自由と白式   作:黒牙雷真

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第10話

 

 

バビとグフを全て撃破した雷真はマルチプルアサルトからエールに換装して、夕陽に当てられながら刀奈たちが待っているIS学園に帰投する。そして、第三アリーナ付近に降りようとすると、そこに刀奈と簪の姿があった。

ゆっくりと地上に降り立つと泣きながら刀奈と簪がこちらに飛びついてくるのでストライクを解除する。

 

 

「「らいしぃぃぃん!」」ポロポロ

 

 

雷真「すまない、心配をかけたな」

 

刀奈「本当よ!」ポロポロ

 

簪「いつも、無茶をして!」ポロポロ

 

雷真「…………」

 

刀奈「でもね」

 

簪「うん、でも」

 

 

「「おかえりなさい、雷真」」

 

雷真「ッ!?。ああ、ただいま」

 

 

それから少しすると織斑先生と山田先生がこちらに来る。

 

 

千冬「黒牙。更識から聞いた。今回の件と例の件の話しはしてくれるのだろ?」

 

雷真「はい。ですが一度部屋に戻り、必要な物を取りに行きます。それから刀奈、虚さんと本音も呼んでくれ。織斑先生に話すことは俺が行方不明になった二年間に関わる話しだ」

 

刀奈「わかったわ」

 

千冬「それでは30分後にまたここ、第三アリーナに集合だ」

 

雷真「はい」

 

 

自室に戻り、お義父さんに送ってもらった着替えの入ったキャリーバックの中にお守りの代わりに入れておいた。オーブ軍の制服を取り出す。

 

 

雷真「本当はお守りのつもりで持ってきていたんだがな……」

 

 

学園の制服からオーブ軍の制服に着替えて、アリーナに向かう。

アリーナに着くと、そこには織斑先生、刀奈、簪、虚さん、本音が揃っていた。

 

 

千冬「よし、集まったな。ついてこい」

 

 

織斑先生に言われるままついていく。

 

 

刀奈「ねぇ、雷真」

 

雷真「なんだ?」

 

刀奈「その服はなに?コスプレ?」

 

雷真「それについても後で皆に話す」

 

千冬「着いたぞ。ここは、IS学園でも極秘区画に入る。他言するなよ」

 

 

織斑先生の言葉に皆、頷く。

 

 

千冬「では、黒牙。先日、話した。お前のIS、【GAT-X105 ストライク】について話してくれ」

 

雷真「わかりました。ですが、まずは謝罪をさせてください。刀奈たちもすまない。今まで待たせたな」

 

雷真「改めて自己紹介をさせていただきます。」

 

 

雷真は姿勢をただし、オーブの敬礼をする。

 

 

刀奈「雷真?」

 

雷真「自分はオーブ連合首長国、第二宇宙艦隊アークエンジェル所属、クロキバ・ライシン中尉であります。そして、書類では満15とありますが、実際は満18であります」

 

虚「雷真くんが……」

 

本音「軍……」

 

簪「人……」

 

刀奈「うそ……」

 

 

刀奈たちはいまだに雷真が軍人であることを信じられないでいた。しかし、千冬だけは違った。クラス代表決定戦で見せた初心者とは思えないバレルロールに戦い方、殺気の出し方。何もかもが軍人なら納得できると思った。

 

 

千冬「それでは黒牙中尉。貴君が現在所持している専用機、【GAT-X105 ストライク】について話してもらいたい。ならびに、今回の襲撃時に貴君が私に緊急通信で話した未確認ISについて話してくれ」

 

雷真「了解!まずは山田先生、ストライクをモニターか、何かに接続できませんか?」

 

真耶「わかりました」

 

真耶「黒牙くん、接続できましたよ」

 

雷真「ありがとうございます。ストライク、コードファイル、コズミック・イラを起動」

 

 

『音声認識を起動。音声情報、クロキバ・ライシンを検知。コードファイル、コズミック・イラを起動します』

 

 

モニターにはストライクからコズミック・イラのデータが映し出され、皆、モニターに目が釘付けになる。

 

 

千冬「これは…………」

 

雷真「それでは、今から自分がこちら側の世界で行方不明になった二年間の話からですが、実際はコズミック・イラという世界で、年号が西暦ではなく、コズミック・イラ70から74までの四年間のご説明をさせていただきます」

 

 

それから雷真の口から出た話はみな、信じ難い物であったが、ストライクによって映しだされる映像は本物だと言わざるを得ない。

 

C.E.70に起きた、血のバレンタイン。C,E71に起きたザフトによる、ストライク以外のGATシリーズの奪取、ならびにヘリオポリス崩壊、低軌道会戦、第二次ビクトリア攻防戦、マラッカ海峡突破戦、オーブ防衛作戦、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦などのC,E74のユニウス戦役が終結するまでの四年間の話を包み隠さず全てを話した。

 

 

雷真「…………以上です」

 

千冬「ふむ……俄には信じ難い話だが、貴君の目を見るに本当のようだな」

 

雷真「信じていただき、ありがとうございます」

 

千冬「では、後日改めて、今回の襲撃に現れた、バビ、グフという機体の詳細を話して貰いたい。勝手にこちらが調べたらマズいのだろう?」

 

雷真「はい。もし、ストライクや他の機体がこの世界で作られたら戦争が起きかねませんから」

 

千冬「わかった。では黒牙中尉としての話は終わりだ。今からはIS学園の一年一組に所属する黒牙雷真に話す」

 

雷真「はい 」

 

千冬「明後日まで反省文50枚と1日の謹慎処分だ。今回は助けられた、黒牙」

 

雷真「いえ、俺は守るもののために戦っただけですから」

 

千冬「そうか。では解散!」

 

 

織斑先生の号令でその場を後にして、アリーナから出て寮に戻る。それと先ほどの話の所為か空気が重い。

 

 

刀奈「ねぇ、雷真」

 

雷真「なんだ?」

 

刀奈「さっきの話は全て本当なの………? 」

 

雷真「本当だ。俺はこの手で何人もの人を撃って、殺した」

 

刀奈「そう……。」

 

雷真「今から一方的に話すぞ。もし、こんな人殺し野郎と今後一緒に居たくないなら、二人とも婚約を破棄してくれて構わない。俺には止める権利はないから」

 

刀奈「ッ!?」

 

簪「ッ!?」

 

本音「ちょっ、ライライ!?」

 

虚「雷真くん!?」

 

雷真「それから虚さんに本音。もしかしたら、これが刀奈と簪の婚約者として最後のお願いかもしれませんが今日は二人をお願いします。じゃあ」

 

 

俺はそれを最後に逃げるように走り出した。本当は知ってほしくなかった。けれど、それは俺の勝手なエゴだ。

 

自室に戻り、月が照らす夜空を見る。

 

雷真「…………」

 

 

窓際の椅子に腰を落として、自分で淹れたコーヒーを飲む。

 

雷真「にがっ!」

 

雷真「やっぱり、ブラックコーヒーは苦いですよ。バルトフェルトさん」

 

 

雷真はコーヒーの良さを教えてくれた元ZAFTの隊長で、ストライクに敗れた後はZAFTのジェネシス計画を止めるために力を貸してくれた、戦友を思い出している。

 

 

 

 

バルトフェルト『まだまだ、君もお子ちゃまだな、少年。コーヒーが普通に飲めるようになれば、一人前の男さ。それに世界ではコーヒーのように苦い時があるのを忘れるなよ』

 

 

 

 

 

雷真「いつまでも甘えてられないんだよな」

 

 

 

コーヒーを飲み干すとシャワーを浴びて床に付く。明日、刀奈と簪からどんな答えが来ようが受け止めるしか自分にはできないと覚悟を決めて。

 

 

 

昨日の未確認ISとバビ、グフの襲撃から翌日。俺は今、寝苦しく感じている。

 

 

雷真「く、苦しい」

 

 

その原因を確かめるために首を動かすと掛け布団に二つの大きな山が出来ていた。

 

 

雷真「なんだ?」

 

大きな山の正体が気になり、掛け布団を剥ぐとそこには……寝間着姿の刀奈と簪が俺の横で人の腹を器用に半分こして枕代わりに使い寝ている。

 

 

雷真「こいつら……」

 

刀奈「すぅ~、すぅ~」

 

簪「ふにゅ~」

 

雷真「ったく。おい、起きろ二人とも」

 

「「ふぁ~あ、おはよう雷真」」

 

雷真「おはようさん。てかお前ら。昨日、あんなことがあったのに、よく人の腹を枕にして寝られるな?」

 

刀奈「だって、ねぇ?」

 

簪「うん。だって、ねぇ?」

 

 

その首を傾げながら顔を見合わせる所は本当に双子だからそっくりだな、おい。

 

 

雷真「で、昨日の答えは言うのか?」

 

刀奈「ええ」

 

簪「うん」

 

雷真「それじゃ、言ってくれ。どんな結末でも俺はお前たちの意見を飲み込むから」

 

刀奈「それじゃ……」

 

簪「せ~の」

 

 

「「今まで通り、私たちは雷真が好きだから、離れない!」」

 

 

雷真「それが答えでいいのか?」

 

刀奈「そうよ」

 

簪「雷真は私たちのヒーローだから」

 

雷真「でも、俺は人を殺してるんだぞ?お前たちと違って、俺の手は血で汚れているんだぞ?」

 

刀奈「そうね。でも、貴方は誰かを守るために銃を手にした」

 

簪「そうするしかないって思ったんでしょ?」

 

雷真「…………」

 

刀奈「けれど、そのことを仕方ないとは言わないし、言わせない」

 

簪「だから、その奪った命の分も幸せにならないと」

 

雷真「…………わかった。これからもよろしく頼む」

 

刀奈「ええ!」

 

簪「うん!」

 

 

本当に二人には敵わないな。こんな俺を受け入れてくれるのだから。

 

 

 

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