自由と白式   作:黒牙雷真

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第61話

インパルスたちの特攻自爆により、俺以外の専用機持ちがかなりの被害を受け、教師陣に救援指示を出したあと、“セカンドSEED”とは違う、何かに反応するかのような不思議な感覚に襲われた俺は、本能的に拡張領域(バススロット)から高速切替(ラピッド・スイッチ)でストライクの対ビームシールドを構えると上空から放たれたとおぼしき緑のビームが対ビームシールドに弾かれる。

 

そして、緑のビームを弾いたのと同時に上空から、ある熱源が降下して来た。その熱源は、フリーダムのデータベースに識別データがあった。しかし、その識別データは過去の大戦で撃破された機体の物だった。

 

 

雷真「ZGMF-X666S………レジェンドだと!?」

 

雷真「バカな!? レジェンドは過去の大戦でメサイヤと共に破壊されたはずだ!」

 

雷真「まさか………インパルスと同じ、この世界で作り上げたのか!?」

 

 

一番あって欲しくないことが目の前に存在していることに俺は驚きを隠せないのと共に即座にフリーダムのスラスターを噴かして学園から追い出すように動く。

 

しかし、レジェンドも俺が動いたのと同様に背部ユニットに装備されている10機のドラグーンを飛ばしてくる。

 

 

 

 

 

 

~BGM:撃沈ドミニオン~

 

 

 

 

 

雷真「チッ!」

 

 

レジェンド本体から射出され、四方八方から襲いかかってくるドラグーンのビーム網を掻い潜るようにレジェンドへと接近しながらルプスビームライフルでレジェンドを狙い撃つ。

 

また、そこで気付いたことがあった。このレジェンドの武器には、一つだけレジェンドの物ではない物があった。それは、レジェンドが左腕に持っていたシールドだ。そのシールドには見覚えがあった。

 

 

雷真「あれは………確か、プロヴィデンスの複合兵装防盾。でも何故、レジェンドがプロヴィデンスの装備を………?」

 

???「流石だな。この武装がレジェンドの物でないと一目で気付くとは」

 

雷真「!!」

 

 

俺の声に答えるかのようにレジェンドが応答し、複合兵装防盾を見せびらかしてくる。他にも、このレジェンドは無人機ではなく。有人機であり。そして、なによりレジェンドのパイロットの声には、聞き覚えがある。

 

 

雷真「その声は………そんなバカな。だって、お前はあの時………ジェネシスに………」

 

???「撃たれて死んだはず………そう言いたいのかね?フハハハハハッ!!」

 

???「そんな、あり得るはずのないことを君は既に目にしているではないか、クロキバ・ライシンくん」

 

雷真「!!」

 

雷真「まさか………お前も!?」

 

???「ご名答。しかし、私は彼らよりも前の過去に飛ばされたがな。約5年も前の、この世界にっ!!」

 

雷真「5年前だと?」

 

 

確かに、奴の言葉が本当で、5年も前に飛ばされているのであれば、今日までの月日でMS(モビルスーツ)を製造できるだろう。しかし、それではセカンドステージのMS(モビルスーツ)について説明がつかない。

 

 

???「君は今、それが本当だとしてもセカンドステージのザフト製MS(モビルスーツ)について説明がつかないと思っているだろう」

 

雷真「!?」

 

???「答えは簡単だよ、ライシンくん。過去の大戦、メサイヤ攻防戦にて、戦死認定されたパイロットがこの世界では生きているのだよ。私や彼らのようにね」

 

雷真「嘘………だろう?」

 

???「そうだな………名前を上げるとしたら、彼の名前を上げるとしよう。君もよく知っているはずだよ」

 

???「ブルーコスモスの名手。ムルタ・アズラエル。彼も生きているのだよ。この世界に!」

 

雷真「奴までこの世界に生きているだと!?」

 

???「彼もMS(モビルスーツ)を製造している。それがどういう意味か、君には容易に想像がつくだろう? この世界で“あちら側(コズミック・イラ)”の巻き直しだよ」

 

雷真「そんな………そんなことさせるかよっ!!」

 

 

ドラグーンのビーム網を回避しているとレジェンドとの距離が開くがレジェンドに向けて、ルプスビームライフルとバラエーナプラズマ収束ビーム砲二門を撃つ。けれどレジェンドが持つ、複合兵装防盾に備え付けられていたビームシールドに阻まれる。

 

 

雷真「プロヴィデンスの時と違って、ビームシールドも付いてるのかよ!?」

 

???「どうした?その機体………フリーダムに、乗っていながらこの程度かね?」

 

雷真「クソッ!」

 

 

やはり、動力源が核だけのフリーダムと違い、核とデュートリオンシステムとのハイブリッドであるハイパーデュートリオンエンジンを搭載しているレジェンドの方が高性能のため、押され始める。

 

 

???「君も彼と同じ、スーパーコーディネイターだろうにっ!!」

 

雷真「俺がスーパイコーディネーター………?」

 

???「そうだ。君は彼と………キラ・ヤマトとひどく似ているのだよ。だから、君も憎くて仕方がない!」

 

雷真「そんなの、単なる八つ当たりじゃねぇか!?」

 

???「そうだとも。私は君たちのような出来るというだけで存在のために作られ、そして、捨てられた」

 

???「ならば、この憎悪をその根源たるスーパーコーディネイターとして誕生した君や彼にぶつけて何が悪い!」

 

雷真「そんなことのために、そんなことのためだけにお前はあの時、戦意を失った人たちと共に救命船に乗っていた彼女を………フレイを殺したのか!?」

 

???「そうさ。私は、スーパーコーディネイターという存在が憎い。だから、私はスーパーコーディネイターであるキラ・ヤマトくんに私から“絶望”という名のプレゼントをしたのだよ」

 

雷真「ラウ・ル・クルゥゥウゼッ!!!」

 

 

あの時、キラは苦しんで、泣いていたんだ。『僕が彼女を救えていれば』と『僕は彼女に何も返せてないのに』と………キラや、ミリアリア義姉さん、サイにあんな辛い思いをさせたラウル・クルーゼに対して怒りと殺意だけが俺の頭を支配した。

 

それと同時にルプスビームライフルと対ビームシールドを拡張領域(バススロット)に収納して、代わりにミーティアを出し高速切替(ラピッド・スイッチ)でドッキングし、エリナケウス対艦ミサイルをクルーゼに放つ。

 

 

雷真「お前は………お前だけは!!」

 

雷真「絶対にゆるさねぇぇえええ!!!」

 

クルーゼ「ハッ!」

 

 

しかし、クルーゼは嘲笑うかのようにレジェンドのドラグーンでエリナケウス対艦ミサイルをことごとく迎撃していく。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

《side刀奈》

 

 

 

 

雷真『ラウル・クルゥゥウゼ!!!』

 

雷真『お前は………お前だけは!!』

 

雷真『絶対にゆるさねぇぇえええ!!!』

 

クルーゼ『ハッ!』

 

刀奈「雷真………貴方………」

 

 

私は、生まれて初めて彼が………雷真が声を上げながら激昂する姿を見た。今、雷真が戦っている相手に怒りを覚えるのは私にも理解できる。

 

できることならば、私も彼と共に奴を倒したい気持ちが溢れてくる。けれど、先ほどの戦闘でインパルスの自爆により専用機持ちの全てがかなりやられてしまっている。無論、私の霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)も例外なくやられているため、あの戦闘に介入できるほどの動きはできない。仮にできたとしても、あのレベルの戦闘に介入して生きていられるかと問われれば、答えは否である。

 

 

簪「お姉ちゃん!」

 

刀奈「……簪ちゃん」

 

簪「あの機体………それにさっきの雷真が叫んだ名前って………」

 

刀奈「ええ、間違いないわ。それに全てオープンチャネルで聞こえていたでしょう?」

 

簪「………うん。でも、あんなに怒ってる雷真は初めて見るよ」

 

刀奈「それは私も同じよ」

 

 

ラウル・クルーゼ。クラス代表の時の襲撃事件後に機密区画で雷真が経験した異世界での四年間の話に出てきたザフトの隊長。彼は、スーパーコディネイター、キラ・ヤマトという存在を作るための資金を稼ぐためにクローンとして産み出された。

 

そんな彼がキラさんに憎悪を抱くのは仕方ないのかもしれない。けれど、雷真がスーパーコーディネイター? なら、雷真も作られた存在?

 

私は、今さらになって幼馴染で婚約者である雷真の過去を知らないのだと理解した。雷真とは物心が付く前から同じ家に住んでいた。当時、私と簪ちゃん、両親は名字が“更識”なのに、なぜ彼だけ“黒牙”なのかお父さんに聞いたことがある。

 

その時のお父さんは、深い悲しみを瞳に映しながら「彼のご両親は彼を捨てて何処かに行ってしまった」と聞かされた。その言葉が本当がどうか私には分からない。けれど、深く聞く必要ができた。雷真の出生について。

 

 

雷真『ぐっ!』

 

刀奈「雷真!」

 

簪「雷真!」

 

 

レジェンドのビット兵器によるビーム網を掻い潜るも流石に数が多いため雷真が乗るフリーダムの追加パッケージと思われるユニットが被弾し始める。

 

 

一夏「会長!簪!」

 

刀奈「一夏くん。それにみんなも」

 

セシリア「何です、あの機体は………?」

 

シャル「それに雷真があそこまで怒るなんて………」

 

刀奈「あの機体はZGMF-X666Sレジェンド。雷真が経験した二度の大戦で消滅したはずの最強の機体の一体。それに加えて、そのパイロットは同じく二度の大戦で死んだはずの人間よ」

 

箒「死んだはずの人間と消滅した最強の機体が何故、雷真と今戦っているのだ!?」

 

簪「非現実的ではあるけど、可能性としては………」

 

ラウラ「偶然的に、死ぬ間際に雷真のように何かの形でこちら側の世界に飛ばされてきた。そういうことか、簪」

 

簪「うん」

 

鈴「それにしても、何なのアイツとアイツが乗ってる機体は!? 瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使ってないのにハイパーセンサーが捉えるので精一杯の機体なんて、無茶苦茶よ!?」

 

シャル「それだけじゃないよ。雷真のあの精密な射撃をいとも容易く回避したり防いだりしてる。それに、雷真に攻撃を当てるなんて………」

 

ラウラ「機体だけでなく、パイロットも強い………!」

 

刀奈「雷真………お願い。無茶だけはしないで」

 

 

私は、MS(モビルスーツ)という存在に出会ってから何度目か分からない無力感を感じながら、最愛の人の無事を祈ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

《side雷真》

 

 

 

フリーダムとミーティアをドッキングさせ、戦力増強しながらレジェンドに挑むがやはり、性能の差なのか思うように攻撃が当たらず、代わりに右側のウェポンアームをレジェンドの高エネルギービームライフルに狙撃されてしまう。

 

 

雷真「ぐっ!」

 

雷真「このっ………!」

 

 

 

周囲を飛び回るドラグーンをビームソードで凪ぎ払うもクルーゼの操作が上手いのかビームソードが空を切る。

 

 

雷真「クソッ!」

 

クルーゼ「ぬるい!ぬるすぎる!あの時、プロヴィデンスの攻撃を凌ぎ切った少年がこの程度とは!!」

 

雷真「五月蝿い!」

 

 

あの時は、奇跡的にM1アストレイでプロヴィデンスのドラグーンを凌ぎ切ることが出来たが今はどうだ? フリーダム本体にはまだ当たってはいないがミーティアには当てられている。

 

 

雷真「ぐぅぅっ!!」

 

雷真「(クソッ!性能的にやっぱりレジェンドが上か! でも、ここでアイツを止めないときっと、“あちら側(コズミック・イラ)”と同じようにこの世界を壊そうとするはず!!)」

 

雷真「(ならば、ここで息の根を止めてでも止めないと!!)」

 

クルーゼ「こんな状況で考え事をするなど、随分と余裕だな!」

 

雷真「しまっ………!!」

 

 

戦闘中とはいえ、クルーゼについて考えている一瞬の隙にドラグーンによってクルーゼの間合いに誘導されてしまい、レジェンドの複合兵装防盾の大型ビームサーベルに、最後のウェポンアームを半ばから切り裂かれてしまい、直ぐにウェポンアームを手放してその場から離脱する。

 

 

雷真「クルーゼ! お前の目的は俺だけなのか!?」

 

クルーゼ「君だけではない。この世界は“あちら側(コズミック・イラ)”と同様に腐敗している。篠ノ乃束が製作した“インフィニット・ストラトス”によってなっ!!」

 

雷真「なに!?」

 

クルーゼ「君たちは知らないだろうが、世界では常日頃から非人道的なことが行われているのだよ」

 

 

クルーゼはそう言いながら、高エネルギービームと複合兵装防盾に内臓されている二門のビーム砲を撃ってくる。それを回避しながら、ミーティア本体に備え付けられているエネルギー収束火線砲二門とバラエーナプラズマ収束ビーム砲二門、クスィフィアスレール砲二門をフルバーストする。

 

 

雷真「どういうことだ!?」

 

クルーゼ「本当に、知らないのかね? この世界は、当たり前のように女尊男卑が蔓延している。それによって私たち男の扱いはどうだ?」

 

雷真「………」

 

クルーゼ「道具のように扱われ、差別され。その果てには、己が欲求のために殺される」

 

雷真「………」

 

クルーゼ「理解できるかね? 生まれてくる我が子が“男”だと分かった途端にその子供を殺す輩がいる。そして、何よりそんな輩が増えたのは“インフィニット・ストラトス”の存在が明らかになってからだ!!」

 

クルーゼ「これを非人道的と言わずして何と言うッ!!」

 

雷真「くっ………!」

 

 

クルーゼは怒鳴りながらも射撃精度は落とさないため、ミーティアのエネルギー収束火炎砲二門がドラグーンのビームによって破壊されてしまった。

 

 

クルーゼ「そんな輩が存在するから我々はこの世界を壊す!! 私のような“出来る”というだけで作られた命の火が短いクローンや非人道的によって産み出され、殺されていく子供たちをこれ以上増やさないためにッ!!」

 

雷真「ぐああああ!!」

 

クローン「その手始めに、このIS学園を破壊する!!」

 

 

理解してしまった。クルーゼの考えも、ある種一つの正義なのだろう。確かに、篠ノ乃束が作った“インフィニット・ストラトス”によって世界に一変した。それによる男性への被害はかなりの物である。

 

それでも、俺はこの学園で培った思い出を壊されたくない。だから………!!

 

 

雷真「それでも、守りたい場所が俺にはある!!」キュパーン

 

雷真「ウオオオオッ!!」

 

 

両腰からラケルタビームサーベルを二本とも引き抜き、二刀流でレジェンドのビームを弾きながら、バラエーナプラズマ収束ビーム砲二門とクスィフィアスレール砲二門、それにミーティアに残っているエリナケウス対艦ミサイルを撃ちまくる。

 

けれど、それをいとも容易くクルーゼが駆るレジェンドは回避または迎撃していき、そして、レジェンドの瞬時(イグニッション・)加速(ブースト)による急加速に反応が出来ずミーティアの右側エンジン部を大型ビームサーベルで深々と切り裂かれてしまう。

 

エンジン部がやられてしまったので爆発に巻き込まれる前にミーティアをパージして、拡張領域(バススロット)からルプスビームライフルとストライクの対ビームシールドを取り出し、レジェンドに突撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

  • アヴァロン・フリーダムの使用禁止
  • アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
  • 別機体のビーム兵器を使用
  • 別の機体を使う
  • 雷真は見学

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