魔導王と魔王   作:波美

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お嬢様口調継続中なリムルは誰が見聞きしても少女です。そう、誰かが見ていたとしても、ごく普通の少女なんです。


◯2-5 冒険者組合

 

先程の店から幾らも離れていない場所にこの街の冒険者組合の建物はあった。奥にあるカウンターに受付嬢が一人座っており、右手側にあるボードーーおそらく依頼内容が書かれているであろう羊皮紙が何枚か張り付けられているーーの前には数人の男達が立っていた。

彼らは紙面を見つめているもののその瞳にはやる気とかそういったものは感じられない。むしろ溜め息を吐くと落胆したようにその場を離れた。

 

「うーん、此処も活気がないですね。それに、思ったよりも人が少ない……」

「まぁ、それは仕方がないですよ。依頼も冒険者も減ってしまいましたから」

 

不意に後ろからかけられた声にリムルはそちらを振り向いた。入り口近くに立つ一人の男は装備からしておそらく冒険者だろう。リムルが首を傾げると、苦笑を浮かべた男は一言謝った。

 

「失礼。俺はミスリル級冒険者『虹』のリーダー、モックナックという者です。ご依頼に来られたのですか?」

 

首から下げられたプレートがキラリと光る。腰を屈めたディアブロが耳元で「下げられたプレートの階級で区分されているのです。ミスリルは上から3番目ですね」と教えてくれた。詳しくは後ほど、と体勢を戻すのを見てから、改めてモックナックと名乗った男を見つめた。

 

「(ミスリル、か。ん?でも3番目ってことは…さっき聞いたアダマンタイト級が1番なのか。その上位希少金属のヒヒイロノカネとかは階級にないのか…)」

 

ちらりと疑問が頭をよぎるが、今は置いておいていいだろう。

 

「こんにちは。私たちは今日この街に来たばかりなのです。街を見て回りましたが、冒険者組合も勧められて。なんでも、漆黒の英雄と呼ばれるアダマンタイト級冒険者の「モモン様」がいらっしゃるとか」

「ああ…、モモン殿ですか。確かに、彼の英雄譚は凄いですからね。その実力も、人となりも」

 

憧憬の滲んだ目で彼の人を語ったモックナックは、しかし残念そうに息を吐いた。

 

「そのモモン殿は、今組合にはおられないのですよ。魔導王陛下の住居の別邸に控えているので……」

 

彼の魔導王が住民に手出しをしないよう見張っているとか。街の住民と会談したりもするので馬車で移動して、組合には殆ど顔を見せない。

そのような内容を聞き、一度会ってみたかった俺としては残念な結果に終わった。

 

「それは残念ですわ。数日は滞在する予定ですので、その間にお会い出来れば良いんてすけど……」

 

心底残念だと頬に手を当てて溜め息をつけば、その憂い顔に心を痛めたモックナックは、元気づけるよう優しく微笑んだ後、モモンさんにお会いしたい他国の令嬢が来ていることを受付嬢に伝言をしてくれた。良い人だ。

 

「そういえば、何か用事があって組合に来られたんでしょう?付き合わせてしまって申し訳ありませんでした」

「いえいえ、お気になさらず。先程も言いましたが、私達ができる依頼なんて殆どありませんから。街の治安も、近辺のモンスターも陛下の下僕が対処していますし。やる事といったら、常に発生しているカッツェ平野のアンデッド退治くらいですかね」

 

苦笑を浮かべたモックナックは、殆ど新規依頼の来ていないボードを眺めてそう答えた。

 

「でしたら、この後少し時間はありますか?よかったら、そのモモン様のお話をお聞きしたいんです」

 

モモンが参入した頃から知っており、且つ憧れているのなら見聞きした情報も多いだろうと思い声をかけたが、モックナックは表情を明るくさせて弾んだ声で了承してくれた。

墓地に大量発生したアンデッドから街を救ってくれた事、強大な力を持つ吸血鬼との激戦、王都を襲った悪魔との戦いなど……嬉々として彼は語ってくれた。

その話を聞きながら、リムルは彼の英雄はどれ程の実力を持つのかと思案していた。

 

「お聞かせ下さりありがとうございました。とても素晴らしい英雄譚でしたわ」

 

どちらかというと、彼が成した偉業よりも如何にモモンが素晴らしいかを語る割合が多かったが……それは言わぬが花だろう。こういう手合いはマサユキで慣れている。

モックナックにお礼を述べて別れたリムルは、黄金の輝き亭に戻ってきた。

 

「ふぅ〜、これでひと通り街は見て回れましたね」

「そうね」

「お疲れさまでした、リリムお嬢様、ヒナタお嬢様」

 

ふかふかのベッドに腰掛けて、二人はそう一息ついた。そこに果実水の入ったグラスを持って来たディアブロが近づき、それを受け取ったリムルは良く冷えた果実水を口に含んだ。

 

「冒険者のモモンさんに会えなかったのは残念ですが、まぁ仕方ないでしょう。明日はどうしますか?ヒナタお姉様」

「リリムの好きにしていいわよ」

 

そっけなくそう言ったヒナタはもはや俺の口調について何も言ってこなかった。人目のない室内なら「その口調いい加減にしてくれない?」と真っ先に言ってくると思ったのにな。まぁ、なんだかんだ面白いからこのままいくか。

 

「そうですか?なら、明日は先程武器屋で聞いたポーションの事が気になるので、それを調べに行きましょうか」

「畏まりました、我が君。それではすぐにポーションを取り扱っている店を探して参ります」

 

俺の言葉を聞いたディアブロは直ぐさま配下の悪魔を呼び出すと、ポーションを取り扱う店を探すように命じた。命を受けたその悪魔は影に沈んで姿を消す。

それからはのんびりと部屋でくつろぎながら、ディアブロから文字を教わったり、街で見聞きした事をまとめたりして時間を過ごした。




次はようやくオバロ側の視点です。
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