自由と白式   作:黒牙雷真

55 / 79






第54話

千冬「それでは、本日の授業はここまで。織斑、あいさつ」

 

一夏「起立、礼!」

 

 

「「「ありがとうございました!」」」」

 

 

 

授業終わりの挨拶を行ったあと、担任の織斑先生と副担任の山田先生は早々に一組の教室から出ていく。

 

それを見たクラスの女子たちは各自、机に突っ伏したり、友人と午後から出掛ける話など始める。

そして、いつもの専用機持ちはというと…………。

 

 

刀奈「それじゃあ、皆。今日もやるわよ!」

 

「「「「おお!!」」」」

 

 

どうやら、皆を煽った日から一年生専用機持ちは俺への対抗心を燃やしており。昼休みや放課後など、暇があれば俺の戦闘データを何度も見直しているようだ。

 

 

本音「ねぇ、ライライ。かっちゃんたち、やけに張り切ってるけど何かあったの~?」

 

雷真「それはな、先日、刀奈たちに俺がお前たちとは組まないと言ったんだ。加えて『お前たちとパートナーではない俺なら、一撃くらいは入れられるんじゃないか? 』と煽ったんだ」

 

本音「そ、それは…………」

 

雷真「まっ、結果としては良い方向に向かってるいるとは現状、思うがな」

 

本音「ライライもほどほどにね~」

 

雷真「分かってるよ」

 

 

本音との会話を終えたあと、姉さんと出かけるために携帯でシノブにメールを送ったあとに寮の自室に戻り。私服に着替えて、校門前で姉さんを待つ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

雷真「…………」

 

虚「お待たせしました」

 

雷真「いや、そんなに待ってないよ」

 

虚「それはよかった。それで、これから何処へ?」

 

雷真「目的地までは車でいくよ」

 

虚「バイク…………ではなく?」

 

雷真「迎えを呼んだんだ」

 

虚「迎え?」

 

 

姉さんが俺の言葉に疑問符を浮かべると一台の青いセダンがやって来た。

 

 

雷真「来たようだ」

 

虚「…………」

 

 

青いセダンが止まると運転席の窓が開き、運転席からシノブが顔を出す。

 

 

シノブ「若様、お迎えにあがりました」

 

雷真「悪いな、シノブ」

 

シノブ「いえ。ちょうど昼休憩だったので」

 

虚「…………シノブさん」

 

シノブ「久しぶりだね、虚ちゃん」

 

虚「そうですね」

 

 

挨拶を済ましてから、シノブの車に乗る。席は俺が助手席で姉さんが後部座席に座る。

 

 

シノブ「若様、こちらが昨日までのM1アストレイの戦闘蓄積データと量産状況の資料データです」

 

虚「M1アストレイ?」

 

雷真「分かった」

 

 

シノブから渡された小型のノートパソコンを開き、資料データを見ていく。

 

ふむ…………。量産状況の方は105ダガーのパーツを転用しているためか学園祭後に来た時よりも量産が倍近く進んでいるようだ。

戦闘データは……あまり芳しくないようだ。さすがに2ヶ月しか経過していないなら仕方ない。

 

 

雷真「“天使”と“翼”は?」

 

シノブ「“天使”は先月末に新しいドッグに移送後、外部装甲を調整中です。“翼”は既に9割が完成。あとは、シミュレーションデータを元に実際に試してみないことには………」

 

雷真「そうか」

 

シノブ「他にはブースターが予備を合わせて4機完成しています。若様のフリーダムにも対応できる様に調整もしてあります。最後に、勝手ながら私とアキトでハロの中にあったデータを元に、M1アストレイの後継機と思われる機体を三機製造しました」

 

雷真「M1アストレイの後継機だと?」

 

シノブ「はい。そのデータも資料データと共に」

 

雷真「分かった。確認する」

 

 

再度、資料データを確認すると一番最後に【M2 アストレア】と書かれた資料データを見つけた。

 

 

雷真「これは…………!!」

 

 

C.E.76年に立案されたアストレイの後継機こと【MBF-M2 アストレア】。基本武装ストライクと同じ、機体の装甲はラミネート装甲か。ストライカーパックも使用可能。外見がアカツキに似ているのは気のせいか?

 

それに基本スペックはザクと同等。データがあるとはいえ、よくも二人だけでセカンドステージの機体を三機も完成させることができたな…………。

 

てか、よくよく考えれば、この機体………隊長機じゃねぇか!?

 

 

雷真「シノブ、この機体はお前とアキトで二機使え。最後の一機は姉さんに」

 

虚「私ですか!?」

 

雷真「ああ。元々、姉さんにはM1アストレイに乗ってもらうつもりで今日は付き合ってもらったからな」

 

 

学園を出てから約2時間が経過すると、今回は『モーニング・グロー社』ではなく。とある港のドッグにそのまま車で入る。そして、ある程度奥に進むと車を止める。すると、床がエレベーターの様に下へ、ゆっくりと降下していく。

 

ゆっくりと降下していくと次第にロボットアニメの様な秘密基地が見えてくる。その中で、一番目立つのが真ん中に存在する、メタリックグレーのデカイ艦である。

 

 

虚「これは………戦艦?」

 

雷真「姉さん。ここからは更識の“若”として命じる。ここで見た物は、全て外部に公開漏洩はするな」

 

虚「…………御意」

 

雷真「ありがとう」

 

 

床のエレベーターが完全に降りると再び、車を走らせ駐車場に車を止め、俺たちは【M2アストレア】のある格納庫に向かう。

 

 

雷真「これが、M2アストレア…………」

 

アキト「あっ、兄さん、おかえり。雷真さん、虚ちゃん、こんにちは」

 

雷真「よう、アキト」

 

虚「こんにちは、アキトさん」

 

シノブ「アキト、M2アストレアの状況は?」

 

アキト「今さっき、三番機のメインシステムが調整し終わったところだよ」

 

シノブ「そうか、分かった」

 

雷真「シノブ、こいつの実戦データは?」

 

シノブ「皆無です」

 

雷真「なら、ちょうど良い」

 

虚「まさか、若様。この機体を使って、私とタッグマッチトーナメントに?」

 

雷真「ああ、そうだ。けれど、それだけじゃない。次のタッグマッチトーナメント、何か起こる気がする」

 

虚「若様?」

 

雷真「俺にもわからない。だが、これまでの出来事を考えると起こるかもしれない。そこで、もしもの時は姉さんには生徒を守ってほしい」

 

虚「ですが、私がこの、M2アストレアを専用機として所持すると色々とまずいことに…………」

 

雷真「そこは俺に任せてくれ。色々と伝手を利用するさ。だから、頼む」

 

虚「わかりました」

 

シノブ「それでは、虚ちゃん。3番機に乗って。微調整を行うから」

 

虚「はい」

 

 

姉さんがM2アストレアに乗るのとタッグマッチトーナメントに共に出てくれることに了承を得た俺は、早速、M2アストレアの試験運用のためにハルバートンさんに連絡することにした。

 

 

雷真「どうも、黒牙です。お忙しい中、すみません。少しお願いしたいことがありまして」

 

雷真「はい。そのことに関係することです。自分の知人にMS(モビルスーツ)の専用機を持たせたいのですが……」

 

雷真「無論、セーフティーは付けてあります。また、各国のIS委員会には、ミスターKが作成した第4世代型とでもでっち上げた資料を作りますよ」

 

雷真「色々と無理を言って申し訳ありません。他には、戦艦などを…………いっ!?」

 

 

ハルバートンさんに他には何を作ったと言われたので“戦艦”と答えると電話越しに凄い剣幕で怒鳴られてしまった。

 

 

雷真「はい、わかりました。後程、ナタルさんの方へ詳細データをお送りします。はい、申し訳ありませんでした」

 

雷真「では…………」

 

雷真「准将のマジギレこわっ!?」

 

虚「若様、大丈夫ですか?」

 

雷真「まぁ、なんとか……。さすがに元上司に怒られましたがね」

 

アキト「元上司?」

 

雷真「あー、アキトとシノブは…………というより。師匠や刀奈、簪、シャルロット、本音、姉さん以外の更識に関わっている奴らは、俺の空白の二年間の真実を知らないのか」

 

雷真「元上司のことを簡単に説明すると、俺は軍人だったって訳よ」

 

アキト「軍人って…………」

 

雷真「詳しいことは一応、守秘義務があるからお前たちには教えられない。すまないな」

 

シノブ「いえ。若様がそう仰るのであれば仕方がありません」

 

雷真「ありがとう、シノブ」

 

 

 

ハルバートン准将に“天使”とM2アストレアのことを話し、姉さんを、IS学園代表として専用機持ちに認定してもらい。なんとか、M2アストレアの試験運用をこじつけた。

 

 

雷真「あとは師匠の方にも連絡しないと……」

 

雷真「あっ、どうも師匠。雷真です」

 

雷真「今回は、来月のタッグマッチトーナメントに関わることでお願いがありまして…………はい」

 

雷真「俺の部隊で開発した量産型MS(モビルスーツ)ISの試験運用をしたいと思いまして…………日本のIS委員会にはコネで何か………。他の各国のIS委員会にはミスターKの名前を出せばなんとかなります」

 

雷真「すみません。此方としても、学園を守る手段として今回はお願いしたいのです。学園にいる専用機持ちでMS(モビルスーツ)に対抗できるのは、自分と刀奈、簪、シャルロット、一夏、箒、セシリアの七名だけですから」

 

雷真「仮に、他の専用機にビーム兵器を渡すと面倒なことになりますから。既に日本とフランスで面倒なことが起きてますから」

 

雷真「はい。そういうことなので………では」

 

 

師匠に日本のIS委員会から学園代表の専用機持ちを出すことがあるかもと説明し、お願いの理由も説明して何とかして対応はしてくれるとの了承を得ることができた。

 

 

雷真「シノブ、M1アストレイの演習は隣の格納庫か?」

 

シノブ「そうです。今の時間だと、M1アストレイの仮想訓練が行われているはずです」

 

雷真「なら、部下たちを相手してやるかな」

 

シノブ「程々にお願いしますよ。いきなり、若様が参戦されると皆が驚きます」

 

雷真「ほどほどにな」

 

 

シノブの声を受けて手を上げながら自動ドアを潜り抜け、小説に書いてあった物を元に趣味感覚で作った仮装演習場でM1アストレイに搭乗する部下たちをしごいてからシノブが運転する車で学園へと帰った。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

────早く、ボクを見つけて────

 

 

 

 

─────名前を呼んで────

 

 

 

 

───でないとアイツが………───

 

 

 

 

 

 

雷真「ん?今のは………?」

 

雷真「フリーダム、なのか……?」

 

自室のベッドの上で寝ていると突如、脳内に誰かの声が響き起きてしまった。

 

その声の主を探すが部屋には俺以外、誰もいない。

刀奈の奴は姉さんと同じ部屋だし、簪は本音と同じ部屋。シャルロットはラウラと同じ部屋。

 

 

雷真「一か八かやってみるか」

 

前に“あちら側(コズミック・イラ)”でやったように待機状態のフリーダムに意識を集中して目をとじる。

けれど、やはり何も起きない。

 

 

雷真「………」

 

 

フリーダムに何の反応もないため、先ほどの声は幻聴ではないかとも思ったが念のため頭の片隅に残して置くことにした。

 

 

雷真「寝よっ。姉さんの話によれば、明日のインタビューのパートナーは刀奈みたいだし」

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

  • アヴァロン・フリーダムの使用禁止
  • アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
  • 別機体のビーム兵器を使用
  • 別の機体を使う
  • 雷真は見学

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。