偵察隊であるソウエイ達が帰ってきて、その結果から姿形こそ違うがゴブリンやオークなどの魔物が発見され、また森を抜けた先に人間と魔物が共存する村も見つけた。
なんだか、初めてリグル達と出会った村を思い出すな。あの出会いから始まって、今や多くの魔物と人間が共存するテンペストという国にまで発展した。
その報告を聞いて、俺は是非ともその村に行ってみたいと強く思った。
「その村から少し離れた所にエ・ランテルという城塞都市……元リ・エスティーゼ王国、現在はアインズ・ウール・ゴウン魔導国という国の領地となっていますが、街もありました」
「待て待て待て!さらっと国名を出すな」
普通に話しているが、こっちは国所か地理すら把握してないんだぞ。
慌てて説明を止めれば、ソウエイは謝罪した後に懐から地図を取り出して机上に広げた。それを皆で覗き込み、だいたいの周辺国家を把握する。
「現在、手下の悪魔達に各方面に向かわせて調査させています。この地図から、テンペストの街が転移したのはアゼルリシア山脈の麓の……この辺りですかね。南にトブの大森林、抜けた先にカルネ村とエ・ランテルの街があります。森を挟んだ西側がリ・エスティーゼ王国、東側がバハルス帝国、さらに南下した所にスレイン法国があります」
かなり調べてきたらしい(扱き使われた悪魔達はご苦労様だ)ディアブロの報告でこの世界の事が少し分かってきた。
王国、帝国、法国か……。他にもアーグランド評議国などもあるらしい。少し自分達の世界とも似通っているな。
「へぇ、法国……」
おや?やはり自国と似通った国には興味あるのか。会議に呼んだヒナタが静観の姿勢から少しだけ反応した。
「う〜ん、見事に二国の間に位置するなぁ。街の様子を見るならそれぞれの都市が近いが……俺としては、魔導国のエ・ランテルやカルネ村が気になるな」
魔物が王として支配する街エ・ランテルと、人間と魔物が共存するカルネ村。どちらも俺たちと似通っており、興味がある。
「カルネ村は、村としてはゲルド達を引き入れて街の開拓をし始めた頃に近いかと。主にゴブリンが中心となって人間と協力関係を築いてるようです。仲も良好のように見られました。魔物だからと敵視する事はないかと」
「エ・ランテルは…そうですね、ブルムンド王国に近いでしょうか?魔物が支配する街として逃げ出す人間もいるみたいで少し静かですが、中々に繁栄しているようですし、軍事や行政機関も確立しています。あちらとの違いも含めて現在調査中ですが、冒険者組合も存在しています。住民は人間種が多いですが、騎士風のアンデッドも街に複数体見られました。また、こちらとあちらでは姿形が違う等の差が見られますので、正確な種族は明言できませんが……魔導王と名乗る魔物はスケルトン種のアンデッドのようです」
スケルトン…アダルマンのような魔物なのだろうか?騎士風のアンデッドはもしかしたら
あちらの世界では確認されていない魔物が存在する可能性もあるのか……能力も未知だし、注意しないといけないな。
「冒険者組合かぁ〜」
これも非常に興味がある。一時期冒険者として登録もしたし、情報集めの一環として冒険者になるのもありだな。楽しそうだ。
「よし、決まりだな。視察に行くならカルネ村とエ・ランテルだな。他国については引き続き調査をしてくれ。都市や街に出向くとなると、誰に行ってもらうかチームを編成しないとだな……」
まず前提条件として、人間または人間に近い見た目をしている者が適任だ。この場合角が目立つシオン達は不可だな。
「そんな!リムル様と一緒の異世界デートが……!」
いやシオン、お前そんなこと考えてたの?観光じゃないんだから……。
「まぁ確かに、フードで隠そうにも角はなぁ〜」
「幻術で誤魔化すという手もありますが……万が一見破られた時の事を考えますとね」
ベニマルとシュナも残念そうに溜め息をつく。
テンペストの大半が不可になるが、街には協力者であるヒナタを始めとした子供達や、ミョルマイル君達人間もいるし、ベスター達ドワーフも変装すれば問題ないだろう。ディアブロ達悪魔も同様だ。
「カルネ村はゴブリン中心だったな……ならゴブタを責任者としたホブゴブリン数名の一団と、問題ないようなら後続に子供達に交流を頼んでみるか」
「まぁ、あの子達の実力ならたいていのことは問題ないでしょうけど……この世界の強さの基準を確認してからよ」
「それは勿論だ。ゴブタ達もいざとなったら
ヒナタは少し難色を示したが、子供達の実力は信頼しているため反対はしなかった。
異世界交流は子供達にとっても良い刺激になるだろうし、学びの場となる。先ずはゴブタ達に友好関係を示すよう頑張ってもらうとしよう。
「編成はゴブタに任せる。しっかりやれよ」
「了解っす!」
こう見えて愛嬌あるし、自然と仲良くなるコミュニケーション能力もあるから、きっと大丈夫だろう。
「次に、エ・ランテルには俺が行く。ヒナタもよかったら一緒に行かないか?」
「………まぁ、いいわよ。私も魔物が統べる街というのが気になるし」
貴方と一緒に行くの?みたいなちょっと嫌そうに眉間にシワを寄せて言わないでくれますかね。地味に傷つくんですが。
「リムル!我も!我も行きたいぞ!」
「ワタシもだ!ヒトに近い見た目だから良いだろう?」
「ずるい二人共!ねぇリムル、アタシ小さいから隠れてればバレないわよね?こっそりついていっちゃダメ?」
ほら絶対そうくると思ったー。この3人は。
だがしかし、こいつらが街に行くと必ず騒ぎを起こす。断言できるね。好奇心旺盛所か好奇心の塊だ、未知の世界にはしゃいで何かしらやらかしそうだ。
面倒事は前回の異世界での尻拭いで懲り懲りだ。だが、思考がお子様なこいつらに真正面から駄目だと言っても無駄だ。ならばここは何時もの如くうまいこと言いくるめてしまえばいい。
「駄目に決まってるだろ。念の為侵入を防ぐ結界や不可視化、探知阻害も施して街を守ってるけど、どんな方法でそれが破られるかも、侵入してくるかもわからないんだ。その場合、俺がいない時に万が一があっては困る。ベニマル達もいるが、言った通りこの世界は未知だ。どんな強者がいるとも限らない。そんな時、圧倒的な力を誇るミリムやヴェルドラがいれば安心してこの街を任せられると、そう俺は信頼しているんだ。俺が最も大事にしているこの街を、お前達が居て守ってくれるというのなら、これほど頼もしいことはない」
言いくるめというか本当の事だ。実際ヴェルドラとミリムに敵う存在なんていないだろう。もしいたとしたらそれこそ即座に元の世界に帰還しなければならないほどヤバイことだ。
「う、うむ。確かに我ら竜種に敵う存在などいるはずもない。我がいれば百人力というやつよな、ガハハッ!」
「ま、まぁリムルがそこまでワタシ達を信頼し、頼りにしているのだ。それに応えねばマブダチの名が廃るな!」
「任せてよリムル!リムルがいなくても、このアタシがちゃーんと街を守ってみせるからさ!」
チョロい。チョロすぎる。コロッコロに転がされている。時々こいつらのチョロさに大丈夫か?と心配になる。まぁ、俺にとっては都合が良いため全然構わないのだが。……なんてな。
「ありがとう!お前達が残ってくれるなら、俺も安心して調査に行けるよ。なに、ずっと居残りになんてさせないさ。情報が集まり次第、お前達が楽しみしてる異文化コミュニケーションをやろうじゃないか!」
「おおっ!期待しているぞ、リムル」
「外の世界がどんなものか、たくさん話してくれよ」
「なんなら大画面で皆で見守ろうよ!」
外の世界に期待を膨らませ、魔法で見たいだのやれ準備だの楽しそうだが、まあこれくらいなら良いだろう。皆の判断も欲しい所だしな。
「じゃあ、街の調査には俺とヒナタ、護衛にディアブロな。念の為ソウエイとランガも影に潜んでてくれ。コンセプトは遠い国から観光に来た姉妹のお嬢様とその執事!」
「……ちょっと待って、なにそれ」
「お任せ下さいませリムル様!このディアブロ、完璧な執事として必ずやリムル様のご期待に応えてみせます!」
「まぁ元から執事みたいなもんだけどなー。シュナ、俺とヒナタの分の服を適当に見繕ってくれ」
「かしこまりました。このシュナにお任せあれ。素敵なお嬢様に仕立ててみせますわ」
「シュナ様、是非私にも手伝わせて下さい!」
「だから……!」
ヒナタが何やら言ってるが、聞ーこえない。シュナ達も楽しそうだし、ヴェルドラ達は
「ま、気楽に行こうぜ」
「ふざけないで」
ううん、冷たい眼差しで睨まれてしまった。そんなヒナタだが、結局はシュナ達が持ってきた衣装に心惹かれてあれこれと試着していたのだから、悪いものでもないだろう。
こうして、不安を払拭したテンペストはいつものように賑やかさを取り戻したのであった。
転スラ世界との比較は賛否両論あると思いますが、あくまで私の中で近いかなとイメージしたのを書いてますのであしからず。
次回からオバロ側の視点も入ります。