魔導王と魔王   作:波美

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ゴブタ一行inカルネ村


外に出たらいろいろ注目を浴びた件
◯2-1 出立


さて、出来得る限りの対策を敷き防御壁を築いた。最強とも言えるヴェルドラとミリムも残した。ベニマル達守護王もいる。この世界にどれ程の強者がいるかはわからないが、こいつらなら街を、皆を守ってくれると信じている。

 

「それじゃあ行ってくるな。何かあったらすぐに連絡しろよ」

「クハハハ!何が来ようともこのヴェルドラ様が返り討ちにしてくれるわ!」

 

自信過剰に高笑いしてるヴェルドラは過去を振り返って物を言ってほしいものだ。俺は溜め息をつくとベニマルの方に重ねて頼んだ。

 

「心配性だなぁ、リムル様は。いや、慎重なのは良い事だが。だが大丈夫だ、街の事は俺達やミリム様達に任せてくれ。リムル様こそお気をつけて」

 

ベニマルは苦笑した後に真剣な表情で俺を心配してくれた。ディアブロが側にいるから大丈夫だと思っていても、大切な主人を未開の地に送り出すのは不安なようだ。

 

「まぁ、きっと貴方なら大丈夫だと確信しておりますが」

「もちろんだ。それじゃあ皆!行ってくる」

 

最後には笑ってくれた守護者達や街の皆に見送られて、俺とヒナタ、ディアブロは街の外へと足を踏み出した。

 

 

 

* * *

 

 

 

リムル達と同じくして街から外に出たゴブタ率いるゴブリン部隊は、スターウルフの背に乗ってトブの大森林を駆け抜けてカルネ村の近くまでやってきていた。

 

「あれがカルネ村っすか。立派な囲いで固めてるっすね〜」

「村にしてはやけに堅牢でやすね。まるで砦のようでやす」

「まぁ、魔物が棲む森のすぐ側、警戒してるんだろ」

 

ゴブタやその部下であるゴブチ達がそう評価する。さて、あとはどうやって村に入れてもらうのか。

 

「うう〜ん、自分はあんまり交渉事とかそういう頭を使うのには向いてないんすけどね〜」

「まぁまぁ、リムル様も気負わず普段通りに接すれば良いと仰ってたじゃないでやすか」

「でも、なるべく警戒されないよう先ずは下手に……て」

 

いろいろと頭を悩ませるが、ここでぐちぐちと言い合っていても始まらない。

相手は自分達と同じゴブリンーー正確に言えば自分達はホブゴブリンだがーーと人間だ。そう、街にいるのと何ら変らない……はず。

 

「とりあえず行くっすよ!まずは挨拶っす」

 

見たことのないモンスターが一緒では警戒されてしまうかもしれないので、スターウルフ達は影に潜ってもらい、ゴブタ達だけで見上げる程高い頑丈な門扉に近づいた。すると、ゴブタ達に気づいたのか、物見やぐらから矢を番えたゴブリンが顔を出した。

 

「何者だ!」

「自分はホブゴブリンのゴブタっす。カルネ村の噂を聞いてやって来たっす。よければ中に入れてくれませんっすか?」

 

しっかりとした口調で話すのも良いが、リムルからはこの口調の方がお前らしいし、気さくな方が警戒心を抱かれないだろうと言葉を貰っている。

ややあって、門が僅かに開かれて中から屈強な体躯のゴブリンが1人出てきた。

 

「(え?ゴブリンっすよね?なんでこんな強そうなんすか?俺らの頃と全然違うっす)」

 

正しく戦士といった佇まいだ。体躯や身なりが貧相だったゴブリン時代の自分達とは大違いだ。その余りの差にゴブタは過去の自分を嘆きたくなる。

 

「姐さんの判断で、お前たちを村に入れてやる。だが、他所モンは他所モンだ。妙な真似はするんじゃねぇぞ」

「もちろんっすよ」

 

そうして、ジュゲムと名乗るーー名持ちの魔物( ネームドモンスター)かと思ったら、こちらの世界では普通に魔物には名前があるらしい。別に名前の有無で強さや進化に関係するといったことはないようだーーゴブリンに案内されて、この村の村長であり使える主人……エンリ・エモットに会わせてもらった。

 

「ジュゲムさん、この人達が村の外から来たゴブリンさん?」

「はじめましてっす。自分はゴブタっす。こっちが仲間のゴブチとゴブト、双子の兄妹のゴブツとゴブテっす。あと、自分達はゴブリンじゃなくてホブゴブリンっすよ」

 

ゴブタが代表して挨拶をし、副官のゴブト達部下も続いてそれぞれ頭を下げた。

 

「ホブゴブリンって、確かアーグがそうでしたよね?」

「はい。ゴブリンより上位のモンスターですね。しかし、トブの大森林にアーグ以外のホブゴブリンがいるなんて聞いたことねぇが……」

 

首を傾げたエンリに、ジュゲムがそう説明する。しかし、ジュゲムも腑に落ちないと言わんばかりにゴブタ達を訝しげに睨んだ。

 

「あーっと、自分達はトブの大森林の北の端っこ、山脈に近い場所で暮らしてたっすから」

 

場所のこと話しても大丈夫か?というゴブチから視線が向けられるが、このくらいなら大丈夫だろう……たぶん。

リムルからはあまり自分達の情報を渡さずにあちらの情報を上手く引き出しつつ友好を示せ…なんて無理難題を言われている。そういった駆け引きは頭の回る人に任せてほしいというのに。

だからゴブタには、自分ができる限りの事を、考えられる範囲で話を進めないといけない。

 

「お前ぇさんたちの所はホブゴブリンの集団なのか?」

「はいっす。この村の事を聞いた主人から、是非とも自分達とも良い関係性を築いてほしいと使いを頼まれたんす」

 

しかし、ゴブタはボロボロとこちらの情報を零していた。質問されたから答えただけだろうが、リムルが知れば頭を抱えたかもしれない。まぁ、魔物は嘘をつけない生き物だ。嘘ではないが真実とも言えない事を話すのが精一杯だろう。

この時点で既にこちらに知られず情報を集める程の情報収集力を持つ事、全員がホブゴブリンである事、そして同じか不明だが仕える主人がいる事を明かしてしまっていた。……それをジュゲムが考えて質問したかは分からないが。

 

「ゴブリンやオーガがいるとは知ってたっすが、本当に人間と共存して村を開拓してるとは思わなかったっす」

「塀や堀も随分立派なものでやしたね」

「ジュゲムさんや、ゴウン様の力添えがあってこそです。ただの村娘だった私が、今や将軍なんて呼ばれて、村長にまで格上げされたのには驚きですけどね」

 

人生何があるかわからないものだ、とエンリは苦笑した。

 

「将軍ってことは、ジュゲムさん達以外にも配下を纏めてるってことっすか?」

「ジュゲムさん達も、元はゴウン様から頂いた角笛……ええと、ゴブリン将軍の角笛っていうアイテムなんだけど、それを吹いたら現れて。そして、この前の王国兵が来たときにもう一度吹いたら、更に増えたの。あの時戦ったのは5000体?くらいだったかな?」

 

5000⁉とゴブタ達は驚きに目を見開いた。なんという数のゴブリン軍団だ。

 

「ご、五千体……っすか。それはまた……すごいっすね」

 

あまりの規模にゴブタもその部下達も乾いた笑いを零した。冷や汗だらっだらである。

ジュゲム達を見れば、ゴブリンであった自分達よりも屈強でその強さもあの頃の自分達よりも上だと確信できる。それが5000体以上となると侮れないものとなる。

 

「(どうしたらいいっすか⁉)」

「(自分に聞かれても困りやす!)」

「(副官なら何か良い案だしてくれっす!)」

「(無茶言わんで下さい!)」

 

ゴブタとゴブチが小声で言い争う中、双子のゴブツ達は顔を見合わせて揃って手を上げた。

 

「ゴブタ兄ィとジュゲムさん、どっちが強いかな?」

「勝負してほしい」

「「勝負?」」

 

突然の申込みにエンリとジュゲムは目を瞬かせた。

 

「お、おい。いきなりそんな事言って、相手に失礼でやすよ」

「そうっすよ!リ…あの人から友好関係を築くよう穏便にやれって言われたっすよ⁉」

 

目を剥いたゴブチ達が二人を宥め、先の発言を撤回しようとする。しかし、ゴブタの発した言葉にジュゲムはすっと目を眇めた。

 

「友好関係、ねぇ。ずっと思ってやしたが、どうやらお前ぇさん達はエンリの姐さんやゴウン様を舐めてるようにしか聞こえないんだがよ」

「い、いや!そんなつもりは……!」

 

まずい、とゴブタは冷や汗を垂らした。確かに、この状況を自分達に置き換えてみれば侮られていると取られても無理もない。

国が出来た当初も、他部族が挨拶に来る中こういった連中もいたものだ。短気なシオンや静かに激怒するソウエイなどの過激派に比べれば、このジュゲム達の対応はまだ優しいものだろう。

 

「じ、自分たちは街の外に出るのは初めてでして!噂に聞いちゃいましたが、殆ど知らないも同然なんすよ!」

 

だから不快に思わせたり、失礼な事を言って申し訳なかったとゴブタは慌てて謝った。

 

「カルネ村を知っていて、ゴウン様の事を知らないのは腑に落ちないが……まぁいいだろう。それで、戦うのはお前ぇさん一人か?」

「へ⁉ほ、本気で勝負するんすか⁉」

 

流れたと思ったのに、どうやら受け取られてしまったらしい。ゴブタは慌てたが、ジュゲムはなんて事ない顔だ。

 

「俺達より上位種のホブゴブリンの実力ってものが気になるしな。力を知るには手合わせするのが丁度いい」

 

ジュゲムはやる気だ。エンリも急な展開に困惑気味だが、周りのゴブリンに説得されて了承した。

 

「(ええ〜。何でこんなことになるんすか〜)」

 

ゴブタはほとほと困り果てた。しかし、この状況で引き下がるなんてことは相手方も許さないだろう。

 

「(手の内を見せるのはよくないから、ランガを呼んで同一化はマズイっすよね。それに、リムル様に何かあったと伝わるようなものっす)」

 

となると、クロベエ作の小太刀で切り抜けるしかない。しかし、自分はあのハクロウの鬼のような鍛錬を乗り越えたのだ、きっとあれに比べればマシだろう。

それに、相手の実力を測るのも、こちらの力を示すのもこの手合わせはうってつけだ。ゴブツ達が言い出した時はなんて事をしてくれたんだと思ったが、考え方を変えれば確かに良い案かもしれない。そう切り替えて、ゴブタは手合わせを受け入れた。

家から出て、村の中央の広場へと移動する。話を聞きつけたのか、仕事の手を止めた村人やオーガ達も集まってきた。

 

「「ゴブタ兄ィー!がんばれー!」」

「ゴブタさーん、負けるなっすー!」

「負けたら主やハクロウ殿に言い付けやすよー」

 

双子とゴブトの声援は良い、しかし副長のそれは本気でやめてほしい。あのジジイに知られたら待っているのは地獄だ。

 

「それでは、カルネ村ゴブリン代表ジュゲムさんと、ホブゴブリンの村から来たゴブタさんによる手合わせを始めます!二人とも、準備はいい?」

 

周りの熱狂に煽られたのか、意外とノッてきたエンリが二人の間に立つ。ジュゲムとゴブタも頷き、そして試合の火蓋は切って落とされた。




いきなり戦闘ー。でも、戦ったからこそわかる相手の実力や友好ってあると思うんですよね。
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