ついに一夏が箒の箸につままれた業火野菜炒めを食べてしまった。そんな一夏を見た蘭は、我慢のダムが決壊したかのように大粒の涙を流していた。
蘭「………」ポロポロ
一夏「ら、蘭!?どうしたんだよ!?」
蘭「へ?あれ………?」ポロポロ
どうやら、蘭は無意識で涙を流していたようだ。
蘭「あれ、あれ?こ、こんなはずじゃあ………う、うえええええ!!」ポロポロ
一夏「おい、蘭!」
感情のダムが決壊した所為か、蘭は一夏の声にも反応せずに店の入口から走り出て行ってしまった。
雷真「一夏、話がある」
一夏「で、でも蘭が……「話があると言ってんだ。二度は言わせるなよ?」………分かった」
雷真「刀奈、悪いが箒と共に蘭を探してきてくれ。見つかったら、連絡を頼む」
刀奈「分かったわ。でも、ほどほどにね?」
雷真「善処する」
刀奈「箒ちゃん、行くわよ」
箒「えっ………で、でも」
刀奈「蘭ちゃんのあの行動には、箒ちゃんにも責任があるの、逃げちゃだめよ」
箒「………分かった」
刀奈は蘭を探すために箒を連れて店を出て行った。
さて、ここからは仮の保護者として俺がやらなければならないことがある。その前に………。
雷真「厳さん、貴方が一夏に対して激怒するのも分かる。しかし、元をただせば貴方にも非があるんだ」
厳「なに?」
雷真「これはもう、“たられば”の話になりますが、貴方が宿題をしている蘭を無理矢理、店に呼ぼうとしなければこうはならなかったはずだ」
厳「だが、俺は蘭のために………」
雷真「そうでしょう。確かに、貴方は蘭のことを思って行動したかもしれない。しかし、それを蘭が貴方に頼みましたか?一夏が店に来た時は必ず呼んでくれと、そう言われましたか?」
厳「………」
雷真「言われてないですよね?なら、これからは少しでも気をつけるようオススメします。今の彼女は、心がちょっとしたことで揺れ動いてしまう、年頃の一人の少女なのだから」
厳「……分かった。以後、気を付ける」
雷真「次に一夏、お前だ」
一夏「………」
雷真「が、しかし、その前に弾に質問したい。弾、さっきの一夏と箒の言動と蘭の顔を見て、どう思った?」
弾「………正直、今の俺は一夏、お前を殴り倒したい気分だ。今まで、黙ってきたけど。お前のその人の思いに気付いていない、気付こうとしないところが大嫌いだ!」
一夏「………弾」
雷真「一夏、さっきのお前の言動は蘭を傷付けたんだ。それも、女の子にはかなり深い傷になりえる物だ」
一夏「そんな………ただ、俺は箒に料理を食べさせてもらっただけだ。雷真もたまに会長とやってるじゃないか!?」
雷真「確かに、俺もたまにやるし、やってもらう。けれど、お前とは違う。周りの奴らに俺は、刀奈、簪、シャルロットと恋人で婚約者だと知らせている」
雷真「しかし、今の一夏と箒はなんだ?ただの幼馴染、それだけの間柄だろう?兄弟でもない、恋人でもない、婚約者でもない、ましてや夫婦でもないだろう?」
一夏「そ、そうだけど…」
雷真「今でも一夏は蘭が泣いた理由が分からないか?」
一夏「ああ……」
雷真「じゃあ、今から俺の実体験を話そう。臨海学校の時、俺が“
一夏「ああ」
雷真「俺はその時、“こちら側”に還ってくる前に一人の女性から告白され、振って泣かせたことがある。それも盛大にだ」
一夏「………」
雷真「そこで、俺の立場を一夏に、女性を蘭に置き換えたら、何故、蘭が泣いてしまったのか答えになるはずだ」
一夏「………まさか、え、いや………でも……」
雷真「一応、答えは出たみたいだな」
一夏「しかし、雷真………これは勘違いってことも、それに理由が……」
弾「このバカ野郎っ!」
一夏「がっ!」
流石に弾も一夏の鈍感さにド頭にきたのか、一夏の胸ぐらをつかみ椅子から立ち上がらせ、料理が乗ったテーブルの邪魔にならないように、他のテーブルの方へ一夏を殴り飛ばす。
弾「はぁ……はぁ……はぁ……」
一夏「イッテテ………何すんだよ、弾っ!?」
弾「なにすんだよ、だと!?」
弾「テメェこそ、なにを勝手に蘭の想いを勘違いだと決め付けてやがんだよっ!!」
弾「蘭は泣いてたんだ。お前の所為で、蘭が泣いたんだ!なんで、その理由がテメェには分からねぇんだよ!!」ポロポロ
一夏「………弾、お前………」
いつしか、弾は悔し涙を流しながら、倒れた一夏の上で馬乗りになり、胸倉を掴み上げていた。
弾「なんで、蘭が………蘭が泣かないといけねぇんだよ。お転婆で、がさつで、人使い荒いけど………それでも、なんで、俺の妹がこんな辛い思いをしないといけねぇんだよ。こんなのねぇよ、クソったれが………」ポロポロ
一夏「………」
いつしか、一夏も弾の悔し涙でぐちゃぐちゃな表情を見て、蘭が泣いた理由が少しずつだが分かってきたような顔をしていた。
一夏「そうか……蘭は俺のことを……」
弾「そうだよ!あいつは、中学の時からお前のことをずっと、ずっと………」ポロポロ
一夏「悪かったな、弾」
弾「謝る相手が違げぇんだよ、バカ野郎!!」
一夏「そう……だな」
雷真「どうやら、理解したようだな」
一夏「ああ……蘭が泣いた理由が分かったよ」
雷真「なら、朗報だ。刀奈が蘭を見つけたようだ」
一夏「本当か?」
雷真「ああ」
一夏「なら、迎えに行かないとな」
雷真「だな。厳さん、悪いけど料理はこのままでお願いします」
厳「雷真の坊主には俺も反省させられたからな、それくらいは気にするな」
雷真「ありがとうございます」
一夏が殴り飛ばされたことにより乱れたテーブルを直してから蘭と刀奈たちが待っているであろう近くの公園に二人で迎えに行くことにした。
◇◆◇
~同時刻、とある公園にて~
蘭「ううっ……うっ……うっ」
店から飛び出した蘭は一人、公園のブランコで涙を流していた。
蘭「やっぱり、私なんか………一夏さんの彼女なんか………」
???「あんまり目を擦らないの。せっかくの美人な顔が台無しになるわよ?それに『私なんか』なんて、言わないの」
蘭「え?」
刀奈「は~い、蘭ちゃん」
箒「………」
蘭「更識先輩。それに………篠ノ之先輩まで……ってことは一夏さんと黒牙先輩も!?」アワアワ
私たちがいることで雷真や一夏くんが直ぐ近くにいるのではないかと慌てる蘭ちゃんに、雷真がやろうとしていることを蘭ちゃんに説明する。
刀奈「大丈夫、二人はまだここには来ないわ」
蘭「そ、そうですが………って、まだ?」
刀奈「そっ。私が連絡を雷真に寄越さない限りは二人が………一夏くんが来ることはないわ」
蘭「それを聞いて、なんだが安心しました。こんな、ぐちゃぐちゃな顔で一夏さんの前には出られませんから。それに、私なんか………」
刀奈「ほら、また。今、雷真が貴方のために一夏くんにお説教をしている所だから」
蘭「黒牙先輩が?」
刀奈「そう。超鈍感で、超朴念仁の一夏に蘭ちゃんが何で泣いてしまったのか。その理由を分からせるためにお説教しているの」
蘭「って、ことは………」
刀奈「多分、そういうことね」
蘭「ひえええええ!!」
刀奈「まぁ、さすがに一夏くんクラスでない限り、蘭ちゃんの行動で直ぐにバレることだし。この状況に乗じて、告白しちゃいなさいな」
蘭「でも………」
刀奈「蘭ちゃん。世の中には、告白する前に想い人と永遠の別れをする人もいるの。そんな悲しい後悔を貴女はしたいの?」
蘭「………」
刀奈「それに、私が知ってる告白の中では、告白しても永遠に会えることがない女性も中にはいるのよ」
蘭「告白したのにですか?」
刀奈「そう。お伽噺みたいな話だけど、とある異世界還りの軍人さんが異世界で、それは可愛い美少女に告白されるけど、元の世界には既に婚約者がいるの」
刀奈「だから、その軍人さんは告白した彼女を振って、婚約者がいる元の世界へと帰ることを選んだの。それが彼女と二度と会えずに、彼女を泣かせることであっても」
箒「!?(異世界還りの軍人………まさか、雷真!?)」
刀奈「でもね、私は告白した彼女は、こう思ってると思うの。決して、実らない想いだったけれど、伝えないで別れるより、伝えて別れた方が良かった、ってね」
刀奈「だから、蘭ちゃんも頑張りなさい。それに、仮に今振られても、振り向かせればいいのよ」
蘭「………わかりました。もう一度、頑張ってみます」
刀奈「それから、箒ちゃん。次は貴女よ。蘭ちゃんだけ、意中の男性を教えたんだから、箒ちゃんも教えないと」
箒「わ、私はべ、別に……」
刀奈「箒ちゃん、後悔は先に立たずよ」
照れ隠しをしようとした箒ちゃんに、私は真剣な眼差しで「本当に後悔しない?」と箒ちゃんの目に訴える。
箒「………分かった」
刀奈「それは、よかったわ」
箒「………蘭。私は………一夏が好きだ。この気持ちは誰にも負けないつもりだ」
蘭「やっぱり………。私も!私も一夏さんが好きです!ですから、私はこの気持ちを一夏さんに伝えます!」
箒「そうか。私もいつか、一夏に伝えられるようにならねば」
蘭「先に一夏さんをもらっても泣かないでくださいよ?先・輩」
箒「フンッ!やれるものならやってみろ」
蘭「ええ!やってやりますとも!」
箒「ぐぬぬぬぬ!」
蘭「ぬぬぬぬ!」
刀奈「(どうやら、蘭ちゃんは振っ切れたみたいね。けれど、箒ちゃんはもう少しかかるかもしれないわねぇ…)」
二人が額を擦り合わせて、唸っているのをよそに私は携帯で蘭ちゃんの居場所を雷真に連絡する。
◇◆◇
一夏が蘭の想いに気付いて、刀奈から送られてきた位置情報と一夏のガイドを頼りに刀奈たちがいるであろう公園にたどり着いた。
雷真「おっ、いたいた。刀奈ー!」
刀奈「らーいしーん!」フリフリ
無事に合流すると、俺と刀奈、箒は手筈通りに一夏と蘭を二人きりにして五反田食堂に一足先に戻ることにした。
雷真「流石に料理は冷めちゃってるよな~」
刀奈「そうね。流石に1時間も放って置いたらね」
箒「二人とも今回はすまなかった。私の軽率な行動の所為で」
雷真「そうだなー」
刀奈「ちょっと、雷真」
雷真「これで、少しは自分の行動に責任が伴うことが分かったろう?」
箒「ああ、本当にすまない」
雷真「分かっているなら、よし。それと、今回のことで一夏が箒やセシリア、鈴、ラウラの想いにも気付いてくれればなぁー」
刀奈「それは、一夏くん次第じゃない?」
雷真「だよな~」
三人で店に着いて、早速、冷めた料理に手を付けると………。
雷真「あれ?温かい?」
刀奈「本当ね」
箒「でも、どうして?」
蓮「それは、レンジで温めたからよ」
雷真「そういうことだったんですね。どうりで………」
料理が温かいことに驚いていると蓮がレンジで温めてくれたと教えてくれた。
雷真「うん!やっぱり、唐揚げは熱々に限るよな」
刀奈「鯖味噌も熱々の方が美味しいわね」
箒「野菜炒めもだ」
三人で一夏を放っておいて料理を楽しんでいると、店のドアが開き。外から頬に紅葉のような跡を作った一夏と目を赤くしながらもスッキリとした顔の蘭が帰ってきた。
雷真「よう、色男」
一夏「色々とありがとうな、雷真」
雷真「まったくだ」
蘭「私からもありがとうございます。黒牙先輩、更識先輩」
雷真「どういたしまして」
刀奈「私は恋する女の子の味方だから」
蘭「それじゃあ、私は宿題があるので、これで失礼します」ペコリ
ペコリと頭を下げたあと、蘭は早足で母屋の中へと消えていった。
どうやら、一夏は蘭のことを振ったようだ。
さてさて、今日のことをどうやって織斑先生に報告したものか、考える必要がありそうだ。
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