ディアブロが案内したのはこの区画にある広場の中でも最も広い中央広場だ。
ちょうど昼頃であるし、幾人もの露天商が商品を店頭に並べ、老いも若いも関係なく雑多な人混みで溢れ、とても賑やかな活気に満ち溢れて……いるであろうそこは、今はそんな活気はなく静けさに包まれていた。笑い声や喜びは消え去り、何処か陰鬱とした雰囲気を漂わせている。ちらほら見える街の人の顔も同様にどこか暗かった。
リムルはその光景を残念に思った。嘗ての活気を予想できるだけに、尚更。
「リリムお嬢様が気に病むことは御座いません。此処はあの街とは違います。確かに在り方は似ているかもしれませんが、その過程も、統治者も違う以上当然その結果も変わります」
「………ええ、そうですね」
そうだ、此処は異世界。この街は俺達が目指したテンペストの街ではない。薄情かもしれないが、この世界の者ではない俺が憐れむべきではないだろう。したところで、何も変えてやれないのだから。干渉すべきではない。どこで歪みが生まれるかわかったもんじゃないしな。……前回の一件は、俺も少し反省しているのだ。
少し暗くなってしまった雰囲気を払拭させるように、執事服を優美に揺らして目の前に立ったディアブロは、ガイドマン宜しくにこやかな笑みを浮かべて口を開いた。
「こちらの中央広場では食材や生活用品から冒険者向けのアイテムなどを販売する露店が並んでおります。……現在は店を畳んで外に逃げ出した商人もおりますがね。ああ、こちらが
「(こっちの世界のアイテムか。はてさてどんな物なのやら)」
並んでいるのは主に武具などの装備品で、ガントレットやアーマーリングなどが置いてあった。店主に許可を貰ってからひとつ手に取って、そのままアイテムの解析を行う。
《
まぁ、一般的な武器はそうだよな。普通の冒険者でも良くて
「……あまり目ぼしいものはないわね」
ヒナタも少しがっかりしたような声音で呟くと、もう用は済んだとばかりに踵を返した。
「すみません、ご主人。私達、今日此処に来たばかりで。何かこの街で有名な店や、物とかご存知ありません?」
ヒナタの態度を詫びつつ、この街について聞いてみた。店主は気にするなと笑って手を振りながら快く話してくれた。
「他国からの観光客かい?わざわざこんな魔物の街に……いや、聞かなかったことにしてくれ。そうだなぁ、前はポーション作りで有名なバレアレ氏がいたんだが、カルネ村に越しちまったし」
カルネ村……ゴブタ達に調査を頼んだ所だ。ポーション作りで有名とは、こっちも気になるな。製造方法や効果など、比べて検証したい。
帰った後の会議で話題に出そう。もしかしたらゴブタ達が調べてくれてるかもしれないし。
「(魔法もそうだけど、ポーションの件も要調査案件、と)その方のポーションはもう街にはないのでしょうか?」
「いや、定期的に卸しにきてるからポーションを扱ってる店に行けば置いてあると思うよ。まぁ…その店も、残ってればの話だがね」
店主は苦笑いして答えてくれた。街の地図を見せて、どの辺りに店があるかを聞いておく。後で探してみよう。
「ああ、冒険者組合にはいったかい?ほら、あそこ。あの建物がそうだ。あそこにはこの街の英雄、最高峰のアダマンタイト級冒険者の漆黒のモモン様がいらっしゃる」
「いいえ、まだ。この国の冒険者組合には興味があったんですの。モモン様、ですか。英雄と呼ばれる程とは、それは素晴らしい御仁なのでしょうね」
「ああ!あの人がいるからこそ、この街は何とかやっていけてるのさ。正直、モモン様がいなければこんな魔物が彷徨く街、逃げ出してたかもしれないな。だが、この店は代々冒険者用の武器屋として在ったし、今更この街を捨てて店を手放すのもなぁ」
毒を喰らわば皿まで、この街と運命を共にするのも、この店を先祖から引き継いだ役目だと店主の男は語った。
「そうですか。聞いて回った話では、魔導王陛下は街の住民に非道を為さる方ではないようですし、自分の目で見極めるのは何より大切だと思います。話して下さってありがとうございます。それでは、ご機嫌よう」
頭を下げた俺に、店主も微笑んで手を降ってくれた。店の外で待っていたヒナタと合流し、いよいよ俺は冒険者組合へと向かったのだった。
アイテム的にはユグドラシル由来の物があるナザリック側のが上だと思うんですよね。鑑定したらリムル様もびっくりしそう。