シノブ「若様、まもなく目標ポイントに到達します。身支度を」
雷真「分かってる」
IS学園でキャノンボール・ファストに向けて、初めての高機動演習の授業を行ってから、はや二週間。今日はキャノンボール・ファストが開催される日なのだが。
現在、シノブが所有する一番速いプライベートボートに俺とシノブ、それとアキトが乗り合わせている。
アキト「雷真さん!西方、50km先の沖合いから高速でキャノンボール・ファスト会場方向へ飛行する熱源1。サイレント・ゼフィルスと思われます!」
雷真「来たか………。これより、作戦を開始する。二人は、俺が出撃次第、本土へ帰投。誰にも見つかるなよ?」
シノブ「御意!」
アキト「御意!」
二人に指示を出してから、深く深呼吸をして精神を研ぎ澄ましてから、ボートの船首へ走り、空中へ身を投げ出し…………。
雷真「黒牙雷真、フリーダム。行きます!」
海面に身体が着水する前にフリーダムをセーフティを解除した状態で展開し、のうのうとレース会場に向かうサイレント・ゼフィルスを追いかける。
◇◆◇
~そのころ、レース会場では~
刀奈「だぁぁぁぁぁあっ!!」
簪「お姉ちゃん、落ち着いて」オロオロ
刀奈「こんな状況で落ち着いてられる訳無いでしょうっ!!」
シャル「雷真にも、何か事情があるんだよ。タブン……」ボソッ
現在、私たちは一年生専用機持ち組のレースの時間が迫っているのにも関わらず、婚約者であり、IS学園生徒会副会長である、雷真が朝から姿を見せない。
また、今朝方に珍しく雷真が寝坊していると思って会長権限で雷真の部屋を開けて見たら雷真の姿は無く、勉強机には…………
『とある事情で学園を離れる。明日のレースには多分、間に合うと思うから心配しないでくれ。
by雷真』
…………と書かれた一枚の手紙が置かれていた。直ぐにそれを織斑先生に見せに行くと、今まで見たことがないほどに鬼のような形相をした織斑先生を私は初めて見たわ。
刀奈「雷真のバカ─────!!」
一夏「なんか、会長がスゲーことになってるけど、どうしたんだ?」
ラウラ「どうやら、雷真の奴がとある事情とやらで、現在、学園にも会場にも居ないらしい」
一夏「は?雷真が?なんで?」
ラウラ「私にも分からん。だが、雷真は必ずと言っていいほど教官にシゴかれるだろう結末が私には見えている」
セシリア「雷真さんも無茶苦茶なことを仕出かしますわね」
鈴「まっ、どうせ、直ぐに帰ってくるわよ。アイツは」
一夏「あぁ…………雷真、ドンマイ」
◇◆◇
~同時刻、雷真は~
雷真「追い付いた」
フリーダムを展開してから約5分。諜報班からの情報で手に入れた、レース会場へと向かう
雷真「………」
サイレント・ゼフィルスを追い越すように飛行し、サイレント・ゼフィルスの正面に踊り出ると互いに静止する。
エム「ッ!!」
雷真「よう、学園祭以来だな。
エム「貴様はあの時のっ……!?」
雷真「悪いがこの先は行かせない」
エム「なら、押し通るっ!」
押し通ると決めたエムは、その手に持つサイレント・ゼフィルスのメインの射撃武装である『スターブレイカー』を向け此方へ撃ちながら六機のビット兵器を射出した。
雷真「悪いが遊んでやるほど暇じゃないんだ。だから、本気で行くぞ」
エム「ほざけっ!」
サイレント・ゼフィルスからのビームをフリーダムの緩急を付けた急旋回などで回避しながら、ルプスビームライフルの
エム「なっ…………このぉぉぉおっ!!」
雷真「…………」
ビット兵器を破壊されたことに頭に来たのか。今度は
雷真「(イメージしろ、あの機体の動きを!)」
頭の中で、"運命"の名を持つ機体の動きをイメージするとシュベルトゲベールを正眼に構えてフリーダムのウィングスラスターをハイマットモードに展開し、
元々、デスティニーのウィングユニットはフリーダムのウィングスラスターである能動性空力弾性翼を発展させた物。つまりは、元となったのはフリーダムのウィングユニットだ。故に元となったのならヴォワチュール・リュミエールやミラージュコロイドがなくともデスティニーに似た動きを再現できる可能性があるはず。
雷真「ウオオオオッ!!」
エム「ハアアアアッ!!」
エムは
エム「なん……だとっ!?」
雷真「…………」
エム「私は、私はぁぁぁぁあ!!」
エム「織斑一夏を殺して今度こそっ!!」
エム「今度こそ、私は完全な存在になるんだぁぁぁぁあ!!」
雷真「なるほど、お前の目的は一夏の命か。なら、尚更、お前を止める必要があるな」
エムは、さっきよりも激昂したのか再び、
エム「何をっ!?」
そして、完全にスターブレイカーを挟み掴むと両腰のクスィフィアスレール砲2門をゼロ距離でサイレント・ゼフィルスに放つ。
エム「ぐうぅぅっ!!」
雷真「…………」
ゼロ距離でクスィフィアスレール砲を放ってもSEと絶対防御が作動するのでレール砲くらいなら大丈夫。また、レール砲の爆風でエムはスターブレイカーを手放してしまう。
雷真「さすがに、そろそろ時間がヤバいな」
さすがにこれ以上はキャノンボール・ファストの一年生専用機持ち組のレースに遅れてしまうのでスターブレイカーを海へ放り投げて、左腰からラケルタビームサーベルを引き抜き、サイレント・ゼフィルスの右側の大型スラスターを狙う。
エム「しまっ………!?」
雷真「おそいっ!」
エムが回避行動を起こす前にフリーダムの全スラスターを最大出力で噴かして、ラケルタビームサーベルでサイレント・ゼフィルスの大型スラスターを切り落とす。
大型スラスターを切り落とすことに成功すると、身体を捻り、勢いを乗せた回し蹴りをエムの背中に打ち込み海面へと蹴り飛ばす。
エム「ぐああああっ!!」
雷真「…………」
全てのスラスターを失い、回し蹴りを受けたエムはサイレント・ゼフィルスのPICを使うもSEの損失が激しかったのか慣性を完全には殺せずに海面へと落ちていった。
それを見た俺は、本来ならこのままエムを捕縛する所だが、極秘で行動しているため海上保安庁の船などに見つかると面倒なので、その場から直ぐに人気のない地上へ退避する。
地上へ退避するとフリーダムの
急いで会場に向かうと会場の入口の前で鬼と表したら何と可愛い表現だろうと思うほどの形相で俺のことを睨み付ける織斑先生が仁王立ちで待ち構えていた。
千冬「どこをほっつき歩いていた?このバカ者が」
雷真「すみません。その事については、『裏の仕事』とだけ今は伝えておきます」
そう伝えると織斑先生は深いため息を吐く。
千冬「放課後、詳細な情報を提出しろ。いいな?」
雷真「わかりました」
ビートチェイサーを
簪「あっ、雷真!」
シャル「良かった……レースには間に合ったみたいだね」
雷真「すまんな、遅れた」
刀奈「雷真!貴方、今までどこをほっつき歩いていたのっ!?それにあの手紙に書いてあった、とある事情ってなに!?」
雷真「悪かったよ。その事に関してはあとでちゃんと説明するから」
刀奈「分かったわ。けれど、あとで必ず説明してもらいますからね!」
雷真「分かってるよ」
刀奈に謝罪と今までのことを説明すると約束して納得してもらうと山田先生から号令がかかる。そのため、直ぐにフリーダムを展開する。
真耶「みなさーん、準備はいいですかー?これより、スタートポイントまで移動しますよー」
のんびりとした山田先生の声が俺たちの耳に届くと皆、頷きながら返事をする。返事を返したら、俺は念のためにフリーダムの武装のチェックをする。無傷とはいえ、戦闘後のレースだ。それにエムとの戦闘で
チェックを終えて、マーカー誘導に従いながらスタート位置へと移動する。
『これより、一年生専用機持ち組の選手入場です。また、簡単に選手をご紹介します。呼ばれた方は順番にグリッドに並んでください』
『まずは、この人!世界で知らない人はいない!初代ブリュンヒルデの弟で一人目の男性IS操縦者の織斑一夏選手!!』
一夏「あは、あははは…………」フリフリ
選手入場のアナウンスと共に選手紹介が行われる。最初に紹介された一夏は、ピットから移動しながらぎこちない動きで観客席に手を振りながら第一グリッドへと進んでいく。
『続いて、この人!織斑選手と同じで、世界で知らない人はいない、しかし、その全身装甲のISを作った人物は誰も知らない。その性能も未知数!二人目の男性IS操縦者、黒牙雷真選手!!』
雷真「(どうやら、あの人も見に来ているようだな)」フリフリ
紹介されたのでフリーダムのヘッド装甲を着けず、普通に観客席の皆さんに手を振りながら第二グリッドへと進む。
『続いて、世界で唯一の第四世代ISを持つ、篠ノ之箒選手!!』
箒「フンッ!」
紹介された箒は、やはり試合慣れしているのか堂々とした動きで第三グリッドに移動する。
『続いて、イギリス代表候補生。セシリア・オルコット選手!!』
セシリア「ウフフフ」フリフリ
セシリアも場馴れしているのか優雅な動きで第四グリッドへ移動しながら観客席へ手を振るう。
『続いて、中国代表候補生!凰鈴音選手!!』
鈴「イッエイー」フリフリ
鈴も場馴れしているようで物怖じしないで観客席へ手を振りながら第五グリッドに移動する。
『続いて、一年生で唯一の国家代表!日本代表、更識刀奈選手!!』
刀奈「ハァ~イ」フリフリ
相変わらずの人たらしというか人受けがいいというか。そんな感じで人を魅了しながら観客席へ手を振り、第六グリッドへと移動する。
『続いて、ドイツ代表候補生。ラウラ・ボーデヴィッヒ選手!!』
ラウラ「…………」
ラウラは紹介されるもレースに集中しているのか淡々とした態度で第七グリッドへと移動する。
『続いて、フランス代表候補生。シャルロット・デュノア選手!!』
シャル「アハハハハ!!」フリフリ
シャルロットは刀奈と違い、優しくて、人懐っこそうな笑顔を観客席に振り撒きながら手を振り。第八グリッドへと移動する。
『続いて、姉妹揃って同じ国の代表と代表候補生に並び立つ、日本代表候補生、更識簪選手!!」
簪「//////」フリフリ
簪は紹介されると恥ずかしそうにしながらも小さく胸元で手を振りながら第九グリッドへ移動する。
一年生専用機持ち組が全員、指定のグリッドで待機するとレースを開始するアナウンスが流れる。
『それでは、みなさん。一年生専用機持ちのレースを開催します!』
試合を開始するアナウンスが流れると皆、スラスターを点火させ、高速機動モード用のハイパーセンサー・バイザーを下ろし、スタートの合図が鳴るのを待つ。俺も、皆と同じようにフリーダムのヘッド装甲を装着する。
そして、超絶満員の観客が見守る中、シグナルランプが赤く点灯する。
赤………赤………赤………青!
シグナルランプが青になりブザーの音が鳴った瞬間に皆、一斉にスラスターを噴かした。
ご都合主義でごめんなさい。m(_ _)m
アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて
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アヴァロン・フリーダムの使用禁止
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アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
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別機体のビーム兵器を使用
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別の機体を使う
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雷真は見学