《side刀奈》
オペレーションルームから出た私は、IS学園のシステムをダウンさせた勢力とは違う勢力を排除するために単独で行動している。
刀奈「さて、と。私たち以外の全校生徒は大体の避難が終わったようだし、それならまぁ、大丈夫ね」
いつもであれば、ここで扇子をパッと開くところだが、雷真がいない今、もしも、攻め込んでいるのがクルーゼ勢力のコーディネーターであれば………。死を覚悟しなくてはならない。
刀奈「遺伝子操作がされていない、ナチュラルの私がどこまで対抗できるかしら」
少し不安になり、首にかけている雷真からもらったお守りを握り締める。そのあと、覚悟を決める。
刀奈「よし!」
刀奈「アクア・ナノマシン、散布開始!」
刀奈「来たわね」
『侵入者アリ』と表示されたウィンドウを消し、学園のシステムから独立しているカメラに会長権限でアクセスして侵入者を観察する。すると、侵入者たちのある装備に目がついた。
刀奈「あれは、確か周囲の風景を撮影して表面投射する最新型の光学迷彩。歩兵ということは、クルーゼの勢力とは違うということね」
私は、侵入者がクルーゼの勢力でないことに安堵する。クルーゼとの戦いで雷真が入院している間やそのあとも簪ちゃんに頼んで雷真からもらった
その中でも一番やっかいな類である、“ミラージュ・コロイド”という完全ステルス装置を搭載した
もしも、これが
刀奈「クルーゼの勢力でなければ、私でも対処可能ね」
侵入者が遠くまで真っ直ぐに続く廊下を警戒しながら進んで行くのを後ろから歩いて接近する。すると、一番後方にいる一人が私に気づいた。それにより、他の三人も続いて此方に気付く。
刀奈「随分と短時間で突入して来たわね。常時、監視しているってことかしら?」
悠々としゃべっていると、侵入者たちは少し焦ったように手に持っているアサルトライフルを連射してくるが、そんなのは私には届かない。何故なら、アクア・ナノマシンで防ぐからだ。
侵入者「!?」
刀奈「ふふん。なんちゃってAICよ」
刀奈「ぽちっとな」パチンッ
フィンガースナップをすると散布していたアクア・ナノマシンが廊下で大爆発を起こし、侵入者を巻き込みながら侵入者たちの光学迷彩を焼く。
刀奈「ミステリアス・レイディの技が一つ。『
◇◆◇
~時を同じくして~
《side千冬》
更識簪と布仏虚に篠ノ之たちを任せた私と真耶は、更識刀奈が対処している侵入者とは別のルートから侵入してくる侵入者を排除するためにIS運搬用の特別エレベーターに乗っている。
真耶「先輩、本当に黒牙くんから受け取った“セイバー”を使うんですか?やはり、ここは私が………」
千冬「いや、これは試運転も兼ねている。何れにせよ、セイバーは使うことになる。クルーゼという男が、ここを狙っている以上はな」
千冬「何より、アイツが私に国家機密を託したことを思っていた以上に、私は喜んでいるようだ。アイツから信頼されているとな」
真耶「先輩………」
千冬「もしも、私が侵入者を逃したら対処を頼む。真耶」
真耶「わかりました。先輩!」
真耶から返答が聞こえると、私はスーツのポケットに入れていた赤い飛行機の型のペンダントを取り出してセイバーを起動させる。
すると、完全な全身装甲は初めてではあるが、ISと何ら変わらない操作ができると理解する。理解がし終わるとセイバーの
千冬「まさか、私が
千冬「織斑千冬、セイバー、出るぞ!」
自分の名前とセイバーの名前を言ったあとにセイバーのスラスターを噴かして、此方に向かっているであろう対象に接近する。
千冬「(やはり、暮桜と比べても速いな。黒牙曰く、このセイバーはあの時の四機の中でも飛行速度は最速だと言っていたな)」
以前、黒牙からセイバーの情報を提供してもらいながら聞いた時に言っていたことを思い出すとあっという間にハイパーセンサーが対象を確認する。
千冬「対象の機体はファング・クエイクか。イーリスの奴とは、所々違うようだな」
対象のISについて分析が終わると、そのままの勢いで対象のファング・クエイクを蹴り飛ばす。すると、いきなりのことに対象は数m吹き飛ばされた。
侵入者「未確認のISだと!?」
千冬「アメリカの特殊部隊というのは随分と暇なんだな。こんな極東の島国の学園にわざわざやってくるとは」
侵入者「その声は、織斑千冬!?」
千冬「目的は無人機の未登録コアだけじゃないだろう?だが、残念だな。ここには『白式』と『自由』は無い。既に別の場所にある」
侵入者「ならば、その機体をいただくだけだ!」
千冬「やれるものなら、やってみろ」
アメリカ軍の特殊部隊の『アンネイムド』の侵入者がセイバーを奪おうと、対IS用のコンバットナイフで攻めてくるが私は、セイバーの両肩に収納されているうちの左肩からヴァジュラビームサーベルを引き抜き、高速でファング・クエイクの両手のマニピュレータを切り落とす。
侵入者「ビーム兵器だと?!」
千冬「初めて使ったが雪片と違って、コイツは軽すぎる。ん?」
ヴァジュラビームサーベルのあまりの切れ味に手応えが軽すぎると感じていると、突然、目の前に武装情報のウィンドウが展開された。
千冬「ガーベラストレート・
千冬「ほう、コイツは黒牙のストライクのシュベルトゲーベルに似た武装か。これなら、私でも使えそうだな」
私は、ヴァジュラビームサーベルを左肩に収納してから
千冬「さて、試し斬りの相手になってもらうぞ」
千冬「ハッ!」
侵入者「!?」
刹那。『アンネイムド』の隊長が乗っているファング・クエイクの両肩の上にある武装をSEごと容易く切り裂いて両断した。
千冬「なかなか良い物だな」
侵入者「………」
千冬「さて、これで私も全力で相手ができるな。行くぞ、アメリカ特殊部隊隊長。愛国心とやらを見せてみろッ!」
◇◆◇
《side刀奈》
侵入者たちと対峙しているとレーダーに【ZGMF-X23S セイバー】の反応が表示されたことに驚く。
刀奈「セイバー!?」
刀奈「何故、あの機体が……もしかして、織斑先生?」
セイバーに乗っているのが織斑先生だと仮定し、私は両手だけ
侵入者「それは!?」
侵入者「資料にあったビーム兵器!?」
刀奈「安心なさい。貴方たちにはビームは使わないわ。これは、大切な人からもらった大切な武器なのだから」
刀奈「さて、行くわよ」
侵入者たちが近接と射撃で攻めてくるが雷真との訓練で今まで以上に侵入者たちの動きが把握できる。というよりも、遅く見える。けれど、油断はしない。
刀奈「常に敵を疑え、疑いを解く時は殺した時」
以前、雷真から聞いた言葉を復唱しながらラミネートバックラーにアクアナノマシンを併用させて構え、侵入者たちによる射撃を防ぎながら、近接で攻めてくる輩をビーム刃を出していない物理刀のテンペストビームソードⅡで、殺しはしないが確実に肋骨の二、三本は折るつもりで叩きつける。
流石に切り付けてしまうといくらビーム刃を出していないといえど殺せてしまう。テンペストビームソードⅡの切れ味は
刀奈「ハッ!」
侵入者「ぐぼわっ!!」
刀奈「まず、一人目」
侵入者「このっ!」
刀奈「ふふん。ちょうどいいわ。貴方たち三人は、この子の新しい能力を試させてもらうわ」
刀奈「喰らいなさい!」
私は、テンペストビームソードⅡをラミネートバックラーに収納して、
刀奈「どう?スレイヤーウィップのお味は?痺れて動けないでしょう?」
グフイグナイテッドのスレイヤーウィップは超振動波による攻撃以外にも電撃による攻撃が存在するため、殺傷能力はテンペストビームソードⅡよりは低い。低いと言ってもセーフティをかけてこそだ。
セーフティをかけていなければ、電子機器がショートするほどの電撃があるため、生身の人間が受けたら感電で即死してしまう。
刀奈「さてさて、貴方たちは一体何処の組織の者なのしらね?調べさせてもらうわよ」
再び、スレイヤーウィップを侵入者たちに打ち付け、意識を刈り取った後、拘束して侵入者たちの正体を探る。その際、
刀奈「国籍はアメリカで違いないわね。でも、システムダウンから突入までの時間差。何故、同時ではなかったのかしら………」
刀奈「!!」
刀奈「ハッキングは別の勢力!?」
侵入者とハッキングをした者が別々の勢力だと気付いた瞬間。私の耳に乾いた発砲音と何かを弾く音が届くのと同時に、いつも間にか色々なシステムメニューが視界に入っていた。
刀奈「これは………」
???『無事か、刀奈?』
刀奈「えっ?ら、雷真?」
雷真『この音声メッセージが再生されているってことは何かしらの理由で、刀奈の身に危険が迫ったということだろう』
刀奈「あっ!さっきの発砲音!?」
雷真の声がする音声メッセージで発砲がした方に視線を向けると、そこには何かしらの方法で拘束から抜け出し、此方にハンドガンを向けながら突然展開されたアビスに驚き固まっている侵入者の姿があった。
雷真『だから、お守りとしてアビスを姉さんに刀奈へ渡すよう頼んで置いたんだ』
刀奈「アビスって………まさか!今、私はアビスの中にいるってこと!?」
雷真『あとは、お前に任せるぞ』
刀奈「ちょっ!」
その言葉を最後に音声メッセージが終了した。
刀奈「はぁ………まったく。さて、もしも、このお守りがなかったら嫁入り前の乙女の肌に穴が開くところだったのだけれど」
刀奈「その責任は、しっかりと取ってもらうわよ」
侵入者「ヒ、ヒィィィ!?」
刀奈「歯、食いしばれ!」
アビスの腕で発砲した侵入者の顔面を思い切り殴り、意識を刈り取り、今度はしっかりと持ち物を確認してから再び拘束する。
すると、アビスのレーダーにフリーダムと白式の熱源が感知され、数分もしないうちに少し後ろの廊下の壁が爆発して、そこからフリーダムに乗った雷真と白式に乗った一夏くんがやって来た。
雷真「刀奈、無事か!?」
刀奈「ええ。お陰様で」
雷真「はぁ………」
刀奈「でも、アビスがあるんだからそこまで心配する必要はなかったんじゃないかしら?」
雷真「それでも、心配なものは心配なんだよ」
一夏「あー、二人とも?イチャイチャする前に、この状況をどうにかするのが先じゃないのか?」
雷真「あっ、わりぃ………」
刀奈「あら、ごめんなさい」
一夏「で、会長。皆はどこに?」
刀奈「そうよ、皆が危ないの!一緒に付いてきて!!」
雷真「わかった」
一夏「案内をお願いします」
私はアビスに乗ったまま、雷真と一夏くんをオペレーションルームへと先導する。
【ガーベラストレート・
雷真がセイバーを千冬に託すために開発・追加された武装。
その性能は、レッドフレームのガーベラストレートとソードストライクのシュベルトゲーベル、アカツキのヤタノカガミをベースに千冬用に開発した千冬専用のビーム対艦刀。
切れ味はまんま、ガーベラストレートとシュベルトゲーベルを合わせた切れ味。加えて、アカツキのヤタノカガミの性質も加わっているためビームやビームシールドを弾けはしないが一等両断できる優れ物。
因みに、ガーベラストレート・輝刃の鞘にはヤタノカガミではなく、ラミネート装甲にビームコーティングが施されているので物理攻撃とビーム攻撃の耐性に心配はない
アヴァロン・フリーダムのビーム兵器を実技演習の授業でも使用するかについて
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アヴァロン・フリーダムの使用禁止
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アヴァロン・フリーダム ビーム兵器の禁止
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別機体のビーム兵器を使用
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別の機体を使う
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雷真は見学