雷真がゲートを潜っている少し前。作戦室ではIS学園の教師陣が福音ならびにカオスたちの現在位置を逐一確認していた。
真耶「全機、停止していますね」
千冬「…………」
真耶「本部はまだ、私たちに作戦の継続を?」
千冬「解除命令が出ていない以上、継続だ」
真耶「ですが、黒牙くんがロストした以上、どのような手であの四機を沈黙もしくは撃墜しろと?」
千冬と真耶が今後の作戦について話していると作戦室のドアがノックされる。
【コンコンコンッ!】
???「失礼します」
千冬「誰だ?」
???「デュノアです」
千冬「待機と言ったはずだ!入室は許可できない」
と千冬に一喝されてしまった。
ドア前で待機していたのはシャルロットの他にセシリア、鈴、ラウラの三人だった。
シャル「…………」
セシリア「…………」
鈴「…………」
ラウラ「教官の言う通りにするべきだ」
シャル「でも、先生だって一夏のことが心配なはずだよ。それに雷真だって、まだ本当に死んだ訳じゃないはすだよ…………」ポロポロ
鈴「シャルロット……」ギュッ
シャル「ありがとう、鈴」
セシリア「一夏さんもずっと目を覚ましていませんのに…………」
鈴「手当ての指示を出してから一度も様子を見に行っていないなんて……」
ラウラ「行っていないのではない。教官はいけないのだ、鈴」
鈴「どういうこと、ラウラ?」
ラウラ「私やセシリア、鈴はそこまで心に傷を負っていないだろう。無論、教官も」
セシリア「もしかして、自分よりも傷付いている者がいるから?」
ラウラ「ああ。十中八九、刀奈に簪。それにシャルロットもだ」
シャル「僕はまだ、二人に比べたら……」
ラウラ「お前が無理をしているのは皆、分かっている」
セシリア「ですが、箒さんに声をかけるくらい
は……」
ラウラ「今は福音とあのカオスとか言う未確認ISたちの捕捉に集中する。教官は自分ができることをやっているに過ぎない」
ラウラ「教官だって苦しいはすだ。苦しいからこそ、作戦室に籠っている。心配するだけで、一夏を見舞うだけで、福音やカオスたちが撃破出来るとでも?」
ラウラ「それよりも問題は…………」
▽▲▽
その頃、『更識』と部屋の表札に書かれた部屋の中では…………。
簪「お姉ちゃん……」
先ほど、摩耶から雷真のロストを聞かされて泣きながら意識を失った刀奈は、今まだに布団の中で涙を流しながら、雷真の名前を弱々しく呼んでいた。
刀奈「らい……しん……」ポロポロ
簪「グスッ……」ポロリ
簪「早く帰ってきてよ、雷真。約束、したじゃない。こんなお別れ、私は……私たちは嫌だよ」ポロポロ
簪も我慢が限界になったのか、その場で声をもらしながら泣いてしまう。
それから泣き止むまで少し経つと意識を失っていた刀奈が目を覚ます。
刀奈「う、う~ん。ここは…………?」
簪「お姉ちゃん」
刀奈「かん……ざし……ちゃん?」
簪「そうだよ、お姉ちゃん」
刀奈「私は…………はっ、雷真!」
刀奈「簪ちゃん、雷真は?雷真はどこに居るの!?」
簪「それは…………」
刀奈「あっ、そっか!雷真は今、お風呂に行ってるんでしょ?じゃないと…雷真が…雷真が……雷真が死ぬなんて夢は有り得ないもの」ポロポロ
簪「お姉ちゃん……」ポロポロ
刀奈「なんで……なんで、雷真が死なないといけないの?なんで、いつも雷真だけがこんな酷い目に遭うの?」ポロポロ
簪「…………」ポロポロ
刀奈「なんで……なんでなのよ……」ポロポロ
刀奈は涙を流しながら雷真が死んだことによりできた、胸の奥の感情を吐き出した。
涙が止まると二人は気分転換をするために浜辺に行くことにした。
そして、浜辺に行くと…………。
鈴「ざけんじゃないわよ!」
刀奈「鈴ちゃん?」
簪「鈴?」
二人が浜辺に着くと、そこには鈴と箒が揉み合っていた。
鈴「やるべきことがあるでしょうが?今、戦わなくてどうすんのよ?」
箒「もうISは…………使わない」
鈴「ッ…………!」
箒のその言葉を聞いた鈴は箒の顔を叩こうとするが鈴が叩く前に刀奈が動き出し、箒の頬を叩いた。
刀奈「甘ったれるな!」
鈴「刀奈…………それに簪も」
簪「…………」
刀奈「たかが、作戦を一回失敗しただけで、大切な人が傷付いただけで全てを諦めたような声を出すな!」
箒「…………」
刀奈「私なんか……私たちなんか、大切な人を失ったのに!」ポロポロ
箒「大切な人を……失った?」
鈴「箒は知らないだろうけど、私たちがザクたちを撃破した後に一夏たちのフォローに向かおうとした時、新たに未確認ISが現れてね」
鈴「それで、雷真が私たちを生かすためにそのまま…………」
箒「そんな…………」
刀奈「だから、貴女は甘ったるな!まだ、敵はそこに居るんだ!なら、敵を討ちなさい!」
箒「そうだな。やはり、私は甘ったれていたのだな。私は一夏の敵を討つ」
鈴「やっとやる気になったわね?」
鈴「あ~あ~、いい所は刀奈に全部持っていかれちゃったわ」
鈴は後ろを振り向き、そう声を発した。
そして、振り向いた先には、セシリア、ラウラ、シャルロットの三人がいた。
箒「な、なに?」
シャル「みんな、気持ちはひとつってこと」
セシリア「負けたまま、終わっていいはずがないでしょ?」
シャル「それに、僕たちは雷真の敵討ちをしなくちゃいけないからね」
それからは各自、大切な人の敵討ちの作戦を練ることにした。
鈴「ラウラ、福音とカオスたちの位置は?」
ラウラ「確認済みだ」
ラウラがそういうと、部分的にISを展開し皆に福音とカオスたちの座標を伝える。
ラウラ「福音は、ここから30km離れた沖合い上空に確認した。カオスたちは雷真がロストした孤島から全くと言っていい程、動いていない」
ラウラ「カオスたちにはなかったが、福音はステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩は持っていないようだ」
ラウラ「衛星による目視で発見した」
鈴「流石はドイツ軍特殊部隊。やるわね?」
ラウラ「お前たちの方はどうなんだ?準備は出来ているのか?」
鈴「当然、甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済み」
セシリア「こちらも完了していますわ」
シャル「僕も準備OKだよ」
簪「私も雷真のストライクからもらったデータにカオスたちのデータがあったから準備は万端」
箒「待ってくれ、行くというのか?命令違反ではないのか?」
刀奈「そうね、命令違反ね100%。けどね、箒ちゃん。私はね、自分の夫を殺した相手かもしれない奴を命令だからと言って諦められるほど、人間が出来てないのよ!」ギロリ
箒「!?」ゾワリ
箒が見た刀奈のその目は、復讐を誓った目をしていた。その瞳の色はどんな赤よりも暗い負の感情が詰まった紅色だった。
刀奈「それに箒ちゃんは敵を討つと言ったはずよ?」
ラウラ「お前はどうする?」
箒「私……私は……戦う。戦って、一夏の敵を討つ!今度こそ、敗けはしない!」
鈴「決まりね。今度こそ、確実に撃破するわ」
▽▲▽
みんなで敵討ちの作戦が決まったあと、私、簪、シャルロットちゃんはカオスたちを撃破することにした。
福音は箒ちゃん、セシリアちゃん、鈴ちゃん、ラウラちゃんが撃破することになった。
そして現在は空が白んでくる頃、私たちはカオスたちがいる孤島へ向かう。
簪「見つけた!」
刀奈「アイツらが雷真を…………」ギリ!
シャル「刀奈、気持ちは分かるけど落ち着いて」
刀奈「ごめんなさい、シャルロットちゃん」
雷真の敵である、カオスたちを見た私は恨みや復讐の心のあまり奥歯を噛んでしまう。
また、カオスたちは東西南北を一機ずつ守るように背中合わせで立っていた。他には作戦室で見たような鮮やかな色ではなく、色を失った灰色をしている。
これは、雷真が発進する前のストライクに良く似ている。
刀奈「簪ちゃん、お願い!」
簪「うん!いっけぇーっ!」
簪は打鉄弐式の武装の連射型荷電粒子砲の春雷を放つ。すると荷電粒子砲はそのままカオスたちに向かい…………
簪「ヒット!」
刀奈「よし、行くわよ!」
「「うん!」」
春雷を自分たちの突撃の合図にして、カオスたちに突撃する。また、先ほど放った春雷でできた爆煙が止むと、そこには灰色から鮮やかな色に変わったカオスたちが佇んでいた。
簪「やっぱり、雷真のストライクのようなビームライフルと違って、そこまで有効打にはなってないみたい」
刀奈「それでも、ダメージが入っているなら構わないわ」
シャル「そうだね。簪は引き続き、カオスたちに荷電粒子砲を当てて。この中で、簪だけがカオスたちにダメージを与えられるから」
簪「分かった」
刀奈たちの作戦は接近戦で刀奈とシャルロットがカオスたちと交戦し、隙ができたら簪が荷電粒子砲でカオスたちの
刀奈「お前たちは、雷真の仇!」
シャル「だから、僕たちが墜とす!」
刀奈「ハアアアアッ!」
シャル「ヤアアアアッ!」
刀奈とシャルロットがカオスたちに近接攻撃を仕掛けようとするとカオスたちのツインアイが輝き、カオスとセイバーが二人の前に躍り出る。
そして、私の蒼流旋をカオスが、シャルロットちゃんの近接ブレードをセイバーが、腕で受け止め、反対側の拳で攻撃してくる。
刀奈「盾で受け止めるまでも無い……。そう言いたいのか、お前たちは!」
刀奈「嘗めるなぁぁぁぁあ!!」
私は完全に頭に来たので右手に蒼流旋、左手に蛇腹剣を握り、カオスに突撃する。
シャルロットちゃんは近接ブレードを
刀奈「この、この、この、このォォォオ!」
槍と剣で連続の突き攻撃を繰り返すがカオスはそれを全て盾では無く腕で受け止める。
刀奈「くそっ!(このままじゃ、全然ダメージが与えられない!)」
カオスにダメージを与えられないことにイライラとしていると簪ちゃんから通信が来る。
簪「お姉ちゃん、離れて!」
簪ちゃんの指示でカオスから離れるとシャルロットちゃんが誘導してきたのかセイバーの位置とカオスの位置が一つに纏まり。そして…………。
簪「当たって!」
簪ちゃんの打鉄弐式から放たれた荷電粒子砲がカオスとセイバーに当たる。
その時、私の視界にはある物が映った。それを確かめるために私は浜辺の波打ち際に向かう。
シャル「刀奈?」
刀奈「…………」
波打ち際に着くとそこには…………。
刀奈「これは雷真のビームライフルとシールド。それにソードの剣…………」
何故か分からないけど、撃墜されたはずのストライクの武装である。ビームライフルとエールストライカーの対ビームシールドとソードのシュベルトゲベールが浜辺の波打ち際に漂着していた。
なので、それを直ぐに拾いあげる。
拾い上げているとシャルロットちゃんの声が聞こえくる。
シャル「簪!?」
刀奈「簪ちゃん!?」
シャルロットちゃんの声で簪ちゃんを見ると人型から変形したのか戦闘機の様な形に変わったカオスとセイバーが簪ちゃんを襲う。
私はビームライフルを手に取りながら願った。すると目の前にあるメッセージが表示された。
刀奈「雷真……ありがとう」
私はビームライフルをカオスたちに向けて放つ。
刀奈「行けぇぇぇぇえ!」
私が放ったビームはカオスの爪の様な部分に命中した。するとカオスとセイバーは簪ちゃんから離れる。
シャル「今のは…………?」
簪「お姉ちゃん……?」
刀奈「簪ちゃん、大丈夫?」
簪「う、うん。でも……それって……」
簪ちゃんとシャルロットちゃんは私が手に持つビームライフルを見て驚いているようだ。
刀奈「これは雷真が残した物よ」
簪「雷真が?」
刀奈「だから、受け取って!」
私は簪ちゃんたちに近付いて、対ビームシールドを簪ちゃんに、シュベルトゲベールをシャルロットに投げ渡す。
簪「雷真……」
シャル「雷真……」
刀奈「さぁ、行くわよ!」
「「うん!」」
カオスたちの装甲に対する武器を手に入れたことにより、カオスたちも本気になりビームライフルを私たちに向ける。
刀奈「ここからが正念場ね」
次第に熾烈を極めて行く、カオスとセイバーの二機との戦闘。しかし、この二機以外に、もう二機居ると考えると絶望的だが、彼は………雷真はそんな絶望の中、私たちを生かすために戦ったんだ。
だから、雷真の妻である、私たちがここで諦めたら天国にいる雷真やお母さんに顔向けができない。
刀奈「デェェイッ!」
カオスは私が相手を、簪ちゃんとシャルロットちゃんはセイバーの相手を今はしている。
カオスから放たれる赤と白の混ざったビームは全て回避して、緑のビームは蛇腹剣にナノマシンで海水を纏わせて相殺する。
たまにビット兵器が襲いかかってくるがそれもナノマシンで防ぎ、一つ一つ丁寧にビームライフルで落としていく。
刀奈「これでラスト!」
最後のビット兵器を墜とすと、それによりできた隙にカオスがまさかの
刀奈「かひゅっ!?」
簪「お姉ちゃん!?」
シャル「刀奈!?」
首を掴まれた私は、
刀奈「ぁぁ……ぁぁぁ……!」ジタバタ
簪「お姉ちゃん!」
シャル「くそっ、邪魔だよ!」
二人は私を助けようと此方にやってくるがセイバーがそれを邪魔して思うように来られないみたいだ。
また、SEもカオスによってドンドン削られていく。
そして、残り僅かになった。
刀奈「ぐぅ………ぁぁ……」
こんな所で、何も出来ないで私は死ぬの?
雷真を………大切な人を殺した仇も討てないで?
私が死んだら次は簪ちゃんとシャルロットちゃんなのかな?
せっかく、雷真が命懸けで守ってくれた命なのに…………。
刀奈「…ゴメン…ネ……ライシン」ポロポロ
私は意識が遠退いて行く最後に力を振り絞り、雷真に謝罪の言葉を残した。
すると私の頭の中にある声が響いた。
その声と音が届くとカオスが締めている息苦しさと喉の圧迫感がなくなる。
刀奈「カハッ、ケホッ、コホッ!」
簪「お姉ちゃん、大丈夫?!」
シャル「刀奈、大丈夫?!」
刀奈「ええ、私は大丈夫。でも、一体何が…………」
私は何故、助かったのか理解出来ないで居た。
簪「お姉ちゃんを助けたのは…………」
シャル「新しい未確認ISだよ」
刀奈「えっ?」
二人が見ている先を息を整えながら見るとそこには蒼い翼を背中に生やした…………。
刀奈「天使…………?」
アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて
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アヴァロン・フリーダムの使用禁止
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別機体のビーム兵器を使用
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別の機体を使う
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雷真は見学