自由と白式   作:黒牙雷真

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第21話

昼間にビーチで思う存分に遊んだ、俺たちは海の家のシャワー室を使い。ある程度まで、海水や砂などを落としたあと旅館に戻り、夕食の時間までのんびりと過ごし、今はみんなで大広間で夕食を食べている。

席順は…………。

 

刀奈、俺、シャルロット

 

【テーブル】

 

セシリア、一夏、相川さん

 

の順だ。

 

簪はクラスが離れているのでドンマイ……。

 

 

一夏「うん、美味い!流石は、本わさ」

 

 

一夏は夕食に出てくる。新鮮な魚の刺身にワサビを付けて食べたあと、感想を口にした。

 

 

シャル「本わさ?」

 

雷真「シャルロットはまだ、日本に来て日が浅いからな。一夏が言っているのは多分、本ワサビの方だ思うけど。で、本ワサビっていうのは、元々こんくらいの約10cmほどの緑色の物をすりおろした物なんだ。そんで、市販で売られているのは、わさびと化学調味料なんかを混ぜ合わせた物なんだ」

 

シャル「へ~、どれどれ?」

 

 

シャルロットは俺のワサビの説明を聞いて、興味が湧いたのか、お皿に乗っているワサビの塊をそのまま食べようとしたので慌ててそれを止める。

 

 

雷真「シャルロット!ストップ、ストップ!」

 

シャル「えっ?」

 

雷真「シャルロットは、ワサビは初めてなんだから、ほんの少しだけ、自分の舌に乗せて味を確かめた方がいいぞ?でないと、あとで後悔するから」

 

シャル「わかった。雷真がそういうなら」

 

 

そして、シャルロットは本当にお箸の端っこに付いたくらいの量でワサビを口にする。

 

 

シャル「っ!?」

 

雷真「どうだ?」

 

シャル「風味があって美味しいけど、雷真の言う通りにしておいて正解だったよ」

 

雷真「なら、良かった」

 

 

そして、俺も刺身を食べることにした。しかし、前の席に座っている、セシリアが何故かモジモジし始めたのだ。

 

 

セシリア「んん……」モジモジ

 

一夏「大丈夫か?正座がダメならテーブル席に移動したらどうだ?」

 

セシリア「へ、平気ですわ」ニコリ

 

セシリア「この席を獲得するのにかかった労力に比べたら、このくらい」ボソッ

 

 

セシリアも苦労しているようだ。俺は、一夏と違い、もう、あまり唐変木ではないので大丈夫な、はず……。

 

 

一夏「席?」

 

セシリア「い、いえ!何でもありませんわ!」アタフタ

 

 

セシリアが一夏の質問にアタフタしているところをシャルロットが援護する。

 

 

シャル「一夏、女の子にはいろいろあるんだよ」

 

雷真「そうだぞ、一夏。俺も、それでたまに後悔することがあるから、気をつけろよ?」

 

一夏「そうなのか……?」

 

 

「「そうなの(そうなんだよ」」

 

 

一夏「…………」

 

 

そのあと、一夏は何か視線を感じたのか箒の方を見た。

 

 

雷真「箒も苦労してたみたいだな」

 

セシリア「……んはっ!」

 

 

セシリアがなんとも艶かしい声を上げて、正座から膝を崩す。

 

 

一夏「セシリア、そんなにキツイなら、俺が食べさせてやろうか?」

 

セシリア「それは本当ですの?」キラキラ

 

 

セシリアは一夏の発言に目をキラキラと輝かせながら一夏に迫る。

 

 

セシリア「食べさせてくれると言うのは?」キラキラ

 

一夏「お、おう……」

 

セシリア「せっかくのお料理、残したりしては申し訳がありませんもの」

 

 

そう言って、セシリアは一夏に自分のお箸を渡した。

 

 

刀奈「ねぇ、雷真」

 

雷真「俺はやらないぞ」

 

刀奈「何も言ってないじゃない!」

 

雷真「言わなくても分かる。この場のあの状況で、分からないバカが一夏以外にいるか?」

 

刀奈「それはないわね」

 

雷真「なら、自分で食べろ」

 

刀奈「ちぇ~」

 

 

それからは、俺たちは普通に食べるが……。一夏がセシリアに『あ~ん』をするから騒がしくなってきた。

 

 

雷真「あのさ、静かに食わせてくれないか?それと、騒ぎ過ぎると織斑先生の出席簿が脳天に落ちるぞ?」

 

 

「「「「………………」」」」」

 

 

俺の言葉で、さっきまで騒いでいた女子たちの声が【シーン】となり止む。

そして、一夏の後ろの戸から織斑先生がやって来た。

 

 

千冬「織斑、あまり騒動を起こすな。鎮めるのが面倒だ。それと黒牙、騒動を鎮めるために私を使うな」

 

雷真「ですが、織斑先生がそれだけ偉大だと生徒たちが皆、理解していることの証明だと、俺は思いますが……」

 

千冬「この、屁理屈め」

 

雷真「褒め言葉と受け取っておきます」

 

 

そのやり取りの後、織斑先生は戸を閉めて、自分の席に戻って行った。

 

 

「「「はぁ~」」」

 

 

みんなは、俺と織斑先生のやり取りで息が詰まる思いをしていたようで、一斉に安堵の息を吐く。

 

 

一夏「という訳で、セシリア。悪いけど、自分で……」

 

セシリア「…………」プクー

 

 

セシリアは納得が行かない、という感じで頬を膨らませている。

その後、一夏はセシリアに何か耳打ちをすると、セシリアは頬を赤くする。

 

 

雷真「(また、面倒なことにならなければいいが)」ズズズズ

 

 

俺は緑茶を飲みながら、そう思っていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽

 

 

 

 

 

 

 

夕食を食べ終わり、部屋でのんびりと昼間の小説の続きを読みながら、ブレンドコーヒーと売店で売っていたミルクを混ぜて、カフェオレを飲んでいると、扉からノックが聞こえる。

 

 

【コン、コン、コン】

 

 

雷真「は~い」

 

部屋の扉を開けるとそこには箒がいた。

 

 

雷真「あれ、箒。どうしたんだ?一夏の部屋なら隣だぞ?」

 

箒「いや、織斑先生からシャルロットたち、三人を呼んでこいで来いと言われて」

 

雷真「シャルロットたちを?」

 

箒「ああ。呼んでもらえるか?」

 

雷真「わかった。刀奈、簪、シャルロット、ちょっと来てくれ」

 

 

俺は三人を呼んで、箒が先程俺に言ったことを伝えると何故か三人は少し体が強張っていた。

お前たち、今度は何をしでかした…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽

 

 

 

 

 

私たち三人は、箒ちゃんに織斑先生から呼ばれていると言われたので、体が強張ってしまったが、なんとか体を動かし、隣の織斑先生の部屋に向かう。

 

 

刀奈「あれ?鈴ちゃんに、セシリアちゃん、ラウラちゃんも」

 

箒「織斑先生、三人を言われた通り、連れてきました」

 

千冬「ご苦労。座ってくれ」

 

 

織斑先生に言われるまま、私たちも畳に座る。

 

 

千冬「お前たちを呼んだのは他でもない。二人のことだ」

 

 

織斑先生が示す、二人とは間違いなく、雷真と一夏くんのことだろう。そして、この場にいるメンバーは雷真と一夏くんに好意を寄せている女子の集まりなのだから間違いない。

 

織斑先生は缶ビールを開けて、飲みだす。

 

 

千冬「で、お前ら。あの二人のどこが良いんだ?」

 

 

「「「!?」」」

 

 

千冬「まぁ、確かに一夏は役に立つ。黒牙の方は更識姉妹が一番知っているだろうが言わせてもらう」

 

千冬「二人とも家事や料理はなかなかのものだろう。黒牙の方は知らんが一夏はマッサージも上手い。付き合える女は得だろうな」

 

刀奈「…………」

 

簪「…………」

 

シャル「…………」

 

箒「…………」

 

セシリア「…………」

 

鈴「…………」

 

ラウラ「…………」

 

千冬「どうだ、欲しいか?」

 

「「「くれるんですか?」」」

 

 

私と簪ちゃん、シャルロットちゃんの三人以外のこの部屋にいる女子は織斑先生の言葉に一夏くんをくれると期待したのか前のめりになる。

 

 

千冬「やるか、バ~カ」

 

 

そう言って織斑先生は立ち上がる。

 

 

「「「ええ…………」」」

 

 

一夏くんのことを好いている女子たちは心底残念そうな声を漏らす。一夏くん、早くこの子たちの好意に気づいてあげて、見てる私がこの子たちを可哀想に思えてくるから。

 

 

千冬「女ならな、奪うくらいの勢いで行かなくてどうする?女を磨けよ、ガキ共」

 

刀奈「あの、織斑先生」

 

千冬「なんだ、更識姉」

 

刀奈「何故、私たちが呼ばれたのか、いまいち分からないのですが?」

 

千冬「そうだったな。単刀直入に聞く、お前たち三人と黒牙の馴れ初めを聞かせてほしい」

 

 

「「「へっ?」」」

 

「「「ええええええ!?」」」

 

 

刀奈「そ、そんなことをいきなり言われても……」

 

簪「そ、そうですよ!」

 

シャル「こ、心の準備が……」

 

千冬「なら、黒牙の奴に聞くとするか」

 

刀奈「雷真に言われるよりは自分の口で言いますよ……」

 

簪「私もお姉ちゃんと同じです……」

 

シャル「僕も……」

 

千冬「そうか、では誰から話す?」

 

シャル「じゃあ、僕から…………。みんなも知っている通り、僕はある都合で男の振りをしてIS学園に来たんだけど、それが雷真にバレてね」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

シャル「もしも、そのことがバレたら、僕の人生は真っ暗だったはずなのに、雷真はそんな僕を救ってくれたんです。そして雷真は、僕にこんな言葉をかけてくれたんです」

 

 

 

~回想~

 

 

 

雷真『お前はそんなんでいいのか?それに俺たち子供は親を選べない。親は子を望めるが俺たち子供はそんなことすら望めないんだよ!俺たちは産まれてからじゃないと何にも望めないんだ』

 

雷真『だからシャルル。今は望んでいいんだよ。お前が生きたいように、暮らしたいように、過ごしたいように、心の底から願う。お前自身の生きざまをさ』

 

雷真『安心しろ、俺がお前の……最後の希望だ』

 

 

~回想終了~

 

 

 

シャル「だから、もし許されるのであれば、こんな嘘付きな僕だけれど……。彼の、雷真の側にずっと居たいって思えたんです」

 

千冬「そうか……。デュノアは黒牙に出会えて良かったようだな」

 

シャル「はい!」

 

刀奈「それじゃ、次は私と簪ちゃんね」

 

簪「そうだね」

 

千冬「なんだ?お前たち姉妹は偶然にも同じタイミングで黒牙を好きになったのか?」

 

刀奈「はい。実は私たちの家はある名家の家柄で、それなりに恨まれたりするんですよ」

 

簪「そんな家柄のため、小学生4年生の時にお姉ちゃんと私は誘拐されてしまって……」

 

刀奈「そして誘拐された私たちを助けに来てくれたのが……」

 

千冬「当時、10歳のお前たちと同じ歳である、黒牙だった訳か……」

 

刀奈「はい……。木刀を持って一人だけで雷真は、武器を持った何十人という大人たちを一人残らず行動不能まで追い込み、傷だらけで私たちを救ってくれたんです」

 

鈴「凄いわね、雷真の奴」

 

ラウラ「そうだな。当時、10歳で何十人の大人を相手するのは私でも辛いだろうな」

 

セシリア「まさに、お二人の白馬の王子様ですわね」

 

箒「そうだな」

 

千冬「黒牙は、その頃から戦いの道に進んでいたのか……」

 

 

その後は織斑先生の仕事の愚痴や箒ちゃんたちの一夏くんへの愚痴や私たちの雷真を落とした必勝法などを話していたら、就寝時間に近くなっていたので自分たちの部屋に戻ることになった。

 

 

 

 

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

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