魔導王と魔王   作:波美

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強さの基準とは……。クロスオーバーさせると難しくなる案件のひとつですね。


◯2-4 ジュゲムとの手合わせ

 

友好関係を築くために訪れたカルネ村で、突如始まった村人ーー"人"ではなくゴブリンだがーージュゲムとの手合わせ。

ゴブリンといっても自分達の世界とでは強さの基準が違う。未知と戦う以上警戒し、慎重にいかなければならない。数々の猛者と戦ってきたゴブタにはその経験と培ってきた実力がある。クロベエに作ってもらった武器も希少かつ大事な相棒を手に、ジュゲムをしかと見つめた。

しかし、リムルの配下であり古参を誇る自分が負けていい理由にはならない。此処にはいないあの方の為にも、負ける訳にはいかないのだ。そしてそれは、ジュゲムも同じである。

互いの主への忠誠と想いの強さが、武器を合わせる毎に伝わってくる。二人の手合わせは白熱し、周囲も固唾を飲んで、時には声援を送って盛り上がる。

両者共に何度も剣を打ち合っているが、ハクロウの速さ程ではないその斬撃を避けることは容易い。ゴブタがほぼ傷を負っていないのに対して、ジュゲムは既にボロボロだ。傷から血を流すも、その瞳からは闘志は失われず、力量差を自覚しようとも尚剣を奮う事はやめない。

 

「〈ゴブリンの一撃〉!」

 

己の特殊技術(スキル)を発動しての一撃がゴブタの懐に入る。痛みと大剣の魔法の力、毒によりゴブタが呻くも毒耐性は得ている為それは通用しなかった。

 

「ってて、中々やるっすね。それじゃあこっちもいくっすよ!」

 

ゴブタが手にする小太刀に念じれば、その刀身は氷に覆われ瞬く間に氷槍へと変化した。それに目を剝くジュゲム。ニッと自慢の武器を閃かせて笑ったゴブタはそれを突き出して、ジュゲムの手から大剣を弾き飛ばした。しまった、とジュゲムが思うよりも先にゴブタが畳み掛けるように追撃し、そのまま地面に叩き伏せた。

 

「……ここまで、っすね」

「くっ………そう、みたいだな。俺の負けだ」

 

そうして、ついに決着がついた。地面に伏せるジュゲムと、ゴブタの手から真っ直ぐに伸びる小太刀の切先。

 

「ーーそこまで!勝者はゴブタさんです!」

 

エンリの声がかかり、手合わせは終わる。刀をしまったゴブタは、ふっと息を吐き出すと地面に横たわるジュゲムに手を差し伸べた。

その手とゴブタを見比べて、苦笑いに似た…しかし、どこかスッキリとした笑みを浮かべたジュゲムはその手をしっかりと握って立ち上がった。

二人の間に言葉は無かったが、あの手合いの最中、そして今、交差し繋がりあった"何か"を互いに理解し受け止めた。二人の間には確かに"友情"にも似た何かが在った。同志、にも近い。

 

「良い手合わせだったっす」

「ああ」

 

そんな二人の姿に、周囲は感動して歓声をあげた。拍手喝采である。村の人達もモンスターも、彼らの強さを認め、そして褒め称えた。二人の間にある友好にも、同じだけのものを寄せた。

 

「(な、なんとか上手くいったっすね。いや〜、よかったよかった)」

 

リムルの命も果たせたし、地獄行きも回避できた。ゴブタはほっと胸を撫で下ろす。

 

「「ゴブタ兄ィ〜、お疲れ様!」」

 

きゃらきゃらと自身の周りを纏わりつきながら笑う双子の姿に、ゴブタも笑った。仲の良い仲間同士の姿に、周囲も笑みが浮かんだ。

 

「ジュゲムさん、お疲れ様でした。お水でも飲んでひと息ついてください。ゴブタさんも、よかったらどうぞ」

「ありがとうございます、姐さん」

「あ、ありがとうございますっす」

 

二人は同時に水をぐいっと飲み干し、ぷはぁと息を吐いた。そしてお互いを見つめ、カラカラと可笑しそうに笑った。

すっかり仲良くなった雰囲気にエンリも微笑ましそうに笑っていた。

 

「いや〜!中々良いものを見させてもらったっす」

 

パチパチパチ、と軽く手を打ち鳴らす音と共に一人の女性が彼らに近付いてきた。

メイド服のような格好に赤毛のおさげを揺らす、闊達そうな少女。背には大きな杖にも似た武器を背負っている。ニコニコと明るい笑みを浮かべているのに、ざわりと心臓が騒ぐのは何故だろうか。

 

「(ああ、コイツはマズイ。やべぇ奴だ)」

 

隣でピタリと立ち止まった女を横に、ゴブチは内心身を震わせた。この女が自分達より強い事を感じ取ったのだ。強者がゴロゴロいるテンペストに慣れ親しんだからこそわかる、力量差というもの。

 

「隊長、」

「よかったら、アタシとも手合わせしてくれないっすか?」

 

ゴブチの警戒を孕んだ呼びかけを遮るように、女性は目の前のゴブタを見下ろした。隣のゴブチなんて歯牙にもかけてない事が嫌でも伝わった。

何より、無邪気な笑みを浮かべているが、金色に光るその眼は獲物を見つけた獣のように爛々と輝いている。その、いっそ邪悪なまでのそれを隠す気があるのかないのか。

 

「ルプスレギナさん?」

「エンちゃんはレフェリーお願いするっす」

 

もはやこちらの意見は聞いてない。ゴブチは溜め息をつくと「頑張れ」という意味合いも込めて無言でゴブタを見つめ、ゴブトと双子と共に後ろに下がった。

このルプスレギナという女も気になるが、その後ろをついてきたレッドキャップーーだろうと思われるーーも警戒しての事だ。視線だけでゴブトにも伝え、何時でも動けるようにしておく。

ジュゲムもこの場の何かを感じ取ったのか、チラとルプスレギナとゴブタを交互に見た後、交わしていた握手に込めていた力を少し強めてからそっと手を離した。集まっていた村人達も、再び元の位置に戻る。

自分達を囲む人と魔物の中央で、ゴブタはジュゲムに触れていた手をぎゅっと握りしめて拳をつくった。もう片方は既に刀を握っている。

 

「自分はゴブタっす。よろしくっす、ルプスレギナさん」

 

愛想の良い笑みを浮かべて、あくまで友好的な態度で相手を見つめる。

 

「アインズ様に仕えるメイドのルプスレギナっす。よろしくっす!」

 

たとえ、ゴブリンでもホブゴブリンでも対して変わらない低級モンスターと見下す、無邪気さの奥に邪悪を秘めた怪物を前にしても。

 




ゴブタ◯VSジュゲム✕
ゴブタVSルプスレギナの勝敗は如何に……?
正直、プレアデス相当には一体化無しのゴブタじゃキツイと思うんですよね。他のホブゴブリン達もプレアデスには敵わないんじゃないかなぁ。
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