インフィニット・ストラトス~獣耳とかツイてる彼女~   作:王・オブ・王

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第二十五話『意識』

 杏澄は、片瀬に着いて行きハンガーらしき場所に出た。

 そこでは多数のISが並んでいてどれも量産型ばかりだが整備されているのか装甲も綺麗に磨かれている。ラファール・リヴァイヴと打鉄が数十機も並べられている挙句、サイレントビーストすらもそこで整備されているようで杏澄は駆け足で近寄る。

 

「お! 起きたのかい!」

 

 サイレントビーストの背後から出てきたのは灰色のツナギを来た少女。

 

「え、えっと私?」

「そうそう、それにしてもすんごい機体だねこいつぁ……さすが篠ノ之束の作った機体だ、ウチが作ったのとは大違いって感じだな」

「……な、なるほど」

 

 人見知り力全開の応答をする杏澄の隣に、片瀬と妹が立つ。

 

「おう、これは片瀬の旦那にお嬢、こいつの修理も完了、ついでに面白いもんも積んどいたぜ」

 

 余計なことを……。と思う杏澄であったが、ともかく今はIS学園に早く戻りたい。

 千冬はどうかわからないけれど、かなり色々な人に心配させているはずだと考えてから、箒が自責にかられてメンタルがズタボロになってないかと焦る。早く戻らなければと思うも、この状況で『早く帰してください!』と言えるほど杏澄は強くは無かった。

 だがそんな杏澄に気づいたのか気づくまいか……。

 

「よし、先も言ったが君は早く行った方が良い」

 

 片瀬はそう言ってモニターを開く。

 

「“外側の楽園(アウターヘイヴン)”! 浮上!」

 

 瞬間、艦内には青色の光が灯り床が揺れる。いや、正確には揺れているのはこの艦全体であり、先の会話から今現在なんらかの艦内に自分がいるのを察していた杏澄はここが海の中だったということを理解。そして青い灯りが消えて艦の揺れがおさまると、片瀬はサイレントビーストの方に手を向ける。

 そんな片瀬を見てどうしていいかわからない杏澄、そんな杏澄の後ろから手が伸び、上に羽織るように着ていたこの組織、武装する平和(アームドピース)の制服を脱がす。

 

「さぁお姉様、行ってらっしゃい……もしかしたらまた会いに行くこともあるかもしれないわ。その時は遊んでね?」

 

 妹のそんな言葉を聞いて、杏澄は少しばかり笑みを浮かべて頷いた。すぐに妹が顔を赤くして、笑い返す。

 そして妹が制服のポケットからカチューシャを一つ取り出すと杏澄に渡した。

 

「お姉様のものでしょ?」

「うん、ありがとう」

 

 それを受け取ってカチューシャにて耳を隠すと、尻尾も隠したいなとか考えながらも無理だと悟り、頷いてすぐに機体に乗り込む。初めてサイレントビーストに乗った日を思い出しながら体にフィットするその感覚を思い出す杏澄。

 ともかく今は行かなくてはならないと、珍しくやる気を出す杏澄がツナギの少女に誘導されながらカタパルトに脚部をつける。

 腰を下ろしていつでも出れるようにしていると、前方のハッチが開いて広い艦盤があらわれた。

 

「では、また会う日があれば私たちはいつでも君を歓迎するよ」

「は、はいっ」

 

「またねお姉様!」

「うん、またね」

 

 それぞれに返すと、先の艦盤に展開された信号機に光が灯る。

 赤、黄色、そして青。

 

「発艦します!」

 

 瞬間、カタパルトが射出されて杏澄はそのスピードに乗る。

 飛び立つと同時に、杏澄が振り返り今しがた自分が居た外側の楽園(アウターヘイブン)を見ると、すぐにハッチは閉じて艦盤に展開されていた信号機も収納されて海の中へと潜っていく。不思議だが暖かい人たちだったなと思いながら、結局何も聞いていないことに気づく。

 

 どうせならば、出生のことや妹のこと、両親のことなども聞きたかった。

 

「(まぁ、また来るって言ってたし良いか)」

 

 今考えるべきことはそれじゃないと思いながら、レーダーにて現在位置を特定すれば福音に落とされた場所からあまり離れていないことに気づき、少し離れた場所に戦闘反応があるのを確認すると前髪を軽く直して眼を隠す。尻尾ばかりはどうにもならないかなと思うも、ISを纏っている時は尻尾も隠れているし問題も無いはずだと自己完結すると戦闘反応がある方向に飛ぶ。

 そして飛びながら気づくことは……。

 

「それにしても、よくやるなぁ」

 

 もちろん一夏たちのことである。反応は白式、赤椿、ブルーティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイヴ・カスタム、シュヴルツェア・レーゲンの六機、あの後に戦闘したにしてはあまりにも一夏の回復力が早すぎる気もするし、だがそれにしても千冬も良く出撃させたなと思う。

 さすがに一夏に無理をさせるわけもないはずだ。

 

 となると答えは一つ。

 

「あぁ、無断か」

 

 これは怒られる気がすると思いながら、自分は怒られる理由は無いはずだと考え、今は援護に急ぐことにした。

 ツナギの彼女が積んでくれたという新兵装も、この状態ならかなり使えるだろうと感じて準備に取り掛かりながら、飛ぶ。

 

 

 

 杏澄がその戦場に向かっている一方、その戦場では激戦が繰り広げられていた。

 六対一という圧倒的な多勢に無勢、だが少数である一機はたった一機でありながら六機相手に善戦している。だが、IS学園一学年専用機持ち六人の連携は見事な物だった。

 指揮官としてしっかりと役割を果たし、長距離砲撃に徹するラウラ。高速切替(ラピッドスイッチ)のシャルルとストライクガンナーパッケージのセシリアの二人が高機動と射撃で牽制、さらに鈴は攻撃特化パッケージにて敵こと銀の福音を追い詰める。

 

 

「今度は!」

「逃がさん!」

 

 そしてそんな六人の切り札とも言えるのが織斑一夏と篠ノ之箒の二人であった。ぶっ飛んだ性能を誇るその二機が剣にて銀の福音に切りかかる。

 だが福音は当然という風に攻撃を避ける―――仕方ないだろう、午前中戦ったのと同じ福音であればこれで決められたのかもしれないが、今の福音の姿は違う。背中からは真っ白なエネルギーの翼が展開されているのだ。それはセカンドシフト、第二形態、全性能が上がっている福音は六人でかかっても戦力は五分五分だ。

 

 一夏と箒が顔をしかめるが、その背後の福音は翼にエネルギーを溜める。回避しようにも切りかかった直後の一夏と箒がその攻撃を避けるだけの条件反射ができるはずがない。

 だがその状況で、その六人以外の人間の攻撃が福音に直撃し、福音の体勢を崩す。すぐに箒が福音を蹴り飛ばした。

 

「なっ!」

 

 驚く六人が、すぐにハイパーセンサーにて攻撃、弾丸が飛んできた方向を見る。

 そしてその視線の先の孤島にいるのは、一人の少女。

 

「あ、杏澄!?」

 

 その孤島にはサイレントビーストに乗った杏澄が居た。いつも通りの杏澄は、その腕に大型のライフルを持っている。そんな装備を誰も知らない故に、さらに驚いたのだが今更サイレントビーストのシステムでわからないところを見ても、きっとそういうものなのだろう。以外になにも無い。

 だからこそ今は杏澄が生きていたことを喜び、さらに福音を倒すことに集中する。

 

 孤島の杏澄は、スコープからさらに福音を確認。先ほどのようにまた四人が福音の動きを止めてくれればまた撃つことが可能であるし、当たればかなりの高威力が期待できる。なかなかよくできた武装だなと、杏澄はそのライフルを積んでくれた“武装する平和(アームドピース)”のツナギの少女に感謝しなくてはならないと思うも、すぐに福音をスコープで捉える。

 だがスナイパーの極意も知らぬ杏澄には付け焼刃も良い所だった。だからこそ杏澄は一度ライフルを量子化してランスを手に飛ぶ。

 

 一夏と箒しかどちらにしろまともなダメージを与えられないのであれば、自分は牽制に回れば良いと、杏澄はライフルを撃つ。

 全員の動きを見ながら撃っていると一夏が隣へとやってきた。

 

「無事だったみたいだな、まぁ死んでるなんて思わなかったけどさ、杏澄だし」

「だろうね、私も一夏が死ぬなんて思わなかったよ。だって一夏だし」

 

「お前たち、遊んでいる場合ではないぞ!」

 

 箒に怒られて二人して笑うと、そのまま自分の役割をこなす。ランスのビームマシンガンを撃ちながら、徐々に近づいていくのは福音をポイントへと誘い出すためだ。

 福音が翼にエネルギーを収縮させて拡散ビームを撃つが、杏澄は距離を一気に離してその攻撃を避けていく。すると、シャルロットが杏澄の前に出て盾にて拡散ビームを防ぎ、ラウラもまた前に出てAICにて杏澄を守る。

 

「ありがとね!」

「ふふっ、杏澄を連れて帰らないと織斑先生に怒られちゃいそうだしね」

「早く撃て! それほど持たんぞ!」

 

 杏澄はランスを量子化するといつものスティンガーもどきのミサイルを持ち、ラウラとシャルロットの後ろから撃つ。

 威力は上々だろうその攻撃に気づいた福音が、すぐに迎撃しようとビームを放ち、ミサイルを撃墜する。だが目的は果たした。

 

「AIの癖に!」

「隙だらけでしてよ!」

 

 鈴とセシリアの二人が福音の両側から射撃をしかけ、前方から杏澄とシャルロットとラウラの三人から波状攻撃をしかけられる福音の逃げ道は、下だった。だがそれすらも無駄で、箒が真下から飛んでいき二刀を振るうも、避けられ福音の接近攻撃にて吹き飛ばされる。

 だが、本命は“一夏”であった。

 

「今度は逃がさねぇっ!」

 

 上から迫る一夏に気づいた振り向いた時にはもう遅い。福音の胸には零落白夜が突き刺さり、そのまま福音を孤島へと一夏は叩きつける。

 そう、本命であり一番の攻撃力を持つ一夏をなんとしても福音へと到達させるための、全ては布石。

 杏澄はハイパーセンサーにてその光景を見て、一夏が福音を倒したことを確認して何度か頷く。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 朝、旅館前にて専用機持ちが計七人が立っていた。

 一夏と杏澄以外は全員制服姿。一方の一夏と杏澄はというと一夏はISスーツだけの杏澄に上着を貸したことによりインナーだけであり杏澄はISスーツの上から一夏の制服を羽織っているような状況。それがなければ尻尾がバレていたのだから仕方ない。

 ともかく、必要以上に教える必要はないだろうと杏澄も一夏も思っているからこそ隠している。

 

 そしてそんな七人の前に立つのは織斑千冬と山田真耶の二人の教師だ。千冬はというと相変わらずの表情で全員を見渡す。

 

「作戦完了! と言いたいところだが、お前たちは重大な重大な違反を起こした」

 

 全員が揃って返事をする。覚悟はできていたことだと全員理不尽は感じない……杏澄以外。箒たちにしてみれば待機命令無視で突っ走ったのだから当然。

 

「帰ったらすぐ、反省文の提出だ……懲罰用の特別トレーニングも用意してあるから、そのつもりでいろ」

 

 そんな千冬に麻耶が物申す。

 

「あ、あの織斑先生、もうそろそろこのへんで、みんな疲れているはずですし」

「……ふむ、しかしまぁ……良くやった」

 

 千冬の言葉に、全員が意外そうな表情をする。もちろん一夏と杏澄も同じく、だが二人にとっては驚くというより褒められるのを嬉しく感じる。

 意外、というのがわかっているのか千冬は視線を逸らす。

 

「あぁ、全員よく帰ってきたな……今日はゆっくり休め」

 

 そんな言葉に意外すぎて全員それから数分ほど動かなかった。

 ようやく我に返った面々が旅館へと戻っていき、それぞれとりあえず部屋へと戻る。もちろん杏澄と一夏もそれは同じで、二人とも千冬と同じ部屋。千冬の方は何か用があるのだろう、休まずにどこかへ行ってしまった。

 だからこそ二人きりの空間で、杏澄はとりあえず一夏に制服を返してから自分の下着と制服を持つ。

 

「飲み物でも買ってくる」

「ん、お願い」

 

 一夏が出ていくと、杏澄は今来ているISスーツを脱いで着替える。尻尾は下着で隠して、耳もカチューシャで隠す。見た目だけは完璧にいつもの杏澄だが、尻尾などを完全に隠しきれるかと聞かれればいつものISスーツの方が良いだろう。

 少し、座って考えてみる。自分の現在の状況。

 

「お姉ちゃん、心配してなかったのかな……」

 

 少しばかり拗ねたように言う杏澄。

 身体検査も何もかも、朝旅館前に来る前にすましたので問題なしだということを千冬は知っているだろうけれど、それでも寂しいのは確かだった。

 そんなことを考えていては仕方がないのだけれどと思っていると、一夏が帰ってくる。

 

「ほら、杏澄」

 

 いつも通り、杏澄の好きなメーカーの飲み物を買ってくる一夏はしっかりと杏澄をわかっているのだろう。

 

「ん、サンキュー」 

「それにしても今回はほんと疲れたな、あれで俺たちも良くやったよ」

「ホントにね……良くやったよね」

 

 これも一応は妹や片瀬やツナギの少女のおかげなのだから感謝はしなくてはならないと思った。とりあえず缶のプルタブを開けて一口飲む。

 どうにもわからないものだらけだが、とりあえず疲れたと溜息を付いて、隣に座る一夏にもたれかかるのだたった。

 

「……重いぞ」

「うっさい、この馬鹿……」

「どっちが馬鹿だよ……って寝てるのか」

 

 杏澄が自分にもたれかかったまま寝ていることに気づき、一夏は微笑して杏澄をそっと寝かす。一夏は立って布団を敷くと杏澄を抱えて布団に寝かす。

 そこで服も上着も脱がさなければならないだろうと思い、杏澄の制服のボタンを外していく。そこで何も思わないあたり一夏は本当に杏澄を女として見ていないのだろう。

 

 だがふとした瞬間、一夏の手が滑って体勢を崩し、そのまま杏澄の方へと倒れ込む。

 

「ッ!?」

 

 寝ている杏澄と、体勢を崩した一夏の唇が重なる。驚いてすぐに体勢を整えるが、バクバクと心臓を鳴るのを自分でわかる一夏。

 

「っ、い、今のは違う……そう、事故だよ、な……」

 

 そう思い込もうとするが、もう一夏の心が引き返すことができないということを理解してしまう。

 制服が脱げかけている杏澄、そしてそんな杏澄に事故とは言えキスをしてしまった自分。

 

「ッ!!」

 

 一夏は逃げるように部屋を出て、廊下に出るとバクバクと鳴る心臓を抑えて一夏は落ち着こうとする。夏の猛暑の中とは言え、異常なほどの汗がボタボタと垂れていた。

 初めての感覚、今までと変わらないはずだ。先ほどのミスがあるまでまったくいつもと変わり無かった。

 

 

 ―――こうして織斑一夏は、初めて鬼柳杏澄が女だと理解した。

 

 

 

 




あとがき

はい、一夏と杏澄が……いや、事故なのでノーカン。
というより杏澄は知りもしませんが次回から一夏と杏澄の関係が若干変わりますな!
一応、山場ですぞ!
おかげで鬱展開な可能性も無きにしもあらず。それでも読んでいただければ!

では、次回もお楽しみいただければまさに僥倖!
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