自由と白式   作:黒牙雷真

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第42話

雷真「それじゃあ、刀奈。あとの処理を頼むな」

 

刀奈「分かってるわ。けれど、早く帰ってね」

 

雷真「ああ。じゃあ、行ってくる」

 

刀奈「気をつけて、いってらっしゃい」

 

雷真「黒牙雷真、アビス。行きます!」

 

 

今回はフリーダムではなくアビスを纏って、学園の船着き場からMA(モビルアーマー)形態で海へと入る。

 

何故、今回はアビスを纏っているのかはカラミティたちが撤退したため、フリーダムのハイマット・フルバーストで撃破した、105ダガーたちの残骸を回収して、外部へ情報が漏れないように証拠隠滅をするためでもある。

 

他には、海中に沈んだ105ダガーたちの残骸を回収するのに、宇宙用のフリーダムよりも海中用にも設計されているアビスの方が適切だと思ったからだ。

 

 

雷真「確か、座標だとここら辺に……あっ!」

 

雷真「あれだな!」

 

 

海底に105ダガーの頭部や対ビームシールド。他には、ストライカーパックの残骸などを見つけた。

 

 

雷真「早く回収しないと、105ダガーを欲しがる奴らが回収しに来そうだな」

 

 

直ぐに回収するためにMA(モビルアーマー)形態からMS(モビルスーツ)形態に変形して、地道に一つずつ回収していく。

 

それから一時間ほど地道に残骸を回収し終わると海面に何隻か船がやって来ていた。

 

 

雷真「危ねぇ……。あと少し遅かったら、105ダガーたちの残骸を回収されていたな、こりゃ」

 

雷真「それにしても、105ダガーのストライカーパックの中に面白いのがあったな。これを使わない手はないよな」

 

 

105ダガーの残骸の中に、面白そうな物を見つけた俺は、少しウキウキしながらMA(モビルアーマー)形態で学園に向かおうとするとアビスのレーダーとソナーに背後から高速移動する熱源が五機。

 

 

雷真「後ろ!?」

 

雷真「次から次へと、今度は何だよ!?」

 

 

カラミティ、フォビドゥン、レイダーだけでも頭を悩ませているのに、水中で高速移動する熱源にイラついてしまう。

 

因みに、この世界には水中型のISは存在しない。ISは宇宙空間を主に想定されているため、水中を主にした機体は作られていないのだ。

 

これらのことから、現在、水中を高速移動する熱源の正体は間違いなく。MS(モビルスーツ)だ。

 

 

雷真「熱源照合………。【UTA/TE-6P ジオグーン】が三機。【UMF/SSO-3 アッシュ】が三機」

 

雷真「連合の次はZAFTかよ!?」

 

 

直ぐにアビスをMA(モビルアーマー)形態からMS(モビルスーツ)形態に変形させて、アビスの物理武装である、ビームランスをビーム刃を出さずに構える。

 

一応、俺も更識の人間なので更識流の槍術は習得している。

 

 

雷真「…………」

 

 

徐々に此方へと近づいてくる、ジオグーンとアッシュ。そして、此方との距離が50mほどになると六機は静止し、頭部とモノアイを左右に動かし、海底に何かを探すような仕草を見せ、何もないと確認すると、そのまま来た方角へ撤退して行ってしまった。

 

 

雷真「一体、何なんだよ…………」

 

 

ジオグーンとアッシュの目的は分からないが、一つだけ分かったことがある。それは、この世界でも戦争が起きるかもということだ。

 

 

 

 

 

 

 

ファントム・タスクとカラミティたちの襲撃、105ダガーの残骸回収、ジオグーンとアッシュの接触の後、学園に戻って来た俺は刀奈と共に後処理などをしてから理事長室の前へと足を運んでいた。

 

 

雷真「1年1組、黒牙雷真です」

 

刀奈「同じく、更識刀奈です」

 

 

理事長の扉の前でノックをしてから学年と名前を言って少し待つと理事長室から年配の男性の声が聞こえてくる。

 

 

???「どうぞ、入ってください」

 

雷真「失礼します」

 

刀奈「失礼します」

 

 

声の主である男性は普段、用務員の仕事をしているが実質は、この男性、轡木十蔵こそがIS学園の運営者にして、第16代更識楯無の武術の師匠であり、俺の武術の師匠であり、例のあの人だ。

 

また、師匠以外には織斑先生と山田先生もいた。

 

 

雷真「ご無沙汰しています。師匠」

 

刀奈「ご無沙汰してます。十蔵さん」

 

十蔵「お久しぶりですね、二人とも。特に雷真くんは行方不明……異世界から帰ってきて以来ですかね?」

 

雷真「…………」チラリ

 

千冬「…………」コクリ

 

 

どうやら、俺が"あちら側(コズミック・イラ)"に飛ばされたことを織斑先生が師匠に話したようだ。

 

 

十蔵「それでは、報告をお願いします」

 

 

師匠に報告をするために一歩前に出て、今までの事を報告する。

 

 

雷真「分かりました。まずは、織斑一夏に関してですが、彼のIS訓練についてはかなり順調です」

 

十蔵「ほう」

 

雷真「亡国企業(ファントム・タスク)の一人であり、アメリカから強奪された第二世代型ISのアラクネのパイロットであるオータムと名乗る工作員を後一歩の所まで追い詰めていました」

 

十蔵「それはそれは」

 

雷真「彼も、呑み込みが早いので教え甲斐があります」

 

十蔵「そうですか。次をお願いします」

 

雷真「はい。今回の亡国企業(ファントム・タスク)以外に襲撃して来た、四種の未確認ISですが、この四種は自分が飛ばされた異世界の機動兵器です」

 

雷真「まず、このストライクに似ている機体ですが名前は【GAT-01A1 ダガー】。略して、105ダガーと呼ばれています。また、この機体はストライクの正式量産機です」

 

十蔵「ストライクと言えば以前は、雷真くんの専用機の名前ですね」

 

雷真「そうです」

 

千冬「なら、この105ダガーにもストライクと同じPS(フェイズシフト)装甲が?」

 

雷真「いえ、105ダガーは量産機のためコスト面を配慮してPS(フェイズシフト)装甲は使われていません。しかし、コックピットだった胴体部だけフリーダムや霧纏の(ミステリアス・)淑女(レイディ)の対ビームシールドと同じ、ラミネート装甲が使われています」

 

真耶「胴体だけ………」

 

刀奈「でも、雷真。105ダガーはストライクの量産機なんでしょ?なら、ストライクと同じで状況に応じて武装を換装できる、ストライカーシステムが使えるってことよね?」

 

雷真「ああ、そうだ。105ダガーの胴体フレームはストライクと同じX100系フレームだからな」

 

千冬「だとなると、ランチャーストライカーのアグニが厄介だな」

 

真耶「そうですね」

 

雷真「次に残りの三機ですが、この三機は正直、105ダガーよりも厄介です」

 

千冬「105ダガーよりもか?」

 

雷真「ええ。まずは、【GAT-X131カラミティ】」

 

千冬「GAT-X……?まさか、コイツはストライクの後継機か?」

 

雷真「そうです。こちら側の世界で言えば、第一世代型GATシリーズ、通称:G兵器である、ストライク、イージス、デュエル、バスター、ブリッツのデータ。主にストライクから抽出されたデータを元に製造された、第二世代型のGATシリーズ内の一機です」

 

真耶「内の一機?では、他の二機も?」

 

雷真「その通りです。【GAT-X255フォビドゥン】、【GAT-X370レイダー】。この二機もカラミティと同じ、第二世代型GATシリーズに当たります」

 

雷真「今回、かなりの人にカラミティ、フォビドゥン、レイダー。それに、105ダガーを見られてしまったので詳細は口頭よりもデータで見た方が早いと思うのでデータを提出します」

 

 

俺はポケットからハルバートンさんとナタルさんに渡したのと同じ機械を三本、師匠と織斑先生、山田先生に渡す。

 

 

十蔵「確かに受けとりました」

 

雷真「それと、105ダガーの残骸を回収している際に、先ほど説明した四種の機体以外にも新たなに二種の機体と接触しました」

 

千冬「なにっ!?」

 

十蔵「その機体の正体は?」

 

雷真「カラミティたち、地球連合軍とは違い、接触したのはZAFTの機体でした」

 

真耶「ZAFTというとクラス代表トーナメントの時のグフにバビ。臨海学校のザク、ガイア、カオス、アビス、セイバーを作った組織じゃないですか!?」

 

雷真「それは"あちら側(コズミック・イラ)"ならですけどね。それで、接触した機体は水中型MS(モビルスーツ)、【UTA/TE-6P ジオグーン】が三機。【UMF/SSO-3 アッシュ】が三機。計、六機と接触」

 

雷真「しかし、戦闘は起きず、何かを探している様な行動を見せ、その後、撤退しました」

 

十蔵「わかりました。報告、ご苦労様です」

 

雷真「いえ」

 

 

報告が終わると、一歩下がり、この次の指示を待つと師匠は此方に笑顔を見せる。

 

 

十蔵「それでは、堅苦しい話はここまでにして。お茶にしましょう」

 

刀奈「わーい!十蔵さんの御茶請けセンス良いから楽しみ!」

 

十蔵「それはそれは、嬉しいことを言ってくれますね」

 

雷真「では、お茶は俺が入れますよ。師匠は、緑茶とコーヒー、どちらがいいですか?」

 

十蔵「そうですね……。では、雷真くんのお任せで」

 

雷真「分かりました。織斑先生と山田先生は、どうしますか?」

 

千冬「私は、あのバルトフェルドブレンドを頼みたい」

 

真耶「あっ、私もそれで!」

 

雷真「分かりました。刀奈は?」

 

刀奈「私は緑茶がいいなあ」

 

雷真「分かった」

 

 

全員分のお茶を用意すると、俺たちは寮の夕食時になるまでティータイムをすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠たちとのお茶会や夕飯を食べ終えた俺は、一夏と共に大浴場で疲れを湯船に溶かしている。

 

 

 

雷真「くあぁぁ…………」プカプカ

 

一夏「雷真、湯船で浮かぶな」

 

雷真「悪いが無理だ。流石に今日は疲れが溜まってるんだ」プカプカ

 

一夏「そりゃ、あの三機を一人で相手してればな。どのくらい、神経を磨り減らすか俺には分からないけど」

 

雷真「(連合のあのMS(モビルスーツ)たちが出てくるのは予想外だった。例のモノを急がせる必要がありそうだな)」プカプカ

 

一夏「なぁ、雷真」

 

雷真「あ、なんだ?」

 

一夏「どうやったら、お前みたいに強くなれるかな?」

 

雷真「…………」

 

一夏「今日の雷真の動きを見て、次元が違うって知った。だから、いつかは俺も、雷真みたいに強くなりたいんだ。皆を守るために」

 

雷真「俺のように……か………」

 

 

 

 

~BGM:君と僕、届かぬ想い~

 

 

 

 

 

 

一夏が俺の様に強くなりたいという言葉を聞いて、俺は思い出した。

初めて、人を殺した感触。初めて殺意を持って殺した感触。俺の所為で死んだ仲間の悲しみ。

 

 

雷真「一夏、お前は俺とは違う強さを手に入れろ」

 

一夏「え?」

 

雷真「俺のは、それしか他に出来なかったから身に付いた力だ。でも、一夏は違う。一夏は、まだ、どんな強さを身に付けるのか選べるんだ」

 

一夏「…………」

 

雷真「だから、今はまだ考えるんだ。お前が本当に付けたい力を、その意味を」

 

一夏「本当に付けたい力にその意味…………」

 

雷真「それとこれは俺の戦友が言っていた言葉だ。

 

 

 

 

『戦場で、初めて人を撃った時、俺は震えたよ。だが、すぐ慣れると言われて、確かにすぐ慣れた』

 

 

 

 

 

…………とな」

 

一夏「…………」

 

雷真「俺もその人の言葉通り、一時期、人を撃つことに慣れてしまった。でも、ある夢を見てから少し変わった」

 

一夏「夢?」

 

雷真「俺が………。この、両の手で刀奈や簪、本音、虚さん。大切だと思っている家族や友人たち、皆を殺している夢だ」

 

一夏「なっ………!?」

 

雷真「その夢を見たあとから、俺は力の意味を探して、考えて。そして、見つけた」

 

雷真「今は刀奈に簪、シャルロット、本音、虚さん。この五人を守るためなら、俺は国だろうが世界だろうが何だろうが敵に回す覚悟がある」

 

雷真「全ての大切なモノを守ることは出来ない。だから、俺は、この両の手で守れるだけの大切なモノだけを守る。それが今の俺の力の意味だ」

 

雷真「話は終わりだ。先に上がる」

 

 

 

一夏に、本当に身に付けたい力と、その意味を話したあと。俺は大浴場を先に出て、自室に着くと、そのまま倒れ込むようにベッドに倒れて眠った。

 

 

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

  • アヴァロン・フリーダムの使用禁止
  • アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
  • 別機体のビーム兵器を使用
  • 別の機体を使う
  • 雷真は見学

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