自由と白式   作:黒牙雷真

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第65話

刀奈の[バキューン]発言事件と俺の身体の怪我が完治して数日が経過したある日。一学年合同のIS演習の授業により一学年全生徒が整列している。また、いつものように織斑先生が腕組みをして立っている。

 

 

千冬「一年専用機持ち、全員前に出ろ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

授業開始早々、俺たち専用機持ち全員が織斑先生に呼び出されて前に出る。

 

 

千冬「先日の襲撃事件で、お前たちのISは深刻なダメージを受けている。自己修復のため、当分の間はISの使用を禁止する」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

流石にそのあたりは理解している。それに織斑先生はセイバーを、婚約者三人にはあの機体たちを秘密で渡している。だから、今の所は心配ないと思う。

 

 

千冬「さて、そこでだが………山田先生」

 

真耶「はい! 皆さん、此方に注目してくださーい」

 

 

そう言って山田先生が織斑先生の後ろにあるコンテナに注目を集め、「ご覧あれ!」とばかりに手を開いて見せた。

 

 

「なんだろう、あれ?」

 

「もしかして、新しいIS!?」

 

「えー? それならコンテナじゃなくてISハンガーでしょう?」

 

「なにかななにかな? お菓子? お菓子かなぁ!」

 

 

おい。絶対に最後のは本音だろう。

 

 

千冬「静かにせんか! ったく、お前たちは口を閉じてはいられないのか。山田先生、開けてください」

 

真耶「はい! それでは、オープン・セサミ!」

 

雷真「開けゴマね………」苦笑

 

 

山田先生、流石に「開けゴマ」を英語で言っても理解に苦しみますよ。ほら、現に俺と刀奈、簪、本音以外は皆、キョトンとしてしまっている。

 

どんまい、山田先生。

 

 

真耶「うう、世代差って残酷ですね………」

 

 

僅かに涙ぐみながらも山田先生はコンテナの開閉スイッチをリモコンで操作し、内部駆動が唸る、ウイィィィンというモーター音を立てながらコンテナが開いていく。

 

 

一夏「こ、これは………」

 

雷真「Extend Operation Seeker?」

 

千冬「ほう。黒牙、よく知っているな」

 

雷真「まぁ、家庭の事情で情報くらいは………」

 

千冬「なるほどな。先ほど、黒牙が言ってたようにコイツの正式名称はエクテンド・オペレーション・シーカー。略してEOSだ」

 

千冬「コイツは国連が開発中の外骨格攻性機動装甲であり、主な使用目的は災害時の救援活動から平和維持活動など、様々な運用を想定している」

 

箒「あの、織斑先生。これをどうしろと………?」

 

 

ここまで来て見せびらかすだけは流石にないだろう。十中八九、開発に必要な稼働データの採取だろう。

 

 

千冬「乗れ」

 

「「「「え!?」」」」

 

雷真「やっぱり」

 

千冬「二度は言わんぞ。これらの実稼働データを提出するようにと学園上層部に通達があった。お前たちの専用機はどうせ今は使えないのだから、レポートに協力しろ」

 

「「「「は、はぁ………」」」」

 

 

なんとなく返事をしてしまう七人。その間に俺たちの後ろに移動した山田先生が、他の一般生徒たちにパンパンと手を叩いて指示を出す。

 

 

真耶「はーい。皆さんはグループを作って訓練機の模擬戦を始めますよー。格納庫から運んで来て下さいね~」

 

 

山田先生が指示を出すがEOSの性能を見たかった生徒が多いためかブーイングが上がるが、そこは天下の織斑先生の一睨みで即座に鎮圧される。

 

 

雷真「さて、やりますか」

 

刀奈「そうね」

 

簪「二人がやるなら私も」

 

シャル「ちょっと!僕を置いてかないでよ!」

 

雷真「ん? この重さは………もしかして」

 

 

俺、刀奈、簪、シャルロットは織斑先生の出席簿が脳天に飛来してくる前にEOSの実稼働データを収集するために動き出すが、あとの四人は動き出しが遅かったようで脳天に出席簿を受けていた。

 

 

千冬「早くしろ、バカども。黒牙とその三人衆は既に動いている。時間は限られているんだぞ。それとも何か? お前たちはいきなりコイツを乗りこなせるのか?」

 

セシリア「あのー、織斑先生。既に雷真さんが………」

 

千冬「なに?」

 

雷真「よっ!はっ! セリャアッ!」

 

千冬「………」

 

雷真「んー、こんなものかな?」

 

千冬「黒牙、なぜ貴様はそこまでEOSを動かせる? 初めてではないのか?」

 

雷真「初めてですけど、このEOSのバックパックの重さが何処と無く、ストライクのIWSPに似てるんですよ。だから、重心移動さえ感覚で掴めてしまえばっ!」

 

雷真「ほいほいほいほい、ほいっと………この通りです」パッ

 

 

織斑先生に分かり易いように、EOSを装着したままバク転を連続で行い、体操選手のように両手を伸ばして止まる。

 

 

千冬「そ、そうか………」

 

千冬「それでは、10分間の間にコイツに慣れてもらう。その後、全員で模擬戦をしてもらう。いいな?」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

それから10分間。それぞれ、自由にEOSに慣れるために行動する。

 

 

一夏「くっ、この………!」

 

箒「こ、これは………」

 

セシリア「お、重い……ですわ……」

 

鈴「うへえ、うそでしょ………」

 

シャル「う、動かしづらい……」

 

刀奈「流石の私も、ちょっとつらいかも………」

 

簪「やっぱり、雷真は規格外………」

 

「「「「同意!」」」

 

雷真「………解せぬ」

 

 

刀奈たちがEOSの操作に四苦八苦しているとラウラは、EOSを感覚を確かめるように準備体操や走り込み、シャドースパーリングをして感覚を確かめていた。

 

 

千冬「それでは、EOSによる模擬戦を開始する。なお、防御能力は装甲のみのため、基本的に生身は攻撃するな。射撃武器はペイント弾だが、当たるとそれなりに痛いぞ!」

 

千冬「では、はじめ!」

 

 

織斑先生の空気に響くようなパンッと鳴る手の叩いた音で皆一斉に動く。しかし、何故、全員此方を向く?

 

 

鈴「まずは、共闘して一番面倒な雷真から始末するわよ!」

 

セシリア「その方が現実的ですわね!」

 

ラウラ「IS戦闘では歯が立たなかったが、生身なら!」

 

一夏「雷真はそんなに甘くないと思うぞ」

 

箒「私も同感だ」

 

刀奈「箒ちゃんに同意」

 

簪「無駄な抵抗」

 

シャル「でも、一発は当ててみたいよね」

 

刀奈「てなわけで、雷真。覚悟ッ!」

 

雷真「ふざけんな!こちとりゃ、病み上がりから一月も経ってないんだぞ!?」

 

 

そんなこんなで、俺vs専用機持ち八人によるEOSの模擬戦闘が繰り広げられた訳だが。途中でSEEDを使ったのを大人気ないとか、卑怯だとか言わないでほしい。

 

 

千冬「そこまでだ」

 

雷真「ふぅ~」

 

専用持ち's「「「「………」」」」チーン

 

千冬「流石、黒牙だな。一対多の戦いに慣れているな」

 

雷真「ええ、まぁ。しかし、まさか、SEEDを使うはめになるとは思ってもいませんでしたよ」

 

千冬「病み上がりなのだから仕方がないだろう」

 

雷真「それでも、個人的には大人気がなかったかと………」

 

千冬「それだけ、こいつらも成長しているということだ」

 

雷真「そうですね」

 

 

織斑先生の言葉を聞きながら、俺は左肘にかすったように付着した細いペイント弾の跡を見たながら、先生が言うとおり皆、成長しているのだと実感する。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

《sideシノブ》

 

 

 

シノブ「クソッ!」ダンッ!

 

アキト「兄さん……」

 

シノブ「何故だ!何故、フリーダムの出力が75%から上がらない!?」

 

 

私は、あの襲撃事件から若様より預かっているフリーダムの修理を完遂させ、フリーダムの出力調整を行っているが、ハロのデータにあったISとなったフリーダムの最大出力に、修理したフリーダムの出力が到達しないことに苛立ち、机を叩いてしまう。

 

 

シノブ「装甲や武装などは修理を完遂している。エンジンも異常がなかった。なのに何故だ!何故、出力だけが………」

 

 

フリーダムの出力が最大値に到達しないことに何がいけないのか考えていると、インパルスの解析や使えそうな武装の修理などを行っている班の班長から声がかかる。

 

 

班長「隊長、インパルスの解析ならびに使える武装の修理などが完了しました」

 

シノブ「そうか。なら、使えそうな武装は4号機に搭載しろ。フリーダムがこんな状態では最悪、若様に4号機にお乗りになってもらうことになる」

 

班長「よ、4号にですか?」

 

シノブ「ああ。もしも、完全に修理が完了してないフリーダムで出撃し、またあのクルーゼという男と戦闘になったら、今度こそ、若様の命はない」

 

班長「………」

 

シノブ「本来であれば、若様から命じられている例の三機のうち、一機でも若様に渡せればと私は思っている。しかし、例の三機はどれもまだ完成してない」

 

 

仮に完成したとしても、若様の命令でエンジン部は空洞だ。だが、若様が倒れられた時に虚ちゃんから若様より私とアキト宛にとあるアタッシュケースを二つ渡された。もしも、その中身が三機のうち、二機のエンジン部だとしたら………可能性としては、小型の“核”だ。

 

意識が戻り、日常生活に戻られている若様から命令がないということは、それを組み込むかは私の判断に任せたという事だ。

 

 

シノブ「その場凌ぎだと思ってくれて構わん! 若様にお渡しできる機体を用意してくれ」

 

班長「御意!」

 

シノブ「アキト、ミーティアの方はどうだ?」

 

アキト「今は、二号機、三号機の最終調整中だよ。流石に、一号機があそこまで破壊されていたら作り直した方が早かったからね。それに、新しい武装も付け加えてある」

 

シノブ「そうか。その詳細は若様に渡す、報告書に纏めて置けよ?」

 

アキト「分かってるよ。それじゃ、俺は例の三機の所へ行ってくるよ」

 

シノブ「ああ」

 

 

例の三機を製造している格納庫に向かっていくアキトを見送ったあと、ハンガーデッキに佇んでいるフリーダムに触れて見ることにした。

 

 

シノブ「なぁ、フリーダムよ。何が足りないんだ?」

 

シノブ「私は、お前に若様を守ってもらいたい。お前に若様と飛んでもらいたい。お前に若様と戦ってもらいたい」

 

シノブ「どうしたら、お前の傷は癒えるんだ?応えてくれ、フリーダム」

 

 

目を瞑り、フリーダムに問いかけるがハンガーデッキに佇んでいるメタリックグレーのフリーダムは何も応えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──別にボクは直ってない訳じゃない──

 

 

 

──彼が気付いてないだけ──

 

 

 

──彼がボクの本当の名前を呼んでくれれば──

 

 

 

──ボクは、何処までも“自由”に空を飛べる──

 

 

──だから……──

 

 

 

──直してくれて、ありがとう──

 

 

 

 

 

 

シノブ「ん?気のせいか?」

 

 

 

アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて

  • アヴァロン・フリーダムの使用禁止
  • アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
  • 別機体のビーム兵器を使用
  • 別の機体を使う
  • 雷真は見学

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