雷真「以上が昨日の門限以後の出来事になります」
千冬「はぁ~、読ませてもらった。不出来な弟と篠ノ之の所為で迷惑をかけたな黒牙」
雷真「いえ。仮とはいえど、保護者として、恋愛の先輩として、指導したまでです。ですが、まだきっかけを与えたに過ぎないのでその点はご了承を」
千冬「分かっている」
いつもの早朝特訓のあと、寮長室にいる織斑先生に昨日の門限以後に起きたことをレポートとして提出したのである。
千冬「それから、黒牙。轡木さんから書類を預かっている」
雷真「師匠から?」
千冬「内容は知らないが、出来るだけ早くとのことだ」
雷真「出来るだけ早く?」
織斑先生からA4サイズの角形封筒を受け取り、師匠からの書類を拝見すると、そこには少しばかり面倒な書類。
内容は、
雷真「おい、師匠………アンタ、分かっててこの書類を織斑先生経由で渡したろう、絶対」ピキピキ
千冬「黒牙、内容を聞いても平気か?」
雷真「はい。絶対に織斑先生も関わるので」
千冬「私も?」
雷真「師匠から書類内容は………学園の教師用ISに対
千冬「なっ!?」
雷真「俺がビーム兵器を隠しているのを知っててコレを送ってくるんですから、あの人は姉さんの専用機のことを盾にしてるから質が悪い」
千冬「ああ………あのM2アストレアのことか。それでどうするんだ?」
雷真「ビーム兵器は流石にこれ以上、俺の管理下から外へ出す訳には行きませんよ。刀奈たちのだけでなく、タッグマッチで姉さんの専用機で煩くなりますし」
雷真「現に、日本とフランス以外の各国が自分たちにもビーム兵器を寄越せだ、なんだかんだと喚いていますから。まぁ、そうなることを見越して、脅しをかけていますがね」
千冬「脅し?」
雷真「各国のIS委員会のメインサーバーとサブサーバーにハッキングをかけて黒い情報を押さえてありますし、ボタン1つで全てサーバーとデータがおじゃんになるウイルスを作成したりとかね」
千冬「え、えげつないな」
雷真「まぁ、コレくらいはやらないと色々と面倒なことに巻き込まれますから」
千冬「話を戻すが、配備の件はどうする?」
雷真「そうですね………。対ビームシールドなら支給しても構いません」
千冬「ビームシールドか………。あれさえ、あれば防御に徹してお前か、お前の所の三人衆、織斑、篠ノ之、オルコットで敵は排除できるようになるからな」
雷真「そうですね。周りの被害も抑えられますから」
千冬「私からも対ビームシールドは頼みたい」
雷真「わかりました。タッグマッチ前には何とかなると思います」
千冬「世話をかける」
雷真「大丈夫ですよ」
◇◆◇
織斑先生経由で師匠からの対ビームシールド関連の書類を受け取ったあと、本日の授業を終えて放課後。
俺は姉さんと共に、第3アリーナに来ている。
無論、第3アリーナに来ているのは姉さんのM2アストレアの演習のため、副会長権限で第3アリーナへの入場と屋根は閉鎖してある。
それと、前の騒動以来、姉さんは俺や刀奈、簪、シャルロット、本音だけがいる時、砕けた話し方をしてくれるようになった。俺としては嬉しい限りだ。元々、姉さんは堅苦しい面があったから。
雷真「姉さん、アストレアの具合はどうだ?」
虚「基本的な操作は昨日、一昨日の最適化で慣れたけど、まだストライカーは慣れないわね。特に、ランチャーとIWSP、ガンバレルが………」
雷真「ランチャーはアグニが原因で、IWSPはやはり重量か。ガンバレルは、有線式のビット兵器だからビット適性値がBの姉さんでも使えると思ったんだけど」
虚「自分が動きながらだと、どうしても一機が限界かな………」
雷真「う~ん。この際、第2世代ドラグーン・システムを組み込むことを視野に入れた方がいいかなぁ」
虚「第2世代ドラグーン・システム?」
雷真「簡単に説明すると、この世界にあるビット操作システムは操縦者の空間把握能力だけで操作しているけど、“
雷真「だから、空間把握能力がそこまで高くなくてもビット兵器が使えるようになるんだよ」
虚「そんな、システムが………」
雷真「まぁ、そこは姉さんに任せるよ。データはカオスから引っ張ってくれば何時でもインストールできるから」
虚「では、お願い。タッグマッチの時、雷真に迷惑をかける訳にはいかないから」
雷真「分かった。あとでインストールしておくよ。それじゃあ、続きをやろうか」
虚「そうね」
雷真「カオス、起動っ!」
フリーダムを展開させてから
すると放り投げたカオスのペンダントが緑に輝き、メタリックグレーのカオスは放り投げた高さで浮遊しながら目の前に出現すると、直ぐに
雷真「カオスの設定はIS用の演習にしておくから、SEが切れたら一時終了で」
虚「分かったわ」
雷真「それじゃあ、始めっ!」
姉さんとカオスたちが高度を合わせてから、演習開始の掛け声を上げると二機とも、一斉に動き出す。
虚「ハアアアアッ!!」
◇◆◇
姉さんのカオスとの演習のあと、アストレアのSEが切れたのでカオスからアストレアに第2世代ドラグーン・システムをインストールして、ガンバレルの調子を見ている。
雷真「どうだい、姉さん。第2世代ドラグーン・システムは?」
虚「そうね。やはり、インストールしてから凄く楽にガンバレルを四機とも操作できるわ」
雷真「それはよかった」
虚「アストレアのSEが回復したら、次はIWSPをモノにしないと」
雷真「IWSPは重いからな」
虚「雷真はどうやって、あんな重いのを自在に扱っていたの?」
雷真「簡単だよ。重さを利用するんだ。前に進むなら前傾姿勢でスラスターを噴かして、後ろなら後傾姿勢でスラスターを噴かすだけ」
虚「それはそうだけど、普通はあんなに重たいのを背負った状態でそれをやると前に倒れたり、後ろに倒れたりするわよ?」
雷真「ん~、だとなるとやっぱり俺ができるのは“
虚「それ以外ないでしょうね?」
雷真「だよな。それじゃあ、俺も特訓やりますか」
姉さんと話を終えたあと、姉さんのアストレアのSEが回復するまでフリーダムでカオス、ガイア、アビス、セイバーの四機を同時に相手をして、“アレ”の持続時間を延ばす特訓をすることにした。
前の学園襲撃事件以来、もっと“アレ”の持続を延ばそうと色々とやった結果。今では持続時間が5分にまで延びている。けれど、もしも
雷真「ハアアアアッ!!」
まず最初に衝突したのは、セイバーだった。セイバーのヴァジュラビームサーベルとフリーダムのラケルタビームサーベルがつばぜり合いになりプラズマが生じる。
四機もビーム兵器を扱うため、武装に回していたエネルギー配分をIS戦闘基準まで落とす。落とした部分のエネルギーはスラスターの推進力とSE量に回している。なので、四機とも飛行速度はフリーダムに近くなっているのだ。
雷真「やっぱり、エネルギー配分をスラスターに回してから臨海学校の時より、速いっ!」
雷真「チッ………!」
セイバーとつばぜり合いになっていると、やはり他の三機がビームライフルやビーム砲を撃ってくる。
それを回避するためにセイバーのヴァジュラビームサーベルにラミネートアンチビームシールドを割り込ませてつばぜり合いを弾き退けて隙を作らせ、ビームが一番多く放たれてくるアビスのビーム砲へと蹴り飛ばす。
(※以後、ラミネートシールドと省略。by作者)
雷真「うらぁっ!」
セイバーを蹴り飛ばした後、回避しても当たりそうなビームをラケルタビームサーベルで相殺、またはラミネートシールドで防ぎながら高速で移動する。
雷真「やっぱり、数が多い………けれど、カオスにドラグーンを使えないようにしているから少しだけ楽だ」
カオスたちの武装や装甲を破壊すると修理に時間と費用がかかるために、前回修理する際にフリーダムからSEに関するデータを転用して
しかし、SEはパイロットがいるところだけ。なので、ビットやドラグーンを飛ばしているとドラグーンは本機が離れているためSEが作用しない。
そのため、カオスのドラグーンは飛ばさせないように今はシステムを設定してあるがビーム自体は使えるため、なんちゃってフルバーストされるので厄介なのは変わりないけど少しだけ楽である。
虚「す、すごい………四機の攻撃を全て躱してる」
雷真「そろそろかな………」
大分、五感が研ぎ澄まされたところで、SEEDを発動してから“アレ”を使うために『守る』という意識に集中する。
雷真「………」キュパーン
雷真「よし、いくぞ!」
雷真「甘い!」
雷真「そこっ!」
それから、約3分。カオスたちの攻撃を全て躱わして反撃を確実に当てていると、ある異変が起こった。
それは、俺の反応速度と操作速度にフリーダムが付いて来れずに脚部や肩部のシールドバリアにカオスたちのビームライフルから放たれるビームが命中したのだ。
雷真「なっ……!?(命中した!?)」
雷真「今、完全に回避したのに……。操作ミスでもしたのか?」
最初は気のせいだと思い続けていたが、流石に五発も命中するとなるとおかしいと思い特訓を中断する。
雷真「………」
虚「雷真?」
雷真「(フリーダムが俺の反応速度に付いて来れなかった? でも、今までそんなことはなかった。じゃあ、なんで?)」
何故、フリーダムが俺の反応速度に付いて来れなかったのか疑問に思い思考の海に潜っていると、姉さんにヘッド装甲をノックされたのに驚いた。
雷真「うおっ!?」
虚「やっと思考の海から浮上した。まったく、雷真は子供のころからそういうところは変わらないわね」
雷真「ご、ごめん」
虚「別に謝ることではないわ。けれど、どうしたの? カオスたちのビームが命中してから急に特訓を止めて。たしかに、雷真に攻撃が当たるのは珍しいけど………」
雷真「なんか、フリーダムが俺の反応速度に付いて来れないみたいでさ」
虚「ん~、それはもしかしたらフリーダムが次の形態に移行しようとしてるのかも」
雷真「フリーダムが?」
虚「もしかしたらよ?」
雷真「だとしたら、ストライクフリーダムに移行するのか?」
虚「ストライクフリーダムって、確か………」
雷真「ああ。俺の友人の専用機だよ。可能性としてはあり得るから取り敢えず、今日は個人特訓は止めておくよ」
フリーダムの疑問が晴れないうちは個人特訓は止め。姉さんの特訓とタッグマッチに向けた連携の特訓にシフトした。
◇◆◇
アリーナの使用限界時間まで連携の特訓をしてから、第3アリーナにある機密整備場でフリーダムとアストレアの整備を行ったあと、いつものメンバーで夕食を食べていると簪があることを口にした。
簪「そういえば、雷真」
雷真「なんだ?」
簪「夏休み前のメディカルチェックの時に言ってた、周りが遅く感じる力の名前は決めてるの?」
雷真「“アレ”の名前か………」
刀奈「確かに名前がいるかもしれないわね。ゾーンに近い奴にも“SEED”って名前があるわけだし」
シャル「ところで、SEEDってどういう物なの?」
雷真「正式名称、Superior Evolutionary Element Destined-factor。通称、SEED。日本語だと、優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子、という意味らしい」
刀奈「優れた種への……」
簪「進化の要素であることを……」
シャル「運命付けられた因子……」
雷真「俺が知っている中で、これに覚醒したのは五人だけなんだ。そのうちの四人は『コーディネーター』で残りの一人は『ナチュラル』だから、『コーディネーター』だけが使える物でないんだが。あまり、SEEDの発動要因が分かってないんだ」
刀奈「なら、雷真は特別なのかしらね?」
雷真「どうなんだろうな?」
簪「なんか、話が脱線し始めてる」
シャル「ごめん。僕の所為で………」
簪「二人とも話を戻そう」
雷真「す、すまん」
刀奈「あら、ごめんなさいね」
簪「それじゃあ、私が考えた名前は『オーバーリミット』。リミッターをオーバーするから、『オーバーリミット』なんだけど、どうかな?」
シャル「簪、僕や刀奈の案もあるんだから、それから雷真に選んでもらおうよ」
簪「ごめん。こういう必殺技のネーミングを決めるの憧れてたからテンションが………」
シャル「それじゃあ、僕の番だけど。名前は『セカンドSEED』、雷真がSEEDを発動してないと使えないから、SEEDのその先を意味して『セカンドSEED』」
刀奈「最後は私ね。やっぱり姉妹だからかしらね。簪ちゃんと少し似てるけど『オーバーロード』なんてどうかしら?」
雷真「そうだな………。よし、シャルロットの『セカンドSEED』にしよう。なんとなく、しっくり来たから」
こうして、俺の新しい力に名前が付いたのだった。
ネタ切れなので、お休みします。
アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて
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アヴァロン・フリーダムの使用禁止
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アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
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別機体のビーム兵器を使用
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別の機体を使う
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雷真は見学