ピッ………ピッ………ピッ………ピッ………ピッ
シュコー…………シュコー………シュコー………シュコー
雷真「………」
刀奈「………雷真」
学園が襲撃を受けてから5日が経過した。クルーゼとの戦闘でボロボロにやられてしまった雷真を急ぎ、医療施設に運び、医師に託すと緊急手術が行われた。医師が言うにはかなり危険な状況だったらしく、生きているのが奇跡だと言っていた。なんでも、内臓が高熱でズタズタにされていて出血量も多く、骨も骨折や皹が入っていたり、特に右腕の火傷が酷いようで本当に満身創痍な状況だったようだ。
それでも、医師の力と治療用ナノマシンの投与で何とか命の危機から脱したとか。今は医務室のベッドで心電図計と人工呼吸器に繋がれていて意識が戻らない。また、フリーダムのダメージ状況だが、D判定が下り、今は、学園ではなく、虚が呼んだシノブたちがインパルスの残骸と共に受け取り修理するとのこと。
他には学園の被害状況。アリーナが3つ半壊、校舎は教室が一つと教室側の防弾ガラスを総取っ替えで、学園は3日間休校となった。
ガラガラガラ!
簪「お姉ちゃん、交代だよ」
刀奈「ええ………」
鈴「刀奈、雷真が心配なのは分かる。けれど、アンタも休まないと、何かあった時に今の雷真を守れないわよ?」
刀奈「………分かったわ」
鈴「セシリア、刀奈をお願い」
セシリア「分かっていますわ」
雷真が命の危機から脱したあと、医務室で私、簪ちゃん、シャルロットちゃんが1日交代で雷真の容態を見ている。私たちのISも酷くやられてしまっているため、自分で直せる所は自分で修理し、ダメなら本国に修理を依頼して急ピッチで、専用機の修理を行っている。
私たちができるのは、自分の機体を修理するか、あるいは雷真のフリーダムに残っていたクルーゼの新たな機体、ディザスタープロヴィデンスの対策を練るくらいしかやることがない。
セシリア「刀奈さん、その………」
刀奈「大丈夫よ。ありがとう、セシリアちゃん」
セシリア「………」
セシリアちゃんが寮のエントランスまで送ってくれたことにお礼を述べてから、私は雷真の部屋に入り。身体をベッドへと放り投げる。それによって、ギシッギシリッとベッドのスプリングが軋む音が耳に届くのと雷真の香りが鼻を通る。
刀奈「………」
刀奈「雷真が負けた」
今でも、雷真がボロボロに負けたのが信じられない自分が何処かにいる。雷真は、異世界での四年間の生活で、この世界で世界最強ともいえるほどのIS操作技術を習得し、加えて雷真の機体である【ZGMF-X10A フリーダム】という核エンジンを動力源にした最強の機体。この二つが揃えば敵う相手などいない、雷真がいれば学園は安全だと、そう思っていた。
しかし、現実はそんな理想を簡単に壊した。なら、私が今できることは?
刀奈「私が、今できること………」
刀奈「………」
そんなことを考えながら、あの日、雷真がやられた日の夜に虚から受け取った、首に下げている雷真からの水色のお守りを強く握る。
◇◆◇
《sideシャルロット》
シャル「………」ボー
ラウラ「シャルロット、手が止まっているが大丈夫か?」
シャル「え?あ、あー、うん大丈夫だよ、ラウラ」
僕は、いつの間にかボーとしていたようでお昼のサンドイッチを慌てて口にする。けれど、あまり美味しくない。こうなったのは、雷真がクルーゼにやられてからだ。
ラウラ「………………」
ラウラ「雷真が心配なのは分かる。しかし、今は簪が奴の容態を見ている。我々ができることは、早く自分の専用機の修理を済ませ、次の襲撃に備えることだ」
シャル「………」
ラウラ「雷真のためにも、今はやることをすべきだ」
シャル「………うん」
僕にできること、なんだろう。やれるとしたら、ラウラが言ったようにリヴァイヴの修理。他には敵の戦闘データを………これだ!
そうと決めると、僕はサンドイッチをよく噛みながら、胃に入れていく。食べ終わると、お皿とトレーを返却口に返してから職員室にいる山田先生の所へ向かいながら虚さんから受け取った雷真からの黄色いお守りのブレスレットを撫でる。
◇◆◇
《side簪》
簪「鈴、さっきはありがとう」
鈴「いいわよ、別に。私も、一夏がこうなってたら、同じようにしてたはずだから」
簪「それでもだよ。お姉ちゃん、雷真がやられて凄く取り乱してたもん。私やシャルロットも取り乱したけど、お姉ちゃんのは私たちの比じゃなかった」
鈴「そうね。あれは………」
雷真がやられた日に、雷真が緊急手術をすると聞いたお姉ちゃんは、臨海学校の時のような顔に変わった。私たちも酷い顔だったと思う。
無事に手術が終わるとお姉ちゃんは、雷真の側に居るといって織斑先生の話も聞こうとしなかった。
簪「早く、起きてよ雷真。お姉ちゃんがずっと泣いてるよ。私やシャルロットも返事がない会話は辛いよ………」
私は、涙声になりながら虚から受け取った雷真からの白いお守りの首飾りを握り締める。
鈴「……簪」
◇◆◇
《sideシノブ》
シノブ「インパルスの解析はあとだ!今は、若様のフリーダムを最優先に修理しろ!」
「「「御意!」」」
アキト「兄さん、俺はミーティアの修理に専念するよ」
シノブ「分かった。私の方は、フリーダムのメインコンピューターから戦闘データを抽出する」
虚ちゃんの連絡で若様が倒れたと聞いた時は、肝を冷やした。直ぐに、アストレイ隊とアキト共にIS学園に向かい到着すると、そこには激しい戦闘のあとが広がっていた。
そんな光景を見たあと、虚ちゃんに先導してもらいながら学園の医療施設に向かうと泣きじゃくる刀奈お嬢様と、それを宥める簪お嬢様とシャルロットお嬢様の姿があった。
簪お嬢様とシャルロットお嬢様のお二人に話を聞くと、学園への襲撃犯と若様が戦闘を行い、それにより重症を負ったとのこと。
シノブ「………若様」
その後は、我々にできることをするために、今回の襲撃に現れた【ZGMF-X56S インパルス】という
拝借した当初、フリーダムを機密ドッグで展開させて、修理に取り掛かろうとすると思っていた以上に酷い有り様だった。まず、ヘッド装甲の左側半分がなく、右腕部もマニピュレーターから肘までがない。他には肩部のアーマーも両肩側とも破損、腹部と数ヶ所に渡って穴が空いている。腰部はフロントアーマーが両側とも破損、脚部は、右側は足首から先がなく、左側は脛から先がない程に破損している。
武装に関しては、バラエーナプラズマ収束ビーム砲は、ビーム砲を収納できるウィングスラスターごとやられていた。クスィフィアスレール砲は、半ばから完全に破壊されていて、ラケルタビームサーベルも共に破壊されていた。他には、ルプスビームライフルの残骸は見つけたがラミネートアンチビームシールドの残骸は見当たらなかった。
また、幸いにもフリーダムの動力源である、核エンジンには破損など見当たらなかった。もしかしなくとも、若様が周りに被害が出ないように核シャッターを下ろして、核運動を止めたのだろう。
そして、フリーダムをドッグにて修理を始めて3日。修復状況は46%までは何とかなった。
シノブ「思いの他、進んでいないな………」
「隊長、フリーダムの両腕部と両脚部の修理が完了しました」
シノブ「そうか。では、ウィングスラスターの修理に当たってくれ」
「御意!」
部下たちに修理を任せ、私はデータの抽出が終わると各国政府への今回の騒動の隠蔽工作を行うことにした。それと、念のためにフリーダムが直らなかった時のために若様の予備機体の整備などもすることにした。
シノブ「若様………あなた様がここで果てるようなお方ではないことを、私は信じております」
◇◆◇
《side雷真》
???「………なさい!起きなさい!」
雷真「………」
???「起きなさい、ライシン!」
雷真「ん………」
???「起きろって言ってるのよ!」ドスッ!
雷真「ぐほっ!?」
雷真「あ、あばら骨………」ピクピク
???「いつまでも起きないからよ」
雷真「えーっと、ここは………」
???「ここは、謂わばアンタとフリーダムの世界よ」
雷真「え?」
俺は、さっきから声をかけて受け答えをしてくれている声の主の方に顔を向けると信じられない人物がいた。
雷真「ふ、フレイ!!」
フレイ「まったく………今度は、アンタを守るはめになるとはね」
雷真「なんで、フレイが目の前に!? それに、俺はクルーゼに………」
フレイ「だから、言ったでしょ。私とフリーダムで、アンタを守ったのよ!」
雷真「フレイとフリーダムが………?」
フレイ「そうよ。私の魂は、ヤキンドゥーエでクルーゼに殺されてから、ずっとフリーダムと共にあったの。それで、キラがインパルスに墜された時で最後だと思っていたら」
雷真「今度は、俺だったって訳か………」
フレイ「本当、アンタとキラはよく似てるわよね」
雷真「どうだろうな………俺はキラほど強くない」
フレイ「なら、強くなりなさい。これから」
雷真「………」
フレイ「そのためにも、今はアンタを待ってる人の所へ戻りなさい」
雷真「待ってる人?」
フレイ「そう。あの子たちが待ってる。だから、行きなさい。私がアンタを守ってあげられるのは、一度切りでこれが最後」
雷真「………フレイ!キラが、君にごめんって………何度も泣いていた」
フレイ「とっくに許してるのに、キラもバカね」
フレイ「話は終わり? それなら、早く戻りなさい。あの子たちを守れるのはアンタだけ。そして、アンタを守ってくれるのも、あの子たちだけよ」
雷真「ありがとう、フレイ」
フレイ「どういたしまして」
フレイのその最後の言葉を聞くと俺の意識はフワリとした感覚に襲われ意識が真っ白になっていった。
そして、次に意識が浮上すると身体に鈍い痛みと何かの機械が動いている音が聞こえてきた。
ピッ………ピッ………ピッ………ピッ
シュコー………シュコー………シュコー………シュコー
雷真「ん、ん………こ…こは?」
簪「へぇ……?らい………しん?」
鈴「私、先生呼んでくる!」ガラガラ
雷真「かん………ざし?」
簪「よかった………よかったよ………」ポロポロ
雷真「………」
簪「目が覚めてよかったよ、本当に………」ポロポロ
どうやら、俺はクルーゼにやられたあと、医療施設に運ばれてベッドの上に寝かせられていたらしい。そして、目が覚めた俺の手を見舞いに来ていた簪が両手で握りながら涙を流しているようだ。
雷真「かん………ざし、みん………な………は?」
簪「みんな、無事だよ!雷真が守ってくれたお陰で!」ポロポロ
雷真「そう………か。わる………い………もう………少し………寝る」
簪「うん」ポロポロ
状況を把握すると、酷い睡魔に襲われそのまま身を任せることにした。
その後、再び目が覚めると涙目の刀奈とシャルロットに抱きつかれ、激痛に襲われたり、精密検査を受けると医師から化物呼ばわりされるわで、色々とあったが、2日後からは松葉杖を使いながら日常生活を行えるとのことだ。
アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて
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アヴァロン・フリーダムの使用禁止
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アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
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別機体のビーム兵器を使用
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別の機体を使う
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雷真は見学