自由と白式   作:黒牙雷真

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第52話

刀奈「さて、皆の衆。時は来た」

 

簪「……」コクリ

 

シャル「……」コクリ

 

本音「ビスケット美味しい~♪」モグモグ

 

虚「………」ズズズズ

 

 

時は放課後。場所は生徒会室。彼女たち、雷真の婚約者三名は本日の二限の休み時間に黛薫子が言っていた専用機持ち独占インタビューのことについて聖戦が行われようとしている。

 

 

刀奈「それでは、状況は報告した通りよ」

 

簪「雷真と大人のデート」

 

シャル「雷真と二人きりでディナー」

 

刀奈「しかし、選ばれるのは一人だけ」

 

簪「そのための、戦争」

 

シャル「それで今回は何で決着を付けるの?」

 

刀奈「虚、お願い」

 

虚「わかりました」

 

 

私の指示で虚は、自分の机の下から一つのハテナマークが描かれた箱を出した。

 

 

虚「それでは、今回の対戦の種目を決めさせていただきます」

 

刀奈「ええ、お願い」

 

虚「では」

 

 

 

────ガソゴソ、ガソゴソ

 

 

 

 

虚「今回の種目は…………」

 

刀奈「…………」

 

簪「……」ドキドキ

 

シャル「ゴクリ……」

 

虚「携帯ゲームである『Getting over it』でございます」

 

刀奈「ゲッティング………」

 

簪「オーバー……」

 

シャル「イット?」

 

虚「ルールを簡単に説明すると、水の入った壺に嵌まってしまった主人公が登山用のハンマーでゴールを目指すというゲームです。難易度はかなり高いそうです」

 

虚「そして、そのゲームを一番早くクリアした人が勝者ということになります。また、タイムリミットは最終下校時刻までです」

 

刀奈「地味そうだけど難易度が高いと言われたらクリアしたくなるわね」

 

簪「どんなゲームもバチ来い」

 

シャル「あまりゲームとかしたことないけど、雷真と二人きりで夜のディナーができるなら」

 

本音「面白そうだから、私もやる~」

 

 

ゲームをやる四人全員が自分の携帯にアプリをダウンロードしたら虚の声でスタートになる。

 

 

虚「それでは、スタート!」

 

 

 

 

 

~30分後~

 

 

 

 

 

刀奈「いやあああああああ!?」

 

簪「何これ……鬼畜ゲー……」

 

シャル「蛇ぃぃぃぃぃい!?」

 

本音「あっ、また最初からだ………」

 

 

とまぁ、こんな感じで私たちは『Getting over it』で雷真のインタビューのパートナーを賭けた勝負に勤しむのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

~時は同じく、場所は剣道場~

 

 

 

 

一夏「面ーッ!」

 

雷真「フッ………!」

 

 

 

 

────パシッ!パシッ!

 

 

 

 

箒「一本!雷真」

 

一夏「なっ………!?」

 

雷真「…………」

 

 

 

現在、俺と一夏は生徒会として部活動への貸し出し期間中により、剣道部で剣道の模擬試合をしていた。

 

 

一夏「ありがとうございました」

 

雷真「ありがとうございました」

 

 

模擬試合のあと礼儀の挨拶を終えてから面の防具を取る。

 

 

一夏「はぁ………まさか、剣道まで雷真に負けるなんて」

 

雷真「自己紹介の時には、言わなかったが。俺も更識の人間だ。だから、剣術、槍術、弓術、柔術等々は心得ているさ」

 

箒「流石だな。それに比べて一夏と来たら……」

 

一夏「面目次第もありません」

 

雷真「箒、一夏は仕方ないさ。何せ、一夏は元々普通の一般人。俺は、"更識"という名家で育った身だから。そこは比べ様もないさ」

 

箒「いいや、それは違うぞ。雷真!中学三年間、しっかりと剣道を続けていたら、今の"返し胴"は防げていたかもしれんのだぞ!?」

 

箒「故に、鍛練が足りんのだ!」

 

一夏「とほほ…………」

 

 

俺の返し胴を受けた一夏に箒は、鍛練が足りないと叱る。しかし、二限の休み時間に黛先輩が放課後に来ると言っていたので、そのことについて話すことにした。

 

 

雷真「ところで、二人は黛先輩が言っていた、専用機持ちのインタビューを受けるのか?」

 

一夏「俺はどちらでも。箒は?」

 

箒「そんな物は受けん!見せ物などになってたまるものか。私の主義に反する」

 

一夏「だよな」

 

雷真「だ、そうですよ?黛先輩」

 

 

一夏との模擬戦の時から感じていた視線の主と思われる黛先輩が隠れている剣道場の入り口へ声をかける。

 

 

一夏「は?」

 

箒「へ?」

 

薫子「いやはや、よくわかったね……」

 

雷真「あんだけ熱い視線を向けながらカメラで撮られていたらそりゃ分かりますよ」

 

一夏「いやいや、俺は分からなかったぞ?」

 

箒「わ、私もだ………」

 

雷真「話を戻して、黛先輩。箒は、どうやら受けないようですがどうします?」

 

薫子「取り敢えず、男子二人の返答を聞いてもいいかな?」

 

一夏「俺は、どちらでもいいんですけど………」

 

雷真「俺の方は一夏と箒がセットみたいだったので、俺も誰かパートナーを探そうか考えていたんですけど………」

 

薫子「ちょ、ちょい待ち!黒牙くん、仮に織斑くんと篠ノ之さんが受けていたら。君は誰をパートナーに選んでた?」

 

雷真「そりゃ、刀奈、簪、シャルロット。婚約者三人以外に誰がいますか?いや、一人だけ居たわ」

 

薫子「ふむ……少しだけ時間を頂戴」

 

雷真「は、はぁ………」

 

 

インタビューの俺のパートナーの話を聞いた黛先輩は突然、自分の携帯を取り出して誰かに電話をかけた。

 

 

薫子「うん、うん、そう!だから、そういうことだから、手配しておいてよ?こっちも何とかするから」

 

薫子「はいはーい。またね」ピッ

 

薫子「さてさて、お待たせ。そして、じゃん!ここに、豪華一流ホテルのディナー招待券が三枚。これが、インタビューを受けてくれた時の報酬よ」

 

 

黛先輩が出したのは、なかなか豪華なホテルのディナー招待券、三枚だった。

 

 

雷真「なんだ、あそこのホテルじゃないか」

 

一夏「雷真、ここのホテルを知ってるのか?」

 

雷真「ああ。刀奈と婚約した翌年の新年の挨拶周りの時に婚約披露をここのホテルでパーティーをしながらやったんだ」

 

一夏「へぇ~」

 

雷真「部屋もなかなかで、ディナー料理も美味かったぞ。それに、そこのホテルオーナーとも顔見知りだし、昔はお義父さんの名義で株主やってたしな」

 

薫子「しょ、小学生で株主…………」

 

雷真「そういえば、今度の新年の挨拶回りは面倒くさいことになりそうだな。考えただけで憂鬱だ…………」

 

一夏「二年間も行方不明になってたからな」

 

雷真「それだけじゃないさ。挨拶回りになると、他所の名家の種馬共が簪を狙ってアプローチをしてくるんだよ」

 

箒「なるほど。刀奈は雷真と婚約しているから平気だが。簪は、そんな相手がいないから我こそはという感じで、更識の財力を狙う輩がいると」

 

雷真「そういうこと。もしも、簪に手を出したらフリーダムで種馬共の家にハイマット・フルバーストをぶっ放そうかな」クロイエミ

 

一夏「いやいや、ダメだろ!」

 

箒「そ、そうだぞ!いくら、大切な婚約者だからといって何の悪事をしていない一般人に力を振るうなど!?」

 

雷真「けれど、もしもの時は…………フフフフ」ハイライトoff

 

一夏「そんなことをしたら、会長や簪さん、シャルロットが悲しむぞ」

 

雷真「……………………分かった。」

 

箒「な、なんだ今の長い間は」

 

薫子「あ、あの………話を戻していいかな?」

 

一夏「あ、す、すみません」

 

薫子「取り敢えずは黒牙くんはインタビューを受けてくれるの?」

 

雷真「ええ。それに、どうせ今頃、生徒会室でインタビューの話を聞いていた婚約者三名が俺とインタビューを受ける権利を求めて戦ってるはずですから」

 

薫子「そ、そうなんだ……。他の二人は?」

 

一夏「お誘いは嬉しいのですが、箒が…………」

 

箒「やはり、受けましょう!」

 

一夏「箒?お前、主義はどうした?」

 

箒「わ、私は柔軟な物語と先輩のために考えているのだ!文句があるか!?」

 

 

何やら照れ隠しなのか分からないが、箒は一夏の頬に竹刀をグリグリと押し込む。

 

 

一夏「まぁ、お前がいいけどな」

 

箒「そ、そうか。ところで……だな一夏。このホテルのディナーだが………。も、もちろん一緒に行くのだろうな!?」モジモジ

 

一夏「おう。そりゃ、雷真が誉めるほどのホテルのディナー招待券がもらえるなら受けるさ」

 

薫子「じゃあ、三人とも受けるということでいいかしら?」

 

雷真「そのようです」

 

薫子「分かったわ。それと、黒牙くんのパートナーの分はインタビュー当日に渡すから」

 

雷真「分かりました」

 

薫子「それじゃあ、アデュー!」

 

 

俺たち三人+俺の婚約者一人がインタビューを受けると決まると黛先輩はディナー招待券を渡したあと剣道場から走り去って行った。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

黛先輩による俺、一夏、箒の独占インタビューの件について受ける方向で話が済んだ翌日の早朝特訓。第3アリーナにて一年生専用機持ちが集合していた。

 

 

刀奈「それで、雷真。話って何かしら?」

 

雷真「今から話すことは俺と一夏の二人のタッグマッチトーナメントのパートナーについてだ」

 

 

これから話すことをそう説明すると一夏以外の皆が顔を青く染め上げだ。

 

 

セシリア「ら、ららら雷真さん?もしかしてですが、雷真さんが一夏さんとタッグマッチトーナメントに出られるのですか?」

 

鈴「無理無理無理! 一夏がいくら雷真の足を引っ張っても雷真が居るんじゃ足を引っ張って無いような物よ!?」

 

一夏「鈴、お前なぁ!」

 

雷真「あぁ、そういう手もあったか」

 

 

俺は思わず、セシリアと鈴の言葉に右手を左手の手のひらにポンッと打ってしまった。

 

 

ラウラ「『そういう手もあったか』というと、雷真が嫁とタッグを組む訳でないのだな?」

 

雷真「その通り。で、一夏には俺が選んだパートナーとタッグマッチトーナメントに出てもらう」

 

 

その言葉を聞いた一夏に好意がある女性陣が期待の眼差しを此方に向けてくるが、既に決まっているし。一夏に伝えている。

 

 

雷真「そのパートナーとは…………」

 

「「「「…………」」」」ゴクリ

 

雷真「簪だ」

 

簪「えっ………私?」

 

「「「「えええええ!?」」」」

 

鈴「ちょっと、雷真!なんで、私じゃなくて簪なのよ!?」

 

セシリア「そうですわ!何故、私ではなく、簪さんなのか至急説明を求めますわ!?」

 

ラウラ「雷真、貴様という奴は自分の夫に人の嫁と組ませる。そんな性癖を持っているのか!?恥を知れ!」

 

箒「そうだぞ!夫や嫁云々はともかく、先日、簪のことで言ったことは嘘だったのか!?」

 

雷真「はいはい。まずは、説明をちゃんとするから一度深呼吸しろ」

 

 

一夏のタッグパートナーが簪だと発表すると一夏ハーレムズが激怒したので、それを宥めてから何故、一夏と簪を組ませるのか説明する前に簪に頭を下げる。

 

 

雷真「まず、簪。すまない。一夏とお前を組ませるのは一夏にとっても簪にとっても大事なことだと判断したからだ」

 

簪「必要なこと?」

 

雷真「そうだ」

 

簪「分かった」

 

刀奈「雷真、簪ちゃんが了承したから私からとやかく言うつもりはないけどちゃんと説明して」

 

雷真「分かってる。今回、一夏と簪を組ませるのは二人の専用機を考えてだ」

 

刀奈「なるほどね」

 

鈴「ちょっと、二人だけで納得してないで私たちにも分かるように説明しなさいよ!」

 

雷真「一夏の専用機である《白式》と簪の専用機である《打鉄弐式》は元々同じ企業で製作されていた。そして、一夏と俺が世界初の男性IS操縦者として発表された」

 

シャル「あー、なんとなく分かったかも僕……」

 

ラウラ「同じく……」

 

鈴「どういうこと?一夏と雷真が男性IS操縦者として発表されたことが何の関係があるのよ?」

 

セシリア「雷真さん。私の憶測を述べてもよろしいですか?」

 

雷真「構わない」

 

セシリア「では、一夏さんと雷真さん、お二人が男性IS操縦者として発表されたことにより、雷真さんは別として、一夏さんの《白式》が簪さんの《打鉄弐式》よりも優先的に人材を割かれてしまった。それにより簪さんの専用機の開発が遅れた」

 

鈴「あっ………。そういえばクラス対抗の時、簪のクラスは………」

 

雷真「それも含めて、同じ企業で作られた専用機なら機体の調整の仕方も似ている。だから、二人には組んでもらうことにしたんだ」

 

 

一夏と簪を組ませる理由を全員に説明すると一夏が簪の前に出て、頭を下げた。

 

 

一夏「簪さん。俺の所為で君の専用機が遅れてしまったことを謝りたい。すみませんでした」

 

簪「貴方の所為で私の専用機は遅れた…………」

 

一夏「ッ………!!」

 

簪「前の私ならそう言ってたかも知れない」

 

一夏「え……?」

 

簪「これは個人的な話になるけど、偶然的にとはいえ。貴方が男性IS操縦者として発表されて、白式に人材を割かれて、打鉄弐式の完成が遅れた。色々な偶然が重なったから、あの日、私は雷真に想いを告げて、結ばれた」

 

簪「だから、今さら貴方を…………一夏を恨んでなんかいない。でないと、私の、私たちのヒーロー(雷真)に嫌われちゃうから」

 

一夏「簪さん………」

 

簪「だから、これからは友人として、タッグマッチのパートナーとしてよろしく。一夏」

 

一夏「ああ、よろしく頼む。簪」

 

 

どうやら、無事に二人を組ませることが出来たみたいだな。

 

 

刀奈「良い感じで終わろうとしてる所、悪いけど。雷真、貴方のタッグパートナーは?」

 

簪「はっ!」

 

シャル「そ、そうだよ!雷真は一体誰とタッグを組むのさ!?」

 

鈴「まぁ、無難に考えて学年別トーナメントの時と同じでシャルロットじゃないの?」

 

セシリア「万が一ですが、私たちの誰かという可能性もなきにしもあらずですわよ。鈴さん」

 

箒「セシリア、現実を見るんだ。雷真が私たちの誰かと組む訳がない。組むとしたらシャルロットと刀奈のどちらかだ」

 

ラウラ「私も箒と同じ考えだ」

 

刀奈「で、そこんとこどうなのよ雷真?」

 

雷真「あー、まぁ、色々と考えた末」

 

「「「「…………」」」」」ゴクリ

 

雷真「お前たちとは誰とも組まない」

 

「「「「「は……?」」」」」

 

「「「「はああああああ!?」」」」

 

 

専用機持ちとは誰とも組まないと宣言するとワンテンポ置いてから全員が驚きを露にした。

 

 

刀奈「ちょっと、待ちなさい!私たちとは誰とも組まない?色々と発言がおかしいわよ、雷真!?」

 

シャル「そうだよ!今度のイベントは専用機持ちの連携や練度を高めるためのタッグマッチなのに、何で専用機持ちの僕らと組まないのさ!?」

 

雷真「だって、お前らと組んじゃったら、まともな試合にならないだろう?」

 

シャル「それは…………そうかもしれないけど」

 

雷真「そういう訳だから。それにお前たちがパートナーでない俺なら勝てるかもしれないぞ?」

 

 

皆を煽る感じでそう言ってやると一同は急に俯きだし、次第に肩をワナワナと震わせ始めた。

 

 

刀奈「フフフフ、いいわ」

 

簪「その挑発、乗ってあげる」

 

シャル「覚悟しなよ、雷真?」

 

箒「フリーダムだろうが何だろうが斬り刻んでやろう!」

 

セシリア「必ず、貴方の顔を私の力で歪ませてあげますわ!」

 

鈴「徹底的にボコボコにしてやろうじゃないの!」

 

ラウラ「貴様は、選択肢を誤った」

 

一夏「絶対に勝つ!」

 

雷真「俺に"奥の手"(SEED)をさせるのを楽しみにしてるさ」

 

一同「「「「やってやろうじゃないか!!」」」」

 

 

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

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