自由と白式   作:黒牙雷真

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第33話

メディカル検査を受けてから、はや一週間が過ぎて現在は8月、時刻は朝の8時。学生である俺たちは夏休みのはずなのだが俺は例外だ。

 

 

千冬「それでは、黒牙中尉。職員の訓練を頼んだぞ」

 

雷真「了解」敬礼

 

 

織斑先生の頼みで、もしも仮にまたカオスたちのようなMS(モビルスーツ)型のISが現れた時に俺一人で対処できる数ではなくなった場合に備えてフリーダムでIS学園の職員と実戦訓練を行うことになった。

 

また、刀奈と簪は日本代表と日本代表候補のため、学園を離れている。なんでも、姉妹で歌の収録があるとかなんとか。

 

シャルロットは本国に一度帰国してもいいのだが、親とは最悪な仲だから俺と一緒に訓練に参加。

 

一夏たちは、一夏が補習のためレポート作成。箒は剣道場で竹刀を振っているとか。セシリアは鈴と特訓。ラウラは一時帰国、以上。

 

 

 

雷真「それでは皆さん。いきなり実戦をやると流石に戸惑うと思うので、同じクラスの本音さんと整備科の人たちに協力して用意してもらった。特製武器を使ったゲームをします」

 

 

本音を含めた今回の訓練のために特製武器を用意してくれた整備科の生徒には、ある店のスイーツ無料食べ放題のクーポンを渡して懐柔した。

 

 

職員「ゲームですか?」

 

雷真「そうです。ルールは簡単、この特製のペイント弾が入った射撃武器とペイント液が塗られてある近接武器で俺のことを当ててください。それも全員で」

 

職員「「「「「!?」」」」」

 

俺の『全員で』の言葉にアリーナに総勢30名の職員が驚きを露にした。まぁ、そうだろうな。なんたって1対30なのだからな。しかし、俺はそれ以上の敵と"あっち側(コズミック・イラ)"では殺りあったことがあるから問題ない。

 

それにカオスたちの一件以来、どうやら戦争当時の感覚が完全に戻ったようで、どうも一夏との特訓の時も少々やらかしてしまう。

 

すまん、一夏。(≡人≡;)

 

 

雷真「それでは準備が出来次第、始めるので準備をしてください。あっ、それともう1つ。俺はフリーダムに搭載されている射撃武装は1つも"()()()()"ので」

 

シャル「…………。(射撃武器を撃たないだけで絶対に切ったり、構えたりするってことだよね)」苦笑

 

職員「そ、それなら………」

 

職員「い、行けるかも………」

 

雷真「他にも、もしも当てることが出来た先生方には俺からご褒美があります。そのご褒美とは、高級ホテルのスイーツ食べ放題チケットです」

 

 

この言葉を聞いた職員たちの目がギラリと変わりやる気に満ちた目になった。特に山田先生から獲物を狩るような視線が感じられる。

 

 

雷真「それでは準備が出来たらゲームを行います。では、準備をしてください」

 

職員「「「「はい!」」」

 

 

それから職員たちは打鉄やラファール・リヴァイブに搭乗して整備科の生徒が用意したペイント武装を手に取る。

 

 

雷真「それでは準備ができましたね?」

 

 

俺の問いに全員が頷く。

 

 

雷真「それでは…………本音、開始の合図を頼む」

 

本音『はいは~い。まっかせて~』

 

本音『それじゃあ、訓練…………か~いし!』

 

 

本音の合図で職員たちは一気に攻めてくるのでフリーダムの機動力やら武装の威力やらエネルギーやらセーフティをかけた状態で最大限出せる能力を使い、全ての攻撃を緩急をつけた飛行で回避する。

 

 

職員「当たらない!?」

 

職員「それに何よ、あの速さ!?」

 

職員「早く、回り込んで!」

 

 

それから30分間ほどはずっと逃げるだけの簡単な作業を繰り返す。職員は連携や元々練っていた行動パターンを駆使し俺を追い込んでみるが全てが失敗に終わっている。

 

 

 

雷真「じゃあ、そろそろ始めようかな」

 

 

 

 

 

 

 

▽▲▽

 

 

 

 

 

 

シャル「あの動きで、機動力に3割。それに加えて、ビーム兵器に7割に、他にも動力源にまでセーフティをかけてるなんて…………」

 

シャル「あっ、雷真、もうやるつもりでいる」

 

 

僕は雷真の動きを見て、そう口に出す。すると隣で一緒に雷真と職員の訓練を見ている山田先生が質問をしてくる。

 

 

真耶「デュノアさん、黒牙くんは何をやるつもりなんですか?」

 

シャル「まず、雷真が訓練を始める前になんて言ってたか、覚えてます?」

 

真耶「確か、黒牙くんは専用機であるフリーダムの射撃武器は()()()()と………」

 

シャル「そうです。その言い方をズルい様に言い換えると、撃ちはしないが構えたり、殴ったり、切ったりすると言うことなんですよ」

 

真耶「え………?」

 

真耶「それって屁理屈じゃないですか!?」

 

シャル「僕もそう思いましたが、雷真曰く…………

 

『戦争は騙し合いが常だ。弾切れと見せかけて、ここぞという時に撃ってくる。だから、常に敵を疑え、疑いを解く時は敵が死んだ時だけだ』

 

……と言ってました」

 

真耶「常に敵を疑え、疑いを解く時は敵が死んだ時…………黒牙くんが言うとその言葉は重く感じますね」

 

シャル「そうですね。雷真は四年間で二回も戦争を経験している訳ですから」

 

 

フリーダムの射撃武器を撃たずに構えたり、ビームサーベルで弾を切ったり、シールドで殴ったりしている雷真を見て、僕と山田先生は雷真から言われた言葉を胸に刻むことにした。

 

 

 

 

 

▽▲▽

 

 

 

 

【ピピピピピピピッ!】

 

 

 

雷真「はい、そこまで!15分間の休憩を挟みます」

 

 

セットして置いたタイマーがなったので一度、休憩を入れることにした。すると、職員30名全員がその場で座り込んだり、仰向けに倒れたりする。

 

 

シャル「お疲れ様、雷真」

 

雷真「サンキュー」

 

 

シャルロットがスポーツドリンクとタオルを持ってきてくれたのでフリーダムのヘッド装甲とオーブのヘルメットを拡張領域(バススロット)にしまう。

 

 

シャル「ねぇ、雷真。ヘルメットは着けなくてもいいじゃない?ここは地球なんだし」

 

雷真「そうだな。言われてみれば、ヘルメットやパイロットスーツとかを着る必要はないんだよな。こりゃ職業病だな、あはははは」

 

シャル「あはははは、って……。(それよりもヘルメットを被って、あの動きって……)」

 

 

シャルロットと二人で話していると前半の職員に飲み物やタオルを渡し終えた山田先生が此方にやってくる。

 

 

真耶「黒牙くん、お疲れ様です」

 

雷真「お疲れ様です」

 

真耶「黒牙くんから見て、我が校の職員はどうですか?」

 

雷真「それはIS操縦者としてなのか、それとも戦争を経験した一人の軍人としてなのか、どっちの答えが欲しいですか?」

 

真耶「…………できれば、両方で」

 

 

山田先生は一度考えてからそう口にした。

 

 

雷真「では最初に、IS操縦者としての意見としては中々の物だと思いますよ?自分もまだISを動かして半年も経ってないので」

 

雷真「次に軍人としての意見は…………今のままだと確実にIS学園は墜ちますね」

 

真耶「…………」

 

雷真「これがもしも仮に"あっち側(コズミック・イラ)"なら俺でなくとも30人全員を殲滅。時間にして10分もかかりませんよ」

 

真耶「そんなにですか………」

 

雷真「ええ。まず、IS操縦者はSEと絶対防御に頼り過ぎている。そして、ないとは思いますが俺が何者かに弱味を握られてたり、あるいは洗脳された場合。この学園に俺を止められるのは織斑先生くらいですね」

 

真耶「そうですね。それを言われてしまうと何も言い返せません」

 

雷真「ですから、俺が学園を卒業するまでにSEEDを使わせるまでになってください」

 

真耶「そ、それは厳しいですよ………!?」

 

シャル「僕もそう思うよ………」

 

雷真「まぁ、それくらい頑張ってほしいってことだよ」

 

 

シャルロットと山田先生にウォーミングアップの感想を言ってから、次の訓練に移行するために休んでいる職員の人たちに声をかける。

 

 

雷真「それでは5分後に実戦式回避訓練を行います。皆さんは回避することだけに集中してください」

 

職員「回避だけ………ですか?」

 

雷真「そうです、回避だけです。整備科の皆はこれから忙しくなるから準備をよろしく」

 

 

俺の言葉に整備科一同は頷いて返答してくれた。

そして、回避訓練に移行したら、まず俺はフリーダムのマルチロックオン・システムを使い、ハイマットフルバーストで職員たちを狙い撃つ。すると職員たちから悲鳴が次々と上がる。

 

 

職員「な、何よ、これぇぇぇぇえ!?」

 

職員「いやいやいやいやいやー!?」

 

職員「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬー!?」

 

雷真「ほら、頑張ってください」ニコニコ

 

シャル「…………。(雷真、鬼だ)」

 

真耶「…………。(黒牙くん、鬼ですね)」

 

 

雷真による地獄の訓練は時間が経つにつれて熾烈を極めていく。雷真の訓練を受けた職員は午後の仕事で役に立たないほど疲弊したそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時と場所が変わり。訓練を終えた雷真は千冬と真耶と共にIS学園の秘密区画の中のIS整備場に来ていた。

 

また、三人の目の前には臨海学校で雷真が撃破し、残骸を回収した【ZGMF-X88S ガイア】、【ZGMF-X24S カオス】、【ZGMF-X31S アビス】、【ZGMF-X23S セイバー】の四機が並んでいる。

 

 

 

千冬「それで、黒牙。この四機や他の未確認ISについて何か分かったか?」

 

雷真「どうやら、この四機とフリーダムにはISとは異なるコアが組み込まれていることがわかりました」

 

千冬「なに?」

 

雷真「臨海学校で自分がまだ"あっち側(コズミック・イラ)"にいた時に刀奈たちがストライクの武装を使っていたようなので、その解析をしていたら。その時に、篠ノ乃束が作ったISコアとは異なった代物だということがわかりました。なので、ISコアと異なったコアを《MS(モビルスーツ)コア》と名付けました」

 

雷真「他には、これといって………、分かったのは臨海学校で現れた、ザク、グフにはカオスたちの様なコアはなくバッテリーで動く仕組みと、やはり、"あっち側(コズミック・イラ)"の戦友の戦闘データが組み込まれていたことぐらいです」

 

千冬「そうか…………。では、これから………特にフリーダム。そして、ガイア、カオス、アビス、セイバーの四機はどうする?IS委員会にも引き渡す訳にはいかんだろう?」

 

雷真「そうですね。できれば、この四機については自分に一任させてもらえませんか?フリーダムは何とかなりますから」

 

千冬「ふむ………」

 

真耶「どうしますか、先輩?」

 

千冬「真耶、お前はどう思う?」

 

真耶「私は正直、黒牙くんにお任せしたいと思います。本当は、私たちがやらないといけないのですが、力不足ですから」

 

千冬「分かった。では、黒牙中尉。ガイア、カオス、アビス、セイバーの四機を貴君に一任することにする」

 

雷真「はっ!」敬礼

 

雷真「それと、もう1つ、いいですか?」

 

千冬「なんだ?」

 

雷真「ここのフロアだけ、セキュリティを自分がいじってもいいですか?」

 

千冬「何故だ?」

 

雷真「織斑先生に悪いですが、これは篠ノ乃束に限らず、あらゆる国がカオスたちやスペックデータを奪いにくる可能性があるので」

 

千冬「なるほど。それなら、分かった。セキュリティを書き換えて構わない」

 

雷真「ありがとうございます」

 

 

てな訳で、この区画だけセキュリティをフリーダムにかけているセキュリティと同等のファイヤーウォールを組み上げた。

まぁ、この世界の技術だと破れたとしても40年くらいはかかる代物と思ってくれ。

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

  • アヴァロン・フリーダムの使用禁止
  • アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
  • 別機体のビーム兵器を使用
  • 別の機体を使う
  • 雷真は見学

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