ずらりと俺を囲むようにして席についた皆を見渡して、俺はヴェルドラ達が引き起こした今回の騒動の経緯を話す。
「事の経緯はこんな所か。無駄に魔素量の多いこいつらが使用したから、その膨大なエネルギーの暴発に巻き込まれてテンペストの街及びその周辺のものも巻き込まれる形で転移してしまった。転移で街や迷宮内に何か問題や影響は出てないか?」
「街の様子ですが、破損やズレも起きていないようです。建物や設備の使用などに不具合が起こるなども起きていないようですし、問題ないかと。普段通りの生活、営業もできるでしょう」
「食料庫や栽培地区もリリナ殿に頼んで確認してもらっています。全てはまだ確認できていませんが、今の所影響はでていませんね。在庫状況的にテンペストの街全体を養えるだけの量はありますよ。少なく見積もっても数年は保つでしょう」
リグルドとミョルマイルくんの報告にほっとひと息をつく。
「問題ないみたいでよかった。ラミリス、迷宮の方はどうだ?」
「トレイニーちゃんやベレッタに階層全体を確認してもらったけど、いつもと変わりないよ。発生する魔物も異常や影響はでてないみたい」
ベスターからも研究施設等も問題なく稼働しているとの報告が。なるほど、こちらも通常運営と。さて、残るは……。
「街の外の様子はどうだ?ソウエイ」
「周辺を数キロほど探索しましたが、何もありませんでした」
ん?何も?ソウエイの報告に首を傾げ、続きを聞く。
「周辺一帯草原です。村や街所か、魔物や人間などの知的生命体の確認もできませんでした。範囲を更に広げれば、あるいは……」
ええー……草原になってるの?森じゃなく?
此処が異世界であるという決定打になったわけだが、問題は減らない。
「そうか……何も見つからなかったか。そうなると外に出るのは慎重に成らざるを得ないな」
「何故だ?普通に出歩けばいいだろう。そうすればいずれ何か見つかる」
ミリムが疑問を口に出すが、そういう事じゃない。はぁ、と俺は溜息を零すとミリムの方に向き、わかりやすく説明する。
「もし、この異世界が人間種のみだったらどうする。俺達は異形種だ、見た事もないモンスターに遭遇したらいくら俺達が友好を示した所で警戒されるし、最悪討伐対象になる。この世界の者がどの程度の力を持ってるかわからない以上、迂闊な事はできない」
そう言えば、ミリムも理解できたのか口をつぐんだ。そう、たかが人間の力など……と侮ってはいけないのだ。此処は異世界、俺達の常識が通じない世界なのだから。
「まぁ、行動しないことには何も始まらない。とりあえず引き続きソウエイ達
「「了解しました」」
とりあえずの方針を決め、追加の情報次第では街の外に出る事も検討する。
「さて、次は元の世界への帰り方なんだが……」
これに関しては既に"可能"だとシエル先生からお墨付きを頂いているのだが、詳しい事を聞こう。
《魔法陣の解析及び元の世界へ座標の特定は既に完了しております。また、あちらとこちらの時間の流れの違いも考慮して再計算し、転移した時刻の空間に門を繋げる事も可能です。それに必要な魔素量も
完璧じゃないですか!俺の懸念を全て解決してくれるシエル先生は流石としか言いようがない。
《これくらい当然です》
あ、はい。俺はシエルから教えて貰った事を皆に話す。
「先程も言った通り、帰るのは可能だ。俺達のいた世界へと門を繋げ、広範囲型の陣を展開させる。エネルギーの暴発で街や周囲も巻き込まれる形となったが、今回はちゃんと計算し直して全て元の場所・時間に戻せる。その為の魔素は、原因であるヴェルドラに負担させる」
言い出しっぺはヴェルドラだしな。そう言えば、ヴェルドラは呻きながらも自分達が仕出かした事の重大さを理解している為、文句は出さずに了承した。
「とりあえず、俺からは以上かな。何か質問ある奴〜?」
ちらほらと上がる声に答えていき、大凡の問題が解決した所で会議が終わりに近づく。
「なら、この事を早く街の人達に連絡して……」
「あの〜、その事なんだけど……」
さて締めくくろうかという所で、身を小さくしていた(元々小さ…いやなんでもない)ラミリスがそろりと手を上げた。
「なんだ?」
「もし、もしもだよ?この世界がそこまで脅威じゃなくて、この世界の住民と交流できそうなら、すぐ帰るんじゃなくて少し留まってみるのもいいんじゃないかな〜と思うわけですよ、はい」
「ほぉ〜。その心は?」
「異文化コミュニケーションがしたいです!」
「素直でよろしい……とでも言うと思ったか!」
人差し指をつつき合わせてもじもじしながら話すラミリスだが、内容はアレだ。こいつ懲りてないな。
「だってだって!この世界の生態とかいたら魔物の種類とかあったら魔法の構造も!知りたい、見たい、使ってみたい!」
「我も!我も知りたいぞ」
「ワタシもだ!」
まだ魔物がいるかも魔法が存在するかもわからないのに、こいつらは……。まぁ、好奇心旺盛のこいつらほどではないが、俺も気になるところではあるな。
「すぐ帰ってしまうのでは勿体無い!我らの世界にないものがこの世界にきっとある。それを学び、自国で応用するというのも立派な行いだとは思わないか?リムル」
「そうだぞリムル!ずっと街にいたのでは皆も退屈するはずだ、この世界で発見した事で皆を楽しませてやろう!」
「いやだから、まだ何も見つかってないって……ああもう、わかったわかった。発表はもう少しこの世界の事がわかってからにする。異文化コミュニケーションについても報告次第で検討する。これでいいな?」
まったく、と呆れたように顔に手をやりながら言えば、ぱあっと顔を輝かせた3人が手を上げて喜んだ。周りの連中も仕方ないなぁといった雰囲気だ。
「ということで、頼んだな」
偵察隊のソウエイ達の方を向けば、心得たと言わんばかりに頷いてくれた。
「(さて、どう転ぶか……)」
不安も確かにある、しかしそれ以上に未知への喜びが勝っていることは皆には内緒だ。
皆を巻き込んでしまったとか思いながらも、最近(原作終了後)は軌道に乗って自分から何かやる事がなかったら、新しい出来事に内心喜びとやる気を見せてるリムル様って感じです。