魔導王と魔王   作:波美

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ひっさびさすぎて………。申し訳ない。
続きを書こうか悩んだけども、やっぱり中途半端に止めるのもなぁ……と。


○3-2 テンペストの動き

数日の滞在を終えて、カルネ村とエ・ランテルから戻ってきたゴブタ達とリムル達。

 

「ただいま、みんな」

「おかえりなさいませ!リムル様!」

 

声を揃えて出迎えたシオン達の歓迎にもみくちゃにされながらも、やっぱりこの街が一番落ち着くなぁと染々感じた。

怪我はしていませんか?と、もちプルボディをシオンとシュナに揉まれたりーーディアブロが私がお側にいるのですからそんな事起こり得る筈がありませんと、帰って早々シオンと火花を散らしたーー、街はどうだったやらモンスターはどれ程の強さだとかヴェルドラやミリムに詰め寄られたり……というか多い!あれこれいっぺんに聞かれても困る!

 

「だー!一旦落ち着けお前ら。ちゃんと順番に話すから。ゴブタ達の話も聞きたいし、早速報告会を開くぞ。あ、皆には後でまた今後の方針を連絡するから少し待っててくれ」

 

喧しいと一喝すれば、騒々しさはピタリとやんでそれぞれ動き出す。殆どの連中が集まっている為、住民達は一旦その場を離れ、幹部達は俺の側に集まってそのままぞろぞろ引き連れて部屋へと向かう。

 

「報告会の前に。俺の留守中何も問題は起きなかったか?」

「はい、リムル様。街の中で大きな問題は起きず、住民やお客人もそれぞれ普段通りの日々を送っておりました。外に出られない分、中の娯楽施設中心に賑わっておりました」

「警戒はしておりましたが、外敵も現れませんでしたし何も問題はありませんでした。映像にも異常ありません」

 

俺がエ・ランテルに入ってから各所に設置した分身体からの映像ーー神之怒(メギド)を応用した監視魔法だ。同じく、街の周囲を警戒するためにも配置してあるーーを、ラミリス達が円形闘技場のスクリーンに投影して異世界の風景を鑑賞する催しをしたようだが、これが人気で盛り上がっていたようだ。

司会及び解説がヴェルドラやミリムといった時点でどんなものか予想できる。というか守護の件忘れてるな。

真面目に監視や警戒を行っていたソウエイやベニマルは後で労っておこう。ラミリスも迷宮のことベレッタとゼギオン達に丸投げしやがって。全く、困った奴らだ。

 

「まぁ、窮屈な思いをさせてるからな。皆や客人達が退屈してないようでよかったよ。ソウエイ達も、警備ご苦労様」

 

お前らも見習え、とヴェルドラ達を見るも、楽しかったぞ!と笑って返し反省の色は見られない。……本当、こいつらは……。

 

「さて、それじゃあ報告会を始める。今回カルネ村とエ・ランテルに数日に及んで実地調査したが………先ずはゴブタ君、カルネ村での事を報告したまえ」

「はいっす!」

 

スライム形態じゃあのポーズはできないので、人の姿に戻ってから両肘を机に乗せると手を組み、それで口元を隠しながらゴブタに視線をやった。

元ネタ誰も知らないけどな!誰もツッコまないし早々に手を膝の上に戻す。

そして、椅子から立ち上がったゴブタはカルネ村での出来事を話していく。

ジュゲムと名付けられた屈強な体躯のゴブリン達、その主である人間のエンリ・エモットという少女。村の仕事を助け合う人間とオーガ達魔物の共存関係。そして、アインズ・ウール・ゴウンに仕えるメイドと名乗ったルプスレギナという美女。

 

「ジュゲムさんも中々やるっすけど、強さでいったらルプスレギナさんの後ろからきたレッドキャップの方が上っすね。更にその上…というか、村で一番がルプスレギナさんっす」

「ほぅ、その女性とも手合わせしたんだろ?どうだった」

「ん〜、そうっすね。自分の見立てだと、あの人はどっちかっていうと戦闘特化じゃないと思うんすよ。戦闘能力はあるけど、戦い方は攻撃メインじゃないような。まぁ、それでも他の魔物に比べればレベルはダントツっぽかったっすけど」

 

戦いの様子を思い浮かべながら語るゴブタは、ルプスレギナとの手合わせはこちらの負けで終わったと告げた。

 

「ほう、あれだけ儂が扱いてやったというのに負けたのか。緑色軍団隊長の名が泣くのう」

 

悲しい事よ、と嘆くハクロウの目は言葉とは裏腹に鋭くゴブタを睨んでいた。もう一度鍛え直してくれる!と怒りすら孕んだその瞳を見て、ゴブタは冷や汗を流した。

 

「一体化はできなかったんすよ!相手は確実にこちらの手を探りにきてたっす。じわじわと遊ぶように甚振る戦い方で…。低級モンスターと侮られてるのは一目瞭然っすね」

 

ゴブタは負けたのには事情があるのだと反論する。確かに、本気にもなっていない相手に対してこちらから手の内を晒すのは得策じゃない。ゴブタにしてはちゃんと考えて戦っていたんだな。

 

「本当は鞘電磁砲(ケースキャノン)水氷大魔槍(アイシクルランス)も見せない方が良かったんすけど、侮られたままってのは悔しいっすから。相手の攻撃を避けるのは容易っすけど、一体化無しだと長期戦になって面倒っすかね」

 

ランガを呼べば勝てただろう。しかし、相手に勝つ事が目的ではない。何となく勘だが、多分勝っていたら良くない面倒事を引き寄せていた気がする。

優先事項はリムルの命だ。諦めたくはなかったが、ゴブタはそこで退いたのだ。

 

「ゴブタ程でも梃子摺る相手……か。それ程の強者をメイドとして従属させてるアインズ・ウール・ゴウンはやっぱり只者じゃないな」

 

街の警備として配置されていたアンデッドならゴブタでも余裕で勝てそうだが、その女性ーー見た目は人間に近いが、魔物であるとゴブタは肌で感じたーーはその上か。

 

「その女性もそうですが、ゴブリン5000体の軍団もヤバイと思いますよ。数もそうだが、力量も普通のゴブリンよりも上のようですし侮れないかと」

 

軍事を司るベニマルはその事についても指摘した。ハクロウも頷いている。

確かに、それも中々の脅威だ。数では緑色軍団の方が勝っているが、その実力は如何程か。

 

「戦力についてはわかった。エ・ランテルでポーションに関して有名なバレアレ氏がカルネ村に越したと聞いたんだが、会えたか?」

「バレアレっすか?……ああ!確かンフィーレアさんがバレアレって名乗ってたたっすね。

確かにポーションの生成法をお祖母さんと

研究してるって言ってたっすけど、流石に部外者には見せられないって断られたっす」

 

エンリに紹介された、目元を覆い隠す前髪が特徴の線の細い男。薬草の臭いをプンプンさせたその人は、少し警戒しながらも温厚そうな人で。しかし、確固として揺らがない強い意志で彼の家に立ち入る事は許されなかった。

 

「でも、代わりにポーションは見せてもらえたっすよ。一般的に出回ってるのは青色で、赤いポーションは神の血と呼ばれる伝説の代物らしいっす」

「青色のポーションは街でも売ってるのを見たが、赤色の物があるなんて知らなかったな。原材料に関係してるのか?」

 

青色ってだけでもどんな生成法ならそんな色した物ができあがるんだと思っていたが。疑問を口にした俺に対して、ゴブタは聞いたままを話した。

 

「ングナグとかベベヤモクゴケなんて名前の薬草なんて知らないっすし、見た事もないやつだったっす。でも、青とか赤とかそんな色はしてなかったっすよ。詳しい方法はわかんないっすけど、こっちじゃポーションは薬草のみで作るやつと、鉱物をベースにして錬金術で作った錬金術溶液に魔法を加えて作るやつと、その両方で作るやつがあるみたいっす。魔法で作った方が効果や保存は優れてるらしいっす」

「な、なんかすごい薬草だな……。そうか、作り方がやっぱり違うのか。青のポーションはこっちでも買って鑑定してみたが、低位回復薬よりもやや劣るって感じの性能だったな」

 

街で買ったポーションの入った小瓶を机の上に乗せれば、全員がどれどれと眺めては自分達の知るそれと比べて感心したり首を傾げていた。

 

「そのポーションの製造方法や作業環境、薬草の種類やポーションの詳しい性能はどういったものなのでしょうか!ゴブタ殿、もっと詳しく聞いていないのですか!」

 

ポーションの話題が出てからソワソワしてたべスターが、とうとう席を立って口を開いた。怒涛のように紡がれる追求に、ゴブタはタジタジだ。その勢いはポーションについて熱く語っていたンフィーレアとそっくりだった。やはり、研究に身を費やす者というのはどこも似たような頭の回路をしているようだ。

 

「そ、そんな事言われても自分には分からない話ばっかりなんすから、聞かれても困るっすよ」

「リムル様!次にカルネ村に訪れる際は何卒私も同行したく!」

「あー、その話はまた追々……いや、ちゃんと検討しとくって。大丈夫。だから落ち着け、な?」

 

ポーション作りに携わり、研究者でもあるべスターの興奮しきった声に俺までタジタジになりながらも、手を下げて座るように示した。

興奮冷めやらぬといった風だが、それでも大人しく座り直したべスターから目を離し、ゴブタに話を続けるよう促した。

 

「えーっと、その他は……あ!最近ドワーフの工房もできたみたいっす。此処も同じく中は見せてもらえなかったすけど、ルーンがどうとかチラッと言ってたっすね」

「ドワーフもいたのか?それにルーン文字を扱うとなりゃ、ルーンを刻んだ武器か何かを作ってるのかもな」

 

今度はカイジンが食いついたー!そりゃ同族の上やってる事も似てるし気になるよな〜。

 

「それもとりあえず後でな。ゴブタ、他には?」

「ん〜、それくらいっすかね。人も魔物も一緒に仕事して、笑って、飯を食って、良い雰囲気の村だったっす!」

 

報告は以上だと述べて、ゴブタは席についた。

 

「そうか。部外者だからもっと疎遠に扱われるかと思ったが、村のゴブリンの手合わせが結果的には良い方向へ向いたみたいだな。ゴブタの性格やコミュニケーション力も合わせてよかったんだろう。もしまた派遣する時があったらまたよろしく頼むよ」

「うう〜、情報を聞き出すとか、そういう頭を使う事には向いてないっすから勘弁してほしいんすけど……ジュゲムさんとは同じ同志として、また会いたいっすね」

 

ゴブタは苦笑しながらも、リムル様に任せられるのなら全力でやるっす!と応えてくれた。

 

「よし、それじゃあ次は俺の番だな。エ・ランテルの街だが、外観や街の様子は大画面を見ていた連中なら分かるかもしれないが、改めて映像を見せよう」

 

俺が街を見て回った記憶は予め水晶にコピーさせておいたので、それを会議室の中央にスクリーンとして映し出す。

流れる映像を示しながら、それがどういった物なのか、街で見た魔物は大凡の予想でその種類なんかも説明していく。

 

「マジックアイテム等はランクの低い物しかなかったな。道具や回復薬もそうだ。この世界ではその程度でも良いくらい基準が低いのかもしれんが……」

 

その確認も追々調査しないとな。街の中のアンデッドはそれを考えると異常なまでに強すぎるから、それはちょっと気になるが……。

そう、どうもズレている気がしてならないのだ。この世界の人間や魔物と、魔導王とその配下の者達の差が余りにもデカすぎる。人間と魔物を比べればその差は勿論あるだろう。しかし、ゴブタが見たこの世界の魔物はやはりそこまで強いというわけでもない。相応の強さと見てもいい。例外は魔導王に仕えるメイドの女性と、魔導王が所持していたアイテムから呼び出された魔物達。

 

「この世界の者達と、魔導王達。同じ世界に存在するにも関わらず、魔導王や配下と思われる関係者達はどうにも存在の在り方というか…レベルが違い過ぎる。違和感を覚える程の逸脱者だ」

 

モンスターや人間ーー冒険者や兵力ーーについて、こちらの常識に当て嵌めつつディアブロが補足していく。必ずしも該当するわけではないだろうが、目安として認識するには良いだろう。

この説明により上手く強さの度合いが伝わったのか、周りはなるほどと頷いていた。人間のレベルで考えれば然程脅威ではないかもしれないが、ヒナタの所みたいなAランクオーバーの集団がいないとも限らない。魔物も、魔導国関係者は桁外れだから注意が必要。

 

「明らかに魔素量がそこら辺のモンスターとかけ離れてるからな〜。オーラも駄々漏れだから分かりやすいだろ」

「我々は魔素と認識しておりますが、こちらでは違う捉え方なのかもしれませんね」

 

まぁ、世界が違うのだから認識も常識も違うのはあり得る事だ。順応するにはこちらの常識と磨り合わせて受け入れていく他ない。

 

「そういえば、リムル様。"武技"なる魔法やスキルとは違った戦闘法があると聞きましたが、そちらはどうでしたか?」

「ああ、それか。ベニマルの思った通りあれは"技術(アーツ)"に近いな。いや、ほぼ同じって認識でいい」

 

自由組合で知り合ったミスリルクラスの冒険者・モックナックに見せてもらった"武技"は、主に戦士職の者が使用する所謂戦士の魔法とやらであるらしい。

 

「主に肉体・知覚能力の向上や回避などの咄嗟の補助が一般的だな。"技術(アーツ)"に似た効果の"武技"もあったし」

「ほう、それはそれは。是非とも現地人と手合わせしてみたいものですな」

 

はは……それは難しいかもしれないが、見てみたい気もするな。まず、ハクロウ相手に戦える者がいるかどうかだが。

 

「あとは冒険者についてなんだが……これはディアブロが詳しそうだから、説明頼むな」

「はい、お任せ下さいリムル様」

 

ディアブロにバトンタッチして、俺は一旦口を閉じた。俺の隣に立つディアブロが「それでは、リムル様に代わりこのディアブロがご説明させてもらいますね」と口を開いた。

 

「この世界の冒険者とは、国の法の下にありながらも、国の管理下にない組織であったようです。まぁ、モンスターを倒す力を持つ者が国の戦争の兵力として利用されたら厄介ですし、人々を守る存在が人にその武力を向ける事を危惧した…という経緯からでしょう。簡単に言えば対モンスター用の傭兵ですね」

 

依頼内容としてはモンスターの討伐が主で、要人警護や荷物の運搬、薬草の採取だという。

あっちの世界でも思ったけど、冒険者と聞いたら文字通り"冒険する者"だと最初は思うんだよな。未知を既知とする為に冒険する……そんな、物語の中のような夢の存在。

まぁ実際は名前ばかりで何処も夢のない職業だったというわけかー。

 

「ランクは最低ランクのカッパーからアイアン、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコンと上がっていき、最高位がアダマンタイトとなります」

「金属に準えてるのか。ん?最高がアダマンタイト?金属で一番といったらヒヒイロカネじゃないのか?」

 

ベニマルの質問に、「あ、俺と同じ事を疑問に思ってる奴がいる」と内心呟く。

 

「レベルやアイテムもだいぶ低い世界ですからね、ヒヒイロカネなんて最高品質なものそもそも知らないのでは?」

「なるほど」

 

納得するんだ……。まぁ確かにヒヒイロカネなんて早々お目にかかれる代物じゃないしな。

なら、アダマンタイトが精々か。

 

「冒険者組合で見かけたのはミスリル級のチーム虹、その中のモックナックって奴だな。

アダマンタイト級のチーム漆黒、戦士モモンにも会ってみたかったが、都合がつかなかった」

 

まぁ、忙しいなら仕方ないよな。会う機会は今後あるかもしれないし。

 

「現段階では街から出ていった冒険者も多くて仕事をしてる冒険者も、そもそも依頼がないからだいぶ閑散としてたな」

「そうですね。しかし、それも人間側にしてみれば仕方ない事ですが」

 

なんせ人々を守るという点はこの国には人間より遥かに勝るアンデッドの兵士が警護している。冒険者の役割は殆ど失われたも同然である。

 

「ま、冒険者の衰退に関しては今後の魔導王の対応に期待するしかないな」

 

だが、アダマンタイト級冒険者を保有しているし、冒険者達に対しても冷遇するようなことはしまい。

 

「街で得たのはこれくらいかな。国ができた経緯やその際起こった王国軍約18万にも及ぶ大虐殺からとんだ悪逆非道な大魔王かと思っていたが、統治に関してはそこまで残虐ではないらしい」

「ははっ、魔王に進化する際に2万人、帝国軍との戦争で100万人近くその魂を刈り取った正真正銘の魔王が何を言うんだか」

 

ベニマルが呆れたように言うが、それは語弊だ。確かにファムルス兵は直接俺が手を下したが、帝国軍は俺は魂を回収しただけで手は出していない。直接にはね。そこらへん結構重要よ?

 

「んんっ。まぁ、魔導国については王やその側近に関してはまだ未確認情報が多いから引き続きディアブロに任せるとして……何か質問ある奴?」

「質問……というわけではありませんが。リムル様、少しよろしいでしょうか?」

 

すっ、と綺麗に腕を上げたのは悪魔三人娘のうちの一人・テスタロッサだった。

構わない、と許可を出せば嬉しそうに微笑んで椅子から立ち上がった。

 

「私達からもリムル様に報告したい事がございます」

 

テスタロッサが左右のカレラとウルティマにも視線をやれば、二人も真剣な表情で頷く。

続きを促せば、代表してテスタロッサが報告するようだった。

ディアブロには魔導国やそれに関する事を優先的に調べてもらっている為、彼女たちはその周辺諸国ーーリ・エスティーゼ王国やバハルス帝国、スレイン法国ーーをそれぞれ調べてもらっていたのだ。

その報告を聞いている中で、いくつか興味深い事がいくつかあった。

 

「ふーん、王国じゃあ冒険者が主流だが、帝国じゃワーカーとかいう野良冒険者が多いのか」

 

組合に属すると色々と制約が課せられる為、それを厭った者達の通称をワーカーというらしい。やっていることは冒険者とほぼ変わらないらしいが、先程も言ったように制約がかからない分表じゃ扱われない裏の依頼や盗賊紛いな事もやったりするらしい。報酬目当てが多く、その内容については是非を問わない者も多いという。

 

「そっちも気になるな」

「それでしたら、ひとつご提案が」

 

テスタロッサの言葉に、カレラとウルティマが立ち上がる。

 

「リムル様、ボクがワーカーになって実情やついでに帝国についても調べてくるよ」

 

あ、ちなみにメンバーはヴェイロンとゾンダを連れていくよ。ボク一人でも問題ないけど、チームを組んでやった方がいいみたいだし。まあ、世話役程度だけどね。等と言っているが、そもそも単独行動を許可するつもりはない。事の他この三人なら尚更だ。

 

「私は闘技場の方に興味があるので、そちらに参加する。我が君、よろしいだろうか?」

「ん?闘技場?そんなものまであるのか、帝国には」

 

詳しく説明してくれるカレラの言葉を聞きながら、円形闘技場と似たようなものかと納得する。好戦的なカレラにとって、この世界の者と戦える公平な場というものに興味があるのだろう。暴走しないかだけが心配だが。

同行する悪魔達じゃまずストッパーにはならないだろうが、連絡をくれれば対応できる(ディアブロが)

 

⌈テスタロッサはどうする?お前も帝国で活動するか?」

⌈いえ、帝国は二人に任せようと思います。私は王国の方を調査しようかと。魔導国の件で勢力は衰えていますが、王族や貴族の一部には何やら動きがあるようですので」

 

期間限定の異世界滞在、長期化する問題ならさして関係ないとは思うが、何がどう影響してくるかわからない。念のため観察していた方が良いだろうとの事だった。

 

⌈そうだな。テンペストから近いのはその3ヶ国だ。万が一が起こらないよう見ててくれ」

 

帝国にカレラとウルティマ、王国にテスタロッサ。後はスレイン法国も気になるのだが、人間主義の国のようだしいくら人に近い見た目の魔物を送るにしても危険があるな。

どうしたものか、と議題にするのを躊躇っているとふいにヒナタと目があった。彼女はこちらに向いていた視線を外すと、すっとその白い手を上に挙げた。

 

⌈私はスレイン法国を見てくるわ」

 

ヒナタ曰く、スレイン法国は在り方が西方聖協会と似ているし、法国が擁する六色聖典は強者揃いの集団だとか。確かに、元聖騎士団長としては自分達の所との違いを詳しく知りたいというのも頷ける。

……ただ単に、強者と手合わせしてみたい、なんてことは…ないよな。冷静沈着なヒナタに限って、ナイナイ。

本当は一緒に冒険者をやらないか誘いたかったのだが、仕方ないか。ただ、流石に一人は危険なので複数で行動するように提案する。

 

⌈なら、子供達を連れていくわ。いい加減鬱憤が溜まっているでしょうし」

 

そんな息抜きついでに、みたいな軽い感じで彼らを連れていかれても困るのだが……。まあ、彼らも昔に比べて強くなった。ずっと過保護のように街に留めていても彼らは良しとしないだろう。

 

⌈ヒナタが一緒なら任せられるな。あいつらも強くなったし、そんじょそこらの魔物や人間には負けないだろう」

⌈ええ、良い機会だからこの異世界を見聞させてくるわ。成長に繋がるといいのだけど」

 

彼らはまだまだ、どんどん成長して強くなる。この経験も、きっと彼らの良い糧になるだろう。

 

⌈うん、粗方こちらの動きは決まったな。じゃあ最後に」

 

むしろ此処からが俺にとっては本題になる。ちら、と先程からまだかまだかと落ち着きなく煩い視線を向けてくる二人に目線をやり微かに笑う。

 

⌈ちょっと冒険者になってくる!」

 

元気に、そして笑顔で告げた言葉の内容に俺の周りは驚いたような声を上げ、そして仕方ないなぁといった表情で溜め息をついた。

 




次回!リムル+愉快な仲間達が冒険者になります。まぁしかしあの面子で問題が起きない筈もなく………。

追記:文章を一部改変しました。途中までカレラで書いていたので……アゲーラ、エスプリ→ヴェイロン、ゾンダとしました。ご指摘ありがとうございました。

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