自由と白式   作:黒牙雷真

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第27話

【パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!】

 

 

とある部屋の中で銃が発砲される音が響く。そして、その銃の発砲音の主は約10日前にIS学園の臨海学校の途中でカオスたちに撃ち落とされたはずが、何故か再びコズミック・イラに帰ってきてしまった、黒牙雷真である。

 

 

雷真「クソッ!」

 

 

早く、刀奈や簪、シャルロット………みんなの所へ帰らないといけないのに、帰る手段が見つからない。

前はジャンク屋のロウ・ギュールさんの試作型次元転送装置で帰れたけれど、今回はそうはいかなかった。

ロウさんに頼んで次元転送装置を使えるか聞いてみたら…………。

 

 

ロウ『ありゃ、ダメだ。俺も何度もやってるが上手く作動しねぇんだ。わりぃな』

 

 

との事だった。

 

 

なので、俺はカオスたちがいる世界に刀奈たちを置いて来たことやどうにかして早く帰らないということに焦り、射撃練習が上手くいかなかった。

 

そうしていると、射撃場の入り口からある人がやってくる。

 

 

バルトフェルト「随分と焦っている様だな、少年?」

 

雷真「バルトフェルトさん……」

 

バルトフェルト「今は焦っても、何にもならんだろう」

 

雷真「けれど、俺は…………早く帰らないといけないんです。でも、【想い】だけじゃ何にもならない。けれど【力】も足らない。その証拠に首飾りもこの有り様です」

 

 

俺は自分の首から元々は白く、今はその色を失ったかの様に灰色と化した、元ストライクの待機状態だった首飾りをバルトフェルトさんに見せた。

 

 

バルトフェルト「今はまだ、その時ではないのだろう」

 

雷真「『今は』ってどういうことですか?」

 

バルトフェルト「時が来るまで身体を休めるんだな。『その時』のために」

 

 

そう言って、バルトフェルトさんは射撃場から出て行ってしまった。

 

 

雷真「どういうことなんだ?」

 

 

俺は訳が分からないので、頭を冷やすためにプラントのアークエンジェルクルーが宿泊している施設に戻ることにした。

 

そして、宿泊施設の自室でシャワーを浴びて頭を冷やし終わり、ベッドで仮眠を取っていると呼び出しのベルが鳴る。

 

 

雷真「はい」

 

???『あっ、ライシンさん?どうも、メイリンです』

 

雷真「メイリン?どうしたんだ?」

 

メイリン『いえ、ただ……一緒にランチとかどうかなって……』

 

 

部屋の中の時計を見ると時刻は13時を示していた。

また、今頃になって急に腹の虫が栄養を求めて鳴き出した。

 

 

雷真「わかった。10分だけ待ってくれ」

 

メイリン『わかりました』

 

 

ミリアリアに買ってもらった私服に着替えてから、ウェストポーチに財布に携帯端末、身分証と羽の首飾りを首にかけ、それから念のため上着の下にショルダーホルスターを着用して、ホルスターにはオーブ軍の拳銃を入れてから部屋を出る。

 

 

雷真「悪い、待たせた」

 

メイリン「いえ、大丈夫ですよ」

 

 

メイリンと一緒に施設のフロントへ行き、部屋の鍵を預けてから、自動運転自動車に乗り、メイリンがオススメするカフェへと向かう。

 

自動運転自動車に乗りながらプラントの街並みを見ていると昔より、子供や若い夫婦が増えた気がするのでメイリンに聞くことにした。

 

 

雷真「なぁ、メイリン」

 

メイリン「なんです?」

 

雷真「数年前より、プラントに子供や若い夫婦が増えてないか?」

 

メイリン「それはですね、ライシンさんが元の世界に帰られた後、プラントに『ナチュラル』の方々が技術交換のために来られたんですよ。それで、そのうちに『コーディネイター』と『ナチュラル』との夫婦が生まれて、今では『ハーフコーディネイター』の子供が多くなっているんです」

 

雷真「なるほどな。こっちの世界では、やっと『ナチュラル』と『コーディネイター』の平和が訪れた訳か……」

 

メイリン「そういえば……ライシンさんは『ナチュラル』と『コーディネイター』、どっちなんですか?」

 

雷真「何でそんなことを聞くんだ?」

 

メイリン「いえ、ただライシンさんの過去のデータを見ていた時に『コーディネイター』と『ナチュラル』……どちらも記録されていなかったので」

 

雷真「なるほどな。俺は多分……『コーディネイター』なんだろうな」

 

メイリン「多分?」

 

雷真「メイリンも知っていると思うが俺は別の世界の人間だ。その世界には遺伝子操作技術は"こっち側(コズミック・イラ)"の様に確立されていないから………技術的にはクローンまでだな」

 

メイリン「クローン……」

 

雷真「だから、俺は"こっち側(コズミック・イラ)"で言えば、『コーディネイター』なんだ」

 

メイリン「そうだったんですね。あっ、そろそろカフェに着きますよ」

 

雷真「わかった」

 

 

カフェに着いた俺たちはテラス席に座ることにした。

席に着いたあと、メニューで食べる物と飲み物を頼み。あっちでの事やこちら側のことを話し合っていた。 話がいい感じで終わるとウェイターの人が俺たちが注文した品をとどけてくれた。

 

 

「以上でよろしいでしょうか?」

 

雷真「はい、大丈夫です」

 

「では、ごゆっくり、どうぞ」ペコリ

 

 

ウェイターが一礼して去ってから俺たちは品を食べる。

半分くらい食べ終わると店の向かい側から聞きなれた声が聞こえてきた。

 

 

???「オーイ!メイリン、ライシンさん!」

 

雷真「ん?」

 

メイリン「お姉ちゃん!?」

 

 

その声の正体はメイリンの実の姉であり、ザフト軍のキラが隊長を務めている部隊の隊員の一人でインパルスのパイロットである、ルナマリア・ホークだった。

 

 

???「おい、ルナ。いきなり、走り出すなよ!車が来たら危ないだろう?」

 

メイリン「それにシンまで!」

 

シン「あれ、メイリンにライシンさんまで?」

 

 

ルナマリアに文句を言いながら付いてきたのはルナマリア・ホークの彼氏で、ルナマリアと同じくヤマト隊所属のデスティニーのパイロットである、シン・アスカだ。

 

 

雷真「よう、ルナマリアにシン。二人は今日は非番でデートか?」

 

シン「ええ、今日は珍しく。キラさんが急遽、2日間も休暇にしたんですよ」

 

ルナマリア「そういう、ライシンさんはうちのメイリンとデートですか?」

 

メイリン「お姉ちゃん!」

 

シン「バカ、ルナ、お前!」

 

雷真「デート……か」

 

ルナマリア「えっ、なに?」

 

シン「お前!前にキラさんからライシンさんが何で"こっち側(コズミック・イラ)"に帰ってきたのか、その理由を聞いていなかったのかよ!」

 

ルナマリア「あっ……すみません、私……」

 

雷真「いや、気にするな。今は焦っても何にもならないし、出来やしないから……」

 

 

俺はただ、ただ……自分の無力さにイラつきながら、今も尚、カオスたちと戦っているであろう、婚約者や仲間たちのことを思いながら人工の空を見上げることしかできなかった。

 

 

雷真「刀奈、簪、シャルロット…………俺は」ボソッ

 

メイリン「…………」

 

 

 

 

▽▲▽

 

 

 

 

雷真たちがカフェに居たのと同時刻。複数の作業員がある機体の整備を急ピッチでしていた。

 

 

マードック「急げ!この機体の整備やらなんやらを明日の7時までに終わらすんだ!いいな!!」

 

「「「はい!」」」

 

 

マードックの掛け声でオーブ、ザフトの整備班は働き蟻の如く整備をしていく。

 

 

キラ「マードックさん」

 

マードック「おお、キラか」

 

キラ「どうですか、機体の整備は?」

 

マードック「動力源は前のをそのまま使えるから良いんだが、アレにISとかいう奴のデータを移すのがな……」

 

キラ「やっぱり、難しいですか?」

 

マードック「難しいってレベルじゃねぇよ……。一週間前に、ここのドッグにストライクをぶちこんでからコイツにデータを移してるが…………エラーが大量に発生して、その修正作業で手一杯よ」

 

キラ「そんなにですか?」

 

マードック「まったく、こんな物を作り出した。シノノノ・タバネって博士はお前さん並だよ」

 

キラ「え?僕たちと……?」

 

マードック「多分、アイツの世界には『コーディネイター』を作る技術なんてないはずだ。だから、アイツとシノノノ・タバネは……」

 

キラ「『ナチュラル』でありながら『コーディネイター』だと?」

 

マードック「そこら辺の詳しいことは俺には分からねぇ。けど、分かることはデータをコイツに移す事だけだ」

 

キラ「そうですね。では、あとをお願いします」

 

マードック「あいよ」

 

 

 

 

 

▽▲▽

 

 

 

カフェでメイリン、ルナマリア、シンと共に昼飯を食べたあと、四人でショッピングモールへ行くことになった。

 

 

メイリン「ライシンさん、どうですか?」

 

雷真「うーん…………少し派手過ぎないか?」

 

メイリン「そうですか?私は可愛いと思うんですけど……」

 

雷真「流石にレインボーは派手だろ」

 

 

現在、俺はメイリンとアパレル店でメイリンに服の感想を聞かれている。

また、シンたちはというと…………。

 

 

ルナマリア「ねぇ、シン。これなんて、どう?」

 

シン「どれも似たような感じじゃん……」

 

ルナマリア「似てないわよ!こことか、装飾や絵が違うのよ」

 

シン「どれも一緒だよ」

 

 

と漫画でよくあるような、主人公のセリフとヒロインのセリフを言い合っていた。

その後は普通に夕食をショッピングモールで食べて宿舎へ戻った。

 

そして、翌日。時刻は7時30分。俺は、何故かキラに呼び出されて、キラ、ラクス、アスラン、カガリの四人について来いと言われたので四人の後を追っている。

 

 

雷真「なぁ、キラ。もう、行き先を教えてくれても良いんじゃないか?」

 

キラ「う~ん、そうだね。じゃあ、行き先を教える前に質問ね」

 

 

 

 

 

~BGM:キラ、その目覚めと決意~

 

 

 

 

 

雷真「質問?」

 

キラ「君は何のために、そんなに焦って力を求めてるの?」

 

雷真「…………」

 

キラ「僕は前に君へ【力だけでも、思いだけでも】と送ったはずだよ?」

 

雷真「分かってる。俺は元の世界で改めて理解したんだ。力と思いがあっても、それが足らなければ何にも守れないって…………」

 

キラ「…………」

 

雷真「今の俺には思いしかないから…………。だから、今度こそ、大切な【花】を守りたいんだ。あの時の様に守れたはずの誰かを守れないなんて…………俺は嫌だ!」

 

 

過去に俺は地球降下の時にキラと共にスペースシャトルに乗る少女に必ず守ると約束したのに、守れなかった。

 

 

キラ「分かった。やっぱり、君は何処か僕と似ているね」

 

雷真「えっ?」

 

キラ「さっ、着いたよ」

 

 

キラたちに連れて来られたのはザフトの機密施設の一番奥の扉の前だった。

 

 

雷真「ここ?」

 

キラ「うん。ラクス、カガリ、お願い」

 

ラクス「わかりましたわ」

 

カガリ「分かった」

 

 

ラクスとカガリは扉の左右にある、扉を開ける機械に近付き、そして…………

 

 

ラクス「カガリさん、行きますわよ」

 

カガリ「ああ」

 

ラクス「3」

 

カガリ「2」

 

ラクス「1」

 

「「0!」」

 

 

二人がドンピシャのタイミングで機械に何かカードの様な物をスライドさせると【ピーーーー】と何かが反応する音ともに扉が開く。けれど、扉の先は真っ暗で何にも見えなかった。

 

 

キラ「付いてきて」

 

雷真「…………」

 

 

再び、キラに言われるまま扉の先に入る。

約25歩程、扉の先の部屋を直進に進むと…………

 

 

【パッ!】

 

 

雷真「まぶしっ!?」

 

キラ「見てご覧、ライシン」

 

雷真「えっ?」

 

 

俺はいきなり照明が着いて目を瞑り、その後、目が慣れたのでキラに言われるまま正面を見るとそこには………。

 

 

雷真「フリー……ダム?」

 

キラ「そう、フリーダム。前に僕が乗っていた機体だよ」

 

雷真「でも、何で!フリーダムはインパルスに墜されたはずじゃ…………」

 

カガリ「それは、ザフトとオーブが共同で回収して、復元したんだよ」

 

雷真「回収って…………」

 

ラクス「元々は展示会に展示する予定の機体でしたのよ?」

 

雷真「ならなんで…………まさか!?」

 

キラ「そう。これが雷真、君へ送る、僕たちからの新たな【剣】だよ」

 

雷真「新たな、剣…………」

 

キラ「ちょっと、乗ってごらん?」

 

雷真「ああ…………」

 

 

俺は真っ直ぐにフリーダムへと近付き、コックピットへ乗り込むためにフリーダムに触ると首にかけていた、色褪せた羽の首飾りが…………

 

 

雷真「えっ!?」

 

 

摩訶不思議の現象で俺の首から羽の首飾りが独りでに動き、俺の目の前で色褪せた羽から新たな羽へ変化した。

 

それは青い羽に白いラインが入った、フリーダムに似た羽へと変わったのだ。

 

 

雷真「これは……………ッ!!」

 

 

分かる。これは……フリーダムだ。

もしかして、フリーダムがISになったのか?

 

 

キラ「どうしたの?」

 

雷真「キラ、首飾りが……フリーダムになった」

 

キラ「えっ?」

 

アスラン「多分、新たな力を得て、首飾りはフリーダムをISとして変化させたんだろう」

 

雷真「なら、フリーダムは……」

 

ラクス「貴方の専用機になったと言うことですわ。ライシン」

 

雷真「俺の新たな専用機、フリーダム」

 

カガリ「さっ、早く試運転をして来いよ。フリーダムの発進許可は取ってある。帰投はアークエンジェルの方だからな」

 

雷真「分かった」

 

 

俺は今度こそ、フリーダムのコックピットへと乗り込み、フリーダムの電源を入れる。

 

 

 

Generation

 

Unsubdued

 

Nuclear

 

Drive

 

Assalt

 

Module

 

 

 

次にフェイズシフトの電源を入れる。すると、フリーダムに繋がれていた、何種類もの配線やコードなどが外れる。また、フリーダムの装甲の色も、青、黒、白へと変化させる。

 

 

雷真「黒牙雷真…………フリーダム!行きます!」

 

 

出撃する前の……ルーチンワークと化した、言葉を言うと俺はフリーダムのアクセルペダルを踏み込み、一気に上へ飛翔する。

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

  • アヴァロン・フリーダムの使用禁止
  • アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
  • 別機体のビーム兵器を使用
  • 別の機体を使う
  • 雷真は見学

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