き出す所だろ!……でも、こいつら的には弱者にそこまでする理由も価値も見出だせないという考えなんだろうな)」

 

溜め息をつきたくなるアインズだが、それはぐっと堪えた。報告しただけ成長したという事だろう。ルプスレギナにとって等しく弱者という認識だろうし。

 

「報告ご苦労。そのホブゴブリンはどうした?まだ村にいるのか?」

〈いえ。用は終わったとかで帰りました〉

 

帰った?そもそも用とは一体なんだったんだ?

その疑問のままルプスレギナに問えば、特に気にしていなかったルプスレギナは慌てて側にいた当事者たるゴブリンのジュゲムから聞き出した事そのままを伝えてきた。

 

「主に頼まれて、村の様子を見に来た……友好関係を築きたい…か」

 

理由としては何の疑いも持たないものだろう。しかし、主という存在がどうもひっかかる。それは仕える存在がいるという事であり、同族を束ねる存在であれば村長なりーーリーダーのホブゴブリンが隊長と呼ばれているならばーー大将なり別の呼び名があるだろう。

不可解な事が複数存在するホブゴブリンの集団。もう少し報告が速ければそのまま帰すのではなく情報を聞き出す為に村に留まらせるなり、帰すにしてもシャドウデーモンを潜ませて追跡なりいくらでもやりようはあった。…まぁ、終った事をぐだぐだ言っても仕方ないのだが。

 

ーーアインズは知らないが、このホブゴブリン達が来たのは数日前である。滞在した数日間の間にいくらでも報告はできたのだが、案の定ルプスレギナは彼らが帰った後でふと思い出してこうして報告した次第である。

これを知ったら二度目の叱責ものだが、ンフィーレアやエンリ達に全く害がない上問題も起こさなかった事から然程重要とも思わなかった……という言い訳があるのだが。まぁ、それでも先程思ったようにこうして報告してきただけマシだろう。

 

〈な、なんかマズかったっす…ですか?〉

 

怯えたようなルプスレギナの声音に、アインズは指摘しようとして止めた。

 

「………いや。報告ご苦労。もしまたそのホブゴブリンの集団が来たらすぐに連絡しろ」

 

了解しました、と述べてからルプスレギナの〈伝言(メッセージ)〉は切れた。そして、アインズは傍らに控えるメイドに声をかけてアウラを呼ぶように伝えた。

命じる事は、そのホブゴブリン達の発見だ。彼らが住む村もできれば把握しておきたい。

 

「まったく、あっちもこっちも不可解な奴らが現れたものだ」

 

もしかしたら何か関係があるかもしれないが、それは今後の調査次第だろう。アインズは不快気にそう呟いた。




ゴブタ✕VSルプスレギナ◯
一体化無しではプレアデスに勝利するには至らない…という事にしました。一体化すれば互角か相性が良ければ勝てるかな?と私は思ってます。
ゴブタがランガを呼ばなかったのは手の内をこれ以上晒すのはよくないと判断したのと、あくまでリムルからの命は友好関係を築く事で実力を見せつける事ではないからです。逆に警戒されてしまいますしね。
ジュゲムとの戦いまでがギリギリといった所でしょうか?武器の性能しか見せてない、実力はまだ誤魔化しがきく範囲内。
ちなみに、カルネ村での行動は他にもあるんですが、ルプスレギナは勝負後は興味失ってるので、ゴブタ達が何をしてたかは知らないしその報告もしてません。
カルネ村での事はテンペストの街に戻ってからの報告会で明かしますので、気になるでしょうがお待ち下さい。
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