インフィニット・ストラトス~獣耳とかツイてる彼女~   作:王・オブ・王

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第十七話『ドイツからの執行者』

 朝、杏澄は今日も今日とて一夏に体を揺らされる。真っ白なふとんを被って獣耳をピクピクと動かす杏澄は少しだけ琥珀色の目を開いて杏澄は一夏を視界に入れる。

 だがそれも一瞬で、すぐに目をつむって杏澄は眠ろうとした。

 

「んむぅ……あと、あと十分だけ」

「朝御飯抜いてお前大丈夫か?」

「……起きる」

 

 上体を起こすと、杏澄は欠伸をしながら背中を伸ばす。ふとんを退けて立ち上がるキャミソールにハーフパンツ姿の杏澄から少しばかり視線を逸らす一夏。さすがに肌を露出しすぎの杏澄を直視できるほど一夏の忍耐は強くはない。

 洗面所へと向かう杏澄を確認してから、一夏は椅子に座った。漫画やゲームばかりの部屋、机の上にはコルクボードがあり写真が飾られている。こう見ると女の子なんだなと思わないでもないが、些か学生がやるべきではないゲームの箱があったりもすると、やはりどこかズレてるとも思う。

 同じ男であるシャルルも来たが、やはり会話やら生活やらで過ごすのに楽なのは杏澄といる時間だ。

 

「一夏、カチューシャとって~」

 

 洗面所から杏澄の声が聞こえてきたので、ベッドの方を見るとカチューシャが置いてあるのに気付く。一夏がプレゼントしてから六年以上も経っているがここまで使ってくれていると上げた甲斐があるというものである。とりあえず、一夏はそのカチューシャを手に取って洗面所のドアをノックした。

 

「はい」

「ありがと」

 

 ドアが少し開いたのでそこからカチューシャを差し入れると杏澄が受け取ったのでカチューシャから手を放して椅子に座り直す。杏澄の秘密やら恥ずかしいことやらを沢山知っているし一緒に寝たりもできるほどの一夏ではあるが、さすがに杏澄の着替え姿やらを見れるほどではない。

 良くわからない間柄であると、一夏は自分で笑った。

 

「お待たせ~」

 

 相変わらず髪の毛を良く整えもしないで、着替えた杏澄が現れる。ISスーツを着てその上から薄いタートルネックの服を着て、その上から制服というなんとも言えない防御力。外での露出嫌いの杏澄らしいと一夏は頷いて私服も肌を露出しないものばかりだなと思い出す。別に杏澄の肌を見たいわけでもないのだが、素材は悪くないのだからもう少し露出した服でも良いのではないかなんて思った。

 

「(そういえば千冬ねぇも肌の露出を嫌うし……やっぱり似たのか)」

 

 さらに深々と何度か頷くと、立ち上がって杏澄と共に部屋を出る。

 

「あ、シャルル君」

「あぁ、杏澄と一夏が部屋にいるって聞いてね」

 

 部屋の前に居たシャルル。丁度ノックでもしようとしたのだろう、妙に近いので離れると三人で食堂へと向かうことにした。

 正直、杏澄はこの状況に危機感を覚えていないでもいない。なんたってIS学園でたった二人の男子と一緒に歩いているというのはもう目立つどころではなく、嫉妬の対象だ。中学時代も一夏としょっちゅう一緒に居たことで反感をかったことがある。それが今回は学園中の生徒ほとんどの憧れである一夏とシャルルが一緒。

 食堂で食事が配られるのを待つ杏澄は一夏の後ろでつぶやいた。

 

「これは、まずい……」

「ん、どうした杏澄?」

「なんでもないよ、鈴たちは?」

 

 一夏が指をさす方を見ればそちらにはいつもの丸テーブルのソファに座っている箒と鈴とセシリアの三人。しっかりと席を取っていてくれているようで安心する杏澄。シャルルが先に食事を取って席に向かい、次に一夏が食事を取って席へと向かう。そして次は杏澄の番で食事を取って歩き出す。

 だが瞬間、後ろからドン、と衝撃が奔り前のめりに倒れる杏澄。

 

「へぶっ!」

 

 前のめりに倒れる杏澄だが、無駄に大きな胸がクッションとなり顔面を地面にぶつけることは免れた。

 

「杏澄!?」

「杏澄さぁぁんッ!?」

 

 鈴とセシリアがすぐさま駆け寄ってきて、杏澄の心配をした。

 

「ぬぐぅぅ、だ、大丈夫っ……食事は死守したっ」

 

 杏澄の持つトレイの上に乗っている山盛りの御飯とおかずの数々は無事であり、杏澄の無駄な高ポテンシャルが発揮された瞬間だった。後ろを見る杏澄だが沢山の生徒たちが歩いているので誰が押したかなんて判別できない。そもそも事故という可能性がないでもないが、それでも意図的な可能性が高いと杏澄は考える。

 

「さて、席に移動しようか」

 

 杏澄がそう言うとセシリアと鈴と一緒に席へと戻る。クッションとなった胸が若干痛むがそれほど長続きする痛みでもなければ怪我をしたわけでもないので構いはしなかった。席へと座ると少し心配そうな顔をする面々、そして一夏も最初は心配していた様子だったがすぐに笑った。

 

「杏澄はドジだな~」

「桜の木の下に埋めようか?」

「……すまん」

 

 原因の一旦であるかもしれない一夏にそういうと、杏澄は朝御飯をすさまじいスピードで食べ始める。まったく碌なことになる予感がしないと杏澄は頷いて、昨晩した嫌な予感を思い出して“これか”と思う。

 だがまだこのときは知らない、嫌な予感は伊達じゃなく、嫌なことが一つとは限らない……。

 

 

 

 朝のHR、一年一組は妙な空気が漂いその理由は教卓横にある。

 

「えっと、本当はデュノア君と一緒に来る予定だったんですが一日遅れで転校生です!」

 

 現れたのは真っ白な髪の眼帯をした少女、身長は低く胸もペタンコでまさにロリ体系という奴なのだが、杏澄はむしろそこまでの要素を詰め込んだ目の前の少女に関心すら覚えていた。そして同時に『可愛い』と呟き、それに気づいた少女は杏澄の方に軽く視線を向ける。

 

「ドイツから来たラウラ・ボーデヴィッヒさんです」

 

 すぐに目をつむる転校生こと、ラウラ・ボーデヴィッヒをクラス中の生徒が注目していた。何も言わない彼女に千冬が目を向ける。

 

「ラウラ、挨拶をしろ」

「はい教官」

 

 そんなラウラを見て一夏と杏澄が向き合う。

 

「教官……って」

「ドイツの時の、ってことだよね?」

 

 二人でそんな話をしていると、ラウラは目を開いてクラスを見る。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 ただその一言を、凛として発すれば……後に残るのは沈黙のみ。そしてその沈黙の中なにかを待っている生徒たちを見て、麻耶は『以上ですか?』と聞けばラウラは『以上だ』の一言。なんだか無愛想だと思う生徒たちだが、その中でも杏澄だけはそんなラウラに感動するのみ。

 ロリ体系、軍人、眼帯、白髪、無愛想、こんなに要素がそろった者が居ただろうか?

 

「織斑一夏、その隣が鬼柳杏澄だな?」

 

「えっ、私の名前―――ッ!?」

 

 バチン、と音が響いて杏澄の頬がビンタされた。唖然とした表情の杏澄。そして周囲の生徒たち。次にラウラが一夏を睨んだ所で千冬がラウラの手を掴んだ。

 

「ラウラ……」

「申し訳ありません教官、しかし―――」

「しかしもなにも無い、早く席につけ」

 

「……はい」

 

 おとなしく後ろの方の席につくラウラ。ビンタされた杏澄は頬を押さえたまま唖然としていて、一夏は杏澄に声をかけようと思うもどう声をかけていいかまったくわからない。一夏の隣のシャルルもそうで、杏澄の隣の箒もだ。セシリアが怒りの炎を燃やすもさすがに動くわけにもいかないのは一番最初に動きそうだったセシリアを千冬が睨んでいるからだった。

 ともかく、妙な雰囲気のままその後のHRは進む。

 

 

 

 その後、アリーナにて沢山の生徒たちが打鉄にてISの訓練をしている中、織斑一夏と鬼柳杏澄に箒、セシリア、鈴の三人が特別講師のようにISでの戦闘方法を教えていた。昨晩訓練をサボったことを怒る鈴とセシリアだったが、その分厳しい訓練をするようだが……二人には三人が言ってることが意味不明だった。

 箒は『どかーんとしてずどーんという感じだ』というオノマトペだらけの教え。

 鈴は『感覚よ感覚』なんていうブルース・リー並の教え。

 セシリアは『斜め45度で』なんていう正確すぎる教え。

 だからこそ、杏澄と一夏は顔を合わせる。

 

「わかる?」

「と思うか?」

「思わない」

 

 二人して肩をすくめた。

 

「一夏、ちょっと相手してくれる?」

 

 そう言って現れたのはシャルルであり、彼は専用機であるラファール・リヴァイヴを装着している。そして一夏は箒たちの方を見て『また後で』と言って模擬戦に集中すようで、同時にアリーナの全体を使うわけだからということで杏澄もISを解除して三人の良くわからない訓練から逃げ出した。

 

 すぐに生徒たちは全員ISを解除して一夏とシャルルの戦いを見物することになる。どうやらラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡという専用機らしく、量産型のRリヴァイヴと比べると少し特殊らしい。

 戦闘はどちらともなく動くことで始まった。まず飛び上がったシャルルが上昇しながら杏澄が先日使ったものと同型のガルムを連射。しかし杏澄との戦闘も何度かありセシリアとの訓練もあったこともあり対射撃には定評が出てきた一夏。軽く身をひるがえしてそれを避けるとシャルルへと接近。

 

「やるね一夏!」

「射撃には慣れてるから、なっ!」

 

 接近し、雪片を振るうがシャルルはそれを紙一重で避けて大型ライフルを一夏に対して撃つ。その手の射撃を持っているのはセシリアぐらいだが、ビーム兵器とはまた一味違った攻撃。杏澄が持っていない類の武器ということもあり、対処の仕方がわからないまま一夏のシールドエネルギーは0になった。

 

 その後、一夏はシャルルのライフルを借りて射撃訓練をしている。

 

「他機の武器なんて使えるなんて知らなかったなぁ」

 

 杏澄がつぶやく。シャルル曰く『所有者がロックを解除すれば可能』らしい。使う機会も無いだろうけれど覚えておくに越したことは無いだろうと杏澄は覚えておくことにした。一夏の訓練を見ながら杏澄は色々考えても見る。だがそれにしても、なぜ自分はラウラ・ボーデヴィッヒに叩かれたのかわからない。考えてみても恨みを買う理由も無いように思えた。

 

「見て!」

 

 ピッチの上に立つのは黒い機体、そしてそんなISを装着しているのは杏澄の悩みの張本人あるラウラ・ボーデヴィッヒだった。一夏は怒りを抑えるもラウラからは敵意むき出しの視線が向けられる。それによって一夏も相棒ともいえる相手を殴られた怒りを隠すことなくラウラに敵意を向けた。

 

「なんだよ」

「貴様も専用機持ちらしいな、ならば話は早い。私と戦え」

 

 呆れたような一夏、確かに杏澄を殴られた恨みはあるがそんなことをしても杏澄は喜ばないだろう。

 

「嫌だ、理由がねぇよ」

「理由はあるだろう、あの乳牛女の仇を討つという理由がな……」

「そんなことしても杏澄は、あいつは喜ばない」

 

 なんだか死人のような扱いを目の前で受ける杏澄は『新手のいじめか?』なんて思うがとりあえず成り行きを見守ることにする。下手に絡めば現状から悪化の道をたどるのは目に見えているからだ。一夏も杏澄のことをわかってか下手なことをやらないでいるのだから口を出す理由はなかった。

 だが杏澄は『乳牛女』という言葉だけは勘弁してほしいと口に出したい。

 

「そして、貴様にはなくても私にはある」

 

 絶対的な理由、一夏と杏澄を憎むに値する理由がラウラにはあった。だが一夏はそれでも相手にしないことにする。

 

「今じゃなくても良いだろ、もうすぐクラスリーグマッチなんだから、その時で」

「……ならば」

 

 ラウラはすぐにIS肩部のキャノンを―――杏澄に向けた。

 

「へ?」

 

 キャノンが向けられ、放たれる。

 すでに杏澄はパニック状態でとてもISを展開するような暇は無かった。それでもその周囲の専用機持ちは違い、一夏が真っ先に杏澄の前に立ち、次にセシリア、そして鈴、最後にシャルルが立って盾を使い放たれた弾丸を防ぐ。恐らく、シャルルが居なければ被害がもっと甚大だっただろう。実体盾を持っているのはこの中でシャルルだけだ。ラウラを睨みつける面々は、すぐに武器を構えようとするが、シャルルが片手で制す。

 

「いきなりISも纏ってない相手に撃つなんて……ビールの飲みすぎで頭がやられたのかな、それともジャガイモ畑ではそういうのが流行ってるのかな!?」

 

 ラウラはシャルルの挑発を受け流して杏澄に目を向ける。

 

「専用機持ちのくせにあの攻撃に反応もできんとはな」

「そ、そんなこと言われても……突然だったし」

「お前以外は突然、に対応できたみたいだがな」

 

 反論の余地なく、言いよどむ杏澄。

 

「今は、僕と話している最中じゃない?」

「フランスの第二世代如きが私に挑むか……」

「未だに量産の目途がたたないドイツの第三世代型よりは動けるだろうからねぇ!」

 

『そこの生徒、何をやっている!』

 

 教師からの言葉に、ラウラとシャルルの一触即発の空気は散る。

 

「ふん、今日のところは退いてやろう」

 

 それだけ言うと、ラウラはISを解除して一夏と杏澄を一瞥するとピッチからアリーナを去って行った。そこに残された面々は騒動を収めるために一度ISを解除する。

 

「どういうことだ一夏、杏澄!」

「一体何がありましたの!?」

 

 箒とセシリアにそう言われるが、答えることはない。いや、答えるべき答えが無いと言った方が正しいだろう。なぜラウラ・ボーデヴィッヒにここまで恨まれているのかわからなかった。ただ今は杏澄に怪我がなかったことを安心する面々だが、問いの答えが返ってくることは無かった。

 

 

 

 その後、寮へと帰った杏澄は飲み物が欲しくなり自動販売機へと向かったのだがその自動販売機が置いてある休憩室の近くで、歩みを止めた。理由はラウラ・ボーデヴィッヒを見たからということであり、さすがに先ほど殺されかけた相手に歩み寄るような気力は無い。

 杏澄は仕方ないので近くで待つことにした。

 

「君、ボーデヴィッヒさんだよね?」

「……何の用だ?」

「私、一応先輩なんだけどな、ともかく鬼柳杏澄を殴ったって本当?」

「ああ」

 

 淡泊の返事だが、一応会話はしているようだ。

 

「なんで?」

「……気に入らないからだ」

 

 何か理由があっての“気に入らない”という言葉だろう。千冬からドイツに居た頃に話を聞いたのだろうかと考えて、そこから自分を嫌いになったのかもしれないと思った後にだったらなぜ一夏まで嫌われているのだろうかと、疑問に思った。

 

「奇遇だね、私たちも鬼柳杏澄、気に入らないんだよね!」

 

「……ッ」

 

 まさかこんな場所に立ち会うとは思っていなかった杏澄は、正直ラウラに二年か三年か知らないがその先輩を退けてほしいと思っている。好き好んでいじめられたいなんて思う人間も居ないだろうし、好き好んで嫌われたいと思う人間も居ない。だからこそ、ラウラの選択は目に見えていた。

 

「だから私たちと一緒にさ!」

「貴様たちと徒党を組むなど、虫唾が走る。自ら力をつけてISであの女を殺す覚悟ができてから言うんだな」

 

 そう言うと、ラウラは休憩所から出て杏澄がいる方とは反対方向に去っていく。ラウラに突き放された生徒たちだけが残るが、その生徒たちも文句を言いながらラウラと同じ方向に歩いて行った。溜息をついてから、杏澄は休憩所に入る。

 

「あっ」

 

 そこに居たのは、布仏本音と鷹月静寐の二人だった。先ほどのラウラと先輩方の話を聞いているのは確実であり、杏澄は非常にいたたまれない気分になる。だが当の二人は自分が先ほどの話を聞いていたとは思っていないのだろう。

 

「あすみん、大丈夫?」

「ッ……な、なにが?」

 

 まさか本音は気づいているのだろうかと思い、焦ってしまった。だがそれがいけなかったようで本音も静寐も少し驚く。恐らくカマをかけられたと思ったがすでに時遅し。さらに微妙な空気になり、杏澄は自分自身でもなぜこうも大事なところでミスをするのかと後悔した。

 

「なにかあったら言ってね、鬼柳さん」

「うん、ありがと鷹月さん」

 

 精一杯、口元に笑みを浮かべて言う杏澄。こういう時は目が隠れていて助かる、たぶん目が笑っていないだろう。杏澄は自動販売機を操作してお茶を買うとさっさとその場を離れた。ああいう悪口というのは聞いている方も言われている方に悪印象を持ったりする可能性がある。だからこそ、仲良くなれるかもしれないと思っていたあの二人に聞かれていたのはショックだった。

 

「はぁ~」

 

 深いため息をついて、杏澄は自室に入る。

 

「お、おう杏澄どうした!?」

 

 部屋に一夏が居たのだが、気づけば隣の一夏とシャルルの部屋に入っていたようだった。部屋を間違えたというのもあれなので杏澄は笑いながら入る。

 

「いや、なんとなくね」

 

 薄暗い部屋、一夏はベッドに座っているがそれにしてもなんだか様子がおかしい。

 

「……賢者タイム?」

「んなわけあるか! シャルルが居るんだぞ!?」

「あはは、でも一夏が今までしたことないような顔してるし」

 

「ま、まさかぁ!」

 

 確実に焦っている。怪しい。

 

「まぁあれだね、オカズに困ったら私に言ってよ、どれか貸すから」

「なんでそうなるんだよ!?」

「まぁまぁ、遠慮しないでさ」

「違うって!」

 

 杏澄はすっかり一夏がそういうことをしていたのだとばかり思い込むも、椅子に座ってお茶の缶を開けると一口飲む。なんでペットボトルにしなかったと後悔しそうになるも、まぁ飲む気がなくなったら一夏に上げればいいだろうと考えて飲む。

 

「でも一夏って、性欲どうなってるの? ホモなの?」

「なんでそうなるんだよ! 女に興味無いように見えるか!?」

「……正直、見える」

 

 真面目に答える杏澄にため息をつく一夏。

 

「……お前ってほんとバカだよな」

「はぁっ!?」

 

 なぜ突然そんなことを言われたのかと驚く、悪いのは全部一夏であると確信している杏澄としては今回はなぜ自分がこういわれているのかわからない。逆に一夏にとってはなぜ自分が男好きだと思われているのかわからない。一夏としては呆れ半分であり、いつも通りアホの杏澄のことだからと納得。

 そしてここで、ふと一夏は杏澄になら打ち明けてみようと思い、言う。

 

「なぁ杏澄、もし……もしもさ、シャルルが女だったらどうする?」

「ブフゥッ!! ゲホゲホッ、ゲッホゲイッ!」

 

 お茶を吹き出し、さらにむせて缶もこぼしてびしょびしょになる杏澄。そしてそのまま、驚いたような表情で一夏を見る。

 

「ほ、ホモこじらせて……」

「ちげぇよ! 可哀そうな人を見る目で見るな!」

 

 杏澄はため息をつくと、わずかに残っているお茶を机に置く。一夏はというとこぼしたお茶を拭くためにタオルを用意する。一言『ごめん』と謝ると、杏澄は制服にお茶の匂いがつくのも嫌なのですぐに濯ごうと洗面所へと入った。

 

「待て杏澄!」

 

 時すでに遅し。洗面所の扉を開いた杏澄の前には、シャワーを浴び終えたシャルルの姿。そして杏澄はその体から目を離せずに、足元から顔までをしっかりとみて気付く。その体の凹凸や綺麗さ。

 

「……エンッ!」

 

 杏澄は鼻血を吹き出しながらそのまま倒れることとなった。薄れ行く意識の中、シャルルが自分を呼ぶ声が聞こえる。薄らとした視界で唯一とらえた発育の良い胸を見て、杏澄の意識は途絶えた。

 

 

 

 途絶えた意識の中、杏澄は夢を見ていた気がした。自分の両親のこと、杏澄自身の体のことを秘密だと言われたこと、そのほかにも色々と言われた気がしたか今はもう覚えてなどいない。そしてそこで気づく。自分が今意識を取り戻しているのだと……。

 目をゆっくりと開くと、見慣れた天井が映り、自分が意識を飛ばしたことを思い出す。

 

「あ~そうだ」

 

 一夏の洗面所で金髪美少女の全裸を見て自分は意識を飛ばしたのだと、現状を理解して上体を起こした。

 

「……あれ」

 

 自分の姿を見ればISスーツのまま寝ていて、部屋にはハンガーで制服が掛かっていた。おそらく一夏が掛けてくれたのだろうと納得するとすぐにベッドから降りて立ち上がる。まったく碌なことがないと頷いて結局あの美少女は誰だったのだろうと考える。だが考えても一夏と仲がいい金髪美少女なんてセシリアぐらいしか思い浮かばず、だが顔を覚えているが違う。

 

「一夏に、聞いてみるか?」

 

 いや、そんなことしても無駄だろう。そういえば一夏の様子がおかしい理由はあれが原因なのだとしたら納得いく。体を伸ばして色々と考えてみれば少し悪いことをしたなとも思うので、とりあえず明日あたりそっと謝っておこうと思う。ついでに箒たちのアフターケアもしなければと思うも、同時にシャルルはどうしたのだろうとも思う。

 まぁなにはともあれ、自分には関係ないことだと軽く欠伸をして制服が乾いていることに気づき晩御飯のために食堂へと赴くのだった。

 

 

 

 

 




あとがき

今回ようやくラウラ登場! お待たせしましたな!
そして今回は杏澄が女子生徒たちの反感をかっていることが判明、しかしギャグパートが少なくっていることに焦りを覚える作者。
まぁ読者さまに楽しんでいただければ! 次回をお楽しみに!

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